トム・ピーターズ (著), ロバート・ウォーターマン (著), 大前 研一 (翻訳)
「エクセレント・カンパニー Eijipress business classics」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4901234331/>
単行本: 555 p ; 出版社: 英治出版 ; ISBN: 4901234331 ; (2003/07/26)
[書評] ★★★★★
面白い!
本書には、優れた企業とはどういうものか、という問いに対する答えとして、(財務面ではなく)企業文化としての共通項を挙げ、読者の企業を良くするための参考として非常に役に立つ情報を与えてくれる。
エクセレントな企業・組織とはどのような組織か。 一言で言えば、状況の変化に柔軟に対応し、学習することのできる組織だ、と言うことができよう。そのためには、従業員のモチベーションを維持する仕組みも必要だし、 風通しの良い企業文化を作ることも必要だ。さらに、上から下・下から上への情報の流れの良さ、 異端なことを言う構成員を排除しない組織文化も必要だ。
今、某社(私の勤務先)は過去の負の遺産に引きずられて苦しんでいる。また、安定的に付加価値を生み出し続ける事業が無いことに苦しんでいる。なぜ苦しいのかと言えば、過去とのしがらみに雁字搦めにされているからだ。 私の勤務先は社長が交代した後、エクセレントなカンパニーにしようという動きが見られる(私の見たところ、経営コンサルは、本書「エクセレント・カンパニー」や その他のビジネス書の「流行りモノ」の熱心な読者だと思う)。5年~10年といった長期的な視点で会社を時代の変化に生き残れる企業にしようという意気込みは感じられるが、きちんとマネジメントしきれていないのを感じる。企業としての存在意義、将来像、存在価値を策定し、トップダウン式に研鑽会を行などを行い、企業文化を染み付かせようとする動きはあるが、 実際の運用は各部署に任せ、そこから上がってきた報告だけで満足しているのではないだろうか。また、この“存在意義”も“将来像”も抽象的にすぎ、末端の社員がどう行動すべきなのか、までは分からないままである。私の勤務先の、特に古い文化が色濃く残されている部署は、 基本的に「上には良いことだけを報告する」「臭い物には蓋」の文化が強い。こうしたことを鑑みるに、本質のところから企業文化を変えようとするならば、 各部署の研鑽会には必ず経営理念を策定したメンバー自身を出席させて具体的な指導に当たる等の処置が必要だと思う。 企業文化を本当に変えたいと思うのならば、看板をブチ上げてあとは他人任せで満足するのではなく、本当にそれを組織の末端まで行き渡らせる地道な努力が必要だと思う。
閑話休題。
本書について難点を挙げるとすれば、ただひとつ。 日本語訳が不自然なことだ。 日本語としてこなれた表現になっていない所が多い。また、漢字・かな・カタカナの使い分けが不自然だ。 訳者(大前研一氏)には訳者のなりのコダワリがあるのかも知れないが、それによって本書が若干読みにくくなっているのは非常に残念。ドラッカーが自著の訳者、上田惇生氏の翻訳・編集を、 著者以上に理解している、名訳は十分以上の理解が無いと生まれない、等とベタ褒めしている。 逆を言えば、翻訳のクオリティが低いということは、 訳者が原著の内容を十分に理解していないことの裏返しかも知れない(…というのは深読みのしすぎか?)。
0 件のコメント:
コメントを投稿