<http://www.amazon.co.jp/dp/4492532706/>
単行本: 518ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2010/4/23)
言語: 日本語, 日本語
ISBN-10: 4492532706
ISBN-13: 978-4492532706
発売日: 2010/4/23
[書評] ★★☆☆☆
有名企業の成功例を実例に挙げ、他社との差別化戦略について語った本。戦略とは、
- 合理性だけでは先行できない
- 先見性だけではトップランナーとして走り続けられない
- 業界を知悉した「賢者」にとっての「常識」を覆すような(「常識」に反した)、捻りのあるストーリーを持つことが必要である
成功している戦略ストーリーの競争優位の本質は、それを構成する要素間の交互効果にあるが、それは一見してすぐにわかるようなものではない。うまく出来た戦略について、外見だけを「ベストプラクティス」として模倣した者は、模倣しようとする結果として自滅して行くと言う。実例として、トヨタのJIT (Just In Time)システムを模倣した米フォード社の自働化システムの破綻を示す。またこれを、地方のコギャルで解り易く説明する。すなわち、地方のコギャルは、化粧や服装やアクセサリのバランスの妙を知らずに外見だけ真似るから(システムとしての交互効果がわかっていない)、どうしても極端に走ってしまい、本物の渋谷のコギャルのオシャレとはほど遠いものになってしまっていると言う。
このような理由から、優れた戦略ストーリーの競争優位が長期の持続性を持つ理由は、その企業の戦略の模倣を困難にする障壁があるというよりも、追いつこうとする企業が戦略を模倣しようとする結果、自滅していくからではないかと述べている。
本書では先述の「捻りのあるストーリー」を、「思わず人に話したくなるような面白いストーリー」と言っているようだが、オビの惹句:「戦略の神髄は思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」の例証としては不足感を拭えない。なぜなら、面白く語れるかどうかは、ストーリーそれ自体よりも、ストーリーテラーの話術ないし語る(騙る?)力によるところが大きいからだ。
- ただし、そのような「捻り」の利いた「面白い」ストーリーを全メンバーが共有すれば、組織全体で大きな力を発揮できるであろうことは容易に想像がつく。
ところで。
本書の一番の問題点は、冗長に過ぎるということだろう。引例と主張とがゴチャ混ぜだし、1文が長くて結論はなかなか見えて来ない。段落や章についても、個別の結論が全然見えてこないので、何度放り出そうと思ったことだろうか。特に前半は「読み進める気力」を維持するのが大変だった。特に、論理的に読む人にとって本書は非常に読みにくく、また非常にクドい書き方だと思う(私が論理的に読む人だと主張するツモリは無いが)。全7章のうち、最初の2~3章は飛ばしても構わないと思う(本書の主張を手短にまとめれば、不要な章を省いて不要な例証を削り、…最終的な厚さは元の約1/3位で収まるかも知れない)。
着眼点は面白いかも知れないが、話者自身が「思わず聞き込んでしまいたくなるような面白いストーリー」に書けていないのは如何ともし難い。そういう意味で、★は2点だけです(100点満点では40点、試験なら赤点ですよ!>著者様)。