2012年9月20日木曜日

橋田信介・橋田幸子「世界の戦場で、バカとさけぶ」

橋田 信介 (著), 橋田 幸子
「世界の戦場で、バカとさけぶ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4776202166/>
単行本: 267 p ; 出版社: アスコム ; ISBN: 4776202166 ; (2004/12)
[書評]★★★★★
 橋田夫人が、橋田氏の遺稿を集め、整理・出版した本。 上記「イラクの中心でバカと叫ぶ」同様、ホニャッとした読みやすい文章が特徴。 「イラクの~」と違うのは、 世の中、特に日本の政治・社会システム・教育等を痛烈に批判していること。 「イラクの~」が厭世観・無常観を感じさせる文章であるのに対し、 本書の根底に流れているのは世の中、 特に日本の政治(特に外交政策)に対する怒りのように思える。
 イラク戦争でアメリカに加担して、国際社会における日本の地位はどうなったか?  金権まみれの政治を是とし、そういう社会の中で居場所を確保するために子供はどのような家庭教育を受けているか?
 日本の国民は、戦中は情報統制によって、戦争の実態を知らされて来なかった。また、戦後もまた教育の不足によって、戦争というものを知らされていない(戦争を否定した戦後の憲法を楯に、戦争について充分な教育がなされていない、というのが実体だろうか)。 数々の戦争映画やドラマで「戦場」や「銃後」の物語は知られてはいるが、 国家間の利害の不一致の際に政治的駆け引きとして発生する「戦争」について、 色々と考えさせる本である(そういった本の中では、 一般国民の視点を持っているのが本書だと思う)。
 誰にでもお薦めできる良書だと思う。

《参考》日本は戦後60年以上となってもまだ、靖国問題を決着できていない。 「戦後」は終わっていないのだ。しかし、戦中の国民は情報統制によって、また戦後の国民は教育の不足によって、日清戦争に始まり、日露戦争、 日中戦争~太平洋戦争へと突っ走って行った当時の日本を理解していない。だから、国連の創立直後にその理想と信念を受け継いで作られた日本国憲法の崇高さを理解していない。 第9条を変えようというのは、ワシントン講和条約により国際社会への復帰を許されて以来の日本の国際社会での活動を全否定する行いなのだ。(※戦中戦後の国際社会における日本の位置づけと今後の指針は、たとえば日経BP社のWebページに'05年春から連載されている『立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」』で靖国問題を論じている記事に詳しい。 興味のある向きは、そちらを参照されたい。

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