2016年4月27日水曜日

池上彰・佐藤優「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」


池上彰・佐藤優「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166610457/>
単行本: 254ページ
出版社: 文藝春秋 (2015/10/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166610457
ISBN-13: 978-4166610457
発売日: 2015/10/20

[書評] ★★★★★

前著「新・戦争論」(下記“関連図書1”参照)に続く、池上彰氏&佐藤優氏コンビによる、ホットな話題満載の近未来予想本。内容は論拠もハッキリしており、非常にわかりやすい。内容は主に以下の通り(目次通りではありませんが)
  • イスラーム世界の変動、特にトルコの膨張(オスマン帝国の再建?)。
  • 中国の膨張。明の時代の鄭和の大航海時代の版図を復活?
  • ドイツ「帝国」の膨張が欧州を不安定化する?
  • 米露の力関係と米大統領選のゆくえ
  • 沖縄は日本のアキレス腱
  • 数年後には世界中に核拡散?
  • キリスト教(東方正教) vs イスラーム 宗教戦争、再び?
  • 何の為に歴史を学ぶのか、どのように学ぶのか、教育はどうあるべきか
社会人になってから歴史を学ぶ場合も「大学受験用教材も馬鹿にできない」とのこと。池上氏のお勧め教科書は、①第一学習社②清水書院、辛うじて③山川出版社の「世界史A」で、他は「お勧めできません」とのこと(高校歴史教科書の雄・山川が「辛うじて3番」というのが興味深い)。たまたま先日、教科書ベースの一般向け書籍「もういちど読む山川」シリーズ歴史本4冊を立て続けに読んだ所だったが(リストを後述)、内容的にも結構タイムリーだったかも知れない。

内容については賛否あるが、ツッコミを入れるなら概ね以下の通り(PRO=賛成、CON=反対)
  • [CON] 議論の深さが足りないと思われる箇所が数ヵ所ある(一部勢力・諸外国への配慮か?)
  • [CON] 高等教育での英語教育をあまり重視していない傾向あり。全ての講義を英語で行う必要はないが、語学と専門科目の一部はinput~think~outputのサイクルを繰り返し英語で行うという訓練も必要なのではないか?
  • [PRO] エリートのナルシシズム、排外主義の高まり、横行する陰謀論、反知性主義…右左問わず近年日本に見られる危ない傾向として、これらの項目を指摘している点ついては100%同意。上述「もういちど読む山川世界現代史」の書評でも書いたが、中間層が没落し、鬱憤の溜まった層が増えて来ているから、この手の本が売れるのではないか。これは世界大戦前夜のような危険な兆候なのではないか。
  • [PRO] 10章「ビリギャルの世界史的意義」とあとがき(「おわりに」)で、日本における現在の日本の教育の在り方への問題提起をし、また高等教育の極端な実学重視に警鐘を鳴らしている。これは私が何年も前から感じていたこととほぼ同じ。
    • AO入試とか少数科目のみでの大学入試があっても悪くないが、それでキチンとした教養が身につけられるのかという疑問を私も抱いていた。
    • 過度な実学重視だが、米国では20世紀末から、日本でも10年位前(国立大学が独立行政法人となり、大学が生み出している“利益”がその大学を評価するモノサシとなり始めた頃)から見られた傾向だ。たとえば理系学部/専攻だけでなく国立研究機関でも、すぐ現金を産みそうなテーマや技術ばかり取り組まれるようになって久しい。大学の1~2年次での一般教養(“パンキョー”)も大幅に削られているようだ(大学の後輩から話を聞くと自分が学生だった頃とは大分様子が違う)。佐藤氏が指摘している通り、すぐ役に立つ知識・技術は賞味期限が短い大学・大学院で本当に教育すべきは、長年役立つ物の観方・考え方、それと脳にたくさん汗をかく習慣だと思う(私の場合、社会人になってから本当に役立った知識・技能のは、専門課程よりも教養課程で学んだ物の方が多い)。こういった教育無しには日本は早晩没落を避けられないだろう。待機児童が近年社会問題化しているが、国の将来を担うのは国民の教育であり、これは時間こそかかるものの極めてリターンの大きい投資だと考える。この教育制度も含め、5年後~10年後ではなく、100年後のヴィジョンが見える国家戦略を示し、キチンと議論できる政治家は現れないものだろうか? そういう政治家で優れた人が出てきたら、投票するだけじゃなくて個人献金をしても良いと思っている(庶民として国に貢献出来ることはこれが精一杯なのだが)
我々の生活に深く関わっている世界の政治・経済。この大局的な流れを読み解く本として、万人にオススメできる。

関連図書:
  1. 池上 彰・佐藤 優「新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方」(文春新書、2014/11/20) (Amazon拙書評)
  2. エマニュエル・トッド(著), 堀 茂樹(翻訳)「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる 日本人への警告」(文春新書、2015/5/20) (Amazon拙書評)
  3. 中野 剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」(集英社、2014/9/17) (Amazon拙書評)
  4. etc.
歴史教科書(「もういちど読む山川」シリーズ歴史テキスト)
  1. 五味 文彦・鳥海 靖(編)「もういちど読む山川日本史」(山川出版社、2009/09) (Amazon拙書評)
  2. 鳥海 靖(著)「もういちど読む山川日本近代史」(山川出版社、2013/05) (Amazon拙書評)
  3. 「世界の歴史」編集委員会 (編) 「もういちど読む山川世界史」(山川出版社、2009/09) (Amazon拙書評)
  4. 木谷 勤(著)「もういちど読む山川世界現代史」(山川出版社、2015/4/17) (Amazon拙書評)

2016年4月23日土曜日

佐藤優「「ズルさ」のすすめ」


佐藤優「「ズルさ」のすすめ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4413044401/>
新書: 216ページ
出版社: 青春出版社 (2014/12/2)
言語: 日本語
ISBN-10: 4413044401
ISBN-13: 978-4413044400
発売日: 2014/12/2

[書評] ★★☆☆☆

元・駐露大使館員~外務省主任分析官。鈴木宗男氏がらみの事件で逮捕・起訴され、09年有罪確定。チョット変わった経歴をお持ちの佐藤氏。論者として、時々ニュース解説等に現れる。話は非常に整理されていてわかり易い。国際感覚は確か(外交官僚やっていた位だからそうでなくては困るが/笑)。右でも左でもない。ストレートな視点から、日本国民の生命と財産と幸福な人生を送る上で、国はどうあるべきかを考える人。

閑話休題。

本書は佐藤氏の専門分野ではなく、一般のビジネスマン向け処世術のような本。章立ては以下の通り:①人と比べない(他人のモノサシだけで自分を評価しない)、②問題から目をそむけない(問題を整理し正しく対処する)、③頭で考えない(経験を積んで直観力を養う)、④時間に追われない(自分の時間を管理する)、⑤酒に飲まれない、⑥失言しない、⑦約束を破らない、⑧恩を仇で返さない、⑨嫌われることを恐れない、⑩人を見た目で判断しない(見た目や肩書だけで判断しない)、⑪上下関係を軽んじない。ビジネスパーソンとしては至極当たり前のことばかり。が、時々ハッとさせられる記述がある(だから面白いんですよね)

人間が社会や組織の中でしか生きられないことと、そこには必ず上下関係と権力構造があり、自由や平等が幻想にすぎない(だからこそ自由や平等を求め続けなければいけないのだが)。また、今後グローバル化の波で企業の「戦闘集団化」は避けられない流れ。そんなアンビバレンツの中で、組織の中でうまくやりすごすにはどうしたら良いか、自分らしい生き方をするにはどうしたら良いか、…等について助言をくれる。

厳しい評価をすると、毒にこそならないが、あまり薬にもならない本(この辺りが青春出版社クオリティなのかも知れない)。政治(&経済&軍事)ジャーナリスト・作家として名が売れてきた佐藤氏の「小遣い稼ぎ本」のようにも思える。佐藤氏は、一般的なビジネスの領域ではなく、やはり政治経済のことを書いてくれた方が面白いと思う。

2016年4月17日日曜日

木谷 勤(著)「もういちど読む山川世界現代史」


木谷 勤(著)「もういちど読む山川世界現代史」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4634640686/>
単行本: 254ページ
出版社: 山川出版社 (2015/4/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4634640686
ISBN-13: 978-4634640689
発売日: 2015/4/17

[書評] ★★★★☆

先週書評を書いた『もういちど読む山川世界史』(Amazon, 拙書評)の執筆陣の1人による『現代世界史』。産業革命・市民革命以後の先進国の帝国主義的膨張政策から現代について、『~山川世界史』の後半部よりもコッテリと語る。アメリカの社会学者・歴史学者、イマニュエル・ウォーラステインによる「世界システム論」(Wikipedia)を援用し、世界の近代史を、グローバルなヒト・モノ・カネの動きと、それに依って立つ権力の変遷で説明する。色々な事象について、その背景も含めた解説が深く、非常に面白い。世界経済の「中心」の国々(大国)だけでなく、「周辺」「半周辺」の国々(アフリカ、インド、中東、東南アジアなどの植民地・半植民地)にもキチンとスポットを当てられており、民族自決運動や解放運動、大国(欧米やソ連)との関係について詳述しているのは好感が持てる。

オビに「現代史を読むと今の世界が見えてくる!」と書いてあるが、歴史から学べることは確かに多いと思う。たとえば、近年日米欧に見られる中間層の没落は危険な兆候ではないか(そうでなくても日本には中・韓との領土問題や北朝鮮との諸問題などの課題が山積している)。分厚い中間層が経済安定の鍵ということは、昔よく聞かれた言葉だ。第一次世界大戦後、ヴェルサイユ体制のもと、この中間層が没落した国、イタリアではムッソリーニが、ドイツにはヒトラーが、それぞれ民主的な手順で国の指導者に選ばれ、全体主義国家と独裁体制を作った。その後何があったかは説明するまでもないだろう。

近年、日本も中間層の没落が指摘されて何年も経つが(小泉純一郎首相(当時)も安倍晋三首相も大企業とその経営者を優遇するばかりで、労働者=中間層=は没落せざるを得ないような政策ばかりが目立つ)、アベノミクスの効果は庶民には届かず、近年巷には偏向した歴史書や排外主義的な書籍が溢れており、かなりキナ臭い状況だ(言論と出版の自由は尊重したいが、この手の本が売れる社会というもの自体がヤバいのだと思う)海外に目を向けても、米国では排外主義・差別主義的な言動が多いドナルド・トランプ氏が大統領候補として躍進していたり、フランスでも極右政党の国民戦線が拡大していたり、ドイツのメルケル首相の出自が東ドイツに残ったナチスに繋がっていたり、トルコが(自称「イスラム国」とは別の勢力として)オスマン帝国の再建を目指しているように見えたり…。ひとつ間違えればこの世の終わりが来るんじゃないか的な危惧を感じる。

以下、気になった点(PRO=賛成、CON=反対)
  • [CON] 同じ山川出版社から出ている他のテキストで不適切とされている用語が所々で使われている。同じ出版社なのだから統一して欲しい。
  • [CON] 山川教科書批判派の指摘通り、一部に少々左寄りの傾向がある(自虐史観が強い)。以前の歴史教科書には日本の戦前体制がファシストであったという断定的な書き方は無かったと思うのだが、本書では天皇制ファシズムのような書き方。帝国主義的植民地支配という点は否定できないが、日本の場合は軍部の暴走によるものであって(五・一五事件(1932)や二・二六事件(1936)を通して軍部が権力を掌握)、独伊のように怒れる民衆がファシズムを呼んだ訳ではないし、ファシスト党による一党独裁体制とは少し違うのではないか(政党は解散して大政翼賛会を形成したが「一党」と呼ぶよりは「寄せ集め所帯」と言った方が実体に近いのではないか)
    ↑近年、中国の検定教科書が「日本の軍国主義」から「ファシズム」に表現を改め、中華民国があたかも“自由経済・民主主義陣営”の一翼を担ったと主張し始めているのと同じタイミングで、あたかも日本もファシズム国家であったかのような書き方が…時期が一致しているのは偶然か?(『もういちど読む山川世界史』の書評にも同様のことを書いたが。)
  • [PRO] (米英人の多くは認めたがらないかも知れないが)アングロ・サクソン人が他国を支配する際に使う汚いやり口がしっかり書かれている。「あの山川がここまで書くようになったのか!」と思いながら読んだ(これはオリバー・ストーン等の米国の歴史修正論者の主張=米国流自虐史観=と近い視点だと思う)。彼らが、被征服民の内部分裂や抗争を非常に上手に利用し、自らの手を汚すことなく効率的に世界中を支配していった様子がよく分かる(世界各地で似たことを何度も繰り返し行っている)
    • 日本が明治維新後急速に国力をつけ、列強に肩を並べたキッカケとされる日露戦争も、実は英露間の覇権争いの代理戦争だったと書かれている。確かに、英国は日本に武器・弾薬を売り軍資金も貸し付けたが(日本の戦時国債は英米独の特にユダヤ人富豪層に多く売ったらしい)、実際にロシアと戦争をして血を流したのは日本で(勿論ロシア人も血を流した)、結果的に英国は美味しい所だけ持っていったことがよく分かる。日英同盟は日本が一流国の仲間入りをする為に、日本から申し入れたものだと思っていたが(司馬遼太郎「坂の上の雲」ではそのようなことにされている)、観方を改めなければならないかもしれない。
一気読みするには内容が豊富すぎるが、もともとそういう読み方をする本ではないのだろう(笑)。暫く寝かせて、(題名通り)もういちど読みたいと思える本だ。概ね、良書と言えるだろう。

2016年4月10日日曜日

「世界の歴史」編集委員会 (編) 「もういちど読む山川世界史」


「世界の歴史」編集委員会 (編) 「もういちど読む山川世界史」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4634640317/>
単行本: 310ページ
出版社: 山川出版社 (2009/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4634640317
ISBN-13: 978-4634640313
発売日: 2009/09

[書評] ★★★☆☆

過日読んだ『もういちど読む山川』シリーズの日本史本
に続き、今度は同じシリーズの『世界史』を読んでみた。

結論:可も不可もなく、いかにも教科書だな~という感じ(笑)。自分が高校生だった頃の教科書よりン十年分アップデートされていて、ソレナリに面白く読めた(決して娯楽本ではないが)。一気読みすると、世界史のダイナミズム、出来事と出来事のつながりが見えやすい(高校生の時はそのような読み方はしなかったな~)。宗教や思想に着目しても良いし、社会システムの変遷に着目しても良いが、各時代のどろっとした潮流が掴みやすいのは高ポイント。ただし、歴史の裏で動く利権と利権の争いまではなかなか見えてこない(その辺りは例えば池上彰氏の政治/経済の解説本がオススメ)

教科書(ふうのテキスト)とはいえ1冊の本。内容には限りがあるし、「史実」の他に書き手の意思が色々な形で反映されていることも否めない。が、一般に「世界史」と言われているものを、薄く広く再確認し、イントロ本として使うのは悪くないだろう。その上で、もっと知りたくなったことが出てきたら、それらについて改めて詳しく調べれば良いだろう(勿論、これとは逆のアプローチで、歴史物の小説やコミックを読むことで個々の詳しい物語に興味を持つのも良い)

以下、ちょっと気になった点(全然“ちょっと”で済んでいない?/笑)
  1. 1文が長くて読みにくい箇所が多い(特に市民革命・産業革命~第二次世界大戦の辺り)
  2. 基本的に米国正統派の主張する「正しい歴史」と矛盾しないものとなっているが(政治的配慮だろうか?)、これとは違う捉え方・考え方も存在する旨書いておいて欲しかった(例えば米国にもオリバー・ストーンのような観方もある)。特に、第二次世界大戦を、自由主義諸国からなる「連合国」陣営が、「枢軸国」(日・独・伊)に支配されていた植民地を解放した、かのような書き方がされているが、これは以下の点において正しくない。
    1. 枢軸国3国がアジアやアフリカの各地で植民地・従属国を支配していたことは確かだが、連合国の諸国も(日独伊3国よりも早い時期から)世界各地に植民地・従属国を持っていた。第二次世界大戦の後、枢軸国に支配されていた地域は連合国が分割統治したが、諸地域が独立したのはさらに先のこととなる(南北朝鮮のように未解決の地域や、中東やアフリカの一部のように政治的空白地域も残っている)。さらに、大戦後も「自由経済」「民主主義」を標榜する欧米が、どれだけ多くの独裁者や独裁国家を援助し、どれだけ多くの一般民衆(特に有色人種)を抑圧してきたことか?!
    2. 第二次世界大戦の構図を、連合国の「民主主義」vs 枢軸国の「ファシスト」のような書き方がされているが、連合国メンバーにはソヴィエト連邦という非民主主義国家もあり(社会主義国家をプロレタリアートによる平等な社会国家と捉えればこれも一種の民主主義ではあるが、実体は全体主義と呼ぶ方が正確だろう)、必ずしも「民主主義対ファシスト」という構図ではない(利害の一致によりたまたま連合(野合)しただけの国家群である)この構図は以下のように書くこともできよう。
        • 枢軸国…後発帝国主義・資本主義・全体主義 国家群(日独伊)
        • 連合国…先発帝国主義・資本主義・民主主義 国家群(英仏米)
             +非帝国主義・社会主義・全体主義 国家(ソ)
      1. 近年、中国の歴史教科書で「日本帝国の軍国主義」という書き方が「ファシズム」に変った(らしい)。これとほぼ同時期に日本の教科書でも「日本の軍国主義」が「ファシズム」に書き換えられた辺りに、中国の影響を感じてしまうのは気のせいか? (教科書だけでなく、教員の組合=日教組(日本教職員組合)=にも社会党・共産党・社会主義思想の影響が強かったことは広く知られていることではある。)
    3. また、本書の内容は、山川教科書否定派(下記参照)が指摘する通り、戦前、特に日中戦争~太平洋戦争における日本軍の行いをほぼ全面的に批判した書き方になっている。枢軸国側が全面的に「悪かった」訳ではないし、連合国が全面的に「正しかった」訳でもない(戦勝国=連合国が自分たちに都合の良いように“作り上げた”歴史で塗り固められていることに留意すべきである)
      • 山川教科書否定派…山川の歴史教科書が戦前の日本の政治体制や皇国史観を全面的に否定する、左翼(“アカ”)的な書き方だとする一派。山川出版社以外の歴史教科書も、教科書検定に通ったものは全て、「山川の劣化コピーに過ぎない」とする。
    4. 上記の通り戦前日本の政治体制を否定する書き方(自虐史観)が多いが、逆に戦前日本を肯定する書き方(皇国史観)も随所に見られ、統一がとれていない(新しく書かれた箇所が皇国史観寄りで、全体としてバランスを取っているつもりなのだろうか?)。一般向けとは言え、教科書(ふうのテキスト)として出すからには、出来るだけ主観を交えず、事実だけを淡々と書いて欲しかった。
    5. 現在「国際連合」(United Nations)と和訳されている国際機関は、第二次世界大戦当時の「連合国」、つまり“戦勝国組合”のようなものであることも明記しておくべきではないか(日独2国は冷戦構造の中で工業大国として大きく発展したが、そうする中で“戦勝国組合”の都合で資金提供やら軍備やら色々振り回されて来たのも事実である)
    6. 本書からは戦争の本質が全然見えてこない。中世以前の一部の宗教戦争を除き、多くは経済戦争であること(利権争いの為に軍事力を利用した「戦争」)、またその為に各地での覇権争いであることを明確に書いた方が、もっと理解しやすいと思う。
    …と、文句は幾つもあるが(上記以外にも書き出したらキリがない/笑)歴史を大局的におさらいするのには悪くない本だとは思う。先にも書いた通り、近年粗製乱造されている「歴史本」よりはナンボかマシだろう(チャラい本や内容が薄っぺらい本はまだ良い方で、酷い自虐史観本や(某国が作ったテキストか?)、あるいは皇国史観強化書(狂化書)・日本自画自賛本・嫌中本・嫌韓本・陰謀論が多いので…)

    2016年4月3日日曜日

    新川 直司(著)「四月は君の嘘」(コミック・全11巻)


    新川 直司(著)「四月は君の嘘」(全11巻)

    [書評] ★★★★★

    あまりにも有名なマンガ。2014-2015年にTVアニメが放送されました。今年(2016年)、実写映画化されるそうです。

    ピアノを弾けなくなった(元)秀才ピアニスト・有馬公生(ありま こうせい)クン。2年間のブランクの後、中学3年生の春、彼の前に突如として現れる天才ヴァイオリニスト・宮園かをりチャン。嵐のような勢いで、公生クンをピアノの世界に引きずり戻します。演奏する理由。生きる理由。幼馴染みや仲良し、そしてライバルをも巻き込んだ、交錯する想い。自分の感情の無自覚・自覚。不器用な愛の表現。切ないラブストーリー。

    100点満点だったら500点くらい献上したい良作。1~3巻をピアノ弾きのマンガっ娘(笑)が貸してくれたのですが、その日の晩遅く、深夜営業の本屋で全巻買い揃えてしまいました(笑)。で、文字どおり寝食を忘れて一気読み(社会生活に大きな影響があったことは言うまでもありません/爆)。心象風景の描写が秀逸。演奏曲目まで使った心理描写(頭の中で演奏がガンガン鳴り響きます!)。絵と言葉だけで中学生のナイーブな感情を瑞々しく描いています。また、この書評を書くために再度通しで斜め読みして気付いたのですが、最初からストーリーも設定も細かく考えられており、もう、凄い、の一言に尽きます。

    出来れば通しで2回読むことをオススメします; 2度目には、かをりチャンが最初から重みのある言葉を言っていることがわかります。また、時々見せる涙の理由がより深く理解できます。2度目は、1度目とは違った感動が得られると思います。なお、読む時は、是非、水分をしっかり摂るようにして下さい。大量に失われますので。特に最終巻は何かが決壊してしまう人も多いと思います。

    久しぶりに心が震えるマンガに出逢えました。多謝!(>作者様、本書との巡り合いに関わった方々)

    ・  ・  ・  ・  ・

    以下書誌情報。

    新川 直司(著)「四月は君の嘘(1)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063713016/>
    コミック: 224ページ
    出版社: 講談社 (2011/9/16)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063713016
    ISBN-13: 978-4063713015
    発売日: 2011/9/16


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(2)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063713172/>
    コミック: 200ページ
    出版社: 講談社 (2012/1/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063713172
    ISBN-13: 978-4063713176
    発売日: 2012/1/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(3)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/406371327X/>
    コミック: 200ページ
    出版社: 講談社 (2012/5/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 406371327X
    ISBN-13: 978-4063713275
    発売日: 2012/5/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(4)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063713458/>
    コミック: 192ページ
    出版社: 講談社 (2012/9/14)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063713458
    ISBN-13: 978-4063713459
    発売日: 2012/9/14


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(5)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063713598/>
    コミック: 200ページ
    出版社: 講談社 (2013/1/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063713598
    ISBN-13: 978-4063713596
    発売日: 2013/1/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(6)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/406371375X/>
    コミック: 192ページ
    出版社: 講談社 (2013/5/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 406371375X
    ISBN-13: 978-4063713756
    発売日: 2013/5/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(7)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063713873/>
    コミック: 192ページ
    出版社: 講談社 (2013/9/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063713873
    ISBN-13: 978-4063713879
    発売日: 2013/9/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(8)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063714055/>
    コミック: 196ページ
    出版社: 講談社 (2014/1/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063714055
    ISBN-13: 978-4063714050
    発売日: 2014/1/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(9)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063714187/>
    コミック: 196ページ
    出版社: 講談社 (2014/5/16)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063714187
    ISBN-13: 978-4063714180
    発売日: 2014/5/16


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(10)」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063714357/>
    コミック: 200ページ
    出版社: 講談社 (2014/10/17)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063714357
    ISBN-13: 978-4063714357
    発売日: 2014/10/17


    新川 直司(著)「四月は君の嘘(11)<完>」
    <http://www.amazon.co.jp/dp/4063714675/>
    コミック: 208ページ
    出版社: 講談社 (2015/5/15)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4063714675
    ISBN-13: 978-4063714678
    発売日: 2015/5/15

    ・  ・  ・  ・  ・

    P.S. 先週に続き、今週も音楽モノのコミック。たまたまですよ。