2014年12月6日土曜日

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史(上・下)」

 

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 上」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891903/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/9/5)
ISBN-10: 4863891903
ISBN-13: 978-4863891906
発売日: 2012/9/5

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 下」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891911/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/10/3)
言語: 日本語
ISBN-10: 4863891911
ISBN-13: 978-4863891913
発売日: 2012/10/3

[書評] ★☆☆☆☆

旧石器時代から現代(2000年代初頭)までの日本史を概観する本。文庫化に当たって手を加えているとは言え、元々は予備校講師による受験生のための講義録。一通り学習した人が復習するには良いかも知れないが、日本史のイントロ本にはならない。そもそも、歴史というもの自体、非常に多くの人間の思惑が複雑に関係し合った結果であり、様々な事柄(国の中央と地方の状況と、文化・宗教・芸術)を有機的に結びつけないと理解できるものではない(と思う)。これを文庫本2冊、合計500ページ程度に纏めようという試み自体、無理・無謀・無茶な相談なのだろう。

筆者は予備校で人気講師だったようだが、それは「大学に入るため」というモチベーションを持った受験生を対象とした講義だったからではないか。本書の元となった講義録は人気だったと言うが、それは生きた講義があった上での話ではないか。素の文章(+若干の図表)だけにしてしまった為か、本書は受験対策本としてはカナリ御粗末。また、歴史の大まかな流れを掴むには些末な情報が多く(文系受験生向け情報?)、また歴史のダイナミズムに関しては説明不足な点も多い。つまり、日本の歴史を概観したい一般読者向けとしても御粗末。つまり、本書はどっちつかずの失敗作。題名の「日本一おもしろい」は誇大広告以上、詐欺なのではないのか?(怒) まぁ、このテの本としてはカナリ安価な方なので、あまり強く文句も言えないのだが、せめて題名だけは内容を反映したものにして欲しかった。

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ところで、本書には通常とは違う読み方があると思うので提案しておきたい。それは、ネット上の情報も参照しながら読むとうスタイルだ(読書環境が限定されてしまうが)。私自身、Wikipedia等をナナメ読みしながら本書を読み進めたところ、予想以上に広く深く日本という国の成り立ちを(再)確認することが出来た。通常の文庫本2冊と比べて何倍も時間がかかったが、それなりに得たものはあった。(Wikipediaすげえよ!/笑)

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以下余談:

上巻まえがきに、「日本史がブームです。/高校生や受験生のみならず、多くの人が日本史を学びなおしたいと思っています。」とある。実際にそのような傾向が見られる気がする。戦争を知る世代の殆どの方々が引退し、「戦後」すら知らない現役世代が過激なナショナリズムや右傾化に走っている表れではないと思いたい。…そう感じている私自身、本書を手にしているのだから世話がないのだが(苦笑)。

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