2013年4月30日火曜日

M.E.ポーター「競争の戦略」

M.E. ポーター (著), 土岐 坤 (翻訳), 服部 照夫 (翻訳), 中辻 万治 (翻訳)
「競争の戦略 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478371520/>
単行本: 500ページ; 出版社: ダイヤモンド社; 新訂版 (1995/3/16); 言語 日本語; ISBN-10: 4478371520; ISBN-13: 978-4478371527; 発売日: 1995/3/16
[書評] ★★★★☆
 ハーバード大学のマイケル・ポーター教授による、 企業の競争戦略論に関する最初の研究書。 企業・業界の研究に関して非常に有名な本なので、 細かな説明は不要だろう。
 経営学に経済学の理論を持ち込むことによって、 業界構造分析と経営戦略論を論じる。 企業の収益性は優れた商品やサービスだけで決まるのではなく、 業界構造のあり方によって決まるというのがポーター教授の主張(の1つ)。
 解り易い本ではないが、企業分析を行なう際に、何度でも読み返す価値のありそうな本。

2013年4月29日月曜日

西原理恵子「生きる悪知恵―正しくないけど役に立つ60のヒント」

西原 理恵子 (著)
「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166608681/>
新書: 214ページ; 出版社: 文藝春秋 (2012/7/20); 言語 日本語; ISBN-10: 4166608681; ISBN-13: 978-4166608683; 発売日: 2012/7/20
[書評] ★★★☆☆
 人気漫画家・西原理恵子さんが、 「おカネ」「男と女」から「ビジネス」「家族」「トラブル解決法」まで、 波瀾万丈の人生で培った処世術を伝える「人生相談」エッセイ。
 サイバラさんは、相談に対してまっすぐ答えず、課題解決のために問題を設定し直す。 例えば、英語が苦手という人に対しては「フィリピンハブに行け!!」、 姑との不仲に悩む人には「姑の方が先に死ぬ」とバッサリ。 「同僚が小銭を借りて返してくれない」という相談に対して「そんなつまらないことにイライラしちゃうあなたは、仕事が辛いんじゃない?」と切り返す。
 副題に「正しくないけど役に立つ60のヒント」とあるが、 正しくないことなんか1つも書かれていないと思う。 悪知恵という程のことも書かれていない。 至極真っ当なことばかりだが、 誰でもやっている知恵を「再確認」することが出来る。

2013年4月28日日曜日

リー・M・シルヴァー「人類最後のタブー―バイオテクノロジーが直面する生命倫理とは」


リー・M. シルヴァー (著), Lee M. Silver (原著), 楡井 浩一 (翻訳)
「人類最後のタブー―バイオテクノロジーが直面する生命倫理とは」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4140811862/>
単行本: 540ページ; 出版社: 日本放送出版協会 (2007/03); ISBN-10: 4140811862; ISBN-13: 978-4140811863; 発売日: 2007/03
[書評] ★★★★☆
 面白い! この1語に尽きると思う。
 遺伝子工学は人間の“種”としての発展にとっても、今後避けては通れないという話。 著者は遺伝子組み換え等について、積極派でも消極派でもなニュートラルな立場だと言うが、その意見は先鋭的だ。 今後数百年、数千年、数百万年にわたって人類が繁栄するには、バイオテクノロジー、 特に遺伝子工学を“賢明に”利用して、生物医学と生物圏を地球規模で管理していく必要があると説く。
 人類は有史上、農産物や家畜を作るために、種の掛け合わせをするなどして地球上の生物のうち有用なものを改良してきた。 遺伝子組み換えは、この延長線上にあるものであり、避けては通れないものだと言う。ヒト以外の種に対する遺伝子工学は、近いうちに実験レベルではなく、実用レベルで使われるようになるだろう。 現に遺伝子組み換えの作物(大豆、トウモロコシなど)は既に世の中に出回っている。 生態系への影響が十分確認されたか否かはよく分からないが、とにかく既に使われ始めてしまっている。
 問題になるのは、作物・家畜の枠を超えた部分への遺伝子工学の適用だ。 特に、ヒトの胚に対する遺伝子操作が挙げられる。 重篤な病気を避ける為であれば実施は納得できるが、たとえば頭のいい子を作りたいというような優生学的な願望にこの技術を広く応用するとなると、 歯止めがなくなり人間社会全体にどのような影響が出るかは予測できない。
 キリスト教、ユダヤ教、イスラム教といったアブラハム宗教が中心となる社会の中では、 人間の生命、生死の尊厳、霊性といったものに対する畏怖が根強く残っており、ヒトの胚に対する遺伝子治療、あるいは優生学的な遺伝子操作は強く進められることはないと考えているが、 東アジア・東南アジアの企業がそういうことを始めるのを止める力は無い。

 遺伝子組み換え、遺伝子操作に対する嫌悪感の本質は何だろうか。それは、「何が起こるかわからないし、影響が十分に確認出来ていない」ということに尽きると思う。 言うなれば、原子力エネルギーの活用と同じなのだ。 原子力エネルギーの場合は、放射性物質の管理などもあり、大規模な資本投下を行なわないと事業化は難しい。また、武器への転用なども考慮し、世界の監視の下、国家が管理しなければならない技術となっている。しかし、遺伝子操作については、技術革新に伴い、ソコソコの規模の資本で行なうことが出来るようになってきている。 本書には書かれていないが、家畜のクローン化やヒトの胚に対する遺伝子操作は既に行なわれているのかも知れない。おそらく、キリスト教的信条に縛られない、東南アジア辺りのバイオテクノロジー企業によるものになるだろう。

 読んでいて度々連想したのは、「風の谷のナウシカ」(映画じゃなくて原作の方)に出てくる「旧世界のテクノロジー」だ。 家畜を含め多くの動物を作り変えただけでなく、汚染されてしまった地球を浄化するために腐海を生み出した。そして、旧文明の人間たちは、人類を含めた全ての生物を汚染された大地にも適用できるよう、人工的に作り変えた。 作り変えられた生物は、大地の毒なしでは生きていけず、 土鬼(ドルク)の聖都シュワの墓所に隠された旧世界のテクノロジーは、 地球が浄化された後に清浄な大地に適応した人間を作り戻す計画だった。。。

 また、人間の臓器のスペアの製造にブタを使うという話。 「攻殻機動隊」では、ユーザの遺伝子情報から、臓器のスペアをブタの中に作る企業が出てくる。 攻殻機動隊は1995年発表の作品であり、本書の発行より遥かに前であるが、 「攻殻機動隊」が先端技術をリサーチして作られたことがよく分かる(あるいは、たまたま、かも知れないが)。

 いずれにせよ、非常に面白い本である。バイオテクノロジーとサイバーテクノロジーの行く先を占う本として、 興味のある人には最上級クラスでお薦めができる本だ。

2013年4月26日金曜日

イマヌエル・カント「純粋理性批判」(まんがで読破) (コミック)

カント (著), バラエティアートワークス
「純粋理性批判 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781606342/>
文庫: 184ページ; 出版社: イースト・プレス (2011/7/31); ISBN-10: 4781606342; ISBN-13: 978-4781606347; 発売日: 2011/7/31
[書評] ★★★☆☆
 イマヌエル・カントによる哲学書「純粋理性批判」のガイド本。 「純粋理性批判」の他、「実践理性批判」「判断力批判」についても解り易く説明する(これら3冊をまとめて「三批判書」と言われる)。 漫画という形をとって、平易に説明する。
 漫画じゃなかったら絶対読んでいないよなー、的な本。 漫画ではあるが、カントの哲学について述べた本であり、スラスラと読める訳ではない(190ページ通読するのに何時間も掛かってしまった)。 本書を面白いと思うかどうかは人それぞれだと思うが、 「哲学とは何ぞや」「カントって何した人?」と興味のカケラでもある人にとって、イントロダクションとして良いと思う。

マルクス&エンゲルス「共産党宣言」(まんがで読破) (コミック)

マルクス (著), エンゲルス (著), バラエティアートワークス
「共産党宣言 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781602088/>
文庫: 186ページ; 出版社: イースト・プレス (2009/8/30); ISBN-10: 4781602088; ISBN-13: 978-4781602080; 発売日: 2009/8/30
[書評] ★★★☆☆
 マルクスとエンゲルスによる、ユートピアとしての共産主義を説いた本(あまりにも有名な本なので説明不要かとは思うが)。 封建時代も資本主義も、領主/資本家が搾取階級であり、民衆が被搾取階級であるという関係は変わらないという、(当時の)社会の本質を突いた分析と、ユートピアとしての共産主義の提言を行なっている本。
 バラエティアートワークスの手による本書では、 漫画という形をとって、共産主義という考え方の誕生と、共産主義の諸原理について説明する。
 イントロダクションとして優れた本だと思う。

2013年4月24日水曜日

ヒトラー「わが闘争」(まんがで読破) (コミック)

ヒトラー (著)
「わが闘争 (まんがで読破)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4781600115/>
文庫: 190ページ; 出版社: イースト・プレス (2008/10/1); ISBN-10: 4781600115; ISBN-13: 978-4781600116; 発売日: 2008/10/1
[書評] ★★★★☆
 原典はあまりにも有名な本なので、説明の必要はないかも知れないが、 念のため書いておくと、1925年に発表されたアドルフ・ヒトラーの自伝的政治哲学書。 原書邦訳(文庫版:上巻下巻)を数年前に読んでいたが、 最近、「まんがで読破」シリーズも読んでみた。(原書邦訳は、pro/conリストを書きながら読んだので、かなり理解出来ていると思っている←単なる自惚れ?自画自賛?かも知れないが/笑)
 本書(まんがで読破シリーズ)、非常によくまとまっている。 原書のレトリックを排し、エッセンスだけを抜き出して非常に解り易くまとめた本となっている。
 偏った国家主義、差別的人種観を正当化した内容から、現在でもドイツでは法律により出版が規制されている、とのことだが、第1次世界大戦での敗戦の後、全体主義に至るまでの経緯を知るには手っ取り早い本と言える。
 なお、蛇足になるが、ユダヤ人迫害は、ヒトラーが始めたことではなく、ユダヤ教・キリスト教(そしてイスラム教)の歴史で何度も繰り返されたことである。その辺りの歴史的事情も鑑みて読むと、何故ヒトラーがユダヤ人迫害に至ったかの理解の助けになろう。
 「まんが」ではあるが、良書。(★を4つ付けているのは、ヒトラーの主張に対するものではなく、ヒトラーの本を非常に明快に漫画化したバラエティ・アートワークスに対するものです。)

2013年4月23日火曜日

ジョージ・オーウェル「一九八四年」

ジョージ・オーウェル (著), 高橋和久 (翻訳)
「一九八四年[新訳版]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4151200533/>
文庫: 512ページ; 出版社: 早川書房; 新訳版 (2009/7/18); 言語 日本語, 日本語; ISBN-10: 4151200533; ISBN-13: 978-4151200533; 発売日: 2009/7/18
[書評] ★★★★☆
 ジョージ・オーウェルの最後の作品。1949年発表。 全体主義国家が行くところまで行くと世の中はこうなるかも知れない、という話。(ドイツ社会主義労働者党やソビエト連邦共産党という実例もあった。) 封建社会~資本主義社会の間、世の中には3種類の人々が存在してきた。即ち上層、中間層、下層である。「革命」によって全ての人が平等になったという建て前はあるものの、実際には党中枢、党外郭、党に関わりを持たない人々(プロール=プロレタリア)という3層構造は変わっていない。個人所有の否定は、従来よりも従来よりも遥かに少数の人間(のグループ)に富を集中させることを意味していた。
 この社会では、体制が徹底的な情報操作、記録の改竄を行なっている。思想を統制するために、言語も作り変えられて、危険な思想や自由に関わる概念が抹消されている。全ての人が監視される社会であり、民衆が互いに監視し密告する制度がある。体制に都合の悪い言動をした人間は突然「蒸発」させられ、以前から居なかったことにされる。逮捕された人は、洗脳に極めてよく似た操作が執拗かつ恐ろしいほど徹底的に行なわれ、 党への忠誠が「刷り込まれる」。
 「民主主義」とは何か、を考える上で、コインの裏面のような全体主義社会の末路を見ておくという意味で、 本書は必読の書と言えるかも知れない。