2016年1月24日日曜日

魚川 祐司「講義ライブ だから仏教は面白い!」

リアル店舗で面白そうと手に取った本。帯に書かれた言葉は、「ニートになれ。世界を終わらせろ。ブッダの教えはこんなにヤバかった!最強の入門講座」。言葉の真意:対価を得るための労働や生殖の否定。目指すものは永遠の輪廻からの解放(解脱・涅槃)。いずれも出家信者に求められる生活スタイルであり、在家信者はここまで極端なライフスタイルは求められないのだが、とにかく目を引ければ良いというキャッチコピーにも見える。が、それに引っ掛かかる私も相当チョロい奴だな~。(^^;)

魚川 祐司「講義ライブ だから仏教は面白い!」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062816318/>
文庫: 416ページ
出版社: 講談社 (2015/12/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062816318
ISBN-13: 978-4062816311
発売日: 2015/12/18

[書評] ★★★★

さて、本書。チープにも見えるキャッチコピーから予想されるよりもずっと面白かった

仏教思想の入門の入門といった位置づけの本だが、たとえば輪廻とはどういうものといった説明が非常に解かりやすかった。ブッダの教えとはどういうものか?を知るイントロ情報としては必要にして十分だと思う。
  • 輪廻や業といった考え方は仏教思想というよりそれ以前からあったインド思想とのこと。この辺りを前提としていない多くの日本人にはブッダの教えは難しいかも知れないが、本書にはこの辺りも非常に解かり易く書かれている。
  • なお、本書で扱っている仏教は、ゴータマ・ブッダの教えの源流に近いとされるテーラワーダ仏教、いわゆる「小乗仏教」である。日本では「大乗仏教」の方が圧倒的にメジャーなので、本書に書かれている内容(教えの実践など)には違和感を感じるかも知れない。が、本書は日本でメジャーな仏教との違いも含めてわかり易い。
  • ブッダの教えを本当に理解するには、その教えの教理を「知る」以外に「実践する」ことも必要だという。苦から解放されたければ実践せよ…ここだけ拾うと、他の某アブナイ“宗教”と一緒なのだが、「だから、あなたも実践しましょう!」ではなく、実践するかどうかは各自の選択に任せる、といった辺りは、まっとうな教えだと言えよう。
本書で好印象を持ったのは、言葉だけでは説明しきれないものを細かく噛み砕いて、何とか解かり易く伝えようとしてくれている点。対談からの文字起こしや構成にも手抜きが見られない。それも、仏教の教えを変に簡単化・単純化するのではなく、この教えは難しいということも含めて理解させようという姿勢が良い。400ページの文庫本(人にもよるが2~3時間で読める)、¥840(+消費税)という価格設定は非常に良心的なのではないだろうか。
  • あちこち表現がクダけ過ぎていたり、喩えが妙に下世話&サブカルっぽかったり、伝えたい内容が真面目な割にナンダカナア(笑)な所もある。が、これも解かり易く伝えるための努力だと好意的に解釈しておこう。
「キミ仏教のコト知らなさすぎ!」と言われる前に読んでおく1冊目としてオススメ♪出来る本だ。

2016年1月16日土曜日

トム・クランシー「米露開戦」(1~4)

トム・クランシー&マーク・グリーニー(著), 田村源二(訳)「米露開戦」(1~4)

[書評] ★★★★☆

久々にトム・クランシーを読んだ。数カ月前、リアル店舗で平積みされていたので、つい手に取った物。「レッド・オクトーバーを追え!」を始めとした軍事・政治スリラー作品の多い巨匠、故トム・クランシー(2013)の遺作。「レッド~」と同じ系列の〈ジャック・ライアン〉シリーズ最終作となってしまった。

ロシアのウクライナ侵攻・クリミア併合を予言した本。ちなみに原書の刊行は2013年12月、ウクライナの変動は2014年2月以降。情勢分析力・洞察力は流石と言える。本作でもクランシー節は健在。

旧ソ連崩壊前後からの裏金の流れ・裏の権力の推移と結び付けて(ここは虚実とりまぜたうち虚の方だと思うが)、面白い作品に仕上がっている。「アメリカ合衆国は、強く、そして正しい」という幻想を抱かせる点においては一種のプロパガンダ作品だが、面白いから許す(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

以下書籍情報:


トム・クランシー&マーク・グリーニー(著), 田村源二(訳)「米露開戦」(1)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102472576/>
文庫: 319ページ
出版社: 新潮社 (2014/12/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102472576
ISBN-13: 978-4102472576
発売日: 2014/12/22


トム・クランシー&マーク・グリーニー(著), 田村源二(訳)「米露開戦」(2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102472584/>
文庫: 319ページ
出版社: 新潮社 (2014/12/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102472584
ISBN-13: 978-4102472583
発売日: 2014/12/22


トム・クランシー&マーク・グリーニー(著), 田村源二(訳)「米露開戦」(3)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102472592/>
文庫: 311ページ
出版社: 新潮社 (2015/1/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102472592
ISBN-13: 978-4102472590
発売日: 2015/1/28


トム・クランシー&マーク・グリーニー(著), 田村源二(訳)「米露開戦」(4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102472606/>
文庫: 335ページ
出版社: 新潮社 (2015/1/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4102472606
ISBN-13: 978-4102472606
発売日: 2015/1/28

2016年1月9日土曜日

曲亭馬琴 (著), 白井 喬二 (翻訳)「現代語訳 南総里見八犬伝」(上・下)

曲亭馬琴 (著), 白井 喬二 (翻訳)「現代語訳 南総里見八犬伝」(上・下)

[書評] ★★★☆☆

年末年始、南房総に行ってきたので、それに因んで読んでみた本。言わずと知れた、曲亭馬琴(滝澤馬琴)による伝奇物語。

醒めた目で見ると、ツッコミ所満載。
  • 八犬士に限らず里見家ゆかりの人物が「八」「犬」にまつわる名前の人ばかり。八犬士の苗字も無理な設定が目立つ(「大塚」→「犬塚」とか)。物語冒頭に出てくる伏姫も名前に「犬」が入っていますね。いちばん酷いのはヽ大(ちゅだい)法師だろう(「犬」=「ヽ」+「大」というワケ/笑)
  • 里見家の人々と八犬士が人徳が高く、敵方が外道ばかりだったり。子供には解り易いだろうけど(笑)。
  • 八犬士の向かう所敵無しという超御都合主義的ストーリー展開だとか。今様の言い方をすれば「チート」ですよコレ。
でも変なツッコミを入れるのは野暮というものだろう。義に篤い人物が悲劇的な環境にめげずに志を同じくする物語は、時代を超えた面白さがある。また、江戸時代の民衆が楽しんだファンタジーという読み方をしても面白い。フィクションではありながらも、ある程度史実をもとにしている部分もあるので、歴史好きの人にも楽しめる作品だと思う。下手な現代小説よりも面白い!かも知れない。

そう言えば、千葉には犬にまつわる苗字の人が多いよな~。犬川さんとか犬井さんとか犬飼さんとか。。。やっぱり八犬士に関係あるのかな?


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以下書誌情報:


曲亭馬琴(著), 白井喬二(翻訳)「現代語訳 南総里見八犬伝 上」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4309407099/>
文庫: 604ページ
出版社: 河出書房新社 (2003/2/5)
ISBN-10: 4309407099
ISBN-13: 978-4309407098
発売日: 2003/2/5


曲亭馬琴(著), 白井喬二(翻訳)「現代語訳 南総里見八犬伝 下」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4309407102/>
文庫: 609ページ
出版社: 河出書房新社 (2003/2/5)
ISBN-10: 4309407102
ISBN-13: 978-4309407104
発売日: 2003/2/5