2014年5月14日水曜日

ノーマン・マクレイ(著) 「フォン・ノイマンの生涯」

また古い本を(笑)。


ノーマン・マクレイ(著), 渡辺正・芦田みどり(翻訳)「フォン・ノイマンの生涯」(朝日新聞社、1998/09)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022597100/>

単行本: 400ページ
出版社: 朝日新聞社 (1998/09)
ISBN-10: 4022597100
ISBN-13: 978-4022597106
発売日: 1998/09

[書評] ★★★★★

ジョン・フォン・ノイマンの名を知らない理系人間は少ないだろう。本書の訳者は、あとがきに
  • いくつもの分野に巨大な足跡を残しながら、一般の知名度が低い人も珍しいでしょう(p. 385)
と書いているが、「ノイマン型コンピュータ」と言えば、聞いたことのある人も多いのではないだろうか。
  • ノイマン型コンピュータ…プログラムに従って動く、現代のコンピュータの多くの動作原理の基本。詳しくはWikipedia等を参照のこと。
  • 20世紀末から量子コンピュータ等の「非ノイマン型」コンピュータの研究が進んでいるが、なかなか日の目を見ない。フォン・ノイマンのような天才が現れれば一足飛びに実用化に近づくかも知れない。
さて、本書はジョン・フォン・ノイマンの生まれ、育ち、業績、それにまつわるエピソードを読み易く紹介する本だ。ジョンの業績に関する概要はWikipedia等に詳しいが、本書が紹介するのは
  • 純粋数学の発展への貢献
  • 量子力学の理論化への貢献
  • 弾道力学、爆発の理論、原爆開発プロジェクト(マンハッタン計画)への貢献
  • 経済学への貢献(ゲームの理論と経済学)
  • コンピュータの実現と発展への貢献 →「ノイマン型コンピュータ」
といった項目。幅広く様々な分野での活躍について描いているので、正直、読み易くない場所もあったが、ジョンの魅力をよく伝えている本だと思う。

ジョンが天才であることは誰も否定しないだろう。が、本書が一番伝えたかったことは、本人の素養も重要であるが、偉大な人を作るのに重要なのは
  • 経済的に余裕のある家庭環境で、教育熱心な親を持ったこと(幼時の家庭教育)
  • 国家の教育システム(封建ハンガリーのエリート教育システム)(少年時代以降の公教育)
であること、だろう。民主主義の社会でこのような教育システムを持つことは難しいかも知れないが、たとえば韓国ではエリートを育てるシステムが出来上がっているので参考にしても良いかも知れない(韓国には徴兵制による若者の荒廃や経済の歪みといった負の面も多くあるが)。

東西冷戦の終結後、情報統制が緩くなり始めた時期、フォン・ノイマンの周囲にいた人達が世を去る前という絶妙なタイミングに、非常に丁寧な取材・調査を行った良書。子どもの教育を本気で考える人、教育に携わる人や、若い社会人を育てる立場にある人、全てに参考になる本だと思う。

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