2012年6月24日日曜日

P.F.ドラッカー「イノベーターの条件」

P.F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)
はじめて読むドラッカー (社会編)
「イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか」

<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300623/>
単行本: 280 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300623 ; (2000/12)
[書評] ★★★★☆
 本書も、他の「はじめて読むドラッカー」シリーズと同様、ドラッカー氏の著作のうち、特に重要そうな物を抜粋・再編集・再訳した本である(その割に主張が首尾一貫していて、短編集的には見えないのは、 編訳者・上田惇生氏の腕によるところが大きいのだろう)。
 本書は、ドラッカー氏の著作のうち、社会論をまとめたものである。 特にナチス・ドイツの興隆と社会主義の始まりに触れ、全体主義が興った理由を追究し、 資本主義が栄えた理由、そして、資本主義社会がその限界に来ている今日、 資本主義社会の次に来るべき社会(「ポスト資本主義社会」)について論じる。
 社会論の本だけに、『はじめて読むドラッカー』シリーズの他の2冊(「プロフェッショナルの条件」、「チェンジ・リーダーの条件」)と比較すると、1技術屋から見て、とっつきにくい本であることは否めないが、 本書の価値は、世の中の体制の歴史を俯瞰することよりも、 今後来るべき社会を読む、という部分にある。
 ドラッカー氏は、資本主義社会の次に来るべきものは、知識社会であると言う。すなわち、今後の社会を動かすものは、お金(資本)ではなく、個々人の知識であると言う。 知識は使っても減ることは無い「資源」であるが、それ単体では新しいものを生み出さない(その「知識」を有効に使ってくれる誰かに伝えないと、 世の中の訳に立つ形では使われない)ものである。 企業などの組織が行う「マネジメント」は、今後、 人・物・金をマネジメントする以外に、この「知識」もマネジメントし、 活用して行かなければ生き残って行けないとドラッカー氏は言う。すなわち、企業のミッションは、構成員(従業員)を惹き付け続け、 彼らの知識を有機的に組み合わせて、成果・業績に結び付けることである。
 これがどのような社会、どのような組織(企業など)になるか、 具体的なことは分からない。が、平たく言うと、構成員(従業員)とその「知識」を「活かす」ことの出来ない組織は存続し得ない、とは言えそうである。

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