山中 千尋 (著)「ジャズのある風景」(晶文社、2013/8/2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4794969090/>
単行本: 288ページ; 出版社: 晶文社 (2013/8/2); 言語 日本語; ISBN-10: 4794969090; ISBN-13: 978-4794969095; 発売日: 2013/8/2
[書評] ★★★★☆
2001年に彗星のように現われて今に至るまで、ずっと業界トップで活躍されているジャズ・ピアニスト、山中千尋さんの書かれた本です。本書の内容は、ジャズ系雑誌数種と山中さんの出身地・桐生の地方新聞新聞への寄稿文が主ですが、書き下ろしの所もあります。
※山中さんの経歴等は、UNIVERSAL MUSIC JAPANのWeb PageやWikipedia(日本語)等に詳細に書かれていますので省略しますが、パ無いです。学歴だけでなく、デビュー後の実績もカナリなモノですよね。音楽系雑誌に度々登場していらっしゃるので、音楽好きな方は既に御存知かと思います。
私は当初、美人だから売れてるだけでしょ?だなんて、失礼にも程があるだろ!と皆様から叱られてしまいそうなコトを思っていたのですが、何枚目かのアルバムを聴く機会があった時に、完全ノックアウトされてしまいました。グイングインとスウィングの効いたリズムに乗せて、かなりキワドイ弾き方(勿論危ういのではなく解釈や表現が非常に斬新だという意味です)を聴かせてくれます。特に、スタンダード曲などを演奏した時、ある意味アクが強い音楽になっています。でもこれがどういうことか、ちゃんと本書に書かれていました。
- 何百年も弾かれ愛され続けるクラシックは古典ではなく、現在進行形のナマの音楽だ。土壌に染み付いた音楽は、強靭でしなやかでやたら丈夫な実用品。多少の我田引水的な解釈に悪用されたくらいでは、へこたれない (本書p.15より)
ちなみにワタシ、ノックアウトの直後に既出アルバム全購入。リリース毎に即買い→即聴き…というパンチドランカー状態(笑)。
ワタシのようなフツーの音楽好きも楽しめる音楽ですし、結構コアな聴き方をする方々の理解の半歩位先を行っているのではないでしょうか。ワタシのレベルでも「そう来たかぁ!」と膝を叩きたくなるような演奏、しかもそういう箇所が濃密です。ジャズのビバップに近い様式をとった、完全な現代音楽。
まぁ彼女の音楽内容がどれだけハイクオリティかは、CD/DVDのレーベルが証明しています。最初のアルバム3枚は「澤野工房」という、日本のジャズ・ピアノ名門レーベル(かなり渋い所/笑)から、4枚目以降のレーベルはVerve/Universal(これまた超ビッグアーティストしか扱わない有名ドコロ)です。
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やっと本書について書けるようになりました(マクラ?が長くて申し訳ないです)。
バークリーを主席で卒業して以来メインに活動しているニューヨークでの話題や、ツアーでの話も多々あり、音楽に関係の有ること・無いこと(彼女の生活の一部や、彼女が見ている様々なアートについて)、等々色々書かれています。彼女が音楽をどう捉えているのかとかも、色々書いていますし、業界の内情についても多少触れています(ファンにはたまらんです!/笑)。本書の3章「行儀のわるいジャズ評論」辺り、他人について書いている時は、それなりに気を遣っているでしょうけど、ビシッビシッとジャブを決め、ご自身の物の観方とかスタンスについて書いている時はズシッズシッとボディーブロー、時々パコーンとアッパーカットが来ます。読みながら、「そうだよね~♪」とか、「マジっすか?!」とか、音楽とは違う方法で読者を楽しませてくれます。いやぁ、彼女はやっぱり、音楽以外の手段でも我々を楽しませてくれる「天才的エンターテイナー」ですね!
雑誌・新聞で書いた文章と書き下ろしの組み合わせなので、内容は結構バラバラですが、その分、どこからでも読めますし、適度に休みながらも読めます(ランダムアクセス可能な本です)。でもこの本、彼女の演奏ほど緊張せず、軽~く読めます。でもイキナリ「ドキッ!」っとさせてきたりしてね。山中さんの音楽が好きな人は勿論、彼女がどういう風に物を観て考えているか、結構判る面白い本だと思います。ま、ワタシなんかが書く前に、彼女のファンはとっくに買って何度も読んでいるでしょうけどね。
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- 「聴いて面白かったらそれでいいんじゃないの」音楽はそれにつきるはずですし。 (本書p.49より)
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