2015年5月20日水曜日

曽野 綾子「引退しない人生」

曽野 綾子「引退しない人生」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569761801/>
文庫: 247ページ
出版社: PHP研究所 (2014/4/3)
言語: 日本語
ISBN-10: 4569761801
ISBN-13: 978-4569761800
発売日: 2014/4/3

[書評] ★★★☆☆

歳をとるほど「成熟する人」と「ただ老ける人」の違いは何か。曽野さんの著作7冊から、ポイントになりそうな箇所を抜粋してまとめた本。上手な年のとり方や心構えについての知恵、が数多く書かれている。

参考に出来るか否かは読者次第だと思う。私の場合は…気になるくだりが幾つかあった他は、あまり参考にならなかったかも知れない。再読が必要かも。

2015年5月16日土曜日

北 杜夫・斎藤 由香「パパは楽しい躁うつ病」

北 杜夫・斎藤 由香「パパは楽しい躁うつ病」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101131627/>
文庫: 210ページ
出版社: 新潮社 (2014/9/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101131627
ISBN-13: 978-4101131627
発売日: 2014/9/27

[書評] ★★★★☆

北杜夫さん(1927-2011)が躁うつ病であることは以前から知られていたが、躁状態の時に色々“やらかした”話や、うつ状態の時の様子などを書いた本。内容は、北杜夫さんと、娘・斎藤由香さんとの対談形式。

うつ病や躁うつ病といった精神疾患について書かれた本は一般的に暗く重いのが多いようだが、本書は非常に軽やか。躁状態の北さんの一家は精神疾患の家族を持って大変!と後ろ向きにとらえるのではなく(当然大変だったとは思うが)、北さんの起こすドタバタを楽しむ余裕があったように見える。勿論、経済的にやっていける状態だったからこそ、一家の大黒柱が躁うつ病になってもやっていけたのだと思う。が、心を病んだ人への接し方として参考になるのではないか。つまり、無視するのではないが、全部受け止めるのではなく(そんなことをやっていたら周りの人が持たない)、適度に受け流して状況を楽しむ余裕を持つことも必要だということ。精神疾患とまで行かなくても、精神的に非常に疲れた状態の人とかは、誰の近くにもいるのではないか。

北杜生さんの作品(私の場合、『船乗りクプクプの冒険』や『どくとるマンボウ航海記』など)が好きな人は、作品の生まれたバックグラウンドを知る上でも興味深い本だと思う。

2015年5月14日木曜日

山崎 豊子(著)「不毛地帯」(新潮文庫、1~5巻)

山崎 豊子(著)「不毛地帯」(新潮文庫、1~5巻) (新潮社、文庫版(新装版)、2009/3/17)

[書評] ★★★★☆

戦前、大本営で陸軍参謀を努めていた元エリート軍人の、終戦後の人生を描いた小説。主人公は、終戦時に満州にてソビエトに拘留され、11年間シベリア抑留から帰還後、2年間の浪人生活を経て商社に入社。社長は、参謀としての組織力・行動力を買って、主人公を招聘したのだが、…。
  • ここにネタバレはあまり書きたくないので、あらすじ等を知りたい方は、Wikipedia辺りを参考にして頂きたい。
国内外での商社間の熾烈な戦い、社内抗争、政財界や黒い社会も絡んだ話。ドロドロした話ではあるが、会社という組織にいる身として(官公庁も同じかも知れないが)、うなずける点も多い。社内外で仕事をするための権力を掌握しつつ、個人のためにその力を使おうとしない、主人公の清冽な姿勢には心打たれるものがある。実際の会社人にはそういう人が少ないからこそドラマになるのだろうが、ある程度社会経験を積んだ人の方が楽しめる作品だろう。

映画化・ドラマ化された原作作品が多い山崎豊子女史の作品の1つで、既に古典文学作品(初出:1973~1978)。1972~1974に首相だった田中角栄が関わった、ロッキード事件(1976)や日本主導による中東の油田開発など、本作品が「サンデー毎日」に載った後に実際に起きた出来事に似た題材であり、当時話題になった作品とのこと。本書冒頭に
  • これは架空の物語である。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然であるに過ぎない。
という注意書き(?)があるが、著者・山崎女史が非常に綿密な取材・調査を行ない、ある程度事実関係を掴んだ上でフィクションの形をとって公表した作品ではないかと思えてしまう。なお、1巻で多くの頁を割いているシベリア抑留の様子と、抑留者の帰還後の描写は圧巻。赤軍による抑留者の洗脳の様子などからも、丁寧な調査とインタビューが窺え、好感を持てた。

良作。


山崎 豊子(著)「不毛地帯 第1巻」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104409/>
文庫: 638ページ
出版社: 新潮社 (2009/3/17)
言語: 日本語, 英語
ISBN-10: 4101104409
ISBN-13: 978-4101104409
発売日: 2009/3/17


山崎 豊子(著)「不毛地帯 第2巻」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104417/>
文庫: 590ページ
出版社: 新潮社 (2009/3/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101104417
ISBN-13: 978-4101104416
発売日: 2009/3/17


山崎 豊子(著)「不毛地帯 第3巻」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104425/>
文庫: 634ページ
出版社: 新潮社 (2009/3/17)
言語: 英語, 不明
ISBN-10: 4101104425
ISBN-13: 978-4101104423
発売日: 2009/3/17


山崎 豊子(著)「不毛地帯 第4巻」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104433/>
文庫: 557ページ
出版社: 新潮社 (2009/3/17)
言語: 英語, 不明
ISBN-10: 4101104433
ISBN-13: 978-4101104430
発売日: 2009/3/17


山崎 豊子(著)「不毛地帯 第5巻」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101104441/>
文庫: 592ページ
出版社: 新潮社 (2009/3/17)
言語: 日本語, 英語
ISBN-10: 4101104441
ISBN-13: 978-4101104447
発売日: 2009/3/17

2015年5月9日土曜日

森 詠「日本イスラム大戦」Ⅰ~Ⅲ

森 詠 「日本イスラム大戦 Ⅰ 開戦2021」、「Ⅱ 救出作戦2021」、「Ⅲ 秘密戦2021」
(文芸社、文庫、2015/2、2015/4)

[書評] ★★☆☆☆

日本とイスラム国(ひいてはイスラム社会)とが戦争に引き摺り込まれて行く様を描いた、「ありうる日本の姿」を描いた小説。狙いとしてはトム・クランシー系のサスペンス物といったところか。中東・日本・モスクワ・その他あちこちの地域の動きがそれぞれ関連していて、それなりに読ませる。

ホットなテーマで書かれた作品ではあるが、興奮度はイマイチ。作者・森詠氏は「作家・中東問題研究家」とのことだが、2015年4月の段階で、中東の情報が既に少し古い(1,2巻は2015年2月発行、3巻は4月発行)。今既に古い情報が2021年の設定で使われているのだから「もっと違うんじゃね?」という感じ。それだけでもチョットナアなのだが、さらにタイプミス・誤変換が所々に見られ(校正担当は何やっとんのじゃというレベル)、これも興が削がれる。

話題作となるかも? と手に取った本だったが、今一つといった感じ…(暇潰しには良い本かも知れないが)

過日、イスラム文化とイスラム国(ISIL)について以下の本を立て続けに読んだせいかも知れないが、本書(1~3巻)は内容が軽いなあ、みたいな。

◆参考文献(イスラム文化、ISILについて)

  • 小杉泰「イスラームとは何か? その宗教・社会・文化」(1994/7) (Amazon拙書評)
  • 中村広治郎「イスラム教入門」(1998/1) (Amazon拙書評)
  • 池内恵「イスラーム国の衝撃」(2015/1) (Amazon拙書評)
  • 国枝昌樹「イスラム国の正体」(2015/1) (Amazon拙書評)

森 詠「日本イスラム大戦 I 開戦2021」(文芸社、2015/2/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4286160602/>
文庫: 284ページ
出版社: 文芸社 (2015/2/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4286160602
ISBN-13: 978-4286160603
発売日: 2015/2/4

森 詠「日本イスラム大戦 II 救出作戦2021」(文芸社、2015/2/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4286160610/>
文庫: 287ページ
出版社: 文芸社 (2015/2/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4286160610
ISBN-13: 978-4286160610
発売日: 2015/2/4

森 詠「日本イスラム大戦 III 秘密戦2021」(文芸社、2015/4/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4286163024/>
文庫: 333ページ
出版社: 文芸社 (2015/4/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4286163024
ISBN-13: 978-4286163024
発売日: 2015/4/4

2015年5月4日月曜日

立川 談四楼 「談志が死んだ」

立川 談四楼 「談志が死んだ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4104247049/>
単行本: 220ページ
出版社: 新潮社 (2012/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4104247049
ISBN-13: 978-4104247042
発売日: 2012/12
[書評] ★★★★☆

立川談志の弟子・談四楼による、立川談志(とその一門の人たち)を描いた本。落語協会の脱退~落語立川流の立ち上げに関する顛末では、筆者・談四楼はまさにその当事者。噺家さんの人間模様が面白い。

なお、後半に入ると、談志の晩年の話が中心。談志の老いと病に振り回され、周りの人が苦労したという話が多い。

噺家さん、しかも物書きの多い立川門下の高弟が書いた文章だけに、リズムは軽妙、各話にきちんとマクラやオチまで付いている。派手な本ではないが、じわじわと面白い。大人向け。

ちなみに本書、小泉進次郎議員が衆議院本会議中に夢中になって読んでいたという曰くつきの本(もう2年以上も前のことだが)。
  • リンク→“政界のプリンス小泉進次郎があの本に夢中になった本当の理由”(ダ・ヴィンチNEWS) <http://ddnavi.com/news/136601/>