2016年8月13日土曜日

高橋 由佳利 「トルコで私も考えた (6)トルコ料理屋編」

この書評ブログ、更新が滞っています。猛暑にやられて読書意欲が失せています。夏枯れです。今回はユルめにコミック。それでは行ってみよう、レッツ・ゴー! う、うぉ~?(ヤル気少な目/笑)


高橋 由佳利 「トルコで私も考えた (6)トルコ料理屋編」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4086195704/>
文庫: 188ページ
出版社: 集英社 (2015/11/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4086195704
ISBN-13: 978-4086195706
発売日: 2015/11/18

[書評] ★★★★☆

有名な作品の続巻。発売後半年以上経ってしまったが、やっと読んだ。
  • 本巻、文庫版コミックでは「最新刊」だが、サイズ少し大き目の「愛蔵版」では、さらに新しい物が1冊発行済み(→後述)。
本シリーズ、これまで旅行話~国際結婚の話~出産・子育て話~…と続いて来たが、6巻では神戸にトルコ料理屋を開いた時の話が中心。昨今のトルコ事情にも触れつつも、トルコ料理屋であったことや、時々店で開いているイベントの話、それに子供の成長話の続編等、ハートウォーミングな話が多い。
  • 本巻冒頭で、「この漫画はフィクションです 実在の人物・団体・事実とは あまり関係ありません」と書いているが、(書いていないこともあるだろうが)ほぼ実話をベースにしているのだと思う。というか、経験していないとココまで描けないよね~と思う。
  • 苦労話が多いのだが、シリアスに寄り過ぎず、色々と笑い飛ばしてみせるのは、さすがは関西系漫画家(笑)。
あとがきにも書いてあるが、料理屋の経営はかなり厳しいようだ。それでも、トルコの食文化等を日本人にも楽しんで貰いたいという熱い気持ちが充分伝わってくる(神戸は遠いけど、お店に行ってみたくなるなるじゃないか!)。そして、筆者は、苦労話も込みで漫画を描いてしまうという、徹底したエンターテイナーなんだなと思う。

近年、トルコのエルドアン大統領(Wikipedia)は、かつて近代トルコの父:ムスタファ・ケマル・アタテュルク(Wikipedia)が打ち立てた脱イスラム・世俗化による近代化路線に逆行し、オスマン帝国を再興させるような動きをしている。さらに、イスタンブールを中心にテロが頻発し、トルコは「行ってみたい国ランキング」をズルズルと滑り落ちて行っているような傾向もある。が、これは、新興国が先進国になる時の際どい状態であるとも理解できる。色々な意味で危うい国、トルコ。この漫画は(個人的な話を除けば)シリアスな成分少な目だが、トルコという国の国民性や文化、最近の状況を垣間見る“参考資料”としても、オススメできると思う(最新情報ではないし状況は刻々と変わっているとは言え、本書/本シリーズは、「トルコ」を理解する良い参考書になると思う)。

なお、通常の漫画と比較してページ当たりの情報量は何倍にもなるので(描く方も大変だろうなぁ)、初めて読む人は覚悟しておいた方が良いかも(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

新刊情報、筆者の旦那様のお店の情報、他:
・  ・  ・  ・  ・

1~5巻の書誌情報(+メモ少々):

①高橋 由佳利(著)「トルコで私も考えた―トルコ入門編」(集英社文庫、2012/8/17)
<http://www.amazon.co.jp/dp/408619340X/>
文庫: 209ページ
出版社: 集英社 (2012/8/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 408619340X
ISBN-13: 978-4086193405
発売日: 2012/8/17


②高橋 由佳利(著)「トルコで私も考えた―トルコ嫁入り編」(集英社文庫、2012/9/14)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4086193418/>
文庫: 227ページ
出版社: 集英社 (2012/9/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4086193418
ISBN-13: 978-4086193412
発売日: 2012/9/14

③高橋 由佳利(著)「トルコで私も考えた―トルコ日常編」(集英社文庫、2012/12/18)
<http://www.amazon.co.jp/dp/408619404X/>
文庫: 204ページ
出版社: 集英社 (2012/12/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 408619404X
ISBN-13: 978-4086194044
発売日: 2012/12/18

④高橋 由佳利(著)「トルコで私も考えた―トルコもっと日常編」(集英社文庫、2013/1/18)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4086194058/>
文庫: 214ページ
出版社: 集英社 (2013/1/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4086194058
ISBN-13: 978-4086194051
発売日: 2013/1/18

⑤高橋 由佳利(著)「トルコで私も考えた―トルコ21世紀編」(集英社文庫、2013/4/18)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4086194236/>
文庫: 208ページ
出版社: 集英社 (2013/4/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4086194236
ISBN-13: 978-4086194235
発売日: 2013/4/18

6巻を読むにあたり、1~5巻を通しで再読した。1~4巻は、
  • 新興国あるある話…美味しそうな食事、文化ギャップ、日本との共通点など。
  • 国際結婚~子育ての苦労話(面白いけど、流産の経験などなかなか人に聞けないシリアスな内容もある)。
がメインで、5巻は
  • トルコ人の旦那様を持つ日本人女性の、日本における日常エッセイ。
  • 久し振りにトルコを訪れた際に、トルコが発展・変化の状況に驚く話。
が中心となっている。1~6巻で筆者の青春時代~現在を描いているとも言えるが、シリアス・パートとギャグ・パートのバランスが絶妙。これを実話ベースで描いてしまう筆者の高橋さん、スゴイ人です。

2016年7月3日日曜日

西尾維新 忘却探偵シリーズ×6冊:「掟上今日子の備忘録」「推薦文」「挑戦状」「遺言書」「退職願」「婚姻届」

普段は堅めの本について書くことが多いのですが、ラノベとかの書評の方が実はPV数が安定して伸び(以下略/笑)

・  ・  ・  ・  ・


西尾維新 忘却探偵シリーズ:
  1. 「掟上今日子の備忘録」
  2. 「掟上今日子の推薦文」
  3. 「掟上今日子の挑戦状」
  4. 「掟上今日子の遺言書」
  5. 「掟上今日子の退職願」
  6. 「掟上今日子の婚姻届」
  7. 「掟上今日子の家計簿」【今年2016年夏発行予定】
※既刊6冊の書誌情報・Amazonリンク等は末尾を御参照されたい。

[書評] ★★★☆☆

今をときめくライトノベルの大家(アニメ化・ドラマ化された原作小説を何本も書いている)・西尾維新氏が、〈物語〉シリーズ(お化け話)に続いて発表したシリーズ。推理小説です、一応(笑)。内容的にはアーサー・コナン・ドイル(『シャーロック・ホームズ』シリーズ)の影響が大きいようだが、本シリーズのスタイルとしては、いわゆる「叙述トリック」を多用。
  • 叙述トリック…コナン・ドイルやモーリス・ルブラン(『アルセーヌ・ルパン』シリーズ)よりもずっと後、アガサ・クリスティの頃に出てきたミステリー小説の書き方の技巧法。文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う。たとえば登場人物の性別、事件の発生した時間や場所などに関わる記述を意図的に伏せ(性別の場合は「彼」とも「彼女」とも書かず苗字や役職名だけで書いたり、英語なら受動態で文を書いて「誰が」を書かないなど)、あえて誤読させることで、解決シーンでインパクトを与える。2度読みすると「な~んだ、そういうことか」となる(笑)。
本シリーズの主人公は、探偵・掟上今日子(おきてがみ きょうこ)。眠ると記憶が消えてしまうという、通常ならネガティブな特異体質を逆にアドバンテージとして、色々な難事件を解決する。引き受けた仕事は全て1日で解決する「最速の探偵」。記憶を維持する方法は、自分の身体の一部に、自分の筆跡でメッセージ(置手紙?)を書き込むこと。

〈物語〉シリーズが設定盛り過ぎ・言葉遊び多過ぎだったのと比べると、素直に読み易い(〈物語〉シリーズは阿良々木暦クン語り部回ではそりゃもうストーリーが全然進まない)。ソレナリに面白かったので★3つとしたが、イイ歳した大人が、お金と時間を使ってわざわざ読むほどの本ではないかも知れない(…とは書いたが、本作の想定読者はたぶん大人=社会人)。筆者・西尾氏の好きな、設定テンコ盛り&言葉遊び乱発は、本シリーズ1~3巻では鳴りを潜めている(だから読み易い/笑)。が、4巻辺りからチラホラと…。←面白いけど、やっぱりストーリーが進まなくなる(笑)。また、6巻では寝ると記憶を失う主人公の特性を逆手に、今日子さんが翌日の自分の感情までコントロールするという裏技(反則技?)まで出てくる。
  • 本シリーズ1~4巻は、TVドラマ化され、2015/10~12に放映されました。原作を大幅に翻案して、4冊分の内容をキレイに10回放映に再構成。全編語り部は隠館厄介(かくしだて やくすけ)クン(演:岡田将生さん)。主演の掟上今日子(演:新垣結衣さん)がキュートすぎて、原作とは別の面白さがありました。第9話・10話のクライマックスには、ヒール(悪役)として要潤さんが出てきます。少し滑舌の悪い(笑)イケメン俳優、個性的でいい味出していましたよ!
で、本シリーズ。TVドラマ化されて4巻でキレイに終わるのかと思いきや、TV放映終了前(2015年12月)に5巻『退職願』発行。その巻末に6巻『婚姻届』発行予告(予告通り今年5月に出版されました)。そして6巻の巻末には、7冊目『家計簿』の発行予告が(2016年夏)! まだ終わらないのか! なんということだ!! また買ってしまうではないか!(笑)
  • 作者の西尾さん、他のシリーズもそうですけど、色々引っ張り過ぎでしょ。幾つもの作品がドラマ化・アニメ化され、メディアミックス戦略とかの大人の都合で、作品を完結させて貰えないとかもあるのでしょうけど。
ツッコミ所は色々あるのですが、娯楽作品として面白く、アク(灰汁?悪汁?)も薄めなので許しませう(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

以下書誌情報+コメント少々:

西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の備忘録」(忘却探偵シリーズ01)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062192020/>
単行本(ソフトカバー): 338ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062192020
ISBN-13: 978-4062192026
発売日: 2014/10/15

↑短編集。不運のフリーター・隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部となり、巻き込まれた事件をいくつか書いている。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の推薦文」(忘却探偵シリーズ02)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062194503/>
単行本(ソフトカバー): 402ページ
出版社: 講談社 (2015/4/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062194503
ISBN-13: 978-4062194501
発売日: 2015/4/23

↑一見、短編集だがストーリーの間の関係が深く、長編と見ることもできる。語り部は、警備員の親切守(おやぎり・まもる)クン。って、警備員の職を失うのだが…。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の挑戦状」(忘却探偵シリーズ03)
<http://www.amazon.co.jp/dp/406219712X/>
単行本(ソフトカバー): 290ページ
出版社: 講談社 (2015/8/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 406219712X
ISBN-13: 978-4062197120
発売日: 2015/8/19

↑本巻のみ初出は『メフィスト』(講談社のラノベ系文芸誌)、「神視点」(語り部がいない)。ノリも他の5冊とはチョット違うが、ぽわわんとした雰囲気を持ちながら実は行動派で性格は比較的ドライっぽい今日子さんの描写が面白い。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の遺言書」(忘却探偵シリーズ04)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062197847/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2015/10/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062197847
ISBN-13: 978-4062197847
発売日: 2015/10/6

↑長編。シリーズ1冊目と同じ隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部。本作で、殺人未遂事件の犯人(本人も重体で意識不明)に対して、死んでも責任は取れない、生き恥をさらすのが生きている人の務めだ、というのは、たぶん作者・西尾氏の読者へのメッセージ(この人の作品には、生きることと生きることの業(ごう)について肯定し、生き恥を晒すことが生きることだというメッセージが多い気がする)。また、漫画や小説の影響によって反社会的な人や犯罪者を生む可能性は否定できないけど、表現の自由は擁護されるべきだ(創作者に窮屈な境遇で活動して欲しくない≒創作者としては活動しにくい環境を作らないで欲しい)とか、その反面プライバシーとかも大切だけど報道の自由を規制するのは難しいとか、…この辺りも西尾氏の本音なのだろう。西尾氏の思いと主張がスパーク(笑)する1冊。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の退職願」(忘却探偵シリーズ05)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062199068/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2015/12/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062199068
ISBN-13: 978-4062199063
発売日: 2015/12/17

↑短編集。4人の女性警部が各話の語り部。警察から今日子さんに捜査協力依頼が。4人の警部はそれぞれ今日子さんに対して羨望だったり嫉妬だったり色々な感情を持っているのだが、今日子さんはそんなことお構い無しに事件の究明に尽力する。


西尾 維新(著), VOFAN (イラスト)「掟上今日子の婚姻届」(忘却探偵シリーズ06)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062200716/>
単行本(ソフトカバー): 258ページ
出版社: 講談社 (2016/5/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062200716
ISBN-13: 978-4062200714
発売日: 2016/5/17

↑長編。語り部は再々度、隠館厄介クン。彼が出会った某女性曰く、彼女が好きになった男性はみんな破滅していく…これは運命? それとも…。ちなみに、ヒロイン・掟上今日子さんが結婚するわけではありませんので、ファンの方は安心してお読み下さい。

西尾 維新(著)、VOFAN (イラスト)「掟上今日子の家計簿」(忘却探偵シリーズ07)
【2016夏発売予定】

2016年6月26日日曜日

日向涼子「〈坂バカ〉式 知識ゼロからのロードバイク入門」


日向涼子「〈坂バカ〉式 知識ゼロからのロードバイク入門」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4797384743/>
新書: 208ページ
出版社: SBクリエイティブ (2016/5/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4797384743
ISBN-13: 978-4797384741
発売日: 2016/5/7

[書評] ★★★★★

誰このキレー系女子サイクリストは?! ←表紙を見た時に最初に思った感想(笑)。筆者の本業はモデルさんだそうです。数年前に自転車(スポーツバイク)にハマり、近年はヒルクライム・レースで入賞したり、自転車界でも活躍するようになったようです。

さて、本書。最初は自転車と言えばママチャリ以外思いつかなかった女性が、ふとしたキッカケでスポーツバイクに乗るようになり、気がつけば以前は全く興味のなかったロードバイクに乗るようになり、いつの間にかヒルクライム・レースのイベントに出るのが楽しくなってしまった(海外のイベントにも行くようになった!)…という、自転車界のシンデレラ・ストーリー(?)みたいな話。ここまでで前半。

後半は、科学的トレーニングのイントロみたいな話と(ヒルクライムに特化しているけど、専門書よりずっとわかりやすい/笑)、日焼け対策等、男女問わず役立つ内容が多い。

サイクリストにとって「あるある」な話も多いし、感情移入できる内容が多いのも良い(過負荷トレーニングは体力がピークの時にやりたいけど、そうすると次までそのピーク値が標準値になるので逆にツライとかね)。あと、男性サイクリストに対して、女性サイクリストに対して気を使って欲しいポイントが書かれていたりするのも良い(女性に限らず体力差のある仲間に対して気遣うべきポイントとして読んでも良し)。自転車仲間を増やしたい人の参考書として、最近の本の中では最強だと思う。内容もさわやか系+癒し系で適度にユルく、読後感も爽やか。所々に書かれたヘタウマなイラストも可愛いですよ。

過度にストイックでもなく、過度にマニアックでもない。こういう本も良いですね(筆者の日向女史はおそらくかなりストイックかつかなりマニアだとお見受け致しましたけどね/笑)。サイクリスト仲間を増やしたいそこのアナタ、布教グッズ(笑)としてもオススメですよ!!

2016年6月19日日曜日

池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題 (7) Gゼロ時代の新しい帝国主義」


池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題 (7) Gゼロ時代の新しい帝国主義」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4040820630/>
新書: 287ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2016/5/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4040820630
ISBN-13: 978-4040820637
発売日: 2016/5/10

[書評] ★★★★☆

『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズ最新刊。
  • 参考:前著…「(6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか?」(Amazon、拙書評)
タイトルの「Gゼロ」とは、世界をリードするのは「G7・G8」でも「G20」でもなく、リードできる国家が存在しなくなっている現状を言う。内容は、以下のようなホットな話題で、わかりやすい解説。
  • 自称「イスラム国」は今後どうなるか
  • 旧帝国復活の動き…オスマン帝国、ペルシャ帝国、帝政ロシア、明王朝復活への動きか?
  • 地球温暖化対策
  • 安倍政権の安保法
  • 沖縄の基地問題
本書では、第一次世界大戦にまで遡って考えると、世界の現状と今後の動きを理解し易いと言う。確かにその通りであるが、池上氏が他の本で書いたのと内容がかなりカブっているので(そういう内容の箇所は斜め読みはし易いが/笑)、色々読んでいる人にとって必読というほどではないかも。

本書のポイント(まだ私が他で読んでいなかった内容)を絞ると、ズバリ以下の2点。
  • 極右vs極左の様相を見せている米国大統領選の背景(米国建国にまで遡らないと理解しにくい)。
  • EU域内でヒト・モノ・カネの流動性が増していることが、移民政策やテロ対策を難しくしていること(「ベルギーやフランスは過去の植民地政策の報復を受けている」)。
また、巻末での「歴史はただの暗記モノではなく、因果関係の蓄積が歴史。その因果関係を調べることは面白く、本当は歴史は面白い」という趣旨と、「世の中の最新の動きをニュースで確認しながら、時には歴史の本を読み返して、長い時間軸の中でニュースの意味を考えてみてください。(中略)自分の頭で因果関係をたどる作業を積み重ねる。そこから将来を考えるヒントが見えてくる」という記述は、ジャーナリストとして長年世界のニュースに触れてきた人ならではの重みがある。

新書サイズで比較的短い時間(電車移動中など)で読める分量なので、手軽に日本と世界の「現在(いま)」を概観するにはナカナカ良いかも知れない。お薦め。

2016年6月12日日曜日

半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」


半藤一利・佐藤優「21世紀の戦争論 昭和史から考える」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4166610724/>
単行本: 284ページ
出版社: 文藝春秋 (2016/5/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166610724
ISBN-13: 978-4166610723
発売日: 2016/5/20

[書評] ★★★★★

昭和史の大御所・半藤一利氏と、元外交官(ロシア担当)・佐藤優氏の対談。本書の題名は「21世紀の戦争論」となっているが、内容は戦前日本の総括(第3次世界大戦の可能性についても軽く触れられているが、メインテーマは戦前日本から何を学ぶべきかという内容)。

毒ガスや人体実験といった非人道的な兵器開発という日本にとって後ろ暗い歴史。スターリンが提案したが、トルーマン米大統領の猛反発に遭い実現しなかった「日本分割統治」。長州閥の重鎮・山県有朋亡き後、薩長閥を除くメンバーで構成された一夕会(いっせきかい)が作った昭和という歴史。責任の所在が不明な官僚の体質や、自分に都合の良い情報だけを拾い集めて(都合の悪い情報は無かったことにしたり、重要だが悪い情報を報告した個人を罰したりして)問題を大きくしてしまうなど、現代日本にも色濃く残る問題点(古い日本企業などにも当てはまる体質だろう)。戦争の記憶が希薄化している今だからこそ語っておかなければならない話。右翼系メディアへの露出が多いと目される2人だが、視点は比較的公正中立だと言えよう。耳を傾けるべき内容が多い。

歴史を現代に活かす為に有効な方法は読書であるとしながら、最近のトンデモ「昭和史本」の増殖には警鐘を鳴らしている(見たい歴史・都合の良い事実だけを見る行為を、佐藤氏は「反知性主義」と呼び、現代日本に蔓延する病だと言う)。そんな中、最終章に挙げられた推奨図書14冊は、現代(いま)を生きる我々にとっても必読の書が多いと思う。このリストと解説を見るだけでも良いので、本書を多くの方々にお薦めしたい。

・  ・  ・  ・  ・

余談になるが、佐藤氏はご母堂が沖縄戦の学徒の生き残りとのこと。氏が国際関係・国防やインテリジェンスを意識せざるを得なかった(そしてそのような職業に就いた)理由が垣間見える気がした。

2016年6月8日水曜日

帝国書院編集部(編集)「新詳高等地図」


帝国書院編集部(編集)「新詳高等地図」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4807162160/>
単行本: 170ページ
出版社: 帝国書院 (2015/10/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4807162160
ISBN-13: 978-4807162161
発売日: 2015/10/22

[書評] ★★★★★

ん? 書評に地図帳? 確かに「読書する本」ではありませんが、最近買った本の中で良かったので書かせて下さい。

多くの高校で使われている地図帳ですが、社会人になってからも持っていて損の無い本です。これまで世界経済や政治の文献やニュースにあたる時Google Maps/Earthで地図を見ることが多かったのですが、地図帳を使うと、地名や交通だけでなく、平原や山脈の配置や鉱工業エリアの分布といった情報まで同時に分かるのが非常にヨイです(時と場合により、地図帳とGoogle Maps/Earthを併用)。

書籍やWeb記事を読みながら、机の上の書見台で地図帳を開いておく。政治経済関連のニュースや文献に触れるときの、最近の私のスタンダードなスタイルになりました(適度に薄く持ち歩き易いのもヨイです)。

社会人にもオススメ♪

2016年6月5日日曜日

池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」


池上彰「日本は本当に戦争する国になるのか?」(SB新書、2015/12/5)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4797386487/>
新書: 208ページ
出版社: SBクリエイティブ (2015/12/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4797386487
ISBN-13: 978-4797386486
発売日: 2015/12/5

[書評] ★★★★★

2015年の夏、安倍政権(自公連立与党)が強行採択した「安保関連法案」に関する解説書。日本を取り巻く国際環境が複雑化・流動化し、ともすれば戦争の足音さえ聞こえてきそうな時代背景もあろう。安倍政権がこの法案が何故必要だと考えたのか。民主主義社会において、この立法化の手順に問題は無かったのか。本書は、この辺りを総括・解説する。池上氏は手厳しく、消費税増税延期の公約(こちらは最近の国際情勢を見ると雲行きが怪しいが)によって衆院議席の2/3を押さえておいて、後出しジャンケンのように、それとは別に挙げていた公約すなわち改憲が国民の意志だ、というのは掟破りだと言う。安倍晋三首相がやっていることは、母方の祖父・岸信介(きし・のぶすけ)や父・安倍晋太郎を超えたいがために暴走している、ブッシュ・ジュニアがイラク戦争を始めたのにも似た愚かな行為だと言う。

池上氏の本は、為政者の心の中まで見抜くような書き方が多い。本書でも、祖父・岸信介が首相だった時の1960年安保と(岸内閣はその後の混乱の責任をとって退陣)、今回(2015年)の安保関連法との関わり、日米安保や集団的自衛権の行使容認について、多少穿った見方をしているのが興味深い。

池上氏は、衆議院の議席数2/3を許した時点で「任期付きの独裁を認めたことになる」と書いているが(p. 143)、衆参両院の議席数2/3を許してしまうと、改憲の発議も可能になる(改憲が可能であれば「任期」も書き換え可能だ)。一旦そうなってしまったら、その後は大マスコミを通じて国民を煽り、暴走しかねない。戦前日本での多数党解党→大政翼賛会結成や、イタリアの国家ファシスト党、ドイツの国家社会主義ドイツ労働党(ナチス)、これらは全て、民主的な手順を経た上での国家の暴走であったことを我々は忘れてはならない。

安保関連法や集団的自衛権の合憲/違憲性、善悪はともかく、日本社会に生きる者として知っておくべき内容。内容は平易で読みやすく、万人向けだと言えるだろう。お薦め。