戸部 良一 (著), 寺本 義也 (著), 鎌田 伸一 (著), 杉之尾 孝生 (著), 村井 友秀 (著), 野中 郁次郎 (著)
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 中公文庫」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4122018331/>
文庫: 413 p ; 出版社: 中央公論社 ; ISBN: 4122018331 ; (1991/08)
[書評] ★★★★☆
敗戦に至るまでの日本の問題点、特に旧日本帝国軍の組織的問題点を洗い出し、 時代の変化に対応できる組織とはどういうものかについて論じた本。 「イノベーションの本質」「戦略の本質」などで有名な野中郁次郎ら複数のメンバーによる共同調査検討結果と、そこから学べる日本の組織への組織改善の提案が中心である。
日本が大東亜戦争で敗戦に至った経緯に関する本は山ほどあるが、 本書は敗戦に至るまでの重要な転換点、経過点となった6つの戦闘を挙げ、これらを徹底的に分析し、結論として、日本帝国軍の組織的問題点を分析する。 日本は明治維新後、日清戦争・日露戦争の2つの戦争を通じて、国際社会に認められる国家となった。しかし、日本帝国陸海空軍は時代に適応した動きをすることが出来なかった。
(1)陸海空軍が互いに自己のイニシアチブを優先し、協力して戦線を張るのに失敗したこと(組織としてのトップマネジメントの失敗)、
(2)満州の守備・北方の気候に特殊化し、対ロシア(ソ連)の防御に最適特化した陸軍組織・装備、バルチック艦隊を破って戦艦戦に最適特化した海軍組織・装備が、ともに過去の成功に縛られて時代の変化に適応できずに勝てる戦で負け続けたこと(組織としての学習の失敗)、
(3)各戦闘部隊に作戦全体のグランドデザインが与えられず、 組織全体の動きの中で効率的な働きが出来なかったこと(情報の共有の失敗)、
(4)各戦線が、面子等を優先して、正確な情報が司令部・大本営まで上げなかったこと(必要な情報を集める機構作りの失敗)、
(5)個々の戦闘部隊(の司令官)の全体を無視した独走を許してしまったこと(組織としての軍隊のデザインの失敗)、そして
(6)コンティンジェンシー・プランの欠如
を挙げる。
本書を読むと、あちこちでドキッとさせられる。 某社(私の勤務先)に限らず、日本の企業の多くがそうなのであろうが、 状況変化に柔軟に対応して行く組織とは言いがたい点、グランドデザインの欠如、コンティンジェンシープランの無い精神論的事業計画、…etc., etc.
自分自身が異端になったり排除されたりしないようにしつつ、 自分の組織をより良くしていくにはどうしたら良いか。 非常に難しい問題ではある。
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