年末年始モードで音楽系小説が大フィーバー(笑)。「響け!ユーフォニアム」シリーズと「岬洋介」シリーズ合わせて連続11冊(!)。とりあえず、今回で打ち止めにします(次から暫く、従来通り、少し硬めの本を中心にします)。
中山七里「どこかでベートーヴェン」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4800255678/>
単行本: 332ページ
出版社: 宝島社 (2016/5/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4800255678
ISBN-13: 978-4800255679
発売日: 2016/5/25
[書評] ★★★★☆
「さよならドビュッシー」に始まる探偵ピアニスト・岬洋介シリーズの4冊目にして最新刊。
本書は、4冊の時系列の中では一番初めにあたる。音楽科の高校生として、我らが主人公・岬洋介が登場する。語り部は岬洋介と同じ高校のクラスメイト、鷹村亮。新設されたばかりの高校の音楽科、第2期生。ここで岬洋介は転校生として登場、天災と人災に巻き込まれつつも見事に解決。
ミステリー作品を著者から読者への挑戦と捉えると、今回の作品の難易度はそれほど高くない。犯人は、皆とは異なる行動を取っていた人。人間関係も特殊な人で、動機も比較的解り易い(ちょっとヒネリはあるが)。そういう訳で、本書で読者は探偵高校生・岬洋介クンと一緒に推理を行うことが出来る。語り部の証言で混乱させられる部分があるものの(鷹村亮クンは他人への好意により一部事実を隠してしまう)、それまでに出てきた描写との矛盾から(違和感を感じさせる)、読者は犯人はすぐに察しがつく。難しいのは、犯行の場所・方法だが…。シリーズ1冊目・『さよならドビュッシー』のような大ドンデン返し(究極の叙述トリック!)は無く、構成は比較的平坦で素直に読み易い。
さて、本作も演奏される楽曲と心理状態とを交互に描写し、曲調(有名ドコロ)を巧みに利用して読者に強いインパクトを与える書き方。毎度のことながら非常に上手だと思う。読んでいると、聞こえていない筈のピアノ曲が聴こえて来るような気がする。が、BGMを聴きながらでは読みにくい本というのも珍しい(笑)。(←私は読書中はクラシックやスムーズ・ジャズを聴いていることが多いが、岬洋介シリーズを含む幾つかの作品=音楽系の小説・コミック=を読む時は、BGM無しが良いこともあるようだ。)
一部ネタバレになるのだが:前作までとの関係が明らかになる箇所があり、シリーズを続けて読んでいる読者にとっては嬉しい限り。
- プロローグで、前作「いつまでもショパン」(シリーズ3冊目)の事件に関するTV報道が出て来る。ニュースで流れる「岬洋介」に今回の語り部・鷹村亮が衝撃を受け、10年前の高校時代を回想する…という形をとっている。
- 本作までに明らかにされていることだが:探偵ピアニスト・岬洋介は、突発性難聴という持病を持っている(音楽家としては“爆弾”を抱えているに等しい)。本作では、この発症に関するエピソードが描かれおり、前出の作品の設定に対する説明回ともなっている。
- エピローグには、「僕はあの夏のことを包み隠さず書き残そうと思う。(……中略……) 僕はパソコンを起ち上げると、真っ白な原稿に早速タイトルを打ち始めた。『〈どこかでベートーヴェン〉中山七里 』」。語り部が回想しながら書いた作品がこの本です…的なスタイルは最近の流行なのだろうか?(←最近の他の作品でも似た様式を度々見るのだが…。)
音楽ミステリーとしてはカナリ面白い。トリッキーな技巧(叙述トリックなど)は使われておらず、ミステリー初心者にも読み易いだろう。楽曲の描写を巧みに使った心理表現が瑞々しいので、特に音楽好きな人にオススメ。
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探偵ピアニスト「岬洋介」シリーズ既刊リスト(Amazonリンク&書評へのリンク)
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