2017年1月1日日曜日

中山七里「さよならドビュッシー」

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

新年1発目はユルめで行きます(笑)。


中山七里「さよならドビュッシー」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4796679928/>
文庫: 415ページ
出版社: 宝島社 (2011/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4796679928
ISBN-13: 978-4796679923
発売日: 2011/1/12

[書評] ★★★★★

第8回『このミステリーがすごい!』(2009年)大賞大賞受賞作。少し前の本なのと、映画化・TVドラマ化もされた作品の原作なので、既読という方も多いかも知れない。

まず最初に:メチャクチャ面白い! 翻訳家・評論家の大森望氏が解説(巻末)に書いている通り、まさに「音楽+スポ根+ミステリのハイブリッド」。著者が無類の音楽好きだからだろうか、音の描写が非常に瑞々しい。クラシックの有名なピアノ曲が多いからかも知れないが、文章を読んでいるだけで楽曲が頭の中で鳴り響くようだ。

心理描写が細やか。登場人物の動作や、語り部(主人公、“あたし”)の精神状態の表現が巧み。加えて、楽曲やピアノ演奏に関する表現も豊かで、ミステリー好きでなくても音楽好き(特にピアノ弾き)には非常に楽しめる1冊だと思う。ただこの主人公、火事により全身大火傷とか大好きな祖父と仲良しの従姉妹を喪うとか、大怪我からの社会復帰とか高校(音楽科)でのいじめとか、壮絶な経験をしているとはいえ、15~16歳の女の子が世の中を達観し過ぎている。音楽の描写等を除くと、かなり殺伐とした世界観なので、そういうのが好きでない人は読まない方が良いかも知れない。エンディングに向けて、スポ根的と言うよりもむしろ狂気の世界に入って行く。ラストはドンデン返し。これは究極の叙述トリック。この展開、好き嫌いがハッキリ分かれる所かも知れない(でもバラしたらつまらないので書きません/笑)

所々に登場人物の動作が不自然な場所があったりするが、これらの多くは伏線。回収される場面で、「どこの描写だったかな…」とページを遡ってしまうと、読書が進まない進まない(笑)。お陰で、400ページ少々の本ですっかり睡眠不足。たっぷり楽しめた。

音楽好き(ピアノ弾き)、ミステリー好きの多くに薦められる本だと思う。

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ネタバレがあるので、以下は読後に見ることをお勧めするが、Wikipediaに本作品の構想や、著者プロフィール(結構ユニーク!)が書かれている。興味のある方はコチラもどうぞ:
  • 本作品について→Wikipedia
  • 著者:中山七里氏(48歳で作家デビュー!)について→Wikipedia
余談:本書を1巻とするピアニスト「岬洋介シリーズ」は、銀座ヤマハの3F (楽譜・書籍売り場)の店員さんもイチ押しのシリーズとのこと。あんまりステキな笑顔で薦められたので、1冊だけ試しに読んでみようと思ったのが…つい全巻買ってしまったではないか(笑)。(←他の本も近々レビューします)。以下にAmazonリンク付けておきます。
  1. 「さよならドビュッシー」(単行本文庫本)
  2. 「おやすみラフマニノフ」(単行本文庫本)
  3. 「いつまでもショパン」(単行本文庫本)
  4. 「どこかでベートーヴェン」(単行本) (※未文庫化)

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