2014年9月24日水曜日

シドニー・フィンケルシュタイン 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」

シドニー・フィンケルシュタイン (著), 橋口 寛(監訳) (著), 酒井 泰介 (翻訳) 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822244121/>
単行本: 469ページ
出版社: 日経BP社 (2004/6/24)
言語: 日本語
ISBN-10: 4822244121
ISBN-13: 978-4822244125
発売日: 2004/6/24

[書評] ★★★★★

偉大な企業が失敗する例を多数調べ上げ、その共通点を洗い出した研究書。失敗した事例やその会社の体質を見ると、似た例を身近でも良く見ていることに気づく。他社の成功例から学べることは勿論多いのだが(そういう文献は実に多い)、失敗例からも学ぶべきことは沢山あることを教えてくれる本。組織のトップは勿論、部門・部署を率いる人にとって、必読の書だと思う。

失敗した企業の多くに共通して見られる傾向として、たとえば以下のような症状を挙げる。
  1. 企業トップが自分と違う考えを聞き入れなくなる。
    • トップ、上司に対して反対意見を言えない土壌が形成される。
    • 上と考えの違う従業員が排斥されるようになる。
    • 健全な意見交換が出来ない雰囲気になる。
  2. 企業トップが自社を偉大な会社だと自惚れる。社員にも同じ幻想を抱かせる。
    • 独りよがりに陥り、社外からの重要なシグナルを受け取らなくなって行く。
    • 社内でも上にとって都合の悪い情報が伝わりにくくなる(情報の隠蔽・改竄が行われるようになる)。
    • 過剰な団結主義が発生する(カルト主義、集団ヒステリー)。
    • 顧客・市場に基づかない、独自の評価基準を持ってしまう。
  3. 無意味な完璧主義に陥る。
    • 失敗を許容できない組織文化になる。新たな試みが出来ない組織体質になる。
    • 環境変化に対応できない組織になる。
    • 怠慢による失敗と前向きな失敗の違いがわからなくなる。競争力や収益性を保つために必要なイノベーションが起こせなくなる。
このような状況に陥ると、当然、正しい経営判断は出来なくなる。

一定以上の歴史のある会社には、多かれ少なかれ、上記のような病に罹っていることが多い。企業トップは勿論、管理職クラスは留意すべきだろう。

本書のケーススタディに出て来る、失敗した会社から学べることがあるとすれば、概ね以下のようになるだろう。
  1. 風通しの良い組織にする
    • 悪い情報が適切に伝わるようにする(無意味な悲観論者には振り回されないように)。
    • 悪い情報を報告した者を罰したり排斥したりしない。
  2. 失敗を許容し、失敗から学習する組織にする
    • 失敗を許容し、新たな試みが実施できるようにする。
    • 上手く行った事例だけでなく、失敗した事例もケーススタディとして活かす。
  3. 社内外の情報を適切に伝達出来る組織にする
    • 良い情報は勿論だが、悪い情報も正しく伝わり、正しい経営判断が出来るようにする。
・  ・  ・  ・  ・
以下余談:

戸部良一らが、『失敗の本質 ― 日本軍の組織論的研究』(中央公論社,1991/08)(Amazon, 拙書評)において、失敗する組織、環境の変化に対応できない組織として、旧日本帝国軍の組織的問題点を洗い出した点について述べているが、本書はこの「失敗の本質」と通じるものがある。

本書では、“トップが聞く耳を持たなくなる”病と、“従業員が自惚れる・驕る”病とを助長するので、カルト的文化は企業文化として好ましくないと言う。色々な面で、ジェームズ・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社,1995/9/26)(Amazon, 拙書評)とは逆の主張である。

2014年9月23日火曜日

ジム・コリンズ「ビジョナリーカンパニー【特別編】」

ジェームズ・C・コリンズ(著), 山岡洋一(翻訳)「ビジョナリーカンパニー【特別編】」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822245241/>
単行本: 96ページ
出版社: 日経BP社 (2006/6/22)
ISBN-10: 4822245241
ISBN-13: 978-4822245245
発売日: 2006/6/22

[書評] ★★★☆☆

※「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」(Amazon拙書評)の付属論文。「ビジョナリー・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー②」は、偉大な企業とそうでない企業の差異、及び偉大な企業になる為にどうしたら良いかについて書かれた本だった。本書は、偉大な組織になるために何をすれば良いか、という命題について、企業セクターではなく、社会セクターの組織(病院、警察、赤十字、etc.)の場合について書かれた本。

80ページそこそこの本なので、あっと言う間に読めてしまうが、内容は濃い。企業セクターの人間にとっても、“偉大な組織”の本質について考えるのに役に立つ本だと思う。

2014年9月20日土曜日

ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」

ジム・コリンズ(著), 山岡 洋一(翻訳)「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822242633/>
単行本: 360ページ
出版社: 日経BP社 (2001/12/18)
ISBN-10: 4822242633
ISBN-13: 978-4822242633
発売日: 2001/12/18

[書評] ★★★★★

「ビジョナリー・カンパニー - 時代を超える生存の原則」(Amazon拙書評)の続編。前著では、「偉大な企業とそうでない企業」を比較し、偉大な企業の共通点(すなわち静止画)を挙げていたが、本書では、「良好な企業」が「偉大な企業」になる為にやったことをの共通点(すなわち動画)を調査し、まとめた本。

本書で述べられている重要なポイントは2点である。すなわち、偉大な業績をあげる企業の経営者の特徴と、そのような企業の経営方針についてだろう。

偉大な企業を率いている経営者は必ず以下の「第5水準の経営者」であり、その他多くの企業の経営者は「第4水準」の経営者であると言う。
  • 第5水準:第5水準の経営者
    個人として謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる
  • 第4水準:有能な経営者
    明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
  • 第3水準:有能な管理者
    人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する
  • 第2水準:組織に寄与する個人
    組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織のなかで他の人たちとうまく協力する
  • 第1水準:有能な個人
    才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする
偉大な企業の経営方針は、以下の3つのポイントが重複することだけに集中していることだと言う。
  • 情熱をもって 取り組めるもの
  • 自分が世界一になれる部分
  • 経済的原動力になるもの
本書の出版により、経営者の多くは戸惑ったのではないだろうか(特に、本人の実力というよりも環境に恵まれて実績を出して昇進した人や、社内政治力によって昇進した人)。企業経営者は、部下から採点されるようになってしまったのだ(経営者の多くは第5水準ではなく、第4水準の経営者という評価になるだろう)。また、会社役員全員のベクトルが揃っていないと、本書の言う「偉大な企業」にはなり得ないが、取締役会は往々にして政治闘争の場になってしまっており、偉大になるには程遠い状態であることが多いからだ。

経営者でない人にとって、本書はどう役立つか。それは、自分の所属する組織(部でも課でもチームでも良い)を「偉大な組織」にする際の参考に出来ることだ。会社トップに直接働きかけることは出来ないかも知れないが、自分の周囲なら「偉大な組織」に変えることは不可能ではない。自分自身が「第5水準」に近づくために、努力と経験を積むことも可能だ。優れた成果を挙げる組織を作りたいと考える“志ある社員”にとって、必読の書

2014年9月17日水曜日

ジム・コリンズ、ジェリー・I・ポラス「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」

ジム・コリンズ、ジェリー・I・ポラス(著)、山岡 洋一(翻訳) 「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822740315/>
出版社: 日経BP社 (1995/9/26)
ISBN-10: 4822740315
ISBN-13: 978-4822740313
発売日: 1995/9/26

[書評] ★★★★☆

経営書として一世を風靡した本。細かな紹介は不要だろう。

時代を超えて存続し続ける会社組織について、その共通点を調査してまとめている。数十年経って市場環境が大きく変動しても、企業が偉大な企業として存続するための重要なポイントとして、
  • 企業の存在理由を明確にすること
  • 組織として進歩を促すための仕組みづくりをすること
  • 報酬体系をはじめとし、会社組織・制度の全てを合目的的にし、矛盾をなくすこと
を挙げる。また、会社(あるいは部署)を1つにまとめ、燃え立つ組織とするために、
  • 社運を賭けた大胆な目標(Big Hairy Audacious Goals: BHAG/ビーハグ)
を設定するメリットを挙げる(BHAGは時代・市場に合わせ、その時々に適したものを設定するべきである)。勿論、あるBHAGを達成した後に新たなBHAGを設定しないと、会社は自己満足に陥って成長を止めてしまうので、BHAGは時流に応じて度々再設定する必要がある。

※本書の中で「ビジョナリー・カンパニー」とされている企業のうち数社は、その後、主要事業を売却する等大きな変化も起きている。が、20年近く前の本なので致し方ないだろう。事例が古いのは否めないが、現在でも充分通用する内容が多いと思う(我々により身近なトヨタvs.日産等を念頭に置いて読んでも良いだろう)。

なお、以下の点については留意が必要である。本質を見落として表層だけ・一部だけを真似ようとすると、十中八九、以下の罠に陥る。つまり、企業は従業員にとって地獄と化してしまう。企業経営者・コンサルタントの人たちは、これを見過ごしてはならないと思う。
  • 本書が、企業の経営者たちに、企業理念の文書化と、カルト主義(過剰な団結精神・集団ヒステリー)とを蔓延らせた罪は重い。
  • 本書に示されたような経営方針を採る企業は、ともすると今で言う「ブラック企業」になり易い。従業員の処遇とのバランスも重要。
    ※本書で言う「ビジョナリー・カンパニー」は、社員にとって「やさしい」「居心地のいい」会社ではない。社員に対する要求が厳しい傾向にある。

2014年9月13日土曜日

池谷 裕二「脳には妙なクセがある」

池谷 裕二「脳には妙なクセがある」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4594069517/>
新書: 366ページ
出版社: 扶桑社 (2013/11/30)
言語: 日本語
ISBN-10: 4594069517
ISBN-13: 978-4594069513
発売日: 2013/11/30

[書評] ★★★☆☆

何年か前に「脳トレ」とかが流行った時期もあったが(私もDSと「脳トレ」を持っていました/笑)、今はどうなのだろう?

本書は、脳研究の最近の研究成果を示しつつ、
  • 生物にとってそもそも脳とは何なのか
  • より効果的な学習方法(一夜漬けよりもコツコツ勉強)
  • 学習と睡眠の関係
といったテーマについて教えてくれる本。

話題は多岐にわたる。脳に関する雑学集、ネタ本(笑)。

おそらく著者が我々一般人に最も伝えたいことは、「良く生きるために、良い経験を積みなさい」ということ。われわれは自分で思っているほどには「自由」ではなく、脳の自動判定機能(無意識)に縛られているという。この無意識は、われわれがどのような経験をしているかによって決まるとのこと。
  • 生きる意味はなんでしょう――大学で教鞭をとっていると、若い学生からそんな問いを受けることがあります。私は決まってこう答えます。「その意味を探すプロセスこそがヒトとして生きる意味ではないでしょうか」と。生きる目的はヒトによってちがうはずです。いや、本当のところ、意味や目的なんて、はじめからないのかもしれません。ただ、それを一生かけて探す過程は万人に共通しているように思えます。(p. 4「はじめに」より)
なお、本書は既出の『単純な脳、複雑な「私」』(講談社、2013) (Amazon拙書評)と重複が多い。出版された時期が近かったので仕方ないのかも知れないが…。

2014年9月10日水曜日

池谷 裕二「単純な脳、複雑な「私」」

池谷 裕二「単純な脳、複雑な「私」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062578301/>
新書: 480ページ
出版社: 講談社 (2013/9/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062578301
ISBN-13: 978-4062578301
発売日: 2013/9/5

[書評] ★★★★☆

東大薬学部准教授の筆者が、母校・静岡県立藤枝東高校で、講演した内容をもとに書かれた本。数年前に出版された「進化しすぎた脳」(講談社、2007/1/19) (Amazon, 拙書評)の続編ということになるのだが、現在進行形の脳科学について、わかりやすく読めるのが良い。

新書の割に、内容は豊富。特に面白かったのは、以下のテーマ。
  • 人間の認識・認知の“癖”
    • 人間は他人の右顔=こちらから見ると左側=しか見てない? 鏡に映った自分の顔の左側(左顔)をじっくり手入れ(化粧、ケア等)しても、他人が見てくれるのは実は自分の右顔側だったりする
  • 上下と左右は等価ではない
    • 目が左右についているから?
  • 人間にとって時間は可変
    • 感覚神経からのフィードバックは少し過去の情報だが、脳は少し未来を予想して情報を処理している
    • 感覚神経から入ってくる情報の「同時性」は怪しい
  • 記憶は後からつじつま合わせをして結構書き換えられちゃっている
    • 自分の行動に対して理由付けを行う。場合によっては作話(理由の捏造?)もする
  • 脳神経の簡単なシミュレーションの話
    • 神経の結合構造自体が我々を生命たらしめていることがわかる
  • 人間の自律神経を意識的に使う話
    • たとえばフィードバック付きの訓練次第で、α波を出したり抑えたり、血圧を上下させたりできる?(→“薬に頼らない”医学に寄与しそう!)
本書の後半は、最新の研究結果がドカドカ出て来る。また、科学や医学といった観点だけでなく、心理学や社会学にもつながるような話も多く、興味深く読ませて貰った。ズバリ、良書。

2014年9月6日土曜日

町田とし子(まんが)・藤屋伸二(監修)「まんが 元自衛官みのり ドラッカー理論で会社を立て直す」

町田とし子(まんが)・藤屋伸二(監修)「まんが 元自衛官みのり ドラッカー理論で会社を立て直す」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796686525/>
単行本: 253ページ
出版社: 宝島社 (2011/12/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4796686525
ISBN-13: 978-4796686525
発売日: 2011/12/14

[書評] ★★★☆☆

怪我により自衛官を退官した主人公・みのりは、地域に密着した食品メーカーの営業職に転職する。その際、自衛官の先輩から渡された本が、ピーター・ドラッカーの『経営者の条件』。

自衛隊とメーカー営業職という、あまりにも違う文化に、みのりは戸惑いを隠せない。みのりの上司も、会社文化に染まっていない異分子・みのりの予想外の動きに苛立ちを覚えたりする。だが、みのりは会社の目的を正しく認識するに至る。お客様(小売店と最終顧客)にも喜んでもらえる活動をすることが出来るようになる。

…といったストーリーから、ドラッカーのマネジメント論をわかりやすく解説した本。数多くあるドラッカー解説書と比べると非常に“とっつきやすい”が、少々底が浅いかも(良くも悪くも宝島社クオリティ/笑)。本書の著者も認める通り(「おわりに」で書いている)、この本はあくまでも入門書だ。お堅いイメージのあるビジネス書の裾野を広げるという意味では意義のある本だが、本書に出てくるテーマに興味を持った人、問題意識を持った人は、どんどん次のステップ(他の実用書やドラッカーの著作など)を読むようにすべきだろう。イントロとしては悪くないだろう。

※ここ暫く、ゆる系ビジネス書が続いていましたが、とりあえず今回で打ち止めです(笑)。

2014年9月3日水曜日

小関尚紀(著)・HIMA(イラスト) 「小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで」

小関尚紀(著)・HIMA(イラスト)「小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4492043810/>
単行本(ソフトカバー): 222ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2010/7/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492043810
ISBN-13: 978-4492043813
発売日: 2010/7/23

[書評] ★★★★★

主人公は大手お菓子メーカーの営業部所属、ダメダメ営業マン。大学時代の恩師から恋愛成就のための戦略立案(状況分析、課題設定、アクションプラン作成)とその実行方法を教えてもらうという経験を通して、バリバリ成果を出せる仕事人に大きく成長する。…というストーリーを通して、経営戦略のキホンを分かりやすく教えてくれる本。

誰にでも分かりやすいテーマ、恋愛を成就させるための「戦略」を通じて、有名ドコロの経営戦略フレームワークを概ね網羅する。ストーリーも面白いし、分かりやすい。フレームワークの使い方など、かなり本質を衝いた説明になっていると思う。中堅社員は勿論、若手社員にも推薦出来る良書だ。

なお、サラッと書かれているが、重要な内容も多く含まれている(所々でカナリ濃厚に書かれている;これを一気読みすると消化不良になるかも)。一読だけでなく、何度か読み返すか、キーワードをメモしながら読む等の工夫を強くオススメしたい。