2012年9月19日水曜日

橋田信介「イラクの中心で、バカとさけぶ」

橋田 信介 (著)
「イラクの中心で、バカとさけぶ―戦場カメラマンが書いた」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4776201321/>
単行本: 285 p ; 出版社: アスコム ; ISBN: 4776201321 ; (2004/01)
[書評] ★★★★★
 2004年5月に「日本人ジャーナリスト2名、イラクにてゲリラに襲撃されて死亡」という事件があったが、本書はそのジャーナリストの遺作となってしまったエッセイである。
 本書で橋田氏は、ホニャッとした感じの文章で、 戦場取材を通じて経験した面白おかしかったことや辛かったこと等を綴りつつ、 先の読めない社会の中での生き抜きかた、色々な人生を伝える。 非常に読みやすい文章だが、底流は痛烈な政治批判である(特に自衛隊派遣など、 戦場を知らない日本政治家の無能ぶりや、 海外各国の反応を無視した政治家の言動などを強く批判する)。 政治批判・社会批判にとどまらず、厭世的な空気すら漂わせる。
 数々の戦場取材で、人間の馬鹿さ加減を思い知らされ、 日本人の脳天気ぶりに落胆し、アメリカの内政干渉に怒りを感じ、…としているうちに、 橋田氏は何やら仙人めいた領域に到達してしまったかのようだ。
 戦場ジャーナリストとして橋田氏と同じように知られた人として“不肖”宮嶋茂樹氏がおり、 橋田氏と並んで面白く読ませる文章を書いている。 宮嶋氏の文章が、逆境にも負けず(好んで逆境に飛び込んで行く?)、常に前向きなのに対し、 橋田氏の文章は厭世観・無常観を漂わせている点が決定的に違うと言えよう。

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