サイモン シン (著), Simon Singh (原著), 青木 薫 (翻訳)
「フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4105393014/>
単行本: 397 p ; 出版社: 新潮社 ; ISBN: 4105393014 ; (2000/01)
[書評] ★★★★☆
本書は、かの有名な「フェルマーの最終定理」(方程式X^n+Y^n=Z^nはn≧3の時に整数解X,Y,Zを持たない、という定理(未証明の段階では「フェルマーの最終予想」と呼ぶべきか))が証明されるまでの300年の人間物語を、数学に素人の読者にもわかりやすく書いている。 序盤はワイルズ(フェルマーの最終定理を証明した数学者)を含む20世紀~21世紀初頭の数学者たちの話で始まる。その後、ピュタゴラス(ピタゴラス)ら古代の数学者に始まる数学の歴史を俯瞰したのち、 再びワイルズの話に戻り、フェルマーの最終定理の証明がどのようにしてなされたかを記しつつ、 大団円を迎える。
訳者あとがきにも書かれているが、本書を読んでいて親近感を感じることに、 日本の数学者(谷山=志村予想の谷村・志村両氏)が重要な役割を果たしたことが きちんと示されている点が挙げられる。
本書の残念なことは、ピュタゴラス(ピタゴラス)に始まる数学の歴史を俯瞰する個所で、 非常に間延びしていまっていることである。ここを淡々と読み進めると、ワイルズがフェルマーの最終定理を証明し終わる直前の、 息もつかせぬクライマックスへと走って行くが、 古代数学の歴史の部分で挫折する読者も多いのではないだろうか。 後のクライマックスのために、意図的に盛り上がりに欠ける部分を設けたのかも知れないし、 古代の数学者に関する文献が少なく、その人となりを述べることが出来なくて止むを得ず、このようなスタイルになったのかも分からない。いずれにしても、もう少し読者を惹き付け続けるスタイルにしてもらうことは出来なかったのか? そういう意味で、★ひとつマイナス。
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