2013年1月31日木曜日

立花隆「「知」のソフトウェア」

立花 隆 (著)
「「知」のソフトウェア (講談社現代新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4061457225/>
新書: 236ページ; 出版社: 講談社 (1984/3/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4061457225; ISBN-13: 978-4061457225; 発売日: 1984/3/19
[書評] ★★★★★
 本の読み方、取材の仕方、文章の書き方、と「知的活動」の方法を網羅的に示した本。 取材の仕方、文章の書き足し方・削り方に関するくだりは圧巻。ジャーナリストとしての立花氏の経験と姿勢がそのまま書かれている。
 文章を書くことが多い仕事をしている人は、ジャーナリスト以外の人にも学べるものが多い。あとがきで“本書の内容を一言で要約すれば、「自分で自分の方法論を早く発見しなさい」ということ”、“本書を含めて、人の方法論に惑わされてはならない”と書いている辺りは逆説的で面白いが、 立花氏のキャラクターが出ていると言えようか。

板坂元「考える技術・書く技術」

板坂 元 (著)
「考える技術・書く技術 (講談社現代新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4061157272/>
新書: 211ページ; 出版社: 講談社 (1973/8/31); 言語 日本語; ISBN-10: 4061157272; ISBN-13: 978-4061157279; 発売日: 1973/8/31
[書評] ★★★★☆
 読書の仕方、情報(資料)の整理の仕方、解り易い文章の書き方について述べた本。 順序だてて明解に書かれている良書だと思う。
 本を読みながら、線を引き、メモを書き込むことを薦めている点は、 渡部昇一氏(「知的生活の方法」)と共通している。この他に、ネタ(資料)はしばらく寝かせて、バラバラのカードに書いた内容が“醗酵”して頭の中で有機的につながってから文章を書き始めると良い、と書いているが、これは自分の経験からも納得できる。
 余談だが、渡部昇一氏と並んで、板坂元氏も環境や道具に非常にこだわる人のようだ。 文房具や本棚といった小物・大物へのこだわり方は尋常ではない。こだわることが「知的な人」の条件とは言い切れないだろうが、 「知的な人」の多くがこだわりを持つ、とは言えるかも知れない。

2013年1月29日火曜日

渡部昇一「知的生活の方法」

渡部 昇一 (著)
「知的生活の方法 (講談社現代新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4061158368/>
新書: 214ページ; 出版社: 講談社 (1976/4/23); 言語 日本語; ISBN-10: 4061158368; ISBN-13: 978-4061158368; 発売日: 1976/4/23
[書評] ★★★☆☆
 知的生活、特に読書を中心とした活動のための指針を示す本。 本当にわかっていないものを解ったふりをしてはいけない(わかったフリをすると自身の向上の妨げとなる)、 面白いと思った本は繰りかえして読む、本は身銭を切って買い身近に置いておく等、まっとうだがなかなか実行できないことが多く書かれている。
 本を読むとき、最初からノート・メモ等をとろうとしないで、読みながら線を引き、メモを書き込むなど、愛書家には耐え難いことを薦めている箇所もあるが、ノートやメモは、線を引き、書き込んだメモから作れば、精読にもなり読書の効果が高い等、 成程と思えることも多々あり。
 ただ、知的生活の為にワインとチーズが良くビールは駄目だとか、よくわからないコダワリもあり、そこは適当に流して読んでも良いだろう。また、本書では、知的生活には本を所蔵する空間と頭を活性化するための空間が必要であると説き、そのための書斎を中心とした家づくりにまで言及している。 悪いとは言わないが、読書以外のことが何も出来ない家になっちゃうんじゃないか?など、 余計な心配をしてしまった。
 一部「何もそこまで…」な箇所はあれど、読むと「へえぇ、成程」な箇所が結構多い。 「知的生活の方法」というタイトルがちょっとクサいが、 読書好きな人にはお薦め出来る本だと思う。

2013年1月28日月曜日

杉村太郎ほか「ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか」

杉村 太郎 (著), 丸田 昭輝 (著), 細田 健一 (著)
「ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか (英治出版MPAシリーズ) [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4901234595/>
単行本: 317ページ; 出版社: 英治出版 (2004/12/1); 言語 日本語; ISBN-10: 4901234595; ISBN-13: 978-4901234597; 発売日: 2004/12/1
[書評] ★★★★☆
本書は、ハーバード・ケネディスクールに留学した日本人15人が共著者として書いた本。 国家公務員、政治家を中心とする多彩な人材だ。これらの優秀な人材が、ケネディスクールで学んだことのエッセンスを書いている。
バーバード・ケネディスクール(Harvard University, John F. Kennedy School of Government)は、世界中に、特に政治・行政などの公共分野、ビジネス界に多くのリーダーを輩出してきた。ビジネススクールがビジネス界、ロースクールが法曹界、メディカルスクールが医療界の向上を目指してきたように、ケネディスクールは、あらゆる分野を包含した社会全体をよりよいものいすることをミッションとしている。
ビジネススクールがMBA(Master of Business Administration)を与えるのに対し、ケネディスクールはMPA(Master of Public Administration)という学位を与える。 世界中の超優秀な公務員や政治家志望のエリートが集り、著名な教授のもとでしごかれるという。
すごい人たちがいるものだと思うと同時に、リーダーシップ、交渉術、etc. etc.について色々と考えさせてくれる良書。

2013年1月27日日曜日

ジェイ・エイブラハム「ハイパワー・マーケティング」


ジェイ・エイブラハム (著), 金森 重樹 (翻訳)
「ハイパワー・マーケティング (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4757302878/>
単行本: 334ページ; 出版社: インデックス・コミュニケーションズ (2005/2/19); ISBN-10: 4757302878; ISBN-13: 978-4757302877; 発売日: 2005/2/19
[書評] ★★★☆☆
営業職がスーパーな営業職たりえる為のノウハウを詰め込んだ本。 顧客が本当に求めているものは何か? を考え、行動する為に具体的にどのようなことが出来るかを示しているという意味で有用。
 本書の第3章にある50の問いに真面目に答えれば、 自分自身と自社について、強みと弱みの分析を行い、 具体的な行動指針は自ずと出てくるようになっている。それ以降の箇所で、その具体的内容を補強する。
 本書は、いわゆる営業職以外にも役に立つだろう。 経済活動に携わる全ての人(企業人)は、 自分のアウトプットを誰かが「買って」貰って初めて、 自分の属する組織や社会に貢献することができる。すなわち、自分のアウトプットの売り込み方、 顧客(自分のアウトプットを必要とする人全て)への接し方等、 参考になることが多い。
 本書は、成功するためには自分自身の成功の定義を明確にすることが必須だと言っている。そこから、自分の目標を設定し、そこに向かって邁進すれば良い。 至極真っ当だ。ビジネスマンの9割が目標を持っていないらしいが、ここから始めることが「ひとつ上のビジネスマン」への第一歩になるだろう。

 本書の残念なことが、監訳者が何億円もの借金をして不動産取引業を始めた、リスク志向の高い人であること、 原著者を崇拝する団体がチョットいかがわしい集団になっていること。そういった辺り、どうしても割り引いて読まざるを得ないが、 本書から得られるものは、必ず少なくないと言っておこう。

2013年1月26日土曜日

山下貴史「あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由。」

山下 貴史 (著)
「あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由。(単行本(ソフトカバー))」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4534042523/>
単行本(ソフトカバー): 205ページ; 出版社: 日本実業出版社 (2007/6/28); ISBN-10: 4534042523; ISBN-13: 978-4534042521; 発売日: 2007/6/28
[書評] ★★☆☆☆
 マーケティングの力、上手な売り方、というものを平易に説いた本。マーケティングといったものを全く知らない人が読んでも読みやすく書かれていると思うが(キャッチーなタイトルは、やはり幅広い読者を狙ったものだと考えるべきか)、 当たり前のことばかり書かれており、得るものはあまり無いと思う。

2013年1月25日金曜日

平山賢二「儲けるものづくり―生産拠点戦略のワナを見抜け」

平山 賢二 (著)
「儲けるものづくり―生産拠点戦略のワナを見抜け」
<http://www.amazon.co.jp/dp/476936153X/>
単行本: 235 p ; 出版社: 工業調査会 ; ISBN: 476936153X ; (2003/12)
[書評] ★★★★☆
 原価計算でどんぶり勘定していませんか?  製品別・顧客別にきちんと利益率の管理をしないと、 企業の収益性すなわち戦闘力が落ちますよ、が趣旨。その中で、特にチャイナメーション(人件費の安い地域で行う大量生産)を行う場合の留意点、 検討すべきコスト試算等について詳細に書かれている。 内容は非常に実践的で役立つと思うが、 一本調子で読み通すのにかなりの気力を必要とする。その分だけ★一つ減らしました。その一点を除くと良書だと思う。 製品製造(特に業務)に関わる人は勿論、営業・営業技術・開発の人も読む価値ありだと思う。
※開発部門のメンバーも、 開発した製品をどの拠点で製造するかを検討する必要に迫られる場合がある。この時、過去に他の人がやった検討事例だけでなく、 本書に示された事例等も参考にすると良いのではないか。

2013年1月22日火曜日

きたみあきこ「Excel VBAマスターブック」

きたみ あきこ (著)
「Excel VBAマスターブック 2003&2002対応 WindowsXP版」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4839915466/>
単行本: 271ページ; 出版社: 毎日コミュニケーションズ (2006/6/1); ISBN-10: 4839915466; ISBN-13: 978-4839915469; 発売日: 2006/6/1
[書評] ★★★★☆
 Microsoft ExcelでVBAを初めて使ってみるという人におススメの1冊。 良書だと思うが、「細かいことを気にせず、とりあえず何かやってみる」タイプの人向けの本だと思う。 「Microsoft Excel Objects」と「標準モジュール」の違いとか、コードウィンドウの上にあるプルダウンメニューを違うものにしたらどうなるのか、Subの前にPrivateを付けたり付けなかったりの違いとか…等々、 気にし始めたらキリがないが(こういう人はマイクロソフトの公式解説書を見るべきだろう)、 「まずはやってみる」で良いと思う。 本書は、VBAの仕様を示す本ではなく、細かな注釈も一切省いて読みやすくした本なのだと考えるべきだろう。
 ネット上には、VBAのコード例もたくさんあるので、よほど高度なことをするのでない限り、この本とVBAのコード例でたいていのことは解決する。(ネット上のコード例は玉石混交なので、使用は個人の責任において、となるが。)
 エンジニアという職業柄、「何を今さらVBA…?」ではあるのだが、 今までVBAを使わずに済むようにC/C++に逃げていたので(マシンパワーが必要な計算はWindowsでなくPC-UnixでC/C++を使ってきた)、実はVBA初心者だったのである。 私はこの本でVBAの1歩目を踏み出した。これからVBAをいじってみたいという人におすすめできる本。
 なお、後半に行くに従い、あれもこれも、といった書き方になって来て、チョット読みづらい箇所がある。また、後述の項目を前提とした記載が出てきたり、 説明がすっぽり抜け落ちている箇所があるので、 教科書として使うには多少注意が必要だ。IT関連のマニュアル本にはありがちなのだが。。。

P.S.
書評のアップが数日滞ってしまいました。申し訳アリマセヌ。。

2013年1月16日水曜日

エンゾ早川「ジロ・ディ・箱根」

エンゾ・早川 (著)
「ジロ・ディ・箱根 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4575301329/>
単行本: 341ページ; 出版社: 双葉社 (2009/05); ISBN-10: 4575301329; ISBN-13: 978-4575301328; 発売日: 2009/05
[書評] ★★★★★
 熱い。面白い。読ませる。この人の本は色々な意味で危ない。 一歩間違えると“入信”(?)してしまいそう。と言いつつ、茅ヶ崎エイドステーションに一度行ってみたい気もする。
 ところで。 早川さん、貴方も「見える」「聴こえる」人なんですね。 読ませる為にふくらませている部分はあるとは思うんだけど、 何も見えない人・聴こえない人だったら、こうは書けないと思う。
 危ないと知りつつ、それでもまた読んでしまう。そういう麻薬的なモノが、この人の本にはある。 自転車とか乗っていないと理解できないのかも知れないケド。。。

2013年1月15日火曜日

エンゾ早川「エンゾ早川の体型大全」

エンゾ早川 (著)
「エンゾ・早川の体型大全 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4426104386>
単行本: 192ページ; 出版社: 自由国民社 (2007/11/30); ISBN-10: 4426104386; ISBN-13: 978-4426104382; 発売日: 2007/11/30
[書評] ★★★☆☆
 「体型大全」などという大層な題名を付けているが、 格好良い体型、格好悪い体型、セクシーなボディライン等について著者が評論し、好き勝手なことを書きいているだけの本。
 とは言え、自転車屋の店長・アスリート・物書き・イラストレーター等でもある著者の言には、結構な重みがある。
 健康に気を遣っている人や運動をしている人は、レクレーショナルな本として十分楽しめる。たまにはこういう本も良いかも。

2013年1月13日日曜日

エンゾ早川「ラクダのコブのある自転車乗りになりたい」

エンゾ・早川 (著)
「ラクダのコブのある自転車乗りになりたい (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4575299804>
単行本: 253ページ; 出版社: 双葉社 (2007/6/27); ISBN-10: 4575299804; ISBN-13: 978-4575299809; 発売日: 2007/6/27
[書評] ★★★★☆
 筆者・エンゾ早川氏は、自転車雑誌で「腰踏みペダル」等々、(今にして思えば)間違ったペダリング論が華やかなりし頃、 「正しいペダリングは骨盤を立てて、背中にコブが出来るような乗り方だ」と『バイシクルクラブ』で異論を述べ立てることにより、 銀輪道(?)のメインストリームにイキナリ出てきた自転車屋の店長。 自転車屋のみならず、自身もアスリートであり、また物書き・イラストレーター・革命家(?)という肩書きも持つ。エンゾ早川氏の文章は、なるほど、自称「科学者」と言うだけあって、プロのレーサーの観察と自分自身を検体にした人体実験(自転車乗りって何故か皆コレやるんだよね)の結果から、 骨盤を立てて乗るのが一番正しい乗り方だとする。この乗り方は、外観上、背中の中ほどにコブが出来るような姿勢になるので、これを「ラクダのコブ」と称する。バリバリ理系の私が読んでも非常にわかりやすい文章を書く。
 自転車の正しい乗り方のみならず、 自身の生き方についても述べる。 熱い。
 ちなみに、本書の筆者は私の1歳年上。でも、私なんか比較にならないくらいの修羅場を生きてきている。それも、近しい人を複数亡くすなど、激しい。 本書ではおチャラけた書き方をしているが、強い信念を持って生きている。 自転車にも強い信念を持って乗っている。この人と比べちゃうと、自分は何と甘い自転車乗りだったことか。
 しかしこの筆者、何だか生き急いでいるような気がするのは、私だけではないのではないだろうか。 「彼のように喪ってしまうことを考えたら、命を削ることなど少しも怖くない」(第1章の末尾より抜粋)――この一文、格好をつけて書いた訳ではなく、 筆者=「エンゾ・早川」氏の生き方を示す凄まじさというか、迫力というか、そういった力のこもった一文だ。 自転車好きな人、熱い男が好きな人には堪らない1冊だろう。

ガース・ウィリアムズ「しろいうさぎとくろいうさぎ」

ガース・ウイリアムズ (著), まつおか きょうこ (著)
「しろいうさぎとくろいうさぎ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4834000427/>
出版社: 福音館書店 (1965/06), ISBN-10: 4834000427, ISBN-13: 978-4834000429, 発売日: 1965/06
[書評] ★★★★★
 絵本・第3弾。この本も、大人と呼ばれる年齢になり、それなりの経験を積んでから読むと、 自分自身について色々と考えるキッカケになる。
 良書。

2013年1月12日土曜日

伊藤洋一「カウンターから日本が見える ―板前文化論の冒険」

伊藤 洋一 (著)
「カウンターから日本が見える 板前文化論の冒険 (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4106101831/>
新書: 208ページ ; 出版社: 新潮社 (2006/9/15) ; ISBN-13: 978-4106101830 ; ASIN: 4106101831
[書評] ★★☆☆☆
 食べ歩きが好きな伊藤洋一が、趣味的に書いた本だろう。それなりに面白い。
 ただ、本書の末尾でいきなり、日本の文化論に持っていってしまう辺りに、 無理矢理自論につなげているのではと、強引さを感じた。また、料理人や職人が尊敬される文化の日本は将来が明るいというが、ちょっとばかり楽観的に過ぎるのではないか(この辺り、「日本力」とも通じる)。
 取材がちょっと甘いかな、と思った。 名だたる料理人やその縁故者に取材はしているようだが、それ以外の取材をあまりきちんとやっていないなぁ、と思った。また、取材も自身の趣味の食べ歩きのついでに話を聞いたものをベースとした著述だけをしているように思える。
 特に、Wikipediaに頼りすぎているのは、どうかと思う。Wikiは確かに便利だが、きちんとauthorizeされていない情報、 誰もが書き込める(つまり間違った情報である可能性も否定できない)情報であるので、 裏を取らずに自分の著作に引っ張って来るのは、手抜きの感が否めない。
 多忙な伊藤氏のこと、いちいち出向いて調べたりはしにくいのかも知れないが、 書を著す以上は、それなりにきちんとした取材をして、 裏の取れた情報に基づいて書き物をしてもらいたいと思う。
 伊藤氏は、Podcast(「伊藤洋一のビジネストレンド」 「伊藤洋一のRound Up World Now!」)を聴くに、日米や諸外国の政府諸機関の発行する報告書や様々な経済紙など、 本当に幅広い情報ソースを持ち、また本当に色々なことを良く知っている人だと思うが、そうであるだけに、詰めの甘い著作を見ると、その落差にガッカリしてしまう。
 コツコツと事実データを集めて主義・主張を著すというより、 世の中のパッと見の情報を素早く分析して結論を出して意見を口述する方が得意な人なのだろう。
 とは言え、株とか為替とかの「お堅い」話の解説をメインとする人が、 軽い乗りの本を書いているというのも面白い。 気楽に読める本としては良いかも知れない。

2013年1月11日金曜日

伊藤洋一「日本力 ―アジアを引っ張る経済・欧米が憧れる文化」

伊藤 洋一 (著)
「日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062129825/>
単行本: 270 p ; サイズ(cm): 19 x 13 出版社: 講談社 ; ISBN: 4062129825 ; (2005/06/25)
[書評] ★★☆☆☆
日経ビジネス「伊藤洋一のビジネストレンド」、「伊藤洋一のRound Up World Now!」、 「森本毅郎・スタンバイ」等、Podcastのコメンテータとして有名な、 住信基礎研究所・主席研究員、伊藤洋一が書いた本の一つ。ポッドキャスティングが面白いので、この本も期待して読み始めたが、見事に裏切られた。1990年代の「失われた10年間」の間にも、日本の企業は足腰を鍛え、 世界に通用するレベルにあるぞ、日本はまだまだ大丈夫だぞ、というのがこの本の趣旨である。
 が、日本との比較対象が中印韓の3ヶ国のみであり、 議論のためのデータが少なすぎるのではないか。 日本悲観論を打破したい、という意気込みは良いが、明るい話題だけにしか注目していないのが欠点だろう。
…公平に見て、日本の将来は明るいのか? 今ひとつピンと来ない。 結論が薄いのも、この本の欠点。 伊藤洋一のPodcastプログラムはいつも楽しみに聞いているが、この本はちょっといただけない。という訳で、★2つにさせて頂く。

2013年1月9日水曜日

D・E・クヌース「コンピュータ科学者がめったに語らないこと」

D・E・クヌース (著), 滝沢 徹 (翻訳), 牧野 祐子 (翻訳), 富澤 昇 (翻訳)
「コンピュータ科学者がめったに語らないこと」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4434036173/>
単行本: 272 p ; 出版社: エスアイビー・アクセス ; ISBN: 4434036173 ; (2003/09/18)
[書評] ★★★★☆
 D.クヌース教授といえば、コンピュータ・アルゴリズムの研究(「文藝的纂法」)や コンピュータ組版システム「TeX」の開発で著名な研究者だが、 本書はそのクヌース教授の宗教研究の講義録である。
 本書(の元となった講義)で、クヌース教授は、聖書の各章の3章16節だけを原典、すなわちヘブライ語、場合によってはギリシャ語から翻訳し、既存の英訳とも比較する。それも、単に翻訳するのではなく、充分な吟味と適切な翻訳をしている。その姿はこれでもか!と言わんばかりに徹底的である。 科学者らしいアプローチではあるが、その対象が人間の作品とその解釈という、これまた人文的活動であり、クヌース教授がこの研究を心から楽しんで行ったことが見て取れる。
 日本ではクヌース教授は(TeXや計算機科学に関わっていない人にとっては)影の薄い存在かも知れないが、また、旧約聖書・新約聖書の充分な吟味・比較・解釈という意味では馴染みが無いかも知れないが、なかなか面白い。ちょっとマニアックな本と言えるかも知れないが、オススメできる。

ジェリー・パーネル「ジェリー・パーネルの混沌の館にて」

ジェリー パーネル (著), 日経バイト編集 (編集), Jerry Pournelle (原著)
「ジェリー・パーネルの混沌の館にて―カリスマ・ユーザーが綴るパソコン20年史」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822206645/>
単行本: 366 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822206645 ; (2004/10)
[書評] ★★☆☆☆
 SF小説家、ジェリー・パーネルが米「BIT」誌に寄稿していた記事(日本国内では、この訳文が日経コンピュータに掲載された)を整理・編集した本。BIT誌が休刊となった後は、パーネル氏は各国の提携誌に直接原稿を送っていたという。
 内容は、8ビットや16ビットのPCが主流だった頃から、 色々なPCやソフトウェアを仕事の道具として片っ端から試用した著者が、その使い心地をレポートしたり、展示会の様子をレポートしたり、と多岐にわたる。
 今これを読んで面白いと思うのは、 古くからコンピュータを使ってきた世代だけであろう。 回顧主義と言っても良い。コンピュータ・システムがどのように発展してきたかを示す、 歴史的作品としては価値があると思うが、 今の世代の人(特にコンピュータ業界以外の人)が読んでも、あまり得るものは無いかも知れないし、 第一、読むのが辛いのではないかと思う。
 かく言う私は、8bitPCからいじっていた世代なので、 本書を読みながらニヤリとしたりする箇所が多かったのだが、……。

2013年1月6日日曜日

勝間和代「お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践」

勝間 和代 (著)
「お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/433403425X/>
新書: 230ページ; 出版社: 光文社 (2007/11/16); ISBN-10: 433403425X; ISBN-13: 978-4334034252; 発売日: 2007/11/16
[書評] ★★★★☆
 最近売れっ子の筆者による金融リテラシー啓蒙書。
 本書の冒頭部分は、単に銀行預金をしているのは実は資産を目減りさせてしまっている、ということを説き、その上で、資産を目減りさせずに着実に増やす方法として、 各種の金融商品の紹介と、それらのメリット・デメリットの解説を行なっている。また、よくある「ワタシはコレで財産を築きました」的な一点突破型の ギャンブル成功物語ではなく、 金融資産の着実な育て方、金融に関する勉強の仕方、等々を示してくれている。
 新書でありながら、十分な情報量。 内容の取捨選択がよく出来ていて、また一方的な書き方ではなく、 客観的な分析に基づく内容となっており、 筆者の良心と真心を感じさせる本だ。
 なお、本書は最初から最後まで首尾一貫したメッセージが込められている。すなわち、日本には、 人前でお金のことを話すことはハシタナイ、ガツガツと儲けるのはミットモナイ、 労働で得た収入こそが尊く金融で儲けた収入はキタナイ、といった価値観があることに対する危機感だ。これらの価値観が日本をダメにしている、 子供の頃から金融とは何かについて、きちんとした教育をすべきだ、と警鐘を鳴らす。また、実際に筆者自身が行なっている活動についても触れ、 成熟国家・日本における金融に関する教育の今後のあり方について述べる。その道の大家が、しかも良心を込めて書いているだけに、 非常にわかりやすく、勉強になる。 金融商品に興味がある向きには勿論、そうでない人にもオススメできる良書だと思う。

友野典男「行動経済学 経済は「感情」で動いている」

友野 典男 (著)
「行動経済学 経済は「感情」で動いている (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4334033547/>
新書: 397ページ、出版社: 光文社 (2006/5/17)、ISBN-10: 4334033547、ISBN-13: 978-4334033545
[書評] ★★★☆☆
 人々の経済行動を考える際、経済的効用が一番高い行動をとる「経済人」をモデルとした経済モデルが発展してきたが、 実際の人間の経済行動は、実際には「経済人」を大きく離れたものとなる。このような非効率的・矛盾だらけの人間の経済行動を説明する「行動経済学」(まだそういう名前のジャンルは無いだろう)について述べる。
 本書は、そういう経済学の考え方のみを示すイントロダクションだが、 経済活動における人間心理の面白さを解き明かす辺りは、読んでいて非常に興味深い。
 にしても。こういう所で「多くの人の行動の傾向」を見ると、 多くの場合、自分がその傾向から外れている。といった辺りも通じて、自分が平均的思考を行う人間ではないのだなぁと、つくづく感じさせる書ではある。

浅川夏樹「夜の銀座の資本論 お金にモテる人になる!」


浅川 夏樹 (著)
「夜の銀座の資本論―お金にモテる人になる! (中公新書ラクレ 263) (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4121502639/>
単行本: 210ページ ; 出版社: 中央公論新社 (2007/12) ; ISBN-10: 4121502639 ; ISBN-13: 978-4121502636 ; 発売日: 2007/12 ; 商品の寸法: 17 x 11 x 1.2 cm
[書評] ★★★★★
 住信基礎研究所・伊藤洋一主席研究員がご自身の番組内で推薦されていた書。
 目を引く題名だが、それに負けない位に面白い本だ。
 銀座の一流クラブのホステスの仕事と投資・資金運用との共通点を示し、 資本主義社会の動きについて分かりやすく説明してくれる。
 ただ賢く生きるだけではなく、最終的には人間性が問われる、というのもうなづける。
 資本主義社会の粋のような「夜の銀座」で生計を立てている女性たちの生き方を垣間見ることが出来るという意味でも、興味深い本である。
 それにしても。 銀座の夜の女は色々な意味でのプロ、素人が迂闊に手を出すものではないらしい(笑)。

疋田智・片山右京・今中大介・勝間和代・谷垣禎一「自転車会議!」

疋田 智 (著), 片山 右京 (著), 今中 大介 (著), 勝間 和代 (著), 谷垣 禎一 (著)
「自転車会議 (単行本(ソフトカバー))」
<http://www.amazon.co.jp/dp/456977217X/>
単行本(ソフトカバー): 205ページ; 出版社: PHP研究所 (2009/9/5); ISBN-10: 456977217X; ISBN-13: 978-4569772172; 発売日: 2009/9/5
[書評] ★★☆☆☆
 自転車バカが集まって自画自賛している本。 「デキる人は、漕いでいる。」だって。 笑っちゃうね。バカな自転車乗りが増えている昨今、漕いでいるデキない人もいるんだよ。 片山右京さんと勝間和代さん、違う業界で名を上げた人達が、 自転車スポーツの認知度を上げるのに確かにひと役買っているとは思うんだけどさ。 何か勘違いしていないかな?