2016年6月5日日曜日
池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」
池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」(SB新書、2015/12/5)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4797386487/>
新書: 208ページ
出版社: SBクリエイティブ (2015/12/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4797386487
ISBN-13: 978-4797386486
発売日: 2015/12/5
[書評] ★★★★★
2015年の夏、安倍政権(自公連立与党)が強行採択した「安保関連法案」に関する解説書。日本を取り巻く国際環境が複雑化・流動化し、ともすれば戦争の足音さえ聞こえてきそうな時代背景もあろう。安倍政権がこの法案が何故必要だと考えたのか。民主主義社会において、この立法化の手順に問題は無かったのか。本書は、この辺りを総括・解説する。池上氏は手厳しく、消費税増税延期の公約(こちらは最近の国際情勢を見ると雲行きが怪しいが)によって衆院議席の2/3を押さえておいて、後出しジャンケンのように、それとは別に挙げていた公約すなわち改憲が国民の意志だ、というのは掟破りだと言う。安倍晋三首相がやっていることは、母方の祖父・岸信介(きし・のぶすけ)や父・安倍晋太郎を超えたいがために暴走している、ブッシュ・ジュニアがイラク戦争を始めたのにも似た愚かな行為だと言う。
池上氏の本は、為政者の心の中まで見抜くような書き方が多い。本書でも、祖父・岸信介が首相だった時の1960年安保と(岸内閣はその後の混乱の責任をとって退陣)、今回(2015年)の安保関連法との関わり、日米安保や集団的自衛権の行使容認について、多少穿った見方をしているのが興味深い。
池上氏は、衆議院の議席数2/3を許した時点で「任期付きの独裁を認めたことになる」と書いているが(p. 143)、衆参両院の議席数2/3を許してしまうと、改憲の発議も可能になる(改憲が可能であれば「任期」も書き換え可能だ)。一旦そうなってしまったら、その後は大マスコミを通じて国民を煽り、暴走しかねない。戦前日本での多数党解党→大政翼賛会結成や、イタリアの国家ファシスト党、ドイツの国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)、これらは全て、民主的な手順を経た上での国家の暴走であったことを我々は忘れてはならない。
安保関連法や集団的自衛権の合憲/違憲性、善悪はともかく、日本社会に生きる者として知っておくべき内容。内容は平易で読みやすく、万人向けだと言えるだろう。お薦め。
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