2013年12月8日日曜日

古川 琢也 (著)「ブラック企業完全対策マニュアル」


古川 琢也 (著)「ブラック企業完全対策マニュアル」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863917945/>
新書: 208ページ; 出版社: 晋遊舎 (2013/5/27); 言語 日本語; ISBN-10: 4863917945; ISBN-13: 978-4863917941; 発売日: 2013/5/27

[書評] ★★☆☆☆

ブラック企業と呼ばれる会社組織の実態や、その被害に遭っている労働者がどうしたら良いかが書かれた本。本の紹介には「対策術を指南します」と書かれているが、労働者に対して「こうすれば良い」という答えは書かれていない。その代わり、ユニオン(社外の組合)、社労士、弁護士への相談を勧めている。個々人で状況など違うので、ある意味において正しい回答かも知れないが、じゃぁどうすれば良いのさ?と欠乏感は感じる。ユニオン、社労士、弁護士へのアクセス方法が書かれているので、「とっかかり」的には意味のある本だとは思うが。「完全対策マニュアル」はかなり大袈裟な題名だ。

さて。

本書は労働者側(労使の「労」側)に向けて書かれた本だが、「使」の立場、すなわち経営者や上司の側に立って考えてみると、実にやりにくい世界になったものだと思わざるを得ない。右肩上がりの時代には、残業も多かったが、残業手当も青天井。それがバブル崩壊以後は企業側にも余力がなくなり、仕方なく残業規制。人もずいぶん減らしたが、ノルマはあるし、1人あたりの業務量はむしろ増加している。サービス残業や名ばかり管理職の酷使は御法度。しかも、今会社のトップとなっている人たちが担当者~下級管理職をやっていた時代は、残業もバリバリできた時代。経費もバンバンつかえた時代。その頃の感覚を持ちあわせたまま、今の若手~中堅に当時と同じようなアウトプットを期待すること自体、無理があるのだろう。

この辺りの匙加減は非常に難しい。下手なことをすれば、すぐブラック企業として大手ネット掲示板に書き込まれてしまう。就職活動や転職活動をしている多くの人の目にとまれば、その企業は大きなダメージを受ける。実際には企業まるごとブラックという例は少なく、ブラックな職場とそうでない職場とが存在するのだろうが、2、3の悪い例を見てしまうと、会社全部がそうなのかと思ってしまう。労働者も生きにくい時代になったが、企業側もやりにくい時代だと思う。

キャッチーなタイトルに騙され、つい本書を手にしてしまったが、冷静に考えればわかることが多い(事例もニュースになった物ばかりだ)。そういう意味で、本書の評価はあまり高くすることが出来なかったが、コンビニで売られている新書だと考えると、まあこんな物なのかも知れない。

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