2012年7月2日月曜日

ジェフリー・K・ライカー「ザ・トヨタウェイ」(上・下)

 

ジェフリー・K・ライカー (著), 稲垣 公夫 (翻訳)
「ザ・トヨタウェイ(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822244156/>
単行本: 289 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822244156 ; 上 巻 (2004/07/22)
ジェフリー・K・ライカー (著), 稲垣 公夫 (翻訳)
「ザ・トヨタウェイ(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822244164/>
単行本: 293 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822244164 ; 下 巻 (2004/07/22)
[書評] ★★★★★
 本書は、1980年代、アメリカの経済と産業が不振に陥っている間に世界に台頭し始めた日本の経済と産業の構造、企業の特徴を調査・研究した経営・経済学者、ミシガン大のジェフリー・ライカー教授の日本企業論、 特に、「強い日本企業」の代表選手としてのトヨタを論じた本である。
 発売直後、多くの書店で数週間にわたりベストセラーに名を連ねただけに、非常に面白い本だ。だが、単に面白いだけではない。 大野耐一著「トヨタ生産方式」を読んだ後に読むとより深い理解が得られると思うが、 本書はトヨタ生産システム(TPS: Toyota Production System)とその基盤となる日本文化、トヨタの企業文化を、客観的に分析している(「トヨタ生産方式」がTPSを創った内側の人の視点で書かれているのと対照的だ)。トヨタ生産システムを研究し、導入した(導入しようとした)米国企業は非常に多い。しかし、本質的な点を理解せずに表相のみを真似しようとしても、必ず失敗する。どうしてか? それをこの本は論じている。
 トヨタの文化の基盤の多くは、日本の文化に由来する(だからこそ、トヨタは米国を始めとした海外にTPSを広めるのに非常に苦労している)。そういう意味では、日本の企業は、トヨタの良い点を見習う上で、 海外の企業と比較して、恵まれた環境にあると言える。しかし、トヨタの優れた点を真似しようとして、 上手く行っていない日本企業、途中で諦めてしまった日本企業の何と多いことか! この本の和訳が出版されたということは、(日経BP社の商魂を云々する前に)日本企業が自分を見直して、トヨタの良い点を吸収する良いチャンスを与えられたのであると思う。
 会社の経営に携わる人たちだけでなく、経営というものに興味を持つ人たち、 知的好奇心を満たしたいと考えている全ての人たちに、本書は教養の書としてお薦めできる。

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