2014年7月26日土曜日

山中伸弥、益川敏英「『大発見』の思考法」

トヨタが「理系女子」(リケジョ)に奨学金を出し、系列会社に入社すれば返済を免除とする制度を開始する、というニュースは少し前だっただろうか。本書は、理系人間(男子+女子+どっちでもない人?)全員へのエールと、教育制度の有るべき姿や研究組織のスポンサー(国など)への願いを込められた本。

山中 伸弥 (著), 益川 敏英 (著)「「大発見」の思考法」(文藝春秋、2011/1/19)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166607898/>
新書: 208ページ
出版社: 文藝春秋 (2011/1/19)
ISBN-10: 4166607898
ISBN-13: 978-4166607891
発売日: 2011/1/19

[書評] ★★★★★

日本を代表する科学者であり、ノーベル賞受賞者である2人の大先生の対談をまとめた本。山中教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞する直前に発行されている辺り、出版社の“あざとい”意図も感じなくはないが(笑)、研究者・技術者に元気をくれる本だと思う。理系人間なら誰でも出会う「壁」を乗り越えるためのヒントが沢山書かれていると思う。

本書の対談の中で、研究者・技術者に求められるものとして、たとえば以下が挙げられている。いずれも大切なことだと思う。
  • 技術の進歩とともに、専業化・分業化は避けられない。今は、最新の機械やツールをどう使いこなし、その中でいかにオリジナルなことが出来るかどうかが重要。
  • 実験の結果が予想通りなら、「並」の結果。予想外の結果が出た時に、それが一体何なのかを考えることが、優れた研究への第一歩。
  • 偶然から始めたテーマを、自分の出会う運命的なテーマと考えられるかどうかは、本人次第。
また、研究を取り巻く環境に対して憂慮してる点は、概ね以下の通り。
  • 医学、生命科学を専攻する大学学生が、高校で生物を勉強して来ていない(理系の人間は、数学と合わせて物理・化学を選択して受験することが多い)。大学で生物を再教育しなければならなくなっている。
  • 親の収入が子の成績を良くする→学歴において格差のスパイラルが、すでに起きている。
  • 研究においても効率が重視され始めているが、無駄なものを削ぎ落とそうとして未来の種まで捨て去ってしまう事態は避けたい。目先の利益ばかり追求して「早く成果を出すこと」を求めると、きちんとした研究は出来なくなる。
研究者や技術者には勿論だが、その上司にも読んで頂きたい。また、理系の学生や学校の先生方にも是非読んで頂きたい。さらに出来れば、文科省や経産省の方々にも御一読頂きたい本だ。

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