2017年3月19日日曜日

ジュリオ・トノーニ & マルチェッロ・マッスィミーニ「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」


ジュリオ・トノーニ & マルチェッロ・マッスィミーニ(著)・花本知子(訳)「意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4750514500/>
単行本: 302ページ
出版社: 亜紀書房 (2015/5/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4750514500
ISBN-13: 978-4750514505
発売日: 2015/5/26

[書評] ★★★★★

原題:“NULLA DI PIU GRANDE - Dalla veglia al sonno, dal coma al sogno. Il segreto della coscienza e la sua misura”「これほど偉大なものはない - 覚醒から睡眠、昏睡から夢まで。意識の秘密とその測定」(邦訳は本書訳者による、本書「訳者あとがき」より)

意識の統合情報理論の開祖ジュリオ・トノーニと、彼の共同研究者マルチェッロ・マッスィミーニによる、意識とはどのようなものであるのかについて、また意識がある時と無い時の脳の状態はどのようなものかを解き明かす本。
  • ジュリオ・トノーニ(Giulio Tononi) (Wikipedia)…米国/ウィスコンシン大学、医師・精神科医。名前からしてイタリア系だが、本書も原著はイタリア語。
  • マルチェッロ・マッスィミーニ(Marcello Massimini)…イタリア/ミラノ大学、医師・神経生理学者。
  • 統合情報理論(Wikipedia)…このWikipediaエントリは非常に短いが、関連する項目として以下が挙げられる。
さて、本書。めちゃくちゃ面白い! 覚醒している人・深い眠りについている人(徐波睡眠、ノンレム睡眠)・眠りながら夢を見ている人(レム睡眠)のそれぞれについて、従来は区別が難しかったものを判別できるようになるに至るストーリーが秀逸。また、回復の見込みのない植物状態の患者の脳を測定した例や、昏睡状態の患者が意識を取り戻す過程を測定した話は、非常に興味深い話として読めた。世界で初めての取り組みで、筆者自身が不安を抱えつつもワクワクして取り組んだ様子が生き生きと描かれており、サイエンスの楽しさも伝わってくる。

この他にも、脳の各部(小脳、基底核、視床-皮質系)の役割分担について非常に解り易く書かれていたり、人間以外の動物の場合に関する話が書かれていたり、トリビアな話も含め、脳神経科学の最先端に関わる読み物としても非常に面白い。

人間(を含む色々な動物)の脳がどのように出来ているのか、どのように働いているのか、記憶とは何か、意識とは何か、といったことに興味がある人には勿論、たぶんAI研究者にも有用な本だと思う。

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