2014年12月27日土曜日

オリヴァー・サックス 「音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々」


オリヴァー・サックス  (著), 大田直子 (翻訳)「音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150504148/>
文庫: 544ページ
出版社: 早川書房 (2014/8/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150504148
ISBN-13: 978-4150504144
発売日: 2014/8/22

[書評] ★★★★★

音楽が精神や肉体にもたらす様々な現象を書いた本。音楽幻聴、絶対音感、障害を持つ人に特異に見られる音楽の能力、音楽療法、…等々、興味深い話が多い。認知心理学的アプローチ、また脳神経学的アプローチから、人間と音楽の関わりについて述べている。とても面白い。

著者はニューヨーク大学医学部教授で、現役の脳神経科医。作家としても人気があるとのことだが、本書を読んで納得。

2014年を締め括るにあたって、良い本を読むことが出来た♪

2014年12月24日水曜日

海堂 尊 「極北ラプソディ」

海堂 尊(著)「極北ラプソディ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022647191/>
文庫: 416ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2013/10/8)
言語: 日本語
ISBN-10: 4022647191
ISBN-13: 978-4022647191
発売日: 2013/10/8

[書評] ★★★☆☆

「極北クレイマー」(Amazon:拙書評)の続編。市民病院という環境にやっと慣れた主人公(医師)が、また新しい環境に放り込まれる。主人公を取り巻くメンバーは、毎度の如く、魅力的なキャラクター揃い(身近にいて欲しくないタイプも含まれるが/笑)。『バチスタ』や『凱旋』に出てきた懐かしいメンバーにも再会でき、面白く読めた。

2014年12月20日土曜日

海堂尊 「極北クレイマー(上・下)」

 

海堂 尊(著)「極北クレイマー(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022645970/>
文庫: 248ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2011/3/4)
ISBN-10: 4022645970
ISBN-13: 978-4022645975
発売日: 2011/3/4

海堂 尊(著)「極北クレイマー(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022645989/>
文庫: 240ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2011/3/4)
ISBN-10: 4022645989
ISBN-13: 978-4022645982
発売日: 2011/3/4

[書評] ★★★☆☆

財政破綻した地方自治体を舞台にした医療ミステリー(モデルは明らかに北海道・夕張市)。行き詰まった病院の辿る姿、体質の変わらない行政、…色々生々しすぎる。また、冬は雪に閉ざされる地方での医療のあるべき姿についても述べている。著者の「医療やそれを支える行政はかくあるべし」という主張が鮮明に書かれている。

主人公は、大学医局から市営病院に派遣された非常勤外科医。財政再建団体となった市で、医師としてジタバタする様子が書かれている。面白い。

2014年12月17日水曜日

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(上・下)」

 

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/479669854X/>
文庫: 284ページ
出版社: 宝島社 (2012/6/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 479669854X
ISBN-13: 978-4796698542
発売日: 2012/6/7

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796698566/>
文庫: 287ページ
出版社: 宝島社 (2012/6/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4796698566
ISBN-13: 978-4796698566
発売日: 2012/6/7

[書評] ★★★☆☆

『チーム・バチスタの栄光』(Amazon拙書評)のシリーズ本。病院で殺人事件が起きた。医療事故とかではなく、被害者は新たに導入した設備の導入業者の担当者。『バチスタ』で活躍した田口医師と厚労省の白鳥氏が活躍する。

本書のストーリーでは医療と司法のアプローチの違いを語っているのだが、著者の司法に対する恨み?をも感じさせる。

それはともかく。『バチスタ』同様、スピーディーな展開で軽く読める(重い内容もあるが)。医療ミステリーとしては上位の部類に入ると思う。

2014年12月13日土曜日

中野 剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」


中野 剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4087207552/>
新書: 256ページ
出版社: 集英社 (2014/9/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087207552
ISBN-13: 978-4087207552
発売日: 2014/9/17

[書評] ★★★★☆

戦後、アメリカによる一極主義的な覇権体制が崩れ始めている。多極化する世界、特に東アジアにおいて、日本がどうすべきかについて書かれた本。東アジア・西欧・東欧・中東を中心とした世界のダイナミクスや、アメリカの世界制覇戦略の変遷、日本の取るべき方針について解り易く述べる。

本書のベースとなっているのは、米国国家情報会議が公表した報告書「グローバル・トレンド2030」(2012年12月)等の公式文書。これらの文書に書かれた予測の確実性はともかく、アメリカが世界をどのように見ているかについての信頼性は非常に高いと言えるだろう。

日本の自衛力はどうあるべきか、アメリカや東アジアの各国との関係において留意する点は何か、等々について、平和ボケした我々の目を覚ましてくれる本。多少タカ派とも言える意見が多く、また本書の結論として明確な出口戦略も見えない感は否めない。が、日本国民として知っておかなければならない内容が多いと思う。

良書。

2014年12月11日木曜日

日野 瑛太郎 「あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。」


日野 瑛太郎 「あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4492223347/>
単行本: 168ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2014/1/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492223347
ISBN-13: 978-4492223345
発売日: 2014/1/10

[書評] ★★★★★

ナカナカ刺激的な題名だ。会社員として「タブー」と言っても良い台詞が、そのままタイトルになっている。

従業員に仕事に「やりがい」を感じるように求めるのは、終身雇用制度が成立していた時代の遺物だ。だが、会社側にとって、「やりがい」は従業員に与えるには都合の良い飴だ。「やりがい」を餌に、給与(や残業代)に見合わない仕事を押しつけるのに利用されている。しかし、会社が、従業員の一生を保証できなくなった今、このような仕事のさせ方には問題があると本書では説く。

残業の定常化や残業代の不払いは、マネジメントによる不法行為だ。有給休暇が自由に取れないのは、仕事の計画の立て方が正しくないからだ。従業員に「経営者目線」を求めるのは、会社にとって都合の良い考え方を押し付けるのに等しい。

本書では、日本企業がどのように従業員を「社畜」化しているのかを解き明かすとともに、労働が本来あるべき姿を示す。すなわち、終身雇用制が崩れた現代日本における、新しい働き方の提案だ。会社と従業員は対等な関係にあるべきで、従業員も会社と対等に取引するために労働市場における自分の価値を高める努力を続ける必要があると述べる。

本書から引用したい箇所はたくさんあるが、一番衝撃的だったのは以下の項。
  • たとえば、サービス残業のような違法行為は明確な契約違反として対処すべきことです。「残業代を払ったら会社が潰れてしまう」と会社が言うのであれば、きっちりと残業代を払ってもらった上で、潰れてもらえばいいだけです。 (p. 148より)
自分がいかに「社畜」化してしまっていたか、目を覚まされた…という感じもする。

社会人(従業員)は今後、労働基準法等をきっちり勉強して自分自身の身を守るとともに、より良い組織で価値提供出来るように自己研鑚をしましょう、と言えば概ね本書の結論となろうか。

会社員全員(上司にも部下にも)オススメの本。就職前の学生にもオススメできる良書だ。

2014年12月6日土曜日

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史(上・下)」

 

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 上」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891903/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/9/5)
ISBN-10: 4863891903
ISBN-13: 978-4863891906
発売日: 2012/9/5

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 下」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891911/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/10/3)
言語: 日本語
ISBN-10: 4863891911
ISBN-13: 978-4863891913
発売日: 2012/10/3

[書評] ★☆☆☆☆

旧石器時代から現代(2000年代初頭)までの日本史を概観する本。文庫化に当たって手を加えているとは言え、元々は予備校講師による受験生のための講義録。一通り学習した人が復習するには良いかも知れないが、日本史のイントロ本にはならない。そもそも、歴史というもの自体、非常に多くの人間の思惑が複雑に関係し合った結果であり、様々な事柄(国の中央と地方の状況と、文化・宗教・芸術)を有機的に結びつけないと理解できるものではない(と思う)。これを文庫本2冊、合計500ページ程度に纏めようという試み自体、無理・無謀・無茶な相談なのだろう。

筆者は予備校で人気講師だったようだが、それは「大学に入るため」というモチベーションを持った受験生を対象とした講義だったからではないか。本書の元となった講義録は人気だったと言うが、それは生きた講義があった上での話ではないか。素の文章(+若干の図表)だけにしてしまった為か、本書は受験対策本としてはカナリ御粗末。また、歴史の大まかな流れを掴むには些末な情報が多く(文系受験生向け情報?)、また歴史のダイナミズムに関しては説明不足な点も多い。つまり、日本の歴史を概観したい一般読者向けとしても御粗末。つまり、本書はどっちつかずの失敗作。題名の「日本一おもしろい」は誇大広告以上、詐欺なのではないのか?(怒) まぁ、このテの本としてはカナリ安価な方なので、あまり強く文句も言えないのだが、せめて題名だけは内容を反映したものにして欲しかった。

・  ・  ・  ・  ・

ところで、本書には通常とは違う読み方があると思うので提案しておきたい。それは、ネット上の情報も参照しながら読むとうスタイルだ(読書環境が限定されてしまうが)。私自身、Wikipedia等をナナメ読みしながら本書を読み進めたところ、予想以上に広く深く日本という国の成り立ちを(再)確認することが出来た。通常の文庫本2冊と比べて何倍も時間がかかったが、それなりに得たものはあった。(Wikipediaすげえよ!/笑)

・  ・  ・  ・  ・

以下余談:

上巻まえがきに、「日本史がブームです。/高校生や受験生のみならず、多くの人が日本史を学びなおしたいと思っています。」とある。実際にそのような傾向が見られる気がする。戦争を知る世代の殆どの方々が引退し、「戦後」すら知らない現役世代が過激なナショナリズムや右傾化に走っている表れではないと思いたい。…そう感じている私自身、本書を手にしているのだから世話がないのだが(苦笑)。

2014年12月3日水曜日

高野 和明 「ジェノサイド(上・下)」

 

高野 和明 「ジェノサイド(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041011264/>
文庫: 391ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2013/12/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041011264
ISBN-13: 978-4041011263
発売日: 2013/12/25

高野 和明 「ジェノサイド(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041011272/>
文庫: 422ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2013/12/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041011272
ISBN-13: 978-4041011270
発売日: 2013/12/25

[書評] ★★★★★

アフリカ・コンゴ、アメリカ・ワシントンD.C.、日本・東京。地理的に大きく離れた3箇所を主な舞台にした、スケールのでっかいサスペンスドラマ。内容も、軍事活動、情報技術、薬品開発、人類進化の可能性、…これらが複雑に絡み合っていて、読み手を飽きさせない。

上巻の1/4~1/3位まで読んだ所で物語のテンポを掴んだら最後、アナタは(ワタシも)もう中毒患者。もう読むのを止めることは出来ない。徹夜での読書のラストに大団円。フィクションとしては久しぶりに、上下2巻を一気読みした。ぶっちゃけ、鼻血が出るほど(笑)面白かった