ミチオ・カク (著), 斉藤 隆央 (翻訳)「2100年の科学ライフ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4140815728/>
単行本: 480ページ
出版社: NHK出版 (2012/9/25)
ISBN-10: 4140815728
ISBN-13: 978-4140815724
発売日: 2012/9/25
[書評] ★★★★☆
今世紀末、2100年までにテクノロジーがどのように変化するかを予言/予見する本。とっても面白い。技術系の仕事をしている全ての人にオススメ! あと、理系の進路を考えている高校生にもオススメ(ちょっと難しいかも知れないけど頑張って読んでほしい)。
内容は、①コンピュータの未来、②人工知能の未来、③医療の未来、④ナノテクノロジーの未来、⑤エネルギーの未来、⑥宇宙旅行の未来、⑦富の未来、⑧人類の未来、⑨2100年のある日(未来の生活がどのようなものかを描いた小説?)、の9章立て。
内容を読んで思ったのは、小説・映画・漫画・アニメ等を作っているクリエイター達は、技術にメドもついていない位前から、本当に色々なことを想像→予見していたんだなぁということ。ワープ航法による宇宙旅行など、どう考えても実現が困難な技術もあるにはあるが、ナノテクノロジーやロボットの進化と医療の融合、ネット化の今後などは、何十年も前から予見した方向に進んでいるように思われる(正統派のビジネス誌や技術誌が時々アニメ『攻殻機動隊』や『機動戦士ガンダムSEED』、最近のものだと映画『トランセンデンス』など…に出てくるような技術とその社会的影響について真面目に論じているのは、こういう訳だろう)。
なお、内容については数点、私と見解が異なる。すなわち、⑤エネルギーの未来は楽観的に過ぎるのではないか(新興国の発展と米国型浪費生活の蔓延により、エネルギー問題はもっと深刻になると思われる…エネルギーや環境の問題は、こと米国内では一部の企業(浪費社会の上に成り立つ企業群)により意図的に市民に対して隠蔽されていると思われる)。⑦富の未来は、技術と経済の関係についての考察は鋭いものの、結論は少し外しているかもしれない。⑧は主に遺伝子操作による人類の変化だが、西欧的思想に引きずられている気がする(中国や北朝鮮などの国家は遺伝子操作をした兵士を作るかも知れないし、DNAをいじることに対して政治的・宗教的ブレーキが働きにくい国も沢山あると思う…具体的に言えば、韓国かシンガポール辺りの研究者が遺伝子操作を受けた人間を近いうちに作り出すのではないだろうか)。⑨の2100年物語はハッキリ言って蛇足。
…と文句を書いてしまったが、人工知能やナノテクノロジーとこれを利用した医療については非常に興味深く読めた。また、文明論については耳が痛い内容が多い。500年前頃まで覇権を誇っていた中国(明)が凋落したのは帝国が内向きになって世界から取り残されてしまった為、またほぼ同じ時期にオスマン帝国が凋落したのは宗教的不寛容に陥ってイスラムの神学論争いを始めてしまった為という。後者は、まるで現代の某国だ(憲法解釈という神学論に時間を費やしそれ以外の大切な政策をおざなりにしている! このままでは某国というより亡国だ)。
業務上、市場調査や未来の技術を占う立場にある人は必読。というか、数多の調査機関やシンクタンクが出している高価な未来予測(実はよく外れる)などよりよっぽど役に立つのではないだろうか。少なくとも未来予測のイントロ本として、あるいはエンタメ本として面白いので、興味のある人はどうぞご一読を!
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