御無沙汰いたしております。久しぶりに書評をアップします。
ロバート・B. ライシュ(著)「格差と民主主義」(東洋経済新報社、2014/11/21)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4492444009/>
単行本: 219ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2014/11/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492444009
ISBN-13: 978-4492444009
発売日: 2014/11/21
[書評] ★★★★★
著者ライシュ氏は、労働長官(ビル・クリントン政権から3政権)、政策アドバイザー(バラク・オバマ政権)を務めた人。政府高官を経験していながら、ウォール街や米国大企業からの魔手に“汚染”されていない数少ない良識派である。
ズバリ、非常に分かりやすい。現在の資本主義の陥っている状況、政治と経済の一体化とその問題点をまとめ、我々市民が何をなすべきかを指し示す。
現在のグローバル資本主義社会の分析と問題解決への提言は、ピケティが「21世紀の資本」(2014) (Amazon)、「トマ・ピケティの新・資本論」(2015) (Amazon)を著しているが、本書はピケティ本ほど専門的でなく非常に読み易い。
- ピケティの本は、本が大きく(A5サイズ+ハードカバー)、ページ数が多く(巻末付録まで入れると約700頁)、重く、字が小さく、専門的で難しい。話題の本として売れたようだが、一般読者には難し過ぎたようで、解説書もバンバン売れているらしい。
- ライシュの本は、適度な大きさ(B6サイズ+ハードカバー)、適度なページ数(約200頁)、軽く、読み易い文字サイズ、解り易い。
内容をざっくりまとめると、概ね以下のようになるだろうか。
- 政治と経済が一体化している。富裕層が政治を牛耳って自分達に都合の良くなる政治活動をしており、その結果として資本主義がもはや「富が集中するよう仕組みまれた不公正なゲーム」となっている。必然的に中間層は没落している。
- グローバル化した企業は株主と経営者のための経営を行っており、従業員や国民のための経営を行なわなくなってきている。雇用も市場も海外に求め、米国内に富を生み出さなくなって来ている。これら企業の経営者らによるロビィ活動は決して米国の為にならない。(同じことは日本企業にも言える。)
- 政治家にも逆進主義的右派が現われてきている(たとえば戦前日本のような極端な格差社会に戻そうとしている)。
- 私たちがすべきことは、政治に積極的に関与して民主主義を護り、発展させることである。投票に行くだけでなく、普段から政治家の動きをチェックし、国の為国民の為に活動している政治家を積極的にサポートし、裏切った政治家には次回選挙で罰を与えること。正しいと思えることのために人々と対話し、民意を盛り上げること。
と共通した問題分析・提言なのだが、本書はその集大成といったところ。米国民に向けて書かれた本だが、殆どの項目は日本にも当てはまる(日本では、政治を語る個人は少なく、政治に関わる個人はもっと少ないという点は違うが)。上述の通り、現在における資本主義の現実がハッキリ書かれていて、問題点もよくまとまっており(我々各個人の問題として書かれている)、これを解決するために我々個人が取れる(取るべき)行動も具体的かつ明快。好感の持てる本。
現在の政治・経済の分析や問題点について書かれた本は多いが、解決のための具体策と心構えをここまで明確に表した本はなかなか無いのではないだろうか。
良書。オススメ。
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