2015年4月25日土曜日

鬼頭 莫宏(著)「のりりん(11)<完>」 (コミック)


鬼頭 莫宏(著)「のりりん(11)<完>」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063545652/>
コミック: 224ページ
出版社: 講談社 (2015/4/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063545652
ISBN-13: 978-4063545654
発売日: 2015/4/23

[書評] ★★★★☆

良質な自転車マンガ「のりりん」、とうとう完結です。前巻(10巻)でレース回は終了。今回は、主人公・ノリと、ロード乗りのヒロイン・リンが、過去に出会っていた?という話です。ようやくラブコメらしくなって来ました。…が、ビミョーな所で話は終わりです。まぁこういうエンディングも悪くないですけどね。

なお、本巻では、主人公・ノリのモノローグという形で、筆者の自転車への熱い想いが訥々と語られます。乗っていない人にはわかってもらえないかも知れませんが、乗っている立場としては大いに共感できます。

「のりりん」、ホドホドにヌルいストーリーが良いです。日常の移動手段の一歩先、という位置づけで自転車(ロードバイク)の布教活動(笑)に役立つマンガかも知れません。まぁリンちゃんみたいな女子ロード乗りって現実にはナカナカいないんですけどね。

あ、女性に自転車を勧めたいという人には、本書の他にドロンジョーヌ恩田さんの本もオススメですよ~♪

2015年4月22日水曜日

小林 よしのり「ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1」 (コミック)

小林 よしのり「ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1」
単行本: 449ページ
出版社: 幻冬舎 (2015/1/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4344027132
ISBN-13: 978-4344027138
発売日: 2015/1/28

[書評] ★★★★☆

多くの人には紹介するまでもないと思うが、本書の著者・小林よしのり氏は「ゴーマニズム宣言」シリーズで有名な漫画家で、ノンフィクション(主に日本の政治や歴史に関する内容)を中心に描いている人。過去の著作等から小林氏はナショナリストと考えられることが多いが、本書はそういうイメージを覆す。

侵略戦争は否定するが、自衛戦争は肯定する。日本の政治家を非難することはあるが、我々の祖先が築いた国と歴史は擁護する。その上で、最近日本で戦争に対するハードルが低くなってきていることに対し、自身が血を流し国を守る覚悟があるのか、戦争の悲惨さを知った上で戦う覚悟があるのかと問いかける。

戦争を他国・他人のものとしてではなく、自分と同胞の問題として再考させる良書。ただし、良識と判断力のある大人向けの漫画であることは示しておくべきだろう。

◆雑記1:分析眼と視点

アメリカが始めたイラク戦争を支持するということは、どういうことか? 著者の反米の態度は一貫している。それでいて、小泉政権・安倍政権の政治には反論する立場をとり、一握りの富裕層のみを潤して中間層を没落させる「売国行為」と喝破する。2人とも靖國参拝で国際的に波風を立てた宰相として有名だが、著者によると、これは自身を「保守」に見せかける隠れ蓑 or 目くらましだという。この分析は非常に鋭い。

また、戦後米国により日本人を洗脳し、反米から親米に変えたプログラム、WGIP (War Guilt Information Program)を、一部の人だけの知識から広い読者層の知識とした功績も大きい。

さらに、近年の嫌韓・反中ブームの過剰なナショナリズムのもたらす排外主義・国際間緊張といった危険性についても、納得できる主張だ。

◆雑記2:歴史認識

開国・明治維新後、第2次世界大戦までの日本の在り方を否定しない著者の態度は、一部の人から滅多打ちにされる可能性がある。良識ある大人として、小林氏のような見方があることは知っておくべきかも知れないが、その主張を鵜呑みにするのもまた危険であること考えておくべきだろう。

2015年4月18日土曜日

ジェリー・ポラス他 「ビジョナリー・ピープル」

ジェリー・ポラス, スチュワート・エメリー, マーク・トンプソン(著), 宮本 喜一(翻訳)
「ビジョナリー・ピープル」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4862761003/>
単行本: 408ページ
出版社: 英治出版 (2007/4/7)
ISBN-10: 4862761003
ISBN-13: 978-4862761002
発売日: 2007/4/7

[書評] ★★☆☆☆

『ビジョナリー・カンパニー』(下記参照)の共著者、ジェリー・ポラスを含む著者陣による本で、カンパニー(企業)ではなくピープル(人間)に焦点を当てたもの。『ビジョナリー・カンパニー』シリーズは卓越した組織を作り率いる方法について述べた本だが、本書『ビジョナリー・ピープル』は個人が卓越した人生を生きる方法について述べた本。

他人が作った価値基準に沿って生きるのではなく、自分自身が大好きなこと(愛情を注いで取り組めること)、かつ誰かの為になることを仕事とすること。挫折への接し方、良いアイデアを出すための議論の仕方、…etc., etc.、組織人として仕事をする上で参考になる話が多い。

が、しかし…。

◆翻訳の質に関する文句:

解り難い文章が多い。特にPART 3(9~11章)は原英文が思い浮かべられる程お粗末な翻訳。見事に英語の論理に引きずられている(日本語の論理構造になっていない)。翻訳作業の締切り等の都合もあったのっだと推察するが、Excite!さんGoogleさんに機械翻訳をしてもらったまま殆ど手直し無し…みたいな雑な訳文だ。特に、10章「論争を盛り上げる」が日本人にとって馴染みの薄い内容であること、11章「すべてを結集させる」が本書を締め括るための重要なパートであることを考えると、この2章の訳文の質が低いというのは致命的かも知れない。

このショボい翻訳により、この訳書の完成度は低くなってしまっている。翻訳の専門家ではないが、その分野で著名な先生が翻訳した本では、こういうことがままあるものだ(例えば昭和時代の理系の専門書など)。が、平成になって20年以上、グローバル化時代のビジネス書だ。多くのビジネスパーソンを読者層とした本である筈だ。出来ればもっと質の高い、読み易い翻訳にして欲しかった。

◆さらに文句(恨み節):

本書の訳者・宮本喜一氏については、C・クリステンセン(著)「明日は誰のものか」の翻訳も質が悪かったと記憶する。
質の悪い翻訳者がのさばると、我が国にとって損失だ…というのは言い過ぎかも知れないが、少なくとも原著者に対して失礼ではあろう。彼ら翻訳者は日常的に英語に触れていて、物の考え方自体が英語化しているのだろうが、日本語アタマの読者に真摯に内容を伝える努力はして欲しい。翻訳の質が高いもので同じ“ビジネス書”の分野で最近読んだ本では、例えばE・シュミット他(著)/土方奈美(訳)「How Google Works―私たちの働き方とマネジメント」(Amazon拙書評)の翻訳は一級品だ(上記の櫻井祐子氏もビジネス、科学と幅広い分野で翻訳をしているが、名訳が多い)。多くの翻訳業者さんに、こういう質の翻訳を目指して欲しいと思う。

原著者と、邦訳版権を取った英治出版との、いずれの意図かは判らないが、どうにもベストセラー「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの尻馬に乗って稼いでやろうという意図があったのではないか? …というのは深読みだろうか? (「ビジョナリー・カンパニー」の原題“Built to Last”に対して、本書「ビジョナリー・ピープル」の原題は“Success Built to Last”と似たものになっている。邦題もよく似ている。)

◆参考図書:「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの既刊
  • ジム・コリンズ、ジェリー・I・ポラス「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」(1995) (Amazon拙書評)
  • ジム・コリンズ(著), 山岡 洋一(翻訳)「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」(2001) (Amazon拙書評)
  • ジェームズ・C・コリンズ(著), 山岡洋一(翻訳)「ビジョナリーカンパニー【特別編】」(2006) (Amazon拙書評)
  • ジム・コリンズ (著), 山岡 洋一 (翻訳)「ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階」(2010) (Amazon拙書評)
  • ジム・コリンズ, モートン・ハンセン(著), 牧野洋(翻訳) 「ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる」(2012) (Amazon拙書評)

2015年4月15日水曜日

マイケル・E. ポーター「競争戦略論 (Ⅰ・Ⅱ)」

しばらくエンタメ系の本が続いたが(ダン・アリエリーの行動経済学はエンタメ本ではないが読み味はライトだった)、久しぶりにチョットお堅い本を。

 

マイケル・E. ポーター(著)、竹内 弘高(翻訳)「競争戦略論 Ⅰ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478200505/>
単行本: 270ページ
出版社: ダイヤモンド社 (1999/06)
ISBN-10: 4478200505
ISBN-13: 978-4478200506
発売日: 1999/06

マイケル・E. ポーター(著)、竹内 弘高(翻訳)「競争戦略論 Ⅱ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478200513/>
単行本: 355ページ
出版社: ダイヤモンド社 (1999/08)
ISBN-10: 4478200513
ISBN-13: 978-4478200513
発売日: 1999/08

[書評] ★★★★☆

◆概要:

ハーバード・ビジネススクールのポーター教授による、企業や産業、国家の競争戦略に関わる著作。業界団体・関連産業・産業地域(クラスター)や国家の競争戦略に関わる内容も見られるが、メインは企業戦略。経営戦略の古典とも言える本であり、一部古い情報もあるが、考え方については今でも充分参考になる。

日本企業にとって特に参考となるのは、以下の2章だと思う。特にⅡ-第2章は、Ⅱ巻の4割のページを割いており、力の入りようが分かるというものだ。
  • Ⅰ-第2章 「戦略とは何か」
    企業のポジショニング;誰を顧客とし、誰を顧客としないか。潜在顧客の全てを追おうとすると、自社のポジショニングが曖昧になる。競合他社のベンチマークに注力すればするほど、他者と類似した事業となってしまう(均一化が進んでしまい、商品やサービスの差別化が出来なくなってくる)。競争戦略の本質は差別化である。売上げやシェアに目が眩むと、ターゲットを絞るのは難しいが、得意とする市場・顧客・商品に絞り込むことで、高い収益性を確保できるというのは、考えてみれば当たり前の話ではある。
    • 顧客を絞るということは、潜在的な売上・シェアを見捨てるようなもので、心理的に難しいかもしれない。しかし、事業の利益率を向上させるには、このポジショニングを明確にすることが重要だと述べる。
    • ポジショニングを明確にするということは、やみくもな成長の対極である。顧客を絞らず売上げ・シェアの拡大に走ると、多くの場合、事業の利益率を悪くしてしまう(最悪の場合、拡大する資金繰りに行き詰まり、「黒字倒産」に至ってしまう場合もある)。
    • なお、自社のポジショニングの設定は事業部マネジャーの決めるべきものである。企業内の全ての活動は、これにフィットした形で進めなければならない。誰を顧客にするか/しないかは、開発・製造は勿論、社内の多くの(全ての)部署で徹底されなければならない。例えば、営業部門の従業員の業績評価にも反映させなければならない。営業部隊は「売上増」「シェア拡大」で評価されることが多いが、この業績評価の仕方自体を自社のポジショニングにフィットするように変えなければならないということだ(これが実践できている日本企業は少ないだろうが、日東電工の「グローバル・トップ・ニッチ」戦略はポジショニング絞り込みの好例である)。
  • Ⅱ-第2章 「クラスターと競争」
    業界団体、関連産業(企業集団)、学術団体、産業地域といったクラスター全体の競争力を上げる処方箋について書かれている。
    事業の競争力を、クラスター(企業をとりまく関連企業、業界、地域)といった観点から考えるのは、ある意味新鮮だ。
    なお、以下については別途検討が必要。
    • クリステンセン教授の言うところの「破壊的イノベーション」に襲われてしまうと、新興産業が出来て、既存業界が衰退してしまうこともあり得る。この対処法については、別途検討する必要がある(市場や業界の狭い範囲でなく、より広い範囲での技術動向などに注目する目利きの担当者を置く必要があろう)。
    • 業界団体の競争力向上に関するテーマであっても、工業規格や業界標準を策定する際は、企業同士の綱引きが起こり得る(規格制定はゼロサムゲームになりやすい)。これについても別の戦略が必要となろう(多くの場合、リーダー企業がデファクト・スタンダードを作り、これを業界規格にしてしまうという手法が用いられるが)。
◆内容(目次より):

Ⅰ-第1章:競争優位が戦略を決める
Ⅰ-第2章:戦略とは何か
Ⅰ-第3章:情報をいかに競争優位につなげるか
Ⅰ-第4章:衰退産業における終盤戦略
Ⅰ-第5章:競争優位から企業戦略へ
Ⅱ-第1章:国の競争優位
Ⅱ-第2章:クラスターと競争
Ⅱ-第3章:グローバル企業に学ぶ勝ち方
Ⅱ-第4章:多くの立地にまたがる競争
Ⅱ-第5章:資本の損失

◆関連図書
  • M.E.ポーター「競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか」(ダイヤモンド社、1985/12) (Amazon拙書評)
  • M.E.ポーター「競争の戦略」(ダイヤモンド社、1995/3/16) (Amazon拙書評)

2015年4月11日土曜日

武田 綾乃「響け! ユーフォニアム」(1~3巻)

武田 綾乃(著)「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4800217474/>
文庫: 319ページ
出版社: 宝島社 (2013/12/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800217474
ISBN-13: 978-4800217479
発売日: 2013/12/5

武田 綾乃(著)「響け! ユーフォニアム 2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4800239060/>
文庫: 321ページ
出版社: 宝島社 (2015/3/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800239060
ISBN-13: 978-4800239068
発売日: 2015/3/5

武田 綾乃(著)「響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4800239826/>
文庫: 382ページ
出版社: 宝島社 (2015/4/4)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800239826
ISBN-13: 978-4800239822
発売日: 2015/4/4

[書評] ★★★★★

本屋(実店舗)で注目本として平積みされていたので、つい。…これが買って大正解!

内容は、コンクール全国大会を目指して頑張る吹奏楽部員たちを描いた、爽やかな青春小説。同級生や先輩との人間関係、厳しい練習、コンクール出場メンバーの選抜に伴うアレやコレ、学業と部活の両立、進路、恋愛、家庭の問題。みんな色々抱えているけど、それでも自分に出来ることを頑張っている。優れた指導者の下で努力した人にしか味わえない緊張や興奮が味わえる作品。文句無しに面白い! 吹奏楽経験者は、コンクールに出ていた人も、そうでない人も、親近感を抱いて読める良作。

作風は、心理描写が秀逸。文体や表記に、作者の拘りと細かな気配りといった丁寧な仕事が見られるのも好印象。本作はライトノベルに分類されることが多いようだが、内容は至って正統派の作品。可愛いキャラクターの描かれた表紙(しかも1巻は着せ替え表紙)、原作小説に加えてコミック化・TVアニメ化という複合メディア戦略は、ライトノベルに多用される手法ではある(笑)。でも絵柄がどうこうの前に原作がとても面白いので許す(笑)。

なお、3巻までで区切りの良い所なのだが、続編は出るのかな? ちょっと期待♪

余談:
『のだめカンタービレ』でピアノやバイオリンを始める人(子供にピアノやバイオリンを習わせる親御さん)が増えたらしい。『けいおん!』でギターやキーボードを始める学生が増えたとのこと(この点については、原作のギャグ漫画を音楽アニメの形にした京都アニメーションの貢献大)。本作『響け!ユーフォニアム』とその派生作品の影響で、吹奏楽を始める人が増えそうな気が…(本作品もTVアニメ制作は京アニなので期待できるかも?)。また今回も、楽器屋さん・音楽教室・メンバー不足の吹奏楽部などに福音となるかも?!

2015年4月8日水曜日

石塚 真一 (著)「BLUE GIANT」(4・5巻) (コミック)

 

石塚 真一 (著)「BLUE GIANT 4 (ビッグコミックススペシャル)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4091868282/>
コミック: 208ページ
出版社: 小学館 (2014/12/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091868282
ISBN-13: 978-4091868282
発売日: 2014/12/26

石塚 真一 (著)「BLUE GIANT 5 (ビッグコミックススペシャル)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4091868509/>
コミック: 200ページ
出版社: 小学館 (2015/2/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091868509
ISBN-13: 978-4091868503
発売日: 2015/2/27

[書評] ★★★★☆

兄に買ってもらったテナーサックスで「世界一のジャズプレイヤー」を目指す主人公の宮本大(ダイ)くん、高校を卒業して、普通には就職せず、東京に出てきちゃいました。住処は、大学進学した高校同窓生の下宿(要するに居候)。仕事は、飲食店や工事現場の肉体労働。主人公、お金が無いながらもジャズバーに出入りして、凄い(かも知れない)ピアニストと衝撃の出会いをします。このピアニスト、大学をサボりまくっている学生なのですが、音楽について言うことは一丁前。
  • 死ぬほど努力を積もうが、手にマメができるほど楽器を吹こうが、才能のない奴は、全っ員ヘタクソ。
  • ヘタや奴と組むってさあ、時間の無駄以外の何ものでもなくね? 無意味って思いません?(いずれも5巻、pp. 30-31)
まぁ正論なのかも知れません。でもですねぇ、私は、複数人で演奏する音楽って、プレイヤ同士の能力の単純な足し算ではなく、化学反応による掛け算とかもあると思うのですよ(音楽に限らず、仕事とかもそうですよね)。化学反応ですから、凄いプレイヤ同士で合奏したのに訳ワカラン演奏になってしまった、等の相性の善し悪しもありますけどね。化学物質同様、接触した途端に爆発…なんてケースは人間社会でも実際に起こることです(そしてそこには、「良い爆発」と「悪い爆発」の両方があります)

閑話休題。

読んでいて思うことは多々あれど、今後大きく展開することが予想(期待)されるストーリー。1~3巻を読んだ時の衝撃が大きかっただけに、ショボい展開になったら許しゃしませんぜ(笑)。

1~3巻の書評(リンク)では、「無茶&強引な設定が多いが、そんなのどうでも良くなる位、ドライブ巻の強いストーリー。熱い」 なんて書いてしまいましたが、このテンションを維持し続けて欲しいものです。作者さんは大変でしょうけど。


◆既刊(1~3巻)Amazonリンクと拙書評:

2015年4月4日土曜日

ダン・アリエリー「不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」」

ダン・アリエリー「不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150504059/>
文庫: 448ページ
出版社: 早川書房 (2014/3/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150504059
ISBN-13: 978-4150504052
発売日: 2014/3/20

[書評] ★★★★☆

『予想どおりに不合理』(Amazon拙書評)の続巻。『予想どおりに~』では、人間の不合理性の面白い点、直観と違う点について述べられていたが、本書では、人のこころの不合理さの悪い点だけでなく、良い点についても述べ、自分の不合理さを知ってよりよく生きる方法について述べている。また、不合理な判断についての性差(男と女ではものの感じ方が違う!)について、実験を通して分かった差も書かれており、非常に興味深い。
  • 人にやる気を持たせるには?
  • 試験で実力を発揮するためには?
  • 感情に駆られてとんでもない前例を作らないためには?
  • 自分にぴったりのパートナーを見つけるには?
  • 日々のちょっとした幸せを長続きさせるには?
…こういった事柄について色々なヒントが含まれている。

社会人としても色々と応用が利く。たとえば、
  • お金を無駄遣いせずに所有欲を満足させるには?
  • 家庭生活をよりよいものにする為には?
  • 子どもや仕事仲間の「やる気のスイッチ」を入れるには?
  • プレゼンやセミナーはどう行うと効果的か?
何はともあれ、多くの人に役立つ本だと思う。

・  ・  ・  ・  ・

但し、本書に書かれたことは逆に悪用できてしまう。例えば以下のようなことについてのヒントも得られてしまう。
  • 誰かの気持ち/決断を(自分に都合の良い方向に)誘導する方法
  • ライバル(個人)の心を折り、蹴落とす方法
  • 嫌いな部下を腐らせ、業績を悪くする方法(成果に価値を認めない、無視する、左遷、窓際に追いやる、…等には“効果”があるらしい)
本書を「皆がより良く生きる」ために活用してくれるのは大いに結構だが、他人を不幸にさせる為に活用するのは出来れば避けて欲しいところだ。

2015年4月1日水曜日

ダン・アリエリー「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」

ダン アリエリー (著), Dan Ariely (原著), 熊谷 淳子 (翻訳)
「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150503915/>
文庫: 448ページ
出版社: 早川書房 (2014/3/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150504059
ISBN-13: 978-4150504052
発売日: 2014/3/20

[書評] ★★★★★

少し前に流行った、行動経済学/判断・意思決定科学の本。非常に面白い。

例えば、アダム・スミスの考えた経済学は、人間の行動が合理的だという仮定に基づいている。が、実際の人間の行動(経済活動)には不合理なものが多いという。この不合理性に一定の規則性があると考え、人間の不合理な行動は予想できるという内容。この“不治の病”を知り、自覚することで、我々はよりよい選択を行うことが出来るというのが本書の狙いだ。

本書に出てくるテーマとしては、たとえば以下のものがある。
  • 複数の選択肢の中に「おとり」を入れることによって、我々の選択は誘導される?
  • 需要と供給の間には、アダム・スミスが言うような「見えざる手」は働かない? (供給側により需要が操作されている?)
  • 我々が自分の物を過大評価してしまうのは何故か?
  • 我々が「先延ばし」をしがちなのは何故か?
  • 選択の自由を残そうとして、大切なものを手放してしまうことが多いのは何故か?
  • 「話せばわかる」はウソである? (双方が違うレンズを通して物事を見ている限り、共通認識は得られない?)
  • 薬は高価な物の方がよく利く?
  • 現金に直接触れるのではない場合、我々は不正行為に手を染めやすい?
本書(に書かれた研究)の秀逸な点は、上記のようなテーマを、実験によって徹底的に客観的にとらえたところ。さらに、書き方もイカシている。著者曰く、「学者っぽくない文体」を目指したとのことだが、アルファブロガーの面白い記事を次々と読んでしまうように、ぐいぐい引き込まれるイケている文章。「行動経済学って何?」な人にも非常に読みやすく、入門書として最適だと思う。原著も良かったのだと思うが、翻訳も素晴らしい!

マーケティング担当者は勿論、教育者・指導者・その他大勢の人にお薦めできる。良書。