オリバー・ストーン監督「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史DVD-BOX」
<http://www.amazon.co.jp/dp/B00FXSJKL4/>
監督: オリバー・ストーン
言語: 英語(日本語吹き替えあり)、字幕: 日本語
ディスク枚数: 5
販売元: 角川書店
発売日 2013/12/20
時間: 600 分
[評価] ★★★☆☆
『プラトーン』、『7月4日に生まれて』等の代表作で有名なオリバー・ストーン監督による「正しいアメリカ」への疑義を呈する映像作品。同タイトルの書籍については先日書評を書いたばかりだが、映像作品はTV放映の一部しか見ていなかったので、この機会にDVDを全部観た。
◆書籍版との違い
この映像作品では
- もしもこの人が大統領になっていたら or なっていなかったら、歴史は変わっていたのではないか?
- 米大統領の選出過程には不透明なところが多い。近年で一番有名な例は、2000年の米大統領選(ブッシュ・ジュニア vs アル・ゴア)。ブッシュ陣営が票数を操作し、ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)が不正な方法で大統領に就任したくだりについては、マイケル・ムーア監督の映画『華氏911』(原題Fahrenheit 9/11、2004、Amazon)の冒頭部に詳しい。
- 大統領就任後、政策を方向転換させた大統領も何人かいるが、そういう人は例外なく政治生命(場合によっては身体的生命)を奪われている。J.F.ケネディがその代表。たとえばJFKは核による人類滅亡という虚無と正面から向き合った頃から政策を変えていくが、その過程でJFKは政敵を増やして行き、暗殺されてしまう(真犯人は50年経った今でも薮の中)。
- 不透明な大統領選は2000年に限らない。さらに近年の例では、オバマの大統領選にあたってウォール街の資金提供者に頼ったため、大統領就任後には彼らを優遇する政策しか取れなくなり、アメリカの格差を拡大させてしまっている。
①PRO
- 映像の力を利用して、米国を中心とした世界の歴史の重要なターニングポイントをわかりやすく伝えている点は秀逸。
- 書籍版(約1500ページ)では広範な情報を述べていたのに対し、この映像作品では細かな情報をバッサリとカットし、大統領の人事と業績に集中しているのが良い。
- 歴史を捉え方に「if (もしも)」を入れて興味深くしている点も優れている(よく「歴史にifは無い」と言うが、本作品ではこれを逆説的に巧く使っている)。
- 内容が濃すぎる。ぼーっと観ていると内容が十分に掴めない(他のことをしながら観ると理解が進まず、結局2度観・3度観と時間を費やすことになる)。
- 作りが、アメリカ合衆国の歴史を充分に認識していることを前提となっている。非アメリカ国民には事前情報無しには内容は伝わりにくいのではないか。(キッチリ観ようと思ったら、書籍版を読んでおくのが一番だろう。)
余談になるが:多くの情報が抹消されてしまう日本と異なり、米国では多くの情報が蓄積されており、年数の経ったものから機密解除される。これらをベースとした情報の信頼性は高いと思う。
◆内容紹介(2章×ディスク5枚=合計10章)
- 第二次世界大戦の惨禍 (World War II)
- ルーズベルト、トルーマン、ウォレス (Roosevelt, Truman & Wallace)
- 原爆投下 (The Bomb)
- 冷戦の構図 (The Cold War 1945-1950)
- アイゼンハワーと核兵器 (The '50s: Eisenhower, The Bomb & The Third World)
- J.F.ケネディ~全面核戦争の瀬戸際~ (JFK: To The Brink)
- ベトナム戦争 運命の暗転 (Johnson, Nixon & Vietnam: Reversal of Fortune)
- レーガンとゴルバチョフ (Reagan, Gorbachev & The Third World: Rise of the Right)
- “唯一の超大国”アメリカ (Bush and Clinton: American Triumphalism ― New World Order)
- テロの時代 ブッシュからオバマへ (Bush & Obama ― Age of Terror)
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