小山 宙哉「宇宙兄弟(29)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063886387/>
コミック: 200ページ
出版社: 講談社 (2016/9/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063886387
ISBN-13: 978-4063886382
発売日: 2016/9/23
[書評] ★★☆☆☆
ご存知『宇宙兄弟』の最新巻。
前巻(28巻)で始まった、月面電波望遠鏡の設置ミッションでは、技術的に予定通りに行かないトラブルが出たが、今回はその解決編…と思いきや、船外活動(宇宙服を着て月面で行う作業)中にまたまた事故発生。一番大変なのは…ネタバレになるが、表紙の人。
弟(南波日々人/なんば ひびと)の2026年の月ミッションに続き、兄(南波六太/なんば むった)も月ミッション(2029~30年頃?)でもまた遭難かよ!? こういう展開はちょっと食傷気味。人類初の活動をしているので物事が予定通りに進むことなどまず無く、色々トラブルが起こるのはむしろ当たり前なのだが(初めてのプロジェクトにトラブルがつきものなのは国でも企業でも同じ)、フィクションとは言え、大事故寸前を連発するのは国際的事業としてどうなのよと思う。日本よりも責任の所在がハッキリしているアメリカの組織でも似たようなポカをやらかすものだろうか? と思ってしまった(後述)。まあ度重なる事故・トラブルへの対処こそがドラマになるのだが(でも「プロジェクトⅩ」的なプロジェクトマネジメントは本来あってはならないものだと思う)。
問題点を挙げるとキリが無いが、
- 日々人の遭難事故の教訓が活かされていない(宇宙服の強度など)
- 予定外・予想外の事態に対するコンティンジェンシープランの欠如
- コンティンジェンシープラン…非常事態への緊急対応・初動計画。(IT用語辞典 e-Words)
本書で月ミッションと国際宇宙ステーション・ミッションを統括しているNASA (アメリカ航空宇宙局、1958~)は、周知の通り実在する組織だ。NASAは組織が若かった頃は、歴史上初めて人類を月面に到達させたり(これは東西冷戦という背景もあり人・金・物が莫大に注ぎ込まれたこともあるだろう)、映画『アポロ13』等で有名なアポロ13号(1970)の事故への対応で見られたように、大組織のマネジメントと緊急事態への即応体制について、教科書に載るような優れた組織だった。が、その後、スペースシャトルで2度の大事故(爆発事故・空中分解事故)を起こすなど、開発の遅れ・予算の削減・組織の官僚化/硬直化の悪影響がモロに出ている。本書でもNASAを腐りかけた組織として描いており(JAXAに対しては比較的好意的)、その悪影響としての事故続発を描いているものとして理解したい。
本書がモデルとしているNASAのコンステレーション計画は、実世界では2010年に中止が発表されてしまった。作者の小山さんはストーリー作りに苦労するだろうが、ワクワクする展開は次巻以降に期待!
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