2014年5月28日水曜日

野中 郁次郎(著) 「知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー」

まだまだ続きます、“積読”本消化キャンペーン。(笑)
今回はガッツリと読ませるビジネス本です。


野中 郁次郎(著) 「知識創造の経営―日本企業のエピステモロジー」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4532075149/>

単行本: 278ページ
出版社: 日本経済新聞社 (1990/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4532075149
ISBN-13: 978-4532075149
発売日: 1990/12

[書評] ★★★★☆

日本における組織理論&イノベーション理論の大家・野中郁次郎氏による、企業組織における知識の創造と、組織のマネジメント法の関係について書いた本。欧米と日本の企業を比較し、活発な日本企業に見られるマネジメント法として、トップダウン型でもボトムアップ型でもない、「ミドルアップダウン型」マネジメントというものがあるのではないか、という提言。

本の帯には“「ミドル・アップダウン」型組織を構築せよ”と書いてあるが、本書はこのミドルアップダウン型マネジメントの長所だけでなく、短所についてもきちんと述べている。すなわち、ミドルアップダウン型マネジメントは、日本企業が欧米にキャッチアップを行なう際に非常に機能的に働いたが、今後の企業マネジメント方法としては改良が必要なことも述べている。

すなわち、
  • 従来型の「ミドルアップダウン型マネジメント」は、新たなコンセプト・イノベーションを産みだすのには向いていない点
  • ミドルアップダウン型マネジメントは、ミドルマネジャーに非常に高い負荷がかかる歪んだシステムである点
についてもきちんと述べ、今後の日本企業の進むべき道として、従来型のミドルアップダウン型マネジメントと、欧米型(トップダウン型/ボトムアップ型)マネジメントとを“交配”させた新しい形をとるべきであることを示す。

本書が発行されて四半世紀近く経つので、事例は古くなっている。しかし、本書で述べていることは今でも充分通用すると思う(日本企業の多くにおいて「あるべき姿」への改革が不充分だということだ)。社員の自己犠牲の上に成り立っている会社のあり方そのものを大きく変えて、人的資源の創造性を伸ばせるようにし、労働分配率を見直す必要があると説く。本書が発行された後、グローバル社会における日本企業の競争環境はますます苛烈なものとなっている。そのような環境の中、本書が述べるような改革を行ないつつ企業の競走力を維持するのは、非常に難しいことだろう。しかし、21世紀に持続可能な企業とは、組織が抱えたこのような課題を乗り越えたものだけに限られるのかもしれない。

色々考えさせてくれる良書。

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