ジェフリー・ムーア(著)、川又政治(訳)
「ライフサイクル・イノベーション ~成熟市場+コモディティ化に効く14のイノベーション (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/479811121X/>
単行本: [書評] ★★★★★
ジェフリー・ムーア氏の新作、 「ライフサイクル・イノベーション ~成熟市場+コモディティ化に効く14のイノベーション」を読んだ。 前作「キャズム」の内容にはすっかり魅了されたが、 良い作品を書いた著者が2作目で駄作を出すことが多い中、ムーア氏は前作に続き、白眉の書を出したのではないだろうか。
本書は、企業タイプ別に、事業(商品・サービス)のライフサイクルと、それに対する資源の投入方法、イノベーションの仕方を示している。 本書では企業のタイプを、コンプレックス・システム型とボリューム・オペレーション型に分類し、 製品・サービスのライフサイクルを成長市場、成熟市場、衰退市場のフェーズに分け、 各企業タイプの、製品・サービスのライフサイクルの各フェーズにおけるイノベーションの管理方針を示す。
本書の最初は、企業活動のタイプとして示した、コンプレックス・システム型とボリューム・オペレーション型についての説明、及び、 成長市場(「キャズム」のおさらい)・成熟市場・衰退市場の説明をする。ここまでは、モデルの説明だ。
次に、市場の各フェーズ(成長市場・成熟市場・衰退市場)における戦略についての説明。ふむふむ。非常に解り易い。
上記の2点だけでも、本書を読む価値はある。しかし、本書の最大のポイントは、9章・10章の「慣性力を管理する」、すなわち、 現在大きな収益源にはなっているが差別化戦略が重要なフェーズから脱した「コンテキスト」なる事業(今日のメシの種)から資源(勿論、経営資源のことだ)を抜き出す方法と、 今現在大きな収益を上げていないが、将来大きな収益を上げることが期待できる「コア」(明日のメシの種)に資源を投入する戦略が示されている点だ。
本書の白眉なる点は、この資源の再配分に関する記述であろう。 多くの企業では、製品のライフサイクルと共に、人が動いていく。そして、衰退期を迎えた事業から人を引き上げ、次の事業に投入しようとするが、その時には、人材は時代に取り残された存在となっており、 次世代を担う「非ミッション・クリティカル・コア」な事業で戦力にならない状態になっている。しかし本書では、事業の立ち上げ担当(発明部署と事業部署を行き来する)・事業展開担当(立ち上がった事業を展開し、収益の最大化を目指す)・最適化担当(衰退期を迎えた事業の整理)を置き、 事業をそのフェーズに合わせてその担当者の間で引き継いでいくことを提案している。 「目からウロコ」である。
本書で一つだけ残念なのが、翻訳に幾分こなれていない点があることだ。 特に気になるのが、「追求」・「追究」・「追及」や「賢明」・「懸命」の使い分け。 本書のような小難しい本(笑)については、読む側も馬鹿じゃないので、これらは単純なミスだとは判るが、可読性を下げていることは否めない。
閑話休題。 翻訳の質については若干の問題はあるものの、それを補って余りある内容に、 再び魅了されてしまった。志ある社員には、是非一読をオススメしたい。
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