2016年7月3日日曜日

西尾維新 忘却探偵シリーズ×6冊:「掟上今日子の備忘録」「推薦文」「挑戦状」「遺言書」「退職願」「婚姻届」

普段は堅めの本について書くことが多いのですが、ラノベとかの書評の方が実はPV数が安定して伸び(以下略/笑)

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西尾維新 忘却探偵シリーズ:
  1. 「掟上今日子の備忘録」
  2. 「掟上今日子の推薦文」
  3. 「掟上今日子の挑戦状」
  4. 「掟上今日子の遺言書」
  5. 「掟上今日子の退職願」
  6. 「掟上今日子の婚姻届」
  7. 「掟上今日子の家計簿」【今年2016年夏発行予定】
※既刊6冊の書誌情報・Amazonリンク等は末尾を御参照されたい。

[書評] ★★★☆☆

今をときめくライトノベルの大家(アニメ化・ドラマ化された原作小説を何本も書いている)・西尾維新氏が、〈物語〉シリーズ(お化け話)に続いて発表したシリーズ。推理小説です、一応(笑)。内容的にはアーサー・コナン・ドイル(『シャーロック・ホームズ』シリーズ)の影響が大きいようだが、本シリーズのスタイルとしては、いわゆる「叙述トリック」を多用。
  • 叙述トリック…コナン・ドイルやモーリス・ルブラン(『アルセーヌ・ルパン』シリーズ)よりもずっと後、アガサ・クリスティの頃に出てきたミステリー小説の書き方の技巧法。文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う。たとえば登場人物の性別、事件の発生した時間や場所などに関わる記述を意図的に伏せ(性別の場合は「彼」とも「彼女」とも書かず苗字や役職名だけで書いたり、英語なら受動態で文を書いて「誰が」を書かないなど)、あえて誤読させることで、解決シーンでインパクトを与える。2度読みすると「な~んだ、そういうことか」となる(笑)。
本シリーズの主人公は、探偵・掟上今日子(おきてがみ きょうこ)。眠ると記憶が消えてしまうという、通常ならネガティブな特異体質を逆にアドバンテージとして、色々な難事件を解決する。引き受けた仕事は全て1日で解決する「最速の探偵」。記憶を維持する方法は、自分の身体の一部に、自分の筆跡でメッセージ(置手紙?)を書き込むこと。

〈物語〉シリーズが設定盛り過ぎ・言葉遊び多過ぎだったのと比べると、素直に読み易い(〈物語〉シリーズは阿良々木暦クン語り部回ではそりゃもうストーリーが全然進まない)。ソレナリに面白かったので3つとしたが、イイ歳した大人が、お金と時間を使ってわざわざ読むほどの本ではないかも知れない(…とは書いたが、本作の想定読者はたぶん大人=社会人)。筆者・西尾氏の好きな、設定テンコ盛り&言葉遊び乱発は、本シリーズ1~3巻では鳴りを潜めている(だから読み易い/笑)。が、4巻辺りからチラホラと…。←面白いけど、やっぱりストーリーが進まなくなる(笑)。また、6巻では寝ると記憶を失う主人公の特性を逆手に、今日子さんが翌日の自分の感情までコントロールするという裏技(反則技?)まで出てくる。
  • 本シリーズ1~4巻は、TVドラマ化され、2015/10~12に放映されました。原作を大幅に翻案して、4冊分の内容をキレイに10回放映に再構成。全編語り部は隠館厄介(かくしだて やくすけ)クン(演:岡田将生さん)。主演の掟上今日子(演:新垣結衣さん)がキュートすぎて、原作とは別の面白さがありました。第9話・10話のクライマックスには、ヒール(悪役)として要潤さんが出てきます。少し滑舌の悪い(笑)イケメン俳優、個性的でいい味出していましたよ!
で、本シリーズ。TVドラマ化されて4巻でキレイに終わるのかと思いきや、TV放映終了前(2015年12月)に5巻『退職願』発行。その巻末に6巻『婚姻届』発行予告(予告通り今年5月に出版されました)。そして6巻の巻末には、7冊目『家計簿』の発行予告が(2016年夏)まだ終わらないのか! なんということだ!! また買ってしまうではないか!(笑)
  • 作者の西尾さん、他のシリーズもそうですけど、色々引っ張り過ぎでしょ。幾つもの作品がドラマ化・アニメ化され、メディアミックス戦略とかの大人の都合で、作品を完結させて貰えないとかもあるのでしょうけど。
ツッコミ所は色々あるのですが、娯楽作品として面白く、アク(灰汁?悪汁?)も薄めなので許しませう(笑)。

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以下書誌情報+コメント少々:

西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の備忘録」(忘却探偵シリーズ01)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062192020/>
単行本(ソフトカバー): 338ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062192020
ISBN-13: 978-4062192026
発売日: 2014/10/15

↑短編集。不運のフリーター・隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部となり、巻き込まれた事件をいくつか書いている。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の推薦文」(忘却探偵シリーズ02)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062194503/>
単行本(ソフトカバー): 402ページ
出版社: 講談社 (2015/4/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062194503
ISBN-13: 978-4062194501
発売日: 2015/4/23

↑一見、短編集だがストーリーの間の関係が深く、長編と見ることもできる。語り部は、警備員の親切守(おやぎり・まもる)クン。って、警備員の職を失うのだが…。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の挑戦状」(忘却探偵シリーズ03)
<http://www.amazon.co.jp/dp/406219712X/>
単行本(ソフトカバー): 290ページ
出版社: 講談社 (2015/8/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 406219712X
ISBN-13: 978-4062197120
発売日: 2015/8/19

↑本巻のみ初出は『メフィスト』(講談社のラノベ系文芸誌)、「神視点」(語り部がいない)。ノリも他の5冊とはチョット違うが、ぽわわんとした雰囲気を持ちながら実は行動派で性格は比較的ドライっぽい今日子さんの描写が面白い。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の遺言書」(忘却探偵シリーズ04)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062197847/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2015/10/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062197847
ISBN-13: 978-4062197847
発売日: 2015/10/6

↑長編。シリーズ1冊目と同じ隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部。本作で、殺人未遂事件の犯人(本人も重体で意識不明)に対して、死んでも責任は取れない、生き恥をさらすのが生きている人の務めだ、というのは、たぶん作者・西尾氏の読者へのメッセージ(この人の作品には、生きることと生きることの業(ごう)について肯定し、生き恥を晒すことが生きることだというメッセージが多い気がする)。また、漫画や小説の影響によって反社会的な人や犯罪者を生む可能性は否定できないけど、表現の自由は擁護されるべきだ(創作者に窮屈な境遇で活動して欲しくない≒創作者としては活動しにくい環境を作らないで欲しい)とか、その反面プライバシーとかも大切だけど報道の自由を規制するのは難しいとか、…この辺りも西尾氏の本音なのだろう。西尾氏の思いと主張がスパーク(笑)する1冊。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の退職願」(忘却探偵シリーズ05)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062199068/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2015/12/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062199068
ISBN-13: 978-4062199063
発売日: 2015/12/17

↑短編集。4人の女性警部が各話の語り部。警察から今日子さんに捜査協力依頼が。4人の警部はそれぞれ今日子さんに対して羨望だったり嫉妬だったり色々な感情を持っているのだが、今日子さんはそんなことお構い無しに事件の究明に尽力する。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の婚姻届」(忘却探偵シリーズ06)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062200716/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2016/5/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062200716
ISBN-13: 978-4062200714
発売日: 2016/5/17

↑長編。語り部は再々度、隠館厄介クン。彼が出会った某女性曰く、彼女が好きになった男性はみんな破滅していく…これは運命? それとも…。ちなみに、ヒロイン・掟上今日子さんが結婚するわけではありませんので、ファンの方は安心してお読み下さい。

西尾 維新(著)、VOFAN (イラスト)「掟上今日子の家計簿」(忘却探偵シリーズ07)
【2016夏発売予定】