<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838893/>
単行本(ソフトカバー): 308ページ
出版社: 講談社 (2015/10/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062838893
ISBN-13: 978-4062838894
発売日: 2015/10/6
[書評] ★★★☆☆
久しぶりにライトノベルのお時間です。
〈物語〉シリーズの最新刊(19冊目)。このシリーズ、前巻『続・終物語』で今度こそ打ち止めだと思っていたのだが、…新刊が出てしまいました。内容は、過去に出てきたヒロインのうち3人を主人公とするストーリー3本立て。しなくても良い伏線の回収(笑)。
第一話「そだちフィアスコ」は、暦クンの元クラスメイト・老倉育(おいくら そだち)の、転校先での出来事。新クラスで自己紹介に失敗したあと、友達作りもなかなかうまくいかない。最初こそ学校内での自分の立ち位置を確保する為に行動するが、クラスメイトの対立や友人関係の捩れを見て、これを正す行動をとってしまう。その結果育チャンは学校で友達のいない生徒になってしまうのだが、この打算を超えた行動パターンこそ、一番嫌いなはずの暦クンそのものだ。育チャン、性格にも行動にも色々と問題はある(そんな育チャンが語り部だから、文章も陰鬱)。でも、弱さを抱えた人間が弱さを抱えたまま一段階成長する姿は、本シリーズにしては珍しく、救いがある。
第二話「するがボーンヘッド」は、語り部・神原駿河(かんばる するが;暦クンの1学年下の後輩)が高3夏休み初日に自室(汚部屋!)を掃除し始めた時に、数カ月前に処分した筈の左手の木乃伊が出てきた(木乃伊:初出は『化物語(上)』で高2春、処分は『花物語』で高3春)。この左手の木乃伊は古い手紙を握っていたが、そこに書かれていたのは暗号。木乃伊がらみの話なのだが、怪異譚というより軽妙なナゾナゾ話。
第三話「つきひアンドゥ」の語り部は、なんと人間ではなく式神の斧之木余接(おののき よつぎ)チャン(初出は『偽物語(下)』)。阿良々木家に監視役として来ていたが(『憑物語』で暦クンの妹・月火(つきひ)チャンがUFOキャッチャーでゲットしてきた)、人形であるはずの余接チャン、アイスクリームを食べている所を月火チャンに目撃されてしまう。何とかソレっぽい話で月火チャンを納得させようとするのだが、…ドタバタ劇の後は無間地獄(笑)。
三話とも、前作を読んでいないと解らない内容だらけ。ファンサービスのような本。心の闇という陰鬱なテーマと、軽妙なお化け話が適度にちりばめられた娯楽本としては良いかも知れません。
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- 現在ファイナルシーズンのTVアニメ放送中
- ファーストシーズンの未放送分(『傷物語』)の映画化(2016年1月~公開予定)
作者の西尾さん、ここ暫くは「忘却探偵シリーズ」執筆で超多忙な筈なのですが、旧シリーズの続編も並行して書かなければならないとは…。本作に続いて、シリーズ20冊目「業物語」の出版も発表されています。売れっ子作家というのも相当シンドそうですね(作者の西尾さん、昔は売れないことを自虐ネタとして作品中に盛り込んでいた位なのですけどねぇ)。西尾さん、現在三十代半ばで体力的には暫くは大丈夫だとは思いますが、メディアに酷使され過ぎないことを祈ります。
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◆既刊リスト
①「化物語(上)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062836025/> (2006/11/1)②「化物語(下)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062836076/> (2006/12/4)
③「傷物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/> (2008/5/8)
④「偽物語(上)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062836793/> (2008/9/2)
⑤「偽物語(下)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837021/> (2009/6/11)
⑥「猫物語(黒)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/406283748X/> (2010/7/29)
・セカンドシーズン
⑦「猫物語(白)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837587/> (2010/10/27)
⑧「傾物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837676/> (2010/12/25)
⑨「花物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837714/> (2011/3/30)
⑩「囮物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837765/> (2011/6/29)
⑪「鬼物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837811/> (2011/9/29)
⑫「恋物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062837927/> (2011/12/21)
・ファイナルシーズン
⑬「憑物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838125/> (2012/9/27)
⑭「暦物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838370/> (2013/05/20)
⑮「終物語(上)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838575/> (2013/10/22)
⑯「終物語(中)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838613/> (2014/1/29)
⑰「終物語(下)」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838680/> (2014/4/2)
⑱「続・終物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838788/> (2014/9/18)
・オフシーズン
⑲「愚物語」 <http://www.amazon.co.jp/dp/4062838893/> (2015/10/6)
⑳「業物語」【未刊】
この各冊が文字量多め。文庫本で言えば350~400ページ程度の少し厚めの文字量(言葉遊びが多い作者なので、その分は割り引いて考えても良いのですが)。これを10年足らずで20冊書いていると思うと、驚嘆すべき多作ですね!
◆拙書評
①~⑭ <http://yuubookreview.blogspot.jp/2013/08/blog-post_16.html>
①~⑭(再読) <http://yuubookreview.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html>
⑮ <http://yuubookreview.blogspot.jp/2014/02/vofan.html>
⑯ <http://yuubookreview.blogspot.jp/2014/03/vofan.html>
⑰ <http://yuubookreview.blogspot.jp/2014/04/vofan.html>
⑱ <http://yuubookreview.blogspot.jp/2014/11/vofan.html>