2014年6月22日日曜日

嶋津 良智 (著)「40歳を過ぎたら仕事は「半分」捨てなさい」

今回もまた新しめの本です。


嶋津 良智 (著)「40歳を過ぎたら仕事は「半分」捨てなさい」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4046002840/>

単行本(ソフトカバー): 205ページ
出版社: KADOKAWA/中経出版 (2014/4/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4046002840
ISBN-13: 978-4046002846
発売日: 2014/4/26

[書評] ★★★★☆

40代になったら、知力・体力とも落ちてくるので、それに対応した生活や仕事の仕方をしましょう、という本。30代までは貪欲に何でもインプットし、来る仕事は拒まず、が「正しい姿」かも知れないが、40代以降は「選択と集中」をして、やること/やらないことをキチンと選別することが個人でも大切だよ、という話。

よくあるHow-To本・自己啓発本と内容の多くがかぶるが、
  • やること/やらないことの選別基準
  • 仕事の断り方(実際には本書記載のようにすんなりと断れるケースは少ないが…)
  • 自分の感情をどのようにコントロールするか
  • 頭の切り替えが追いつかないときにどうすれば良いか
等の、“ちょっと役立ちそうな”話も有り。感情のコントロール等については、「上司学」や「怒りのマネジメント」のコンサルタント・著者として有名な著者、嶋津氏ならではの内容だろう。1~2時間でパッと読める本としては悪くない。

※最近読んだ他の本では、和田 秀樹 (著) 「“捨てる”勉強法 (PHP ビジネス新書)」(PHP 研究所、2011/4/26)<http://www.amazon.co.jp/dp/4569795625/>(書評)と内容の重複が多いが、「“捨てる”勉強法」には、歳をとると記憶力が落ちるのではなく、復習(反復学習)をしなくなるから記憶に残りにくくなるだけだ、と書いている。

2014年6月15日日曜日

田中 耕一 (著)「生涯最高の失敗」

田中 耕一 (著)「生涯最高の失敗」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022598360/>
単行本: 240ページ
出版社: 朝日新聞社 (2003/9/9)
ISBN-10: 4022598360
ISBN-13: 978-4022598363
発売日: 2003/9/9

[書評] ★★★★★

2002年ノーベル化学賞を受賞された田中耕一さん(島津製作所)の自著。マスコミから数多く寄せられたインタビューに代わり、世間(特に研究者・技術者とその上司)に宛てて伝えたいことを書いた本。

研究者・技術者には、新しいものを生み出すために、「見えないものを見る努力をする」ことを伝える。また、自分の仕事をちゃんと説明することの重要性についても説く。日本人が得意とするチームワークの良い点は残しつつも、チームの「和」だけでなく、外の世界にも視野を広げるべきこと。真面目にこつこつやることがバブル景気の頃から恰好悪いと思われる傾向にあるが、これを甘く見てはいけないことも説く。当たり前と言えば当たり前だが、ともすると忘れられがちな大切なことだ。

また、研究・開発を行う組織に対しては、新しい物を生み出す活動については、失敗に対してもっと寛容になるべきことと、失敗につながったとしても、その努力はキチンと評価するのが良いと勧めている(減点主義ではなく加点主義とする)。これまた当たり前のことなのだが、実際には減点主義の組織で冒険が出来ない研究者・技術者が多いというのが日本企業の実情だろう。

研究・開発に携わる人にもお勧めできるが、そういった組織を取りまとめる人(上司)にこそ読んで欲しい本。

2014年6月11日水曜日

野口 吉昭 (著) 「コンサルタントの「解答力」」


野口 吉昭 (著) 「コンサルタントの「解答力」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569772226/>
新書: 177ページ
出版社: PHP研究所 (2009/9/19)
ISBN-10: 4569772226
ISBN-13: 978-4569772226
発売日: 2009/9/19

[書評] ★★★★☆

人を動かす(人に気持ち良く動いてもらう)ための方法に関する本。
  • 相手の期待値を読む方法
  • 相手に気持ちよく動いてもらう方法
について(新書のボリュームの割に)詳しく書かれている。

人に動いてもらうためには、ロジックだけでなく、パッションも必要(人はロジックで納得し、パッションで動く)。しなければならない(Must)を述べるだけでなく、できる(Can)・したい(Will)も含める必要があることを述べる。

非常に解り易いし、役に立ちそうだ。コンサルタントに限らず、誰かに動いてもらうことが必要な人にとって有用なことが書かれていると思う。

2014年6月7日土曜日

野口 吉昭(著) 「コンサルタントの「質問力」」


野口 吉昭(著) 「コンサルタントの「質問力」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569696902/>
新書: 208ページ
出版社: PHP研究所 (2008/3/19)
ISBN-10: 4569696902
ISBN-13: 978-4569696904
発売日: 2008/3/19

[書評] ★★★☆☆

本質を衝いた質問の仕方、話の流れの作り方に関する本。題名に「コンサルタントの」とあるが、他人とコミュニケーションという意味では、(コンサルタント以外の)仕事にも、また場合によっては日常生活にも使える内容だと思う。

自分の話し方や会話のスタイルで、一部反省する点あり。新書という小さなボリュームの割には得るものあり。

2014年6月4日水曜日

フレッド・ボーゲルスタイン(著) 「アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか」

たまには“積読”本でない、新しめの本も。


フレッド・ボーゲルスタイン(著), 依田卓巳(翻訳)「アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4105065718/>

[書評] ★★★★☆

元々はPCメーカと検索サービスという異なる出自を持つAppleとGoogleが、スマートフォン、タブレットという同じステージでどのようにガチンコ勝負をしてきたのかを記す本。携帯端末でのWeb閲覧と広告媒体、音楽配信、TV/動画配信といったメディアの有り方を、この2社がどのように変えて行ったのか、今後どのように変わっていくのかを中心に2社のアプローチの差異も明らかにしていく。

また、AppleとGoogle(表向きはSamsung等のアンドロイド端末の製造メーカ)の特許紛争と、その際にAppleが取った戦略についても触れる。

面白いし、技術屋視点からも色々と得るものがある。

Appleが製品・ソフトをクローズな環境で強くコントロールしようとしてきたのに対し、GoogleはOSからソフトまでオープンな環境である程度市場に任せ、弱いコントロールをしてきたことはよく知られている。Appleの“王国”は、iPod, iPhone, iPadと次々と新しい製品を生み出しながら、それをiTunesとiTunes Storeの管理下に置き、音楽や動画やアプリの購入を1箇所で管理されたクレジットカード番号で決済できるようにしたこと(ユーザへの利便性の提供)にあると言う。Googleの価値提供は違うアプローチだ。

…といった戦略の違いはよく知られたことではあるが、本書から技術屋目線で得られる教訓で、特に大きなものは次の2点だろう:
  • 時機を得た製品&サービス投入と、絶えざるビジョンの発信
  • 特許戦略
前者については、故スティーブ・ジョブズ前CEOは非常に巧かった。機が熟し、技術が追いつく丁度その瞬間、新製品を投入してきた。Mac Worldでの魅力的な製品発表や、コンピュータやモバイルの将来ビジョンを示したことは、多くの人が知るところだろう(発表前~発売の間、実は非常にタイトなスケジュールで無理をしてきたことが克明に描かれているが)。また、音楽配信を開始するにあたって、音楽業界の大手と強気とかなり交渉をしたことも知られているが、明確なビジョンあってのことだと思う。

このビジョン発信についてだが、ティム・クック現CEOは、本書にも書かれている通り、どうも無難なことしか言っていないような気がする。これがアップルの魅力を減じてしまっているようだ(グーグルが次々と新製品/サービスを投入してきているのに比べると、どうしても見劣りがする)スティーブ・ジョブズ亡き後、アップルの株価が大きく下がっていることが、株式市場からのAppleの評価を示している。

後者の特許戦略についても色々と学べる点がある。
  • Apple(というよりスティーブ・ジョブズ氏)はGUIについてMicrosoftとの不競争契約で失敗したことから多くを学んでおり、Google(Android陣営)とは戦略的に戦った。
  • 携帯電話の市場には後発として入ったが、取れる特許は全て押さえて、特許訴訟も本気でやることによって、参入後の地位を安定化させた。
  • 市場に出る技術だけでなく、周辺技術も可能な限り特許化する…実際に製品に使われない技術も特許化しておき、①他社の模倣を防ぐ、②競合に対する「目眩まし」とする周辺技術もキッチリ押さえてくる点と、徹底的な訴訟対策は、体力のある企業でないと難しいかも知れない。が、見習うべき点は多々あると思う。
AppleとGoogleの比較評価だけでなく、企業の技術戦略という観点からも、面白い本だと思う。