クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太, 伊豆原 弓
Harvard business school press
「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4798100234/>
単行本: 327 p ; 出版社: 翔泳社 ; ISBN: 4798100234 ; 増補改訂版 版 (2001/07)
[書評] ★★★★★
本書は、企業のイノベーションを(1)持続的イノベーションと、(2)破壊的イノベーションとに分類し、 大企業は(1)には長けているが、(2)のイノベーションには不得意であるという。 不得意であるだけでなく、 他社の(2)の破壊的イノベーションに出会った際に、 経営危機に陥るという。HDD(ハードディスクドライブ)や掘削機を例に、 著者は自らの主張の裏づけをし、 破壊的イノベーションへの対処法(のキッカケ)を示す。
破壊的技術・破壊的イノベーションの特徴として、次のようなものを挙げる:
①世の中に出てきた時には、既存の市場(主流市場)には受け入れてもらえない、
②既存の市場とは異なる、別のモノサシで測った特性(価格、サイズ、等)で別の市場に受け入れられる、
③最初は小さな市場しか持たず、(既存事業を推し進める)大企業の成長を賄うことはできない、
④技術の革新に従い、既存市場(主流市場)にも受け入れられるだけの特性を持つに至る、
⑤既存市場のみを相手にしていた大企業は、破壊的技術の上位市場への食い込みに従い、シェア縮小(→最悪の場合には)企業の破綻へと至る。
こういった問題にどう取り組めば良いか、 大企業が破壊的技術を扱い、 破壊的技術で市場を得るには どのようにしたら良いかを説く。
たとえば、破壊的技術の展開の方法の例として、 誰もが知っている電気自動車を使った説明をしており、 非常にわかりやすい。(電気自動車は現在のガソリン/ディーゼル自動車並みの性能要求を満たしておらず主流市場には受け入れられないが、確立された自動車の分野以外に活路があるのではないか と(例としてだが)筆者は述べている。)
以前いた部署で、新規事業探索というミッションを与えられ、 前提条件として示されたハードルに色々な問題を感じていた。 本書は、それらの疑問に明確・明快に答えを与えてくれた。 目から鱗が落ちたなんて生易しいものではない、衝撃を与えた本である。「新規事業探索」担当者は勿論、研究開発メンバー・営業メンバーの全てに必読の書である。ベストセラーになった本には、話題性のみの本と、実を伴う本とがあるが、 本書は間違いなく後者だ。 全ての社会人に強く推薦する。
【余談】この翻訳監修者(玉田 俊平太氏)の名前は、 経済学者ヨゼフ・シュンペーターの名前をモジッた ペンネームに違いないと思っていたが、どうやら本名らしい(大学時代に玉田氏と同じサークルに所属していたという某先輩による)。 玉田氏のご両親も、ずいぶん思い切った名前をつけたものだ。
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