2014年2月12日水曜日

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり」(上・下)

今回もまた文学作品です。

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり〈上〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101174180/>

文庫: 341ページ; 出版社: 新潮社 (1994/08); ISBN-10: 4101174180; ISBN-13: 978-4101174181; 発売日: 1994/08

隆 慶一郎 (著)「死ぬことと見つけたり〈下〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101174199/>

文庫: 343ページ; 出版社: 新潮社 (1994/08); ISBN-10: 4101174199; ISBN-13: 978-4101174198; 発売日: 1994/08

[書評] ★★★★☆

江戸時代初期の、勇猛で知られる、佐賀武士(葉隠)の生活模様と人間ドラマを描く。 徳川の天下平定からまだ時代も浅く、天草四郎の乱などがドラマの舞台。 「死ぬことと見つけたり」とは、佐賀武士の生活を指す。 毎朝、自分が死ぬ所を想像し、己の死に際の精神を鍛え、毎日が始まる。 この辺り、坂本龍馬が若かりし頃、頭の上の突然岩が降って来るのをいつも想像し、 いつ死んでも良いようにと精神の鍛錬を行った、との言い伝え(司馬遼太郎「竜馬がゆく」より)とも通ずるところがある。

にしても。歴史小説というと司馬遼太郎が有名だが、 司馬翁が精緻な描写をしていたのとは対照的に、 隆翁は流れるような描写が特徴。 本書を開いて、わずか数ページでぐいぐいと読者を引き込む力を持っている。 迫力のある筆致で、非常に読み応えのある本だ。 面白い。

本書は、隆翁が亡くなる直前の執筆で、未完のまま終っている。 巻末に、その後のストーリーのスケッチが示してある。 まさに、自分の生命の尽きる直前まで、気力の限り、執筆に勤しんでいたことが伝わる。 迫力があるわけだ。

(葉隠武士のような生き方が現代の日本という時代に合わないのは重々承知だが) 男の生き様を表す小説として、日本男児ならば一度は読んでおきたい。

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