2016年12月11日日曜日

NHKスペシャル「NEXT WORLD」制作班(編著)「NEXT WORLD―未来を生きるためのハンドブック」


NHKスペシャル「NEXT WORLD」制作班(編著)「NEXT WORLD―未来を生きるためのハンドブック」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4140816716/>
出版社: NHK出版 (2015/4/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4140816716
ISBN-13: 978-4140816714
発売日: 2015/4/9

[書評] ★★★★☆

NHKスペシャル番組「NEXT WORLD 私たちの未来」を書籍化したもの。副題は「未来を生きるためのハンドブック」となっているが、遺伝子工学・ナノテクノロジー・ロボット/人工知能・生活フロンティアにより、近未来がどのようになるかを垣間見せてくれる「パンフレット」と言った方が正確だろう。

内容は以下の3部構成。
  1. 命と身体 (薬理学、脳・神経科学の発展)
  2. 生活とフロンティア (宇宙旅行から生活フロンティアまで)
  3. 人工知能と未来予測 (AI、人体とコンピュータの融合)
このうち1.と3.はいわゆる「2045年問題」とも関係しており、番組で科学解説者を務めたミチオ・カク氏(本書の序文も書いている)の著書『フューチャー・オブ・マインド』(下記参照)と内容が大きく重複する。
  • 2045年問題…AIの“知能”が人間の知能を超える「特異点」が2045年頃に訪れるが、その後はAIが自らの力で高性能化を続けるので我々人間には2045年以後の技術予測が出来ない、…という問題。
人間の遺伝子操作やクローン技術など、現段階では、倫理的・哲学的に物議を醸しそうな話題も多く、明るい話題ばかりではない。が、これらの技術の一部は、10~30年後には「当たり前」のものとなっているのだろう。技術の未来予測に興味のある人は必読

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参考図書
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以下余談

以前、米国が今後100年どのような課題に立ち向かうべきかが書かれた、ジョージ・フリードマン(著),櫻井祐子(翻訳)『100年予測』(原書:2009、訳書:単行本2009・文庫2014)(Amazon拙書評)を読んだ。この時は、今後起こり得る戦争で鍵となる科学技術は、突き詰めると以下のようなものだった。
  • ロボット工学(AI)、兵士の肉体強化・AI/ネットワークを活用した行動力強化
  • エネルギー確保(人工衛星にて太陽光発電~エネルギーはマイクロ波送電~地上にて受信)
  • 宇宙テクノロジー(特に敵国の「目」と「耳」となる軍事衛星)…これらの潰し合いが戦局を大きく変える
当時、この分析を読んだ私は、ただのSF物語ではないかと思った。だが、本書(とその前の同系統の書籍数冊)を読むと、これはあながちウソでも無さそうだ、少しは信じた方が良さそうだ、と思えてきた。自分が生きている間に、新しいテクノロジーが実現されるのは素晴らしいと思う反面、新技術が破壊と殺戮の道具として使われる様子を想像するのは、「皆の幸せに寄与できる新技術・新製品」を作ることを目指す技術者としては、内心複雑な思いである(出来ることならば、破壊・殺戮の片棒を担ぎたくないので)。とは言え、旅客機もインターネットも携帯電話もGPSも元は全部軍事技術であり、技術が民間に開放されてから積極的に平和利用されている。「最悪の状況に備えた技術」として開発された軍事技術も、後に「人々の豊かな生活に役立つ」と信じるしかないのかも知れない。

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