三浦 展 (著)
「下流社会 新たな階層集団の出現 光文社新書」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4334033210/>
新書: 284 p ; 出版社: 光文社 ; ISBN: 4334033210 ; (2005/09/20)
[書評] ★★★★☆
「一億総中流」と言われて久しいが、ここに来て小泉政策は希望格差社会を産んだ、などという話題が取り沙汰されている。 本書は、今後の日本は、ごく一握りの上流階級と、圧倒的多数の下層階級からなると説く。また、上流階層から下流階層に入るのは簡単だが、 下流階層から上流階層に移るのは困難を極めるとも。
学歴・職歴により一旦下流に入り込んだ人の子供も下流に留まる傾向が強く、 下流「階層」の家は次の代も下流であり続けやすい傾向を説く。 言われてみれば、高学歴の教育を受けた家庭の子息はまた高学歴の教育を受けやすく、その逆もまた然り。至極当然のことを言っているだけである。ただ、本書は自分らしい生き方・夢を追い求める生き方をしていると、 上流すなわち日本の政治・経済・教育等々を動かす階層に留まることが非常に困難であると述べる。
これからの日本は、米国のような「希望格差社会」化が一層進むだろう。だが、上流・下流という括りと、本人の幸せな人生というものが果たして1対1に対応しているだろうか? 何を以って自分が幸せであると定義するか。 上流・下流ではなく、生き方そのものを問われる時代なのである。 住友総合研究所・伊藤洋一氏がPodcastの番組で「努力をしない者は下層になるよ、という本」と言っていたが、そういう簡単な問題でもないと思う。 伊藤氏の「題名ほど酷い内容の本ではない」には共感するが。
何にせよ、自分の生き方を考え直す上で有意義な本だと思う。お勧め。ただ、理系人間として読むと、比較・分析のためのデータちょっと少ないかも。 実例は多いのだが、各事例での調査数が少ないこと、サンプル条件等がいまひとつはっきりと書かれていなかったことが残念。
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