2016年6月12日日曜日

半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」


半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166610724/>
単行本: 284ページ
出版社: 文藝春秋 (2016/5/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166610724
ISBN-13: 978-4166610723
発売日: 2016/5/20

[書評] ★★★★★

昭和史の大御所・半藤一利氏と、元外交官(ロシア担当)・佐藤優氏の対談。本書の題名は「21世紀の戦争論」となっているが、内容は戦前日本の総括(第3次世界大戦の可能性についても軽く触れられているが、メインテーマは戦前日本から何を学ぶべきかという内容)

毒ガスや人体実験といった非人道的な兵器開発という日本にとって後ろ暗い歴史。スターリンが提案したが、トルーマン米大統領の猛反発に遭い実現しなかった「日本分割統治」。長州閥の重鎮・山県有朋亡き後、薩長閥を除くメンバーで構成された一夕会(いっせきかい)が作った昭和という歴史。責任の所在が不明な官僚の体質や、自分に都合の良い情報だけを拾い集めて(都合の悪い情報は無かったことにしたり、重要だが悪い情報を報告した個人を罰したりして)問題を大きくしてしまうなど、現代日本にも色濃く残る問題点(古い日本企業などにも当てはまる体質だろう)。戦争の記憶が希薄化している今だからこそ語っておかなければならない話。右翼系メディアへの露出が多いと目される2人だが、視点は比較的公正中立だと言えよう。耳を傾けるべき内容が多い。

歴史を現代に活かす為に有効な方法は読書であるとしながら、最近のトンデモ「昭和史本」の増殖には警鐘を鳴らしている(見たい歴史・都合の良い事実だけを見る行為を、佐藤氏は「反知性主義」と呼び、現代日本に蔓延する病だと言う)。そんな中、最終章に挙げられた推奨図書14冊は、現代(いま)を生きる我々にとっても必読の書が多いと思う。このリストと解説を見るだけでも良いので、本書を多くの方々にお薦めしたい。

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余談になるが、佐藤氏はご母堂が沖縄戦の学徒の生き残りとのこと。氏が国際関係・国防やインテリジェンスを意識せざるを得なかった(そしてそのような職業に就いた)理由が垣間見える気がした。

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