再読(4冊)も含め合計7冊、3日連続で連投します。今日は1発目。
武田綾乃「響け!ユーフォニアム」(全3巻+短編集1冊) (再読)
[書評]
★★★★★
吹奏楽の経験者、在籍中の人、これから始めてみようかなと思っている人、興味ある人、の全てに
めっちゃオススメ!
アニメ放送
(1期:2015・2期:2016)が完結を迎えるところで
(最終回は来週12/28(水)深夜…より厳密には29(木)未明)、原作を再読。アニメは原作と結構違うな~と思ったが、小説と映像とのメディアとしての性格
(表現力の差)を考慮して分かりやすい表現に変更してあったり、放送時間の尺の問題などもあるのだろう
(特に違うのは主人公の心理描写;久美子が時々抱く黒い感情や心の中だけでのツッコミはアニメには殆ど登場せず)。ともかく、
原作・アニメの両方ともエンタメ作品として完成されているのは凄いな~と正直に思う。
この作者さん
(武田綾乃さん)、絶対吹奏楽経験者だよね~とか、瑞々しい筆致から、まだ若いよね~
(高校時代の記憶が鮮明な年齢だ)とか、そんなことを思いながら
Wikipediaを見たら、案の定デシタ。1冊目は大学在学中の作品らしい。この若さでこれだけ反響のある作品を書いてしまうって、正直、凄い。
- ここでチョット脱線して、アニメ第2期も映画化を予想。この作品、原作もアニメも良作なので、どちらから入っても良いと思う(コミカライズ版については読んでいないのでコメント出来ないのだが…スミマセン)。第1巻はTVアニメ化(第1期、2015)の他、映画化もされた(2016)。この映画、第1期の総集編的な内容ではあるのだが、音源は殆ど録り直しのようだし(特に打楽器の音が大幅増強)、細かなカットも色々違っていたり、京アニさんの本気度が伝わってきた。この面白さを考えると、ズバリ予想!第2期(原作第2~3巻)も映画化されるだろう。なお、TVアニメで第2期ラスト付近(まだ1回放送を残しているが…もしかしたら年が明けてから特番とかがあるかも?)、結構重要なシーンが何か所か(たぶん意図的に)削られているようで、これらは映画用に取っておいてあると予想。構成としては、原作第2巻(吹奏楽コンクール関西大会まで)と第3巻(全国大会まで)は別の映画に分けた方が良いと思う(…が、原作が完結してしまったため、メディアミックスのタイミング等から、映画が1本にまとめられるか2本に分けられるかは、今後の原作小説・コミック・BD/DVDの売上次第か)。分けたほうが良いと思う理由は、その方がストーリー的に解り易くなることと、観客動員数・BD/DVD売上が上がりそうなこと(2番目の理由は制作側の都合を勝手に予想してみた/笑)。また、原作第2~3巻の2冊分をTV 1クール(13回)で放送したのは、少し内容が濃すぎた気がする。これを映画1本に押し込むのはコッテリし過ぎでしょ?…みたいな。
- 第1期はBD/DVDに特典映像(未放送)としてコンクールメンバーに選ばれなかった生徒たちの活動エピソード「かけだすモナカ」が付いていたが(原作に無い?オリジナルストーリー)、第2期のBD/DVDにも後日談あたりが付いて来そうな予感…。
以下、1冊ずつ簡単にコメント。
「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4800217474/>
文庫: 319ページ
出版社: 宝島社 (2013/12/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800217474
ISBN-13: 978-4800217479
発売日: 2013/12/5
高校入学から全国吹奏楽コンクール京都府大会まで。TVアニメ化
(第1期、2015)。原作小説では、心理描写にエグい箇所や心の中だけでのツッコミがあり
(映像作品では殆ど表現されていない)、この辺りは読んでいて飽きさせない所だ。高校生が集まっている集団だから当然のことなのだが、人の好き嫌いや仲良しグループが生活の一部を支配している様子などの描写が瑞々しい。学園モノの定番ではあるのだが、この辺りをしっかり押さえた上で、コンクールに向けて吹奏楽中心のハードな生活を描いている。吹奏楽部「あるある」な話が多い。
「響け! ユーフォニアム 2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4800239060/>
文庫: 321ページ
出版社: 宝島社 (2015/3/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800239060
ISBN-13: 978-4800239068
発売日: 2015/3/5
全国吹奏楽コンクール関西大会まで。TVアニメ化第2期
(2016)の前半部分。吹奏楽部のメンバー同士の心理的距離の変化の表現が秀逸
(原作では部員間の呼称が変わっていたり、あまり仲の良くなかった先輩と心理距離がぐっと近づいたりしている辺り、映像作品の限られた枠内では表現されていない描写が色々ある)。
1巻では基本的に受身で、周りに流されて行動していた主人公・久美子が、小さなことから周囲に働きかけて行くようになり、精神的成長が見られるのが青春ドラマっぽくて良い。
「響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4800239826/>
文庫: 382ページ
出版社: 宝島社 (2015/4/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800239826
ISBN-13: 978-4800239822
発売日: 2015/4/4
そして、全国へ。本作のクライマックス。TVアニメ第2期
(2016)の後半部分。1巻では、受験勉強と部活の両立が難しいと久美子の幼馴染
(先輩)が退部した。本巻では、吹奏楽部の副部長にして部員の精神的支柱・田中あすかの進退について、彼女の母親が出張ってくる。家では久美子の姉・麻美子が大学
(3年生)をやめて美容師になると言い出して親と大喧嘩をする。見の周りで手一杯な久美子だが、姉の言葉が伏線になって、あすかに素直に気持ちを伝えられる様子など、話の展開が非常によく出来ていると思う。
こうして改めて読み返してみると、2巻は1巻への追加の作品ではなくて、3巻のラストまで最初からプロットが出来ていて書かれた作品だということがよくわかる。
- 私が好きなキャラは、2年ユーフォの夏紀。一見すると、スカート丈が短く目つきの悪い、ちょっと不良っぽい先輩。性格はクールというか、醒めている。後輩を可愛がる時の動作がちょっと乱暴だったり、同級生・優子(トランペット)と度々言い合いをする等、感情表現があまり上手ではない。ユーフォ初心者の(高校に入学してから楽器を始めた)彼女は、コンクールメンバー選抜時には、1年生の久美子と違って選抜されなかった。全国大会直前のあすかの不在に伴い、その穴を埋める役を任される。晴れ舞台に立ちたいという気持ちと、あすかが戻った方が良いという葛藤の中での発言に痺れる。「お願い久美子。あすか先輩を連れ戻して」(p. 184)。
「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4800241197/>
文庫: 268ページ
出版社: 宝島社 (2015/5/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800241197
ISBN-13: 978-4800241191
発売日: 2015/5/25
短編集14編。本編
(1~3巻)の前日譚・後日譚あり、本編と同じ時系列でも主人公・久美子不在のエピソードあり、本編に入りきらなかった
(であろう)話あり。全てのエピソードにきちんとオチがついているのは流石関西人
(細かいことを書くと、関西とは言っても京都系中心;大阪漫才に近いノリの物もあるが、上方落語のような作風が多い気がする)。作者・武田さんが作品世界を緻密に作り上げたことが窺える。
- 1~3巻は久美子目線の作品だが、映像作品の久美子不在シーンは殆ど本作から。…京アニさん、素材の使い方が凄く上手!
ひとつの大きな流れを持つストーリーでなく、ショート・ショートの形を取ることで、部員同士の団結心やいがみ合い、友情とその縺(もつ)れ、恋愛も含めた不器用な感情表現など、結構コッテリ書かれているが、それでいてしつこくない。この辺りの匙加減は流石だと思う。
映像作品を一通り見た後で読むと、また味わい深い。TVアニメ(と映画アニメ)に魅入られた人にとっては、本編と合わせ必読の書(笑)。最初の書評では淡々としたことしか書かなかったが、
…やばい、私いい歳してハマっている?(笑)
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参考:以前書いた書評など
(今回と結構違うこと書いているかも/笑)