2017年9月17日日曜日

高橋 信(著), トレンドプロ(マンガ制作)「マンガでわかる統計学」

1週間あけてしまいました。今回は「マンガでわかる」シリーズ。一見ユルそうな本ですが、内容はいたってマジメです。


高橋 信(著), トレンドプロ(マンガ制作)「マンガでわかる統計学」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4274065707/>
単行本: 215ページ
出版社: オーム社 (2004/7/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4274065707
ISBN-13: 978-4274065705
発売日: 2004/7/1

[書評] ★★★★☆

後輩が転居のため本棚を整理していたら出てきたという本。ハイ、私が貸していた本です(本書を含む統計学3部作の他にも色々出てきました…/苦笑)。時間が経っていたため貸した方も忘れていましたが、人の本を何年も寝かせておくなんて酷いよ、Mクン!(怒) お詫びに、と缶入りクッキー&チョコ詰め合わせを貰ったのですが、流れでその場で開封。殆ど女子に食べられてしまいました!(笑) おいM、お前まで一緒になって食べているんじゃないよ!!(爆)

…いけません、いけません。ノリがメインブログと同じになってしまいました(笑)。

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さて、本書。一言で表せば、「とても解り易い統計学の入門書」

内容を順に書き出すと、概ね以下の通り:

母集団と標本の関係
  • 限られた数の標本から、母集団の状況を知る方法として、統計学を使うということ
    ※勿論、標本=母集団という場合もある(学生なら学内や予備校での試験の得点、社会人なら国勢調査など)
数量データとカテゴリーデータの違い
  • 数量データ … 身長や試験の得点など
  • カテゴリーデータ … 好き・嫌いとか、支持政党とか、好きなブランド…などなど
1つの数量データの統計値
  • 平均、分散、標準偏差、などなど。
2つのデータの関連性の数値的表現(→検定)
  • 数量データと数量データ … 相関係数(単相関係数)
  • 数量データとカテゴリーデータ … 相関比
  • カテゴリーデータとカテゴリーデータ … クラメールの連関係数、カイ二乗検定(独立性の検定)
技術系の仕事をしている人間にとって、数量データ間の関係…平均・分散・標準偏差・単相関係数といった用語は既にお馴染みだろう(特に製造業では公差や不良率を考える上で必須)。だが、数量データとカテゴリーデータ、カテゴリーデータ同士の関連性というのは馴染みが無いかも知れない(私の場合、オペレータ毎や曜日毎の不良率という形では触れていたが)。そんな私にとって、カテゴリーデータの関連性というのは純粋な興味という点で面白かった。なお、MS-Excelで計算したりグラフを確認したりしながら読み進めると、より理解が深まるだろう(私は今回そうやって読んだ)
  • ちなみに、本書は初版発行が2004年と13年前だ。付録等に書かれているExcelの関数は、Office 2000の頃のものだ。今のOfficeにも同じ関数は残されているが、新しい関数(標準正規分布NORMSDIST()に対するNORM.S.DIST()など)で引数が違うなど、使い方が若干違うものがあるので、これは各自確認して欲しい。
  • 本書で舌足らずな部分については、SSRI社(Social Survey Research Information Co., Ltd.)様の「統計学の時間」〈https://bellcurve.jp/statistics/course/〉と株式会社アイスタット様の「相関・検定の手法別解説」〈https://istat.co.jp/sk_commentary〉にかなりお世話になりました! m(_ _)m これらのページ、初心者にも非常に解り易いですよ! また、学術的にもう一歩先を行く場合は、産総研の「統計メモ」〈https://staff.aist.go.jp/t.ihara/memo.html〉の各項目もオススメです。数式追うの大変ですが(苦笑)。
先に「とても解り易い」と書いたが、強いて難点を挙げれば以下だろうか:
  • 正規分布の話に続いて、唐突にカイ二乗分布、t分布、F分布が出てくる。碌に説明もされずに…。(しかもt分布、F分布は本書の後ろの方でも使わない)
  • クラメールの連関係数(p.127-142)の例で、「男性と女性の好みが完全に異なる」⇔「クラメールの連関係数が1」(非常に強く関連している)、「男性と女性の好みが同一」⇔「クラメールの連関係数が0」(全く関連していない)、となっているが、これは日本語としてチョット解り難い。ここは「好みが性別にどの程度関連しているかを表す指数」といった表現にした方が良かったのではないか。
  • クラメールの連関係数と、独立性の検定(カイ二乗検定)が別物であることがハッキリと書かれていない。これらは同じような目的で使う指標であることと、計算過程で「ピアソンのカイ二乗統計量」を算出するところまで共通なので、なおさら混乱しがちだ。
  • グラフに一部間違いがある(縦軸の目盛りが正しくない;増刷時に修正されていれば良いのだが)

まぁ細かいことは置いといて。久し振りに読み返してみて、学生時代にピンと来なかったカイ二乗検定が(四半世紀ぶりに!)スカッと理解できたということで、私は本書を良書と判定したい。幾つものサイトで「統計学の初心者が入門として最初に読むべき一冊」とされているが、大納得だ。

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参考:オーム社「マンガでわかる」シリーズ
<http://www.ohmsha.co.jp/manga_guide/>
↑基礎的な物から最近ホットな話題まで、内容は多岐にわたる。イントロ本としてはオススメな物が多いと思う。私も何冊か持っていて(業務に活かせる本から趣味の本まで…)、後輩に回し読みさせたりしている(小難しい本よりも皆さんよく読んでくれるのですよね/笑)

2017年9月3日日曜日

安彦良和(著), 矢立肇・富野由悠季(原案)「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」全24巻


安彦良和(著), 矢立肇・富野由悠季(原案)「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」全24巻

[書評] ★★★★☆

先週の「君に届け」に続き、同じマンガ女子が貸してくれた“夏の課題図書・その2”です(この女性はファーストガンダム世代より若いですが、何故かガンダム全シリーズをコンプリートしています)
  • 「泣けるDVDを貸して」シリーズで借りたBDなのですが、このTHE ORIGIN (OVA)の泣けるポイントは、キャスバルとアルテイシアの兄妹が母アストライアと今生の別れになるシーンです(OVA 1話目終盤)。幼いアルテイシアはアストライアの言うことを聞いて地球に向かいますが、母アストライアと兄キャスバルは二度と逢えなくなることを承知している…という対比がたまりません。
さて、この作品もOVA 4話分(BD×4枚)を観た後にコミックを借りました。内容は概ね以下の通り。
  • 1979年の「機動戦士ガンダム」(いわゆるファーストガンダム)の前日譚
    • ジオン・ズム・ダイクンの暗殺~ジオン国内の派閥抗争
    • キャスバル(兄)とアルテイシア(妹)が身分を隠すためにマス家の養子になって生き延びるが、そこにも暗殺の魔手が伸びてくる
    • キャスバル(エドワウ・マス)がシャア・アズナブルの身分を手に入れジオン軍士官学校に入るまでの道筋
    • シャア(になりすましたキャスバル)とザビ家の末弟・ガルマとの邂逅
  • ファーストガンダムで一部辻褄が合っていなかった箇所を整理・修正したストーリー構築
    • ファーストガンダムとの差異はWikipedia等に詳しいです。
    • ファーストガンダムが初回放送時視聴率が悪く4クール(52回)完了を待たずして43話で打ち切りになったのは有名ですが、このため当初予定を大幅に切り上げて(ジオン軍側のモビルスーツも予定より少なくなったようです)、物語終盤は非常に密度の濃い内容になっていると思います。
さて、このTHE ORIGINのOVAは随分ゆっくりしたペースで出されていますが、このペースでは、ファーストガンダムと同じ声優さんが年齢的に厳しくなってくるのではないかと心配になってしまいます。まぁOVAの方がなかなかルウム戦役(1年戦争の前哨戦)にも入らないので、原作(1年戦争の完結まで)を先にに読んじゃおう!みたいな(笑)。

で、感想。面白かったですよ! この作品も、24巻を2日で読破してしまいました!! ファーストガンダムもハイターゲット(中学生以上)に向けた作品だったようですが、THE ORIGINは大人向けですね。ガンダム世代(子供の頃にファーストガンダムを観た世代)と、もっと若い世代の両方に勧められます。

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ところで。夏(6~8月)の書評、見事にライトノベルとコミックだけになってしまいました(笑)。本当はマジメな本も何冊か読んでいるのですが、夏、特に8月は、歴史・政治色が強い本が多くなります(そういう季節ですから)。左右偏らないように色々読んでいるつもりですが、1冊1冊は偏っている物が多く、何となくココには書きにくいです…(苦笑)。

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2017年8月27日日曜日

椎名 軽穂(著)「君に届け」既刊29巻


椎名 軽穂(著)「君に届け」既刊29巻

[書評] ★★★★★

今回は何と少女漫画です。オッサンの読むジャンルではないかも知れませんが(苦笑)、TVアニメ&実写映画にもなった有名な作品ということで。でも面白かったですよ♥

友人(ピアノ弾きのマンガ女子、以前書評に書いた「四月は君の嘘」を貸してくれた人)に「泣けるDVD貸して。出来れば人死にとか病気とかじゃないやつ(笑)」とお願いしたら、BD & DVD (実写/アニメ両方あり)をごっそり貸してくれました。
  • 新川直司(著)「四月は君の嘘」もその後BD-BOXを貸してくれました。←こちらも原作同様、目から大量の水分が失われました(ひとりで観たから思う存分ね!/笑)。
貸してもらったBD中でも特に面白かったのは、椎名軽穂・原作「君に届け」。映像作品が結構面白かった旨伝えたら、「夏の課題図書・その1」と称して原作(既刊全29巻)を貸してくれました(課題図書・その2もありましたが、これは別途書きます)。アニメは第2期までで作品は原作の10巻くらいまでの内容ですが(高2の学園祭直後まで)、原作は主人公が高校を卒業するまで話が続きます(最新の29巻では話はまだ終わっていませんが)面白く、切なく、また展開が気になって、2日間で29巻読破しちゃいました!(笑)

本作、あまりにも有名なので、紹介は不要かも知れません。学園モノで、主人公を含むメインキャラクターたちの恋愛模様が濃厚に描かれています。が、その中でも特に重要な内容をまとめると以下の4点でしょうか。
  1. コミュニケーションが苦手で友達が殆どいない主人公・黒沼爽子(くろぬま さわこ)が、クラスメイト(吉田千鶴&矢野あやね)と友達になるまで
  2. 爽子が、友達を作ったりクラスに馴染んだりする上でキーパーソンとなった風早翔太(かぜはや しょうた)に心を引かれて行き、尊敬から恋愛に感情が変わっていく過程とその結末
  3. 爽子と翔太の不器用な恋愛
  4. 爽子と翔太の進路:自分の可能性・本当にやりたいことをどう見つけるか、そして、彼/彼女と一緒にいることを選ぶか、たとえ離れることになっても自分の将来の可能性を優先するか
私自身の高校時代は、受験勉強優先で(最初は中の下くらいの成績で周りに追い付くだけでも苦労しました!)、恋愛する余裕など全くありませんでした(憧れの女の子はいましたが、友達以上の関係はバッサリ切り捨てていました;友人の中には恋愛で受験に失敗した人や、好きな子を追って進路を変えて人生変えたヤツもいましたが)。が、こういう青春もアリだったのかも知れないなぁ…と今更のように思いながら読みました。男女の気持のすれ違いの描写が秀逸です(アニメ版でも絵と音楽だけという表現技法が多用されていて印象的でした)。特に、進路選択という人生の重要な局面での恋愛の描写が印象的でした。高校卒業だけでなく、就職・転勤・転職等、人生の転機における恋愛模様にも通じるものがあるでしょう(私も…詳しくは書けませんが…大学の時にすごく悩んだものです)

本作、次の30巻が「最終章」とのこと。29巻で卒業式まで終わっているのですが、30巻で大学受験の合格発表です。もう終わってしまうのかという一抹の寂しさを感じるとともに、どんな結末が待っているのか楽しみにしています。

10年以上続いた作品。連載開始時に登場人物と同世代だった読者も20代後半です。漫画から感化を受けながらも、それぞれが自身の人生の転機や恋愛を(人によっては結婚や出産も)経験して、それでもなお読者で居続けたりしているのでしょうね。

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2017年8月20日日曜日

西尾維新「掟上今日子の裏表紙」


西尾維新(著), VOFAN(イラスト)「掟上今日子の裏表紙」(忘却探偵シリーズ9)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4062205769/>
単行本(ソフトカバー): 338ページ
出版社: 講談社 (2017/5/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062205769
ISBN-13: 978-4062205764
発売日: 2017/5/23

[書評] ★★★☆☆

なんと、本書の表紙は囚人服を着た探偵・掟上今日子(おきてがみ きょうこ)さん! 何があった?!

強盗殺人容疑で今日子さんが逮捕~勾留されているシーンで始まる。現行犯逮捕とのことだが、…まさかそんな筈はないだろうと思うのだが、なぜこんなことに? 今日子さんのこれまでの実績から、何か問題を解決するため、限られた手段の中で最も良いと思われる方法をとった結果、こうなってしまった…と考えるのが妥当だろう。が、あとは読んでのお楽しみ!

今回の語り部は、毎度の隠館厄介(かくしだて やくすけ)君と、日怠井(ひだるい)警部。シーンによって語り部が入れ替わるという作りになっている。また、語り部ではないのだが、シリーズ2冊目『掟上今日子の推薦文』で語り部を務めた警備員・親切守(おやぎり まもる)クンが、今回重要な役回りを務めている。彼は『推薦文』でそれまでの勤務先をクビになった後、掟上今日子さんの探偵事務所・「置手紙探偵事務所」に警護主任として雇われている。

本書、表紙がリバーシブルになっていて、表側(購入時の表紙)が囚人服を着せられた今日子さん、裏側が女性警察官の服装の今日子さん(警察官はハイヒールは履かないと思うが/笑)。2つの絵は左右対称な構図になっていて、透かして見ると囚人服と警察官の制服がオーバーラップして見えるようになっている。芸が細かいな~と思うと同時に、小説本文で勝負して欲しいとも思う。まぁ文章だけでなく色々なメディアを駆使するのはライトノベルの売り方として常道なので、ツッコむだけ無駄かもしれないが…。

内容について。当初は、ブッ飛んだ設定と読者を驚かせる展開が面白く、言葉遊びは少な目だったのだが…。本作品では、著者の別作品、〈物語〉シリーズばりの言葉遊びが増えていて、作風が同じようになって来てしまっている。〈物語〉シリーズ最新刊『忍物語』の書評でも似たようなことを書いた気がするが、(複数シリーズを同時に執筆していることを差し引いても)作風は分けて欲しいなぁと思う。

極め付けは「あとがき」。読者を誑(たぶら)かすにも程があるだろう。

まぁ全部含めてのエンタメ作品なので、コレはコレで良いのかも知れないが…。

2017年8月13日日曜日

西尾維新「忍物語」


西尾維新(著), VOFAN(イラスト)「忍物語」(〈物語〉シリーズ通巻23巻)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4062839024/>
単行本(ソフトカバー): 308ページ
出版社: 講談社 (2017/7/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062839024
ISBN-13: 978-4062839020
発売日: 2017/7/20

[書評] ★★☆☆☆

〈物語〉シリーズの「オフシーズン」(前作『結物語』で一応完結)に続いて始まった「モンスター・シーズン」第1作(〈物語〉シリーズ通巻23冊目)。主人公・阿良々木暦(あららぎ こよみ)クンが大学1年生の時の話。前作『結物語』が暦クンが就職した後の話であり、それ以外が主に暦クンが高校3年生の時の話なので、時系列的にはこの間にあった話に当たる。
  • 『花物語』と、『愚物語』および『業物語』の一部の話は、暦クンが高校を卒業した年の話なのだが、暦クンが大学に行っているのか、浪人しているのかについては言及が無かった。本作では暦クンは高校を卒業して、無事大学生になっている。戦場ヶ原ひたぎチャンと同じ大学に行っているようなので、第一志望の大学に入ったというストーリーになったようだ。
本作では、高校の1学年後輩・神原駿河(かんばる するが)チャン(本作では高校3年生になってる)が以前所属していた女子バスケットボール部で起きている怪異現象と、その調査・捜索・対応に暦クンも巻き込まれる話。高校卒業して大学生になっても、暦クンやっていることあまり変わらないな~みたいな話。

・  ・  ・  ・  ・

本書、ストーリー自体は悪くないのだが、ツッコミ所満載になってしまっている。何度も完結したシリーズ、何度も続編を書き続けていて、色々収拾がつかなくなって矛盾点が出て来ているのではないだろうか?
  • 暦クンの大学進学(現役合格)に関する疑問…説明求む!
    1. 『暦物語』では、暦クン、大学受験当日に受験会場に到着しなかったんじゃなかったっけ?(つまり戦場ヶ原ひたぎチャンと同じ大学には現役では行っていないはず?) 暦クン、大学受験当日早朝、一旦殺されて生き返るというプロセスを経て(彼から吸血鬼性を失わせるために必要なプロセスだったらしいが)、どうやら受験会場に辿り着けず(?)昼になってしまっていた、という描写があった。
    2. 『結物語』によると、暦クン、高校卒業の「5年後」に就職→警察官になる。4年後でなく5年後ということから、「ああ一浪したんだな」と思っていたが? …ってことは大学で1年留年か?
  • 作風が大きく変わってきてしまっていないか?
    1. 元々この〈物語〉シリーズって、人の心が生んだ怪異(お化け・妖怪の類)という、人の心の闇に関わる陰鬱なネタを、軽妙なお喋りやちょっとエッチな話を交えて読み易くしていたと思うのだが、本作はエロ一切無し。心の闇に関する描写も非常に薄い。それどころか、怪異現象の解決を推理小説風に書いてしまっている。同じ著者による別作品、「忘却探偵シリーズ」と作風がごっちゃになってきていないか?
    2. 犯行現場に残された暗号とその解読が謎すぎ。本書中で「なんでも知ってるおねーさん」臥煙伊豆湖サンの言葉を借りると、「火を見るより明らかなわけがないじゃん。幽霊を見るよりも仄(ほの)(ぐら)き闇だよ」。その通りだ。どのようにでも解釈できる数字やローマ字の羅列から特定の名前の頭文字が導出される等、無理がありすぎ。
    3. 同じ著者による別作品(「新本格魔法少女りすか」等)を読んでいなと理解できなネタが多過ぎる。これらの別作品を読んでいない人にとって、正直ツマラナイ(色々な意味で)
読者を誑(たぶら)かすのもいい加減にしてほしい。次作品でも同じ傾向が強かったら、私は読者やめてしまうかも…。

・  ・  ・  ・  ・

以下参考:〈物語〉シリーズ 既刊リスト
1. 「化物語(上)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062836025/> (2006/11/1)
2. 「化物語(下)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062836076/> (2006/12/4)
3. 「傷物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/> (2008/5/8)
4. 「偽物語(上)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062836793/> (2008/9/2)
5. 「偽物語(下)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837021/> (2009/6/11)
6. 「猫物語(黒)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/406283748X/> (2010/7/29)
セカンドシーズン
7. 「猫物語(白)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837587/> (2010/10/27)
8. 「傾物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837676/> (2010/12/25)
9. 「花物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837714/> (2011/3/30)
10. 「囮物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837765/> (2011/6/29)
11. 「鬼物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837811/> (2011/9/29)
12. 「恋物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062837927/> (2011/12/21)
ファイナルシーズン
13. 「憑物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838125/> (2012/9/27)
14. 「暦物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838370/> (2013/05/20)
15. 「終物語(上)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838575/> (2013/10/22)
16. 「終物語(中)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838613/> (2014/1/29)
17. 「終物語(下)」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838680/> (2014/4/2)
18. 「続・終物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838788/> (2014/9/18)
オフシーズン
19. 「愚物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838893/> (2015/10/6)
20. 「業物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838923/> (2016/1/14)
21. 「撫物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062838982/> (2016/7/28)
22. 「結物語」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062839008/> (2017/1/12)

2017年8月6日日曜日

小山 宙哉「宇宙兄弟 (31)」


小山 宙哉「宇宙兄弟 (31)」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4063887340/>
コミック: 1ページ
出版社: 講談社 (2017/6/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063887340
ISBN-13: 978-4063887341
発売日: 2017/6/23

[書評] ★★★☆☆

前半は、日々人回。ロシアで無事月ミッションのバックアップクルーに選ばれる。30巻の書評でも少し触れたが、日々人に関するストーリーはちょっと都合よく展開しすぎな気がする。

後半は、ムッタ回。太陽の活動が活発化し、大気に守られていない月面は、放射線や磁気嵐のひどい影響が出る。ムッタたちが建設している月面望遠鏡「SHARON」のマザー・コンピュータを強い電磁気の放射から守るために船外活動(EVA)を行い、これが新たなトラブルの原因となったのだが(29巻から続いているストーリー)。その後、この太陽活動の影響で通信はおろか、殆どの電子機器がダウン、それに続き月面基地の電気系も全てダウン。

磁気嵐の影響で地球上の管制センターと連絡が出来ない間、ムッタら月面のクルーは、管制の指示を全く受けられない状態で正しい判断・行動が出来るのか? …これに対して、フライト・ディレクター(ハガード氏)が言った言葉、「それより我々は……“ジョーカーズ”というチームを もうちょい 買いかぶってやってもいいんじゃないか?」(p. 169)に、重み、というか組織で人を動かす人が持つべき心構え、を感じた。
  • このエピソードに限らず、このコミック、技術開発や組織運営の「あるべき姿」「実態はこうなりやすい」が明確に書かれていて、研究開発職に就いている身として共感できることが多い(それ以外の人間ドラマも勿論面白いですよ~)。

2017年8月5日土曜日

小山宙哉「宇宙兄弟 (30)」


小山宙哉「宇宙兄弟 (30)」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4063886808/>
コミック: 200ページ
出版社: 講談社 (2017/1/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063886808
ISBN-13: 978-4063886801
発売日: 2017/1/23

[書評] ★★★☆☆

本巻、前半は南波六太(ムッタ)の月面ミッションの続き。クルー6人のリーダー・エディは、弟・ブライアン(故人)が月面に置いてきた子ども時代の思い出の品と月から見た地球に、弟を想う。また六太は、弟の日々人(ヒビト)が月面で瀕死の事故に遭った時に捨てた装備と足跡を見て、事故時の弟の気持を推し量る。

後半は、その日々人の話(お帰り日々人、久しぶり!)。NASAを去った日々人がロシアで再び宇宙に向けて動き出してからの話。

宇宙技術は軍事技術と直結するので、たとえ優秀な人間であっても、同盟国でもない外国の人を宇宙に上げるかといえば甚だ疑問なのだが、そういうツッコミは無粋というものだろうか? (一応、米国・欧州・ロシア、そして日本が宇宙開発に関して緊密に協力しているという描写ではあるのだが、ちょっと現実離れしているかなぁ、みたいな…。)

2017年7月30日日曜日

石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 2」


石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 2」
コミック: 208ページ
出版社: 小学館 (2017/6/30)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091895859
ISBN-13: 978-4091895851
発売日: 2017/6/30

[書評] ★★★★★
宮本ダイ君、ドイツで最初に過ごした地・ミュンヘンを去り、ハンブルクへ行きます。行った理由は、ある女性ベーシストの音に惚れこんだから(ロマンティックな理由ではありません)。が、彼女も無名のミュージシャンですから、簡単には見つかりません。…が、ダイ君の努力が実りそうかな? という所で本巻終了です。

盛り上がりは次巻以降…ということになりそうですが、色々とわくわくさせるストーリーです。

2017年7月29日土曜日

石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 1」


石塚真一「BLUE GIANT SUPREME 1」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4091894674/>
コミック: 200ページ
出版社: 小学館 (2017/3/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091894674
ISBN-13: 978-4091894670
発売日: 2017/3/10

[書評] ★★★★☆
  • 前著「BLUE GIANT (10)」の書評に続けて書いています(BLUE GIANT 10,同SUPREME 1, 2は発売日が同じだったのです…てゆーかそれ積読してたんですけど/苦笑)。
宮本大(ダイ)君、テナーサックスと少しの荷物だけ持って、単身ドイツにやってきました。最初はユースホステルに泊まっていたのが、ふと入ったコーヒーショップでクリスという青年と知り合います。この青年が、アパートに無料で泊めてくれたり、ダイ君が演奏できる店を探して交渉してくれたり、何かと尽力してくれます。ちょっとご都合主義的なところもありますが、出会いがダイ君を育ててくれている描写は好きですね。

2017年7月28日金曜日

石塚真一「BLUE GIANT (10)」

暑いですね。読書ペースも落ちています。というか、最近コミックとラノベばかり…。ダメダメな大人です(苦笑)。

・  ・  ・  ・  ・


石塚真一「BLUE GIANT (10)」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4091894607/>
コミック: 200ページ
出版社: 小学館 (2017/3/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091894607
ISBN-13: 978-4091894601
発売日: 2017/3/10

[書評] ★★★★☆

19歳のプレイヤ3名(ピアノ、テナーサックス、ドラムス)のジャズバンド「Jass」。メンバー全員上げ調子で、有名なジャズ・クラブ「So Blue」の舞台に3名揃って立つ…はずでした。

が、直前にピアノの沢辺雪祈(ユキノリ)君がバイト中の事故で重体、右手~右腕に何年かけても直らないかも知れないダメージを受けてしまいます。でもステージはキャンセルせず、ドラムスの玉田君とテナーのダイ君だけで演奏します。
  • サックスとドラムスのデュオというのは非常に珍しい。私の知る音源では、Chick Coreaのアルバム「Three Quartets」(1981)のアナログ盤LP発売当初は入っていなかったが、後年CDが発売された際に追加された音源、「Confirmation」(作曲:Charlie Parker)。
  • 脱線するが、この「Confirmation」、テナーサックスは故Michael Brecker (1949-2007)、そしてドラムスはSteve Gaddではなく何とChick Corea! (参考情報:「Three Quartet」英語版Wikipedia, <https://en.wikipedia.org/wiki/Three_Quartets>)
閑話休題。公式ページ<http://bluegiant.jp/>で「【BLUE GIANT】完結。新タイトルで海外編へDIVE IN!!」とあったので、「Jass」は解散、本作の主人公・テナーサックスの宮本大(ダイ)君は単身海外へ、…ということは読めていました。が、この解散への展開、特に雪祈君には残酷です。ダイ君が日本を飛び出すキッカケとして、ドラマティックに物語を進める上で必要だったのかも知れませんが、切なすぎます。本巻終盤、空港で出国審査を済ませたダイ君から電話を受けた雪祈君、ピアノの前で作曲作業中でした。左手だけでピアノを弾き、左手で楽譜を書いていく描写…ちょっと泣かされました。

2017年6月11日日曜日

西尾 維新「結物語」


西尾 維新「結物語」(〈物語〉シリーズ通巻第22巻)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4062839008/>
単行本(ソフトカバー): 228ページ
出版社: 講談社 (2017/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062839008
ISBN-13: 978-4062839006
発売日: 2017/1/12

[書評] ★★★★★

〈物語〉シリーズ・オフシーズンの最終巻(シリーズ通巻で第22冊目)、短編集×4本。〈物語〉シリーズの主人公にして語り部・阿良々木暦(あららぎ こよみ)クンが高校を卒業して5年後、社会人になった最初の春の話。高校生の時は落ちこぼれ同然だった彼も、大学を卒業して警察官になりました(両親と同じ仕事に就いたようです)。それも、国家総合職試験を通り警部補でスタートというエリートコース。ちょっとビックリ(笑)。

過去の作品と関連が深いのは、後半の2本。暦クンの同級生にして学校始まって以来の才媛・羽川翼チャンの「その後の活躍ぶり」と、暦クンとその彼女・ひたぎチャンの「その後どうなったか」が書かれています。オチはあるものの、基本的に良い話です。

…長く続いた本シリーズ、やっと終了です。



え? 終わってないって?

奥書の次のページに、「〈物語〉シリーズ モンスターシーズン 堂・々・開・幕!」なんということだ! まだ終わらないのか!! 助けて下さい!(笑)

2017年6月4日日曜日

西尾維新「掟上今日子の旅行記」


西尾維新「掟上今日子の旅行記」(忘却探偵シリーズ8)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4062203766/>
単行本(ソフトカバー): 226ページ
出版社: 講談社 (2016/11/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062203766
ISBN-13: 978-4062203760
発売日: 2016/11/17

[書評] ★★☆☆☆

長編。今回は、毎度おなじみの不運のフリーター、隠館厄介(かくしだて・やくすけ)クンが語り部。「寝る度に記憶がリセットされる」探偵が、なぜフランスへ招かれて…?

元の設定がブッ飛んでいることはシリーズを何冊か読んでいるうちに慣れてしまうが、今回は犯罪(の予告)自体がふざけている。また、盛り上がりに少々欠ける作品だったかも知れない。厄介クン、これまでは今日子さんに振りまわされる「脇役」(にして語り部)であったが、今回は事件の犯人と直接コンタクト。この辺りに意外性はあったが…。

忘却探偵シリーズは、初期の作品は、西尾氏の他の作品(〈物語〉シリーズなど)と比べて一文が短め、坦々と書かれていて読み易かったのだが、本作は〈物語〉シリーズと同じくらい言葉遊びが多く、また一文が長くて諄(くど)い。少し読みにくい本になってしまっている。盛り上がりに欠ける作品であることと合わせ、読者として引き込まれる本ではなかった。まぁ、西尾氏の作品が好きな人がボチボチと読む本。

【オマケ】本書を買うと付いてくる栞は、AIR FRANCEの物と良く似た「AIR DETECTIVE」の航空券(搭乗すると右側の半券?のみ渡されるタイプ)。…って、今ドキこの手の紙の航空券って見なくなったような。で、よく見ると座席番号が本書内容と合致するように書かれている。芸が細かいな~(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

忘却探偵シリーズ書籍リスト
  1. 「掟上今日子の備忘録」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062192020/> (2014/10/15)
    ↑不運のフリーター・隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部。短編集。
  2. 「掟上今日子の推薦文」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062194503/> (2015/4/23)
    ↑語り部は、警備員の親切守(おやぎり・まもる)クン。一見、短編集だがストーリーの間の関係が深く、長編と見ることもできる。
  3. 「掟上今日子の挑戦状」 <https://www.amazon.co.jp/dp/406219712X/> (2015/8/19)
    ↑「神視点」(語り部不在)。
  4. 「掟上今日子の遺言書」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062197847/> (2015/10/6)
    ↑長編。シリーズ1冊目と同じ隠館厄介(かくしだて やくすけ)クンが語り部。
  5. 「掟上今日子の退職願」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062199068/> (2015/12/17)
    ↑短編集。4人の女性警部が各話の語り部。
  6. 「掟上今日子の婚姻届」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062200716/> (2016/5/17)
    ↑長編。語り部は再々度、隠館厄介クン。
  7. 「掟上今日子の家計簿」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062202700/> (2016/8/23)
    ↑短編×4本、それぞれ別の刑事が語り部。
  8. 「掟上今日子の旅行記」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062203766/> (2016/11/16)
    ↑長編。今回も隠館厄介クンが語り部。
  9. 「掟上今日子の裏表紙」 <https://www.amazon.co.jp/dp/4062205769/> (2017/5/23)※未購入
書評リスト

2017年5月28日日曜日

野呂一生「私時代 WATAKUSHI-JIDAI 野呂一生自叙伝」


野呂一生「私時代 WATAKUSHI-JIDAI 野呂一生自叙伝 (DVD付)」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4845628988/>

単行本(ソフトカバー): 208ページ
出版社: リットーミュージック (2016/12/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4845628988
ISBN-13: 978-4845628988
発売日: 2016/12/20

[書評] ★★★☆☆

日本を代表するフュージョン・バンド、CASIOPEA (現:CASIOPEA 3rd)のリーダー/ギタリスト、野呂一生氏の自叙伝。音楽雑誌やCASIOPEAの映像作品(のトーク部分)から、幼少時・デビュー前・メンバー変更の経緯などをある程度は知っていたが、以下について今まで以上に詳しい話が読めたのが良かった。
  • 野呂氏の小学生時代の音楽教育~デビュー前の活動
  • 後にCASIOPEAを結成するメンバーとの出会い
  • デビュー裏話
  • CASIOPEAの歴史上の「異変」の経緯
    • 佐々木隆さん(初代Ds)脱退~神保彰さん(2代目Ds)加入(1979)
    • 野呂さんは実はアルバム『HALLE』(1985)をCASIOPEA最後のアルバムにしようと思っていた()
    • 桜井哲夫さん(初代Bs)・神保さんの脱退(1989)~鳴瀬善博さん(Bs)・日山正明さん(Ds)加入(1990)
    • 第2期CASIOPEAの活動休止(2006-2011)
    • CASIOPEA 3rdとしての活動再開(向谷さん脱退~大高清美さん(Org)加入、2012)
CASIOPEAのメンバー変更や活動休止は、当時ファンの間でも話題になり、その度に数々の憶測を呼んだ。本書では、それらの経緯について、当事者が説明をしている。が、読めば読むほど、CASIOPEAは良くも悪くも「野呂一生の野呂一生による野呂一生のためのバンド活動」であり、御自身がCASIOPEAの活動に息切れしてソロ活動などをすることはOKでも、他人が(自分と違うタイミングで)他の活動に注力するのは許せなかったのかなぁ、みたいな感想を持った。
  • 桜井さん・神保さんの脱退は、野呂さんが2ndソロアルバム『VIDA』のレコーディングの直後。野呂さん自身がCASIOPEAの活動に戻りたいと思った丁度その時、桜井さん・神保さんがCASIOPEAに専念できない状態だった。
  • 5年の活動休止後のCASIOPEA活動再開時、向谷さんと交渉決裂したのも、野呂さんがCASIOPEA (3rd)に集中したい時に、向谷さんがゲーム音楽・映像などの活動で多忙でCASIOPEAに専念できなかった…からじゃないかな? 向谷さんは事ある毎にCASIOPEAの活動を「過重労働」と文句?を言っていたので、CASIOPEAというバンドへの関わり方について、野呂さんと向谷さんの間に温度差があったことがわかる。
いずれも、メンバー間の「中」と「外」の活動のタイミング・バランスがずれてしまい、一緒に活動出来なくなったのだとわかる。
  • 本書はバンドという形だが、人と人との「濃ゆい」関わりを長期間続けることについて、色々考えさせられた。
  • その点、現在のCASIOPEA 3rdでは、鳴瀬さん・大高さん・神保さんとも他プロジェクトを抱えている一方、野呂さんもINSPIRITSというプロジェクトを抱えた状態なので、CASIOPEA 3rdのメンバー間で適度な距離・温度を保つことが出来ているのではないだろうか。
…と、野呂さんのやり方を一部批判するような書き方をしてしまったが、ファン必読の本であることは間違い無し! 何だかんだ言って私は音楽(特にギター)については野呂さんの影響を受けまくっているのです(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

【余談:付録DVDについて】
付録DVDに、ギター1本でメロディーに和音を加えて弾く方法と、スケールの紹介があるが、正直難しすぎ(笑)。巻末に譜例が載っているが、あまり参考にならないかも(汗)。

・  ・  ・  ・  ・

【参考文献&映像作品】
  • 「A BOOK OF CASIOPEA (カシオペアの本)」(立東社)
    前半が野呂一生さん(Gt)・向谷実さん(Key)・桜井哲夫さん(Bs)・神保彰さん(Ds)の個別インタビュー&4人の対談、後半が向谷さんによるCASIOPEAの音作り(複雑な和音とその弾き方)紹介、付録に楽譜という、ファン垂涎の本。←持っていた筈(捨ててはいない)が、何処行ったんだろ?(下の写真はネット上で見つけたものです)
大型本『A BOOK OF CASIOPEA』
DVD『THE MINT SESSION』

2017年5月21日日曜日

タル・ベン・シャハー「ハーバードの人生を変える授業2 ~Q 次の2つから生きたい人生を選びなさい~」


タル・ベン・シャハー(著), 成瀬まゆみ(翻訳)「ハーバードの人生を変える授業2 ~Q 次の2つから生きたい人生を選びなさい~」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4479305912/>
文庫: 368ページ
出版社: 大和書房 (2016/5/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4479305912
ISBN-13: 978-4479305910
発売日: 2016/5/12

[書評] ★★★☆☆

前著「ハーバードの人生を変える授業」(リンク等は後述)の続編。前著が人生や生活におけるネガティブな経験・記憶よりもポジティブなものに焦点を当てなさい、ネガティブなことから学ぶべきことを学んだら心から切り離しなさい、といった内容だったのに対し、本書は「頭で判っている“正しい選択”をキチンと選び、行動しなさい」という本。訳者あとがき(p. 364)の
  • 「正しい選択は、わかっていますよね。
    でも、それを、本当に、あなたは、選ぶことができますか?
    そして今日も、明日も、それを選び続けることができますか?」
    この本は、そう問いかけてきます。
    ある意味、「覚悟」を問う本です。
が、この本の全てとも言える。

前著同様、「分かっちゃいるけど、なかなかね…」な内容が多いのだが(苦笑)、幾つか良い点もあったので示しておく。
  • 面倒くさいこと、気の進まないことをやるのに以下の方法は有効だと思う。とりあえず始めてみて、勢いをつける作業を、筆者は「5分間テイクオフ」と呼んでいる。
    • ベストタイミングなどを待ったりせず、「いますぐ始める」という選択をしてください。(p. 54、強調は引用者)
  • 「あら探しする」よりも「いいこと探し」をし、自分や他人の長所に目をつける。
  • 失敗から学ぶことと同様、成功からも学ぶべき。
  • 現代社会のストレス対処法として、流れに身を任せることを勧める本が多い。が、本当に幸せになる為には、自ら積極的に選択~行動をすることが必要。
  • 夢をあきらめて現実的になることを勧める書籍が多いが(確かにこれで傷つくことは減るだろう)、夢を追い求め続けることこそが人生だ。
本書の主旨を乱暴にまとめると、感情主体の「自動反応」よりも、理性主体の「熟慮」により行動を選択しなさい、とでもなるだろう。しかし、日常生活で行なっている「選択」の多くを「熟慮」するのは、現実には難しいのではないか
  • 我々は日常的な判断の多くを「無意識」あるいは「流れ」で行っている。これを「意識的」に「熟慮」するスタイルに変えるのは、非常にシンドイ生き方ではないのか。
  • ひらめき、耽溺、無謀といった「自動反応」無しでは、生活に面白味が無くなってしまうのではないか。少なくとも、ある程度は「自動反応」任せにしないと、精神がもたない。
  • 理性では「こちらの選択が正しい」と分かっていても、感情面からなかなか行動できない人が多いのではないだろうか。本書は、この心理的・感情的な障壁の克服法については全く触れておらず、その点については突き放しているとも言える(人生を「自分自身が行う選択の連続」とする捉え方は、アドラー心理学(自身に対して厳しい生き方を求める)との共通点が多いように思う)
本書では「流れに身を任せる生き方」「目の前にある人生を生きること」を否定する。流れに身をまかせ、可もなく不可もない「ヌルい生き方」をしている人には、良い刺激を与える本と言えるだろう。だが、困難な状況にある人は、ある程度「流れに身を任せ」、「全ての責任を他人のせいにする」ことも必要だと思う。自身が「ヌルい」と思っている部分は本書に書かれたように意識的な選択を行うと有効だろうが、自動反応(感情)-熟慮(理性)のバランスは崩さない方が賢明だろう(シーナ・アイエンガー著『選択の科学』(後述)の方がバランスの取れたものの見方だと思う)。精神的に強い人はどんどん意識的な選択をしても良いのかも知れないが、凡人は「話半分」で良いと思う。

関連図書
余談1:著者・訳者について
  • 著者:タル・ベン・シャハー(Tal Ben-Shahar、英語版Wikipediaリンク)はテルアビブ(イスラエル)生まれ、ハーバード大学に学んだ人だが、ヒンドゥー教や仏教などの思想、そしてヨガなどの東洋文化に傾倒しているように見える。洋の東西を問わず、「心」や「周囲との調和」を研究する人が東洋思想に行き着くのは、昔も今も変わらないのかも知れない。
  • 訳者:成瀬まゆみ氏は専業翻訳家ではなく、ポジティブ心理学を使った「アタラシイジブン」づくりのコンサルタント(講演やセミナー等の活動を行なっている)。前訳でもそうだったが、読みやすく綺麗な日本語には好感を持てる(近年、ビジネス書の邦訳などで多少日本語が乱れているものが目につくようになって来ているが、本書の邦訳は正統派の日本語だ)
余談2:ポジティブ心理学

ポジティブ心理学」という言葉を初めて使ったのは、エイブラハム・マズローとされる。マズローは、企業研修などでよく聞く「自己実現理論」で、有名な「マズローの5段階欲求ピラミッド」を提唱した心理学者(1908-1970)。マズローのモデルは科学的ではないとの批判もあるが、社会組織における心理学や動機付けに関するひとつの見方として、今でも参考になると思う。

2017年5月14日日曜日

ネッサ・キャリー「エピジェネティクス革命 ――世代を超える遺伝子の記憶」


ネッサ・キャリー(著), 中山潤一(訳)「エピジェネティクス革命 ――世代を超える遺伝子の記憶」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4621089560/>
単行本(ソフトカバー): 428ページ
出版社: 丸善出版 (2015/7/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4621089560
ISBN-13: 978-4621089569
発売日: 2015/7/27

[書評] ★★★★★

DNAの二重らせん構造の発見(1953年)からちょうど50年後の2003年、ヒトゲノム(Wikipedia)の解析が完了した(ヒトゲノム計画、Wikipedia)。ヒトを始めとする生物の設計図たるゲノム(DNA)が解読されることで、生命の秘密は解き明かされ、そして健康や病気の問題は近々容易に解決されると期待された。…が、現実はもっと複雑だった。

受精卵~細胞分裂数が少ない段階の胚細胞は、どのような組織にでもなり得る「万能細胞」であるが(人工的に作られたES細胞やiPS細胞もこの仲間)、一度分化した細胞やその子孫細胞は、(滅多なことが起こらな限り)まず元には戻らない。これが、「私たちの頭のてっぺんから腎臓が成長することはないし、目玉の中から歯が生えてくることはない(p. 2)理由だ。このような細胞分化から病気の発症・老化、そして再生医療の鍵となる「エピジェネティクス」(Wikipedia)のホットな話題が、本書のテーマだ。エピジェネティクスとは、乱暴に簡略化して言えば、「ゲノム(DNA)自体には変化を与えないまま、その遺伝子発現のオン・オフを制御する仕組みと、その学問領域」のこと。エピジェネティックな現象は、具体的には、DNAの特定の部位にメチル基やタンパク質が結びつくこと(修飾)で、当該部位の遺伝子発現が制御されることによって起こる。

著者のネッサ・キャリー(Nessa Carey、英語版Wikipedia)はウイルスと遺伝の専門家で、現在、研究成果の特許化・産業化に関わる英国組織の役員であると同時に、インペリアル・カレッジ・ロンドンの客員教授も務める、バリバリで現役の研究者。

さて、本書。めちゃくちゃ面白い! (本題に関係ないが、実店舗で序文・目次・あとがき等をざっと見てから購入した本は、オンライン購入よりも“当たり”が多いと思う。)

胎児の頃の栄養状態や、幼少時の精神的経験(トラウマなど)が、その後の人生に大きく影響することは以前から知られていたが、これに「エピジェネティクス」が関わっていることが示されている。またそれだけでなく、一部の経験(食生活や環境汚染の影響も含む)については、本人だけでなく子や孫にまで継代遺伝し得る(DNAによる遺伝ではなくDNAへの修飾による)例が示されている。本書は、我々は自身のDNAを書き換えることは出来ないが、子々孫々の健康に関わる問題として、自身の食生活や酒、薬、環境汚染物質などについて大きな責任を負っているという、重大な問題を突きつける。だがその一方で、希望も与えてくれる。それは、遺伝的決定論の否定だ。「氏よりも育ち」ではないが、氏(遺伝的形質)と育ち(環境や経験)の両方が重要であり、たとえば健康に良いとされること(例えば「食べ過ぎないこと」など)は、我々自身の健康だけでなく、継代遺伝により子や孫の健康にも寄与し得るということだ。

母系遺伝・父系遺伝の神秘や、がんとの戦い、老化とは何か、精神疾患、などなど多くの現象について、このエピジェネティクスがどう関わっているのか、興味深い話が多い。また、第2章には、山中伸弥教授のiPS細胞が生命科学に与えたインパクトについて、(山中教授ご本人による一般向け著作よりも詳しく/笑)書かれているので、ココだけでも読む価値はあると思う。

◆関連図書

◆余談:特許について少々…

第2章は、山中伸弥教授&高橋博士によるiPS細胞の研究とほぼ同時期にほぼ同じ内容の研究が、ボストン・ホワイトヘッド研究所のルドルフ・イェニッシュ教授らによっても行われていたことも示している。ここには、論文発表と特許出願の熾烈な競争の様子が生々しく描かれている(第三者の眼を通した描写であり、かつ、日本人よりも著者と同じアングロ=サクソン系のイェニッシュ教授の肩を持つような表現も見られるが…)。ノーベル生理学・医学賞は山中教授(とジョン・ガードン:後述)が受賞したが、同技術に関する特許出願~登録はイェニッシュが先という奇妙な現象についても言及されている(イェニッシュは、山中の発表を何かの間違いではないかと確かめたくて追試をし、山中が正しかったことを国際的な研究会の場で認めたとのこと。著者はこのイェニッシュの姿勢を「偉大だった」と書いているが、それではイェニッシュが山中より先に同じ技術に関する特許出願を行っていたことは説明できない)。生命科学や再生医療に関わるホットな領域であることから、互いに競争相手である両者が同じような研究を行っていた可能性は充分に有り得る。が、この発表&出願の順位の逆転において、科学論文につきものの査読というシステムの悪戯もあったのではないか(論文誌の編集委員や査読者は、競争相手の未発表論文を、「査読」という形で世間より数か月早く読むことが出来る…場合もある)、と考えてしまうのは、邪推が過ぎるだろうか
  • ジョン・ガードン(Wikipedia)…カエルの体細胞核移植によるクローン技術の開発に成功。のちのES細胞やiPS細胞の開発に結びつくことになった。山中教授と共に2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞。

2017年5月7日日曜日

タル・ベン・シャハー「ハーバードの人生を変える授業」


タル・ベン・シャハー(著), 成瀬まゆみ(翻訳)「ハーバードの人生を変える授業」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4479305165/>
文庫: 240ページ
出版社: 大和書房 (2015/1/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4479305165
ISBN-13: 978-4479305163
発売日: 2015/1/10

[書評] ★★★★☆

本書は、「ポジティブ心理学」の本。乱暴なまとめ方をすると、
  • 感謝すること、良かったこと、に意識を向ける
  • 悪いこと(現在自分が直面している問題や嫌な記憶など)からは、そこから学ぶべきことを学んだら、悪い感情は意識の外に追い出してしまう
  • 自分はどうありたいのか/理想的な未来をイメージする
このような意識を持つ習慣を持つことによって、本当に人生は変わる、という内容。

また、自分の人生を良くするために、ポジティブな意識・学び/気付きを得るために、
  • 良いことも悪いことも自分の心の中に留めず、人と話し合うこと
  • 紙またはPCに書き出してみること
  • 自分が価値をおくことを書き出して、優先順位をつけ、自分の実際の生活と照らし合わせ、一貫性を持たせるように時々軌道修正を行うこと
といった作業を定期的に行なうことを勧めている。

良い経験や良い感情に焦点を合わせる、過去の辛い経験や現状自分の力ではどうにもならないことについてクヨクヨ悩むのはやめる、というのはポジティブな生き方をする上で重要かも知れないし、ポジティブに生きている(ように見える)人は決まってそうやっていると思う。ただ、本書で勧めている
  • 悪い経験の記憶からネガティブな感情を捨て去ること
  • あれもこれも欲張って頑張ってやるのではなく、現実的な時間配分をする
は最初は難しいのではないか。良い意識を保つことは、日頃から意識的に取り組む必要があり、仕事や家庭を抱えた人が習慣化するのはハードルが高いかも知れない。が、最初から出来ないと言っていると何もできないので、出来ることから少しずつ…なのだろう。

「言う(読む)は易し、行うは難し」な項目が多いような気もするが、日頃から意識して取り組むことで、気の持ちよう・生活習慣は少しずつ変えられるかも知れない。

・  ・  ・  ・  ・

文庫本サイズだが、小説などと違って文字数少な目、紙面はスカスカ(笑)、内容も比較的軽いタッチで書かれており、読みやすい。実は本書、本屋(実店舗)で平置きされていたのをタイトルから衝動買い(笑)。700円と比較的安い本の割に、内容は悪くない。強くオススメできる本かと聞かれると微妙だが(苦笑)、値段・読書時間の費用対効果を考えると、外れではない本だとと思う。

2017年4月30日日曜日

ヤマザキマリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (1~5)」(コミック)


ヤマザキマリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (1~5)」(コミック)

[書評] ★★★☆☆

ウォルター・アイザックソンによるスティーブ・ジョブズ公式評伝(「STEVE JOBS: THE BIOGRAPHY」)のコミック版。描いたのは、人気漫画『テルマエ・ロマエ』の作者、ヤマザキ マリ氏。

アイザックソンによる原作を大幅に翻案・再構築しつつも、Jobsの有名な台詞をしっかり残すなど、印象深い作品になっている。Apple IIに始まり、Appleから追放された後に作ったハイエンドワークステーション・NeXT (コンピュータ) & NEXTSTEP (OS)、CGアニメ会社Pixar、Appleに返り咲いた後のiMac・iPod・iPhone・iPad…といった華々しい業績。その一方で、XEROX社パロアルト研究所(PARC)からの強引とも言える技術(GUI & ビットマップディスプレイ)の“剽窃”(もう少し後年であったら間違いなく大規模な知的財産訴訟になっていただろう)、自身が養子であったこと・実の娘を認知しなかったこと、…等、闇の部分にも触れる。

原作は、ハードカバー上下合わせて約880頁の本。文字ばかりの本を読むのは苦手だけど、スティーブ・ジョブズの伝記を読みたいという人にはオススメ。ただ、作り込まれたドラマというものは無いので、多くの漫画(コミック)のような起承転結は期待しないように!(笑) アイザックソンの原書(やその訳書)を読んだ人は読まなくて良いかも知れない…。が、私の場合、アイザックソン本(井口訳)を読んでから時間が経っていたので、おさらい的な意味で楽しむことが出来た。

ところで、本書は5巻では完結していない気がするのだが、第6巻はいつ出るのだろう? これまでの出版ペースから見て、今年(2017年)夏頃発売の第6巻にて完結、という運びになりそうだが…ちょっと待ち遠しい。

・  ・  ・  ・  ・

以下書誌事項:
  • ヤマザキ マリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (1)」(講談社 KCデラックス、2013/8/12)
    <https://www.amazon.co.jp/dp/4063768759/>
  • ヤマザキ マリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (2)」(講談社 KCデラックス、2014/4/11)
    <https://www.amazon.co.jp/dp/4063769631/>
  • ヤマザキ マリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (3)」(講談社 KCデラックス、2014/12/12)
    <https://www.amazon.co.jp/dp/4063770974/>
  • ヤマザキ マリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (4)」(講談社 KCデラックス、2015/9/11)
    <https://www.amazon.co.jp/dp/4063773043/>
  • ヤマザキ マリ(著), ウォルター・アイザックソン(原著)「スティーブ・ジョブズ (5)」(講談社 KCデラックス、2016/8/12)
    <https://www.amazon.co.jp/dp/4063930041/>
 
 

【余談:表紙の絵について】

1巻の表紙は、アイザックソンの原著とほぼ同じ。2巻・3巻は若かった頃のJobsですね(Jobsの外見ですが、各時期に合わせているようです…ヤマザキさん芸が細かい!)。4巻の表紙でJobsが膝の上に載せているのは、初期型のMacintoshですね。当時他社製マシンがキャラクタベースのいわゆるDOSマシンだった(通信機能は後付けでRS-232Cを介したモデム通信くらいしかなかった)のに対し、標準でGUI・ネットワーク機能(AppleTalk)を搭載した先進的マシンでした(動作は遅かったけど面白かったです)。5巻の表紙ではiMac (G3)。CD-ROMドライブがスロットローディングになる前の、初代モデルですね。絵がやたらとリアルですよね←ヤマザキさんご本人も使っていたのではないでしょうか。4~5巻の間で、Jobsは一度Appleを追い出されています。5巻表紙でJobsが一気に老けているのは、この間に何年もの時間があったからでしょう。

・  ・  ・  ・  ・

以下、ウォルター・アイザックソンによる原作の書誌事項:

 
・  ・  ・  ・  ・
【余談:私の最近の書評について】

4月の書評が全部コミックになってしまった…。1か月でコミック計61冊+アニメDVD 13巻って、大人としてどうなのよ?>ワタシ。4月1日だけじゃなく、月末までずっと「4月馬鹿」ってか?(苦笑)。

2017年4月23日日曜日

楠みちはる「銀灰のスピードスター SERIES 1 & 2」(コミック)

 

楠みちはる「銀灰のスピードスター SERIES 1 ターボ3.6」(小学館ビッグコミックス、2014/11/28)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4091866034/>
コミック: 186ページ
出版社: 小学館 (2014/11/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091866034
ISBN-13: 978-4091866035
発売日: 2014/11/28

楠みちはる「銀灰のスピードスター SERIES2 GT-R(RB26)」(小学館ビッグコミックス、2015/5/29)
<https://www.amazon.co.jp/dp/4091870252/>
コミック: 198ページ
出版社: 小学館 (2015/5/29)
言語: 日本語
ISBN-10: 4091870252
ISBN-13: 978-4091870254
発売日: 2015/5/29

[書評] ★★☆☆☆

『湾岸MIDNIGHT』シリーズの締めの作品です。またまた同じ友人が貸してくれました。もうお腹いっぱいです(笑)。クルマいじりの英才教育(?)の受講期間は、とりあえず今回で終わりです(笑)。
本作品は、クルマのメカニックが主人公。目標としていた先輩メカニックが不慮の事故(なのか?)で還らぬ人となり、その先輩が手掛けていた車を担当することに。

編集担当からのおすすめ情報として、“『湾岸MIDNIGHT』のスタートは実は「週刊ビッグコミックスピリッツ」でした。「クルマ漫画を描くのはこれが最後になるかもしれない」「納得のいくものを描きたい」と並々ならぬ意気込みで、楠先生が「スピリッツ」に再登場。”とのことです。が、小学館ビックコミックへの義理立て目的のヤッツケ仕事だったのか(邪推ですが)、講談社ヤンマガのシリーズと比べると、絵が少し雑です。ストーリーがしっかり作られているだけに、ちょっと勿体無いかも知れません。。

2017年4月16日日曜日

楠みちはる「湾岸MIDNIGHT C1ランナー」コミック全12巻


楠みちはる「湾岸MIDNIGHT C1ランナー(1)」
<https://www.amazon.co.jp/dp/4063617718/>

[書評] ★★★☆☆

『よろしくメカドック』(全7巻)、『湾岸MIDNIGHT』(全48巻)、同DVD(全13巻)、に続いて同じ人(友人)が貸してくれた公道カーレース漫画。借り物なので早く返そうと頑張って読むと、すぐ次が貸して貰えるという…どんな詰め込み教育デスカ?(笑)
さて、本作。ストーリー的には、『湾岸MIDNIGHT』(全48巻、以下『M』)のスピンオフ作品と言えるでしょう。『M』で脇役だった人物が、本作でのメインアクター。公道バトルのステージは『M』と同じ首都高ですが、本作でのメインステージは湾岸線(B1)ではなく、都心環状線(C1)。

最後の最後で『M』の主人公・アキオの駆る“悪魔のZ”が出てきたのは、チョット嬉しかったかも。でも、同エリアで似たようなことをしていながら、それまで関わりが無かったというのは少し不自然かも知れません。…まあ、別の物語ということでアリな設定かも知れませんが。

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12巻末尾に、『湾岸MIDNIGHT』の連載開始当時のゴタゴタについての説明があります(小学館「ビッグコミックスピリッツ」から講談社「ヤングマガジン」に移った経緯など)。読者への事情説明なのかも知れませんが、かなり言い訳めいているのような気も…(ここだけは低評価をつけたいです)。

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以下、発売日等の情報& Amazonリンク:

2017年4月9日日曜日

楠みちはる「湾岸MIDNIGHT」DVD全13巻

DVD 01巻パッケージ
※違うパッケージもあるようですが、貸してもらえたのはコレでした。

楠みちはる「湾岸MIDNIGHT」DVD全13巻

[評価] ★★★☆☆

これまたクルマいじりが趣味の友人が貸してくれた「教育資料」(笑)。

実は原作コミックを読む前に一通り観ました。

公道カーバトル漫画、『頭文字D』と双璧なす『湾岸MIDNIGHT』のアニメ作品です。本作は原作漫画全42巻のうち、第1巻~第24巻途中までの内容です(キリの良い所で終わっているのですが)。映像の尺の問題等もあったのでしょうが、登場人物やそれぞれのストーリーが大幅に削られていて、流れがかなりシンプルになっています。原作漫画を読んだ後だから言えるのですが、車のチューニングに関する技術的表現は少な目です。また、登場人物の心理描写も控えめですね。なぜスピードに取り憑かれるのか、なぜライバルと仲間意識を持てるのか、その辺りの表現が少し足りていない気がします。あと、ヒロイン・レイナが原作と比べておとなしめですね(原作では自分の感情に素直でアクティブな女性ですが、映像作品ではもう少し大人な女性になっています)
  • 『頭文字D』は原作48巻全てが映像化されていますが(原作漫画に無い追加エピソードもあったりします)、一気に観るには分量が多過ぎるので(一体何シーズンあったのよ?/笑)、本作くらいの分量にまとめられているのが丁度良いのかも知れません。
ところで。制作会社(オービー企画)&土屋圭一氏監修が『頭文字D』と同じだからでしょうか、映像効果やBGMの雰囲気は『D』とよく似ています(笑)。さらに、『D』と声優も一部同じ。『D』の主人公・藤原拓海クン(CV三木眞一郎さん)が本作で主人公の好敵手・島達也さんの声を担当していたのは少し笑いました。

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以下、発売日情報・Amazonリンク:

2017年4月2日日曜日

楠みちはる「湾岸MIDNIGHT」コミック全42巻

楠みちはる「湾岸MIDNIGHT(1)」

[書評] ★★★★★

以前予告(?)した通り、iOS/Androidスマホ用ゲーム「ドリフト・スピリッツ」繋がりで読むことになった(読まされることになった/笑)、公道カーレース漫画の人気作品です。先日読んだ『よろしくメカドック』と同じく、車いじりが大好きで今もヤンチャなクルマに乗っている友人が貸してくれました(←シリーズ全42巻+DVD 13巻を1度に渡されました…重いですってば!/笑)。でも、紙媒体の本は現在入手困難なので(Kindle版は現在も入手可)、貴重な漫画を読むことができました。

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この漫画、読み始めると止まらなくなる「かっぱえびせん漫画」です(しげの秀一『頭文字D』(全48巻)にも通じるものがあります:最終第48巻・拙書評リンク)。ひと言で言えば、メッチャ面白いです。漫画(コミック)で生活が乱れるのは久しぶりです(前回は去年4月に読んだ、新川直司『四月は君の嘘』全11巻以来でしょうか:拙書評リンク)。

首都高速、湾岸線や都心環状線をステージとした、スピードに取り憑かれた男たちの物語。ステージは、湾岸線(B)、都心環状線(C1)・横羽線(K1)・羽田線(1)・台場線(11)・深川線(9)。関東エリアで車を運転する人にとっては、見慣れた景色が度々出てきます(出版後年月が経ってしまっているので、一部の景色は変わっていますが)。

ほぼ同時期に連載~出版されていた人気漫画『頭文字D』(既読)が主にドライバー視点での話が多かったのに対し、本作『湾岸ミッドナイト』は、メカニック視点の話が多め。商売として成立するカーチューニングと、究極を目指すチューニングとの違いが明確に描かれていたり、主人公も含め多くの登場人物の人生の描写が濃厚。特に金銭面については、『頭文字D』でクルマの改造費(何百万円掛かっているのだろう?)が軽くスルーされているなどチート(笑)があったのに対し、本作はこと金銭に関しては結構現実的なストーリーが多いです。もっとも、公道で出せるスピードや運転技術に多少チートが見られますが…(笑)。モノ作りに関わる人間として、色々考えさせられるものがありました。

それにしても、自動車を中心とする機械の技術に関して、薀蓄(ウンチク)が半端じゃないデス。30巻を過ぎてから薀蓄(と人生に関する説教)が急激に増えたところを見ると、作品に深みを持たせる為に途中で綿密な調査を行なったのかも知れません。戦中~戦後の航空機技術が戦後の自動車産業に活用された経緯など、非常に解り易いです。

あと余談ですが、「首都高ナビマップ」等を見ながら読むと、より面白いかもです。
以下、全42巻の発売日情報+Amazonリンク。