與那覇 潤 (著)
「中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4163746900/>
単行本: 320ページ; 出版社: 文藝春秋 (2011/11/19); ISBN-10: 4163746900; ISBN-13: 978-4163746906; 発売日: 2011/11/19
[書評] ★★★☆☆
なかなか刺激的な題名だが、このタイトルだけで「引いた」人にこそ、本書を手に取って欲しい。
日本人の多くが明治維新を「西洋化」だと思っているのだろうが(私も本書を読むまでそう思っていた)、 筆者はこれを「中国化」だと喝破する。 天皇を中心とした統治形態は、秦以来の中国の皇帝を中心とした統治形態と同じであり、 官僚による中央集権/地方統治システム(公務員制度)は宋朝以降の科挙と同じだとする。
民主政が布かれていない中国は発展途上国だとする議論もあるが、 本書では民主政は西洋の特殊な地理的・歴史的経緯によって発生した近代システムの一形態に過ぎず、 世界中に普遍的に通用するシステムではないという。そうでなくても、中国はここ100年位世界史から置いてけぼりを食っていただけで、その4千年の歴史の殆どを世界の中心(「中華」)としてやってきたのだ。 文字は「漢字」という共通のフォーマット(表意文字)を採用しているが、発音は統一していない。 科挙という秀才を集めるシステムを採用しているが、教育は民間に任せている。 中国が採用してきたシステムこそ、広大な国土を統治するに適したシステムだったのだ。
グローバリゼーションの進む今後、日本の取れる道は、 再度ムラ社会に戻る「再江戸化」か(行き着く先はグローバル競争から逃避した鎖国か?/笑)、 国民も企業も世界各国との競争に曝されるが、自由に競争するに任せる「中国化」しかないと言う。いずれにしても、国民がラクをできる社会でなくなることは確実だが、 現代日本は、明治維新前夜のような、(見ようによっては)面白い時代だという。
世界史、日本史と今後の日本を考える上で、新しい視点を与えてくれる面白い本だ。
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