2014年7月23日水曜日

小林雅一「クラウドからAIへ -アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場」

また少し間が開いてしまいましたが、今回は新しめの本です。


小林雅一 (著)「クラウドからAIへ -アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022735155/>
新書: 247ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2013/7/12)
ISBN-10: 4022735155
ISBN-13: 978-4022735157
発売日: 2013/7/12

[書評] ★★★★☆

最近使われる/見掛ける/話題になるようになってきた、
  • しゃべるスマホ(新しいユーザインタフェース)
  • 自動運転車
  • ロボット
の近年の状況を示すとともに、これらを支えるキーであるAI(人工知能)の進展について述べる本。結構面白く読めるし、AIを始めとする技術の現状を概観するのに良い本だと思う。

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AIの発展には、
  • コンピュータの処理能力が大きく向上したこと
  • 人間(を含む動物)の「知能」に関する理解が進んだこと
が見逃せない。AppleやGoogleが電子機器に実装しているAIは、いわゆる「知能」とは異なるのではないか等の議論もある。が、人間と正しくコミュニケート出来ているように見えることから一定の効果は出ていると見て良いだろう。

今熱いのは、「学習するAI」。特に、言語情報処理能力を学習するAIが今ホットだ。単なる論理的検索ではなく、より複雑な言語処理を伴う意味論的検索(「セマンティック検索」)は、既にGoogleなどの検索画面には実装されてきている。
  • 私の抱えている実務上の問題を言えば、セマンティック検索に慣れきってしまっている“最近の若いモン”(笑)が、論理的検索を出来なくなってしまっていることだ。…というのは、特許検索システムは、論理的検索はソレナリに使えるが、意味論的検索はまだ使い物になっていないからだ。…まぁ、そんなことはともかく(溜息)。
現在のGoogle検索など、文字情報の処理能力はソコソコ向上してきている。しかし、音声処理は「まだまだ」であるというのが実情だ(AppleのiPhone/iPod touchのSiriなどは、オモチャとしてそれなりに遊べるレベルに達してはいるが)。音声情報(会話)は、文字情報(文章)以上に論理的ではないという特徴を持つからだ。

このような「論理的でない情報」は、どのように処理をするのか。現段階での解答は、学習するAIを使うことらしい。このAIは、処理をした情報の量が多ければ多いほど、加速的に賢くなる。処理する言語情報は、実際にユーザが入力した文字や音声だ。これらの情報は、端末ではなくセンター側に残るので、基本的にリバースエンジニアリングも不可能という特徴を持つ。学習するAIの開発を進める上では、先に情報を集めた者が有利な立場に立ち、一旦有利な立場に立つと持続的に圧倒的優位を維持できる。だから、これらの情報を独占できる位置(モバイル・インターネットのゲートウェイ=入口)をめぐり、Apple、Google、FacebookといったIT企業の間で競争が起こっているのだ。

…といった辺りの状況を、非常に解り易く読ませてくれる。技術の進展は速いので、本書の賞味期間はかなり短そうだが、現段階では良書だと言えると思う。

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