與那覇 潤 (著)
「帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4757142617/>
単行本: 238ページ; 出版社: エヌティティ出版 (2011/1/14); 言語 日本語; ISBN-10: 4757142617; ISBN-13: 978-4757142619; 発売日: 2011/1/14
[書評] ★★★☆☆
戦中~戦後の映画監督、小津安二郎に関する研究書。
小津の映画には戦争を連想させるシーンは多かったものの、戦争そのものを描いたものは無かったという。 兵役経験もある小津の映画になぜ戦争が出てこないのか、等を解説しつつ、小津の兵役経験(赴任先、足取り)、 当時の時代背景に迫る。
秀逸なのは、太平洋戦争(大東亜戦争)敗戦後の思想史とでも言うべき箇所。 中国の共産革命、日本共産党の暴力による革命論、朝鮮戦争、日本の中国化(共産革命)の季節の終焉に至るまでの思想史。 敗戦後の日本はまさに革命の後の如く、帝国主義を否定され、GHQつまり米国の支配下に置かれていた訳で、 当然米国に都合の悪い思想は弾圧をされて来たのだが、サンフランシスコ条約、60年安保、日中国交正常化を経る辺りまでの事情が非常によくまとまっていると思う。
映画とは当然ながら時代の思想の表れであるが(場合によっては当局による情報活動に用いられることもある)、 本書は映画監督の研究書という形式を採った戦中・戦後の日本の思想史と言うことも出来よう。
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