2012年11月30日金曜日

司馬遼太郎「項羽と劉邦」(上・中・下)

司馬 遼太郎 (著)
「項羽と劉邦 (上) (新潮文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101152314/>
文庫: 486ページ; 出版社: 新潮社; 改版版 (1984/09); ISBN-10: 4101152314; ISBN-13: 978-4101152318; 発売日: 1984/09
司馬 遼太郎 (著)
「項羽と劉邦〈中〉 (新潮文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101152322/>
文庫: 435ページ; 出版社: 新潮社; 改版版 (1984/09); ISBN-10: 4101152322; ISBN-13: 978-4101152325; 発売日: 1984/09
司馬 遼太郎 (著)
「項羽と劉邦〈下〉 (新潮文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101152330/>
文庫: 426ページ; 出版社: 新潮社; 改版版 (1984/09); ISBN-10: 4101152330; ISBN-13: 978-4101152332; 発売日: 1984/09
[書評] ★★★★★
 前漢の成立前夜の中国大陸での群雄を書いた書。 黄帝から前漢の武帝までの時代を叙述した『史記』(司馬遷)と、 前漢の成立から王莽政権までを書いた『漢書』(班固・班昭ら)とに拠りつつも、 司馬遼太郎氏の洞察を含んだ書とのこと。
 司馬遷は、亡父の業を引き継ぎ、前漢成立後60~70年頃に、 中国各地の記録・民俗・伝承を取材して歩いて『史記』を完成させたという。 言うまでもなく、司馬遼太郎氏のペンネームは、『史記』の作者・司馬遷に拠る。 本書が司馬遼太郎氏の書の中でも特に「熱い」のは、 中国大陸での稲作文明の進歩~思想文明の熟成といった沸騰する時期を書いたことだけでなく、想い入れの強さとも無縁ではない筈だ。
 名著について駄評をしても仕方無いが、 中国大陸の文明・文化の影響を大きく受けて進化してきた日本に住む我々が、 是非読んでおきたい1冊だと言えよう。

 

2012年11月29日木曜日

吉田伸夫「宇宙に果てはあるか」

吉田 伸夫 (著)
「宇宙に果てはあるか (新潮選書) (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4106035766/>
単行本: 223ページ; 出版社: 新潮社 (2007/1/24); ISBN-10: 4106035766; ISBN-13: 978-4106035760; 発売日: 2007/1/24
[書評] ★★★☆☆
 宇宙論を中心とした物理学入門書。 比較的平易で読みやすいが、理解の助けとなる図表がもう少しあっても良いかも(少し前に読んだ、 佐藤勝彦先生の「『量子論』を楽しむ本」の方が理解し易いかも)。
 本書の特筆すべき点は、物理学の理論の発展が一筋縄では行かず、 研究者たちの誤解・悩み・論争を経たものであるということが、 平易に分かり易く書いてある点だ。 仮説とその論証、議論、理論の修正、新しい理論への展開など、 経緯を明らかにし、物理学を身近に感じさせてくれる。

石井茂「ハイゼンベルクの顕微鏡」

石井 茂 (著)
「ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822282333/>
単行本: 272 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822282333 ; (2005/12/28)
[書評] ★★☆☆☆
 タイトルの通り、不確定性原理を越える理論の出現(?)について述べる。 量子力学と相対性理論は20世紀の物理学の礎となった。 特に量子力学は、これ無くしてはコンピュータも携帯電話も動かないと言えるほど、 我々の生活に深く関わっている。
 ところで、この量子力学では対象物の位置・速度の両方を同時に正確に知ることはできないという、 測定・観察の限界を示す「不確定性原理」がある。 本書は、この不確定性原理を超える理論が日本発で出てきそうだ、ということを書いている(「小澤の不等式」)。そもそも、ハイゼンベルクの理論の基となった仮定自体が間違っていたというのだ。
 前作「量子コンピュータへの誘い~きまぐれな量子でなぜ計算できるのか~」でもそうだったが、 冒頭で概要を述べた後は本論に至るまでの多くのページをバックグラウンドの説明に費やされており、 本論にたどり着いた時はいささか息切れ気味、また本論も議論が不十分で消化不良の感がある。このバランスは今回も不満だ。おそらく非専門家を想定読者として書いているのだろうが、そもそも専門から遠い人はこんな本(という言い方は失礼だが)は読まないだろう。 想定読者とそレベルの設定自体に無理があるのではないだろうか。 内容自体はソレナリに面白かったのだが、…★2つ。

2012年11月27日火曜日

石井茂「量子コンピュータへの誘い」

石井 茂 (著)
「量子コンピュータへの誘(いざな)い ~きまぐれな量子でなぜ計算できるのか~」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822282112/>
単行本: 278 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822282112 ; (2004/12/23)
[書評] ★★★★☆
 うーん、、、面白いし、量子論の歴史の俯瞰ができて、そこから量子コンピュータへの繋がりが説明されるという、ある意味「正統派」の流れを持つ本なんだけど、イントロ数ページで軽く量子コンピュータの概要に触れた後は、 本全体の四分の三まで前期量子論~後期量子論(の一部)を語るのに費やしてしまっている。つまり、本書の本題である量子コンピュータにあまり分量が割かれていない。 勢い、量子コンピュータの説明が浅くなっている。量子コンピュータの概念のキモの部分に限定すれば、たとえば「ナノエレクトロニクス」とかの ホームページとかで無料で読める内容と大差ない。そういう意味で、量子コンピュータのことを深く知りたい技術屋向けではなく、 量子コンピュータのことを話題のひとつとして知っておきたい人向けの本だと言えよう。
 無論、だからと言ってこの本の価値が無くなる訳ではないが…。また、この本は量子コンピュータだけでなく、 量子暗号にもそれなりのページを割いている(つまり「量子コンピュータ」を語るページが その分減っているように思える)。 量子暗号の概念は根っこの部分(根っこから、地上に見えている幹の下の方まで)は量子コンピュータとも非常に近い概念の上に成り立ってはいるが、ちょっとこの内容バランスは不満。 内容自体は面白かったが、タイトルから期待した内容とちょっと違ったぞ、という程度の意味で減点1点の★4つ。

2012年11月26日月曜日

佐藤勝彦「「量子論」を楽しむ本」

佐藤 勝彦
「「量子論」を楽しむ本―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! (PHP文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569573908/>
文庫: 252ページ; 出版社: PHP研究所 (2000/04); ISBN-10: 4569573908; ISBN-13: 978-4569573908; 発売日: 2000/04
[書評] ★★★☆☆
 タイトル通り、量子論をやさしく噛み砕いた本。 大学の授業で聞いたことあるな…位の知識は前提として求められていると思うが(ズブの素人にはやっぱり難しいと思う)、、その点をクリアしていれば理解し易い良書だと思う。
 余談だが、本書の所々に、物理学者の似顔絵のイラストがあるのだが、似ていて気持ち悪い…。(笑) しかも、佐藤先生、自分だけ?若い似顔絵にしてある。ずるいや、なんてね。

2012年11月25日日曜日

都筑卓司「不確定性原理」

都筑 卓司 (著)
「新装版 不確定性原理―運命への挑戦 (ブルーバックス) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062573857/>
新書: 270ページ; 出版社: 講談社 (2002/09); ISBN-10: 4062573857; ISBN-13: 978-4062573856; 発売日: 2002/09
[書評] ★★★★☆
 20世紀に花開いた物理学の一領域・量子力学において、 常人がなかなか理解できない「不確定性原理」というものを分かりやすく説明する。
 いきなり「巨人の星」の「大リーグボール2号」を量子的粒子の挙動に なぞらえるなど、一部無理な展開(?)もあるが、 原子レベルの粒子で「運動量」と「位置」は確定できないよ、ということを感覚的に捉えやすく書かれている。
 私としては、その表現もさることながら、 人間に代表される生物の大きさは「不確定性原理」と「相対性理論」から おのずと決まる、云々のくだり(264-265ページ)が大変興味深く読めた。 成程、こういう捉え方もあるか、と。もし人間が不確定性原理の影響を受ける位に小さかったらどうなるか、あるいは相対性理論の影響を受ける位に大きかったら…考えるだけで頭の体操?になる。
 本書も旧版(1970/05)の改訂版だが、 物理学という厳然とした存在を、 素人にも解り易く説明する筆者・都筑氏の力はすごいと思う。 興味のある人にとっては良書だと思う。

都筑卓司「マックスウェルの悪魔」

都筑 卓司 (著)
「新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062573849/>
新書: 276ページ; 出版社: 講談社 (2002/09); ISBN-10: 4062573849; ISBN-13: 978-4062573849; 発売日: 2002/09
[書評] ★★★★★
 学生時代、熱学(熱力学・統計力学)で自由エネルギーとかエントロピーとかエンタルピーとかの理解に苦しんだ。 充分な概念の理解無く、数式中心で入ってしまったのが敗因か。そんな劣等生だった私も、本書を読んだら、目からウロコが何枚も落ちた感じ。 概念の説明が非常に明快。こんな本に早く出逢っていれば良かった…と思った。
 しかし。Amazon.co.jpにあった旧版(講談社、1970/02)のページ表紙を見てビックリ。コレ、学生時代に買ったまま読んでいなかった本と記憶する(きっと、今でも実家のどこかに埋もれているであろう)。 後悔先に立たず。
 今になってではあっても、出逢って(再会して?)良かった本だと思う。20年来(!!)の熱力学のモヤモヤが一気に晴れたのだから。こういうコトがあるから、読書はやめられない。(苦笑)

2012年11月23日金曜日

平山令明「熱力学で理解する化学反応のしくみ」

平山 令明 (著)
「熱力学で理解する化学反応のしくみ (ブルーバックス) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062575833/>
新書: 251ページ; 出版社: 講談社 (2008/1/22); ISBN-10: 4062575833; ISBN-13: 978-4062575836; 発売日: 2008/1/22
[書評] ★★★☆☆
化学反応の熱力学的考え方の復習用テキスト。
とっつきやすいが、理系の課程を一通り終えた人以外には難しいかも。

2012年11月22日木曜日

サイモン・シン「宇宙創成」(上・下)

 
サイモン シン (著), Simon Singh (原著), 青木 薫 (翻訳)
「宇宙創成〈上〉 (新潮文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102159746/>
文庫: 387ページ; 出版社: 新潮社 (2009/1/28); ISBN-10: 4102159746; ISBN-13: 978-4102159743; 発売日: 2009/1/28
サイモン シン (著), Simon Singh (原著), 青木 薫 (翻訳)
「宇宙創成〈下〉 (新潮文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4102159754/>
文庫: 374ページ; 出版社: 新潮社 (2009/1/28); ISBN-10: 4102159754; ISBN-13: 978-4102159750; 発売日: 2009/1/28
[書評] ★★★★★
 宇宙論の発展、特にビッグバン・セオリーが確立するまでの科学界を舞台に、「科学的手法」を語る。 訳者あとがきにもあるが、何故今更ビッグバン?と思った読者に対して、 鮮やかな切り口で迫る。
 良書。

2012年11月21日水曜日

朝永振一郎「物理学とは何だろうか」(上・下)

  
朝永 振一郎 (著)
「物理学とは何だろうか 下  岩波新書 黄版 86 岩波新書」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4004200865/>
新書: 236 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4004200865 ; 下 巻 (1979/01)
[書評] ★★★★☆
 湯川秀樹先生と並ぶ日本の頭脳、ノーベル物理学賞受賞者の本。 湯川先生はその著作から見るに、真面目一本の人のようだが、朝永先生はかなりの根明らしい。 本書は物理学の存在意義、他の学問との違い、等々をただ淡々と綴った本なのだが、 通勤・通学の電車の中で読むのに難しすぎない内容だ。21世紀の現在、本書を読んで得るものは何かと問われると答えに窮するかも知れないが、 朝永先生の人間に、著作を通じて触れることが出来るという意味で、読む価値はある。
 湯川先生の本もそうだが、日本人(特に大御所と呼ばれるような大先輩の方々)の本は基本的に真面目に書かれていて、息を抜ける個所はあまり無い。ので、ファインマン著作等軽い本を読み慣れた人が読むと、 睡魔に襲われること請け合い、要注意だ(笑)。

2012年11月20日火曜日

有馬朗人ほか「研究者」

有馬 朗人 (著), 松本 元 (著), 野依 良治 (著), 戸塚 洋二 (著), 榊 佳之 (著), 本庶 佑 (著)
「研究者」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4489006012/>
単行本: 286 p ; 出版社: 東京図書 ; ISBN: 4489006012 ; (2000/09)
[書評] ★★★☆☆
 研究職に就こうと思っている(or研究職になるべきか否か迷っている)学生向けの本。 監修者は東京大学の総長を務めたこともある有馬朗人先生。 有馬先生以外にも、沢山の先生方が研究職であるために必要なもの、たとえば能力とか価値観とか運とかそういったものを身に付ける方法などなど、について述べている。2001年度のノーベル賞受賞者の野依先生も寄稿している。
 自然科学の各分野の先生方が、自分の経験や努力・苦労した点などを述べる。が、照れもあるだろうし、恰好を付けたいという部分もあるのだろう。 自分が自分の道を選んだ理由とか、苦労した点とか、そういった「一番知りたい点」について、 本当に正直に書いている先生は実は少ないのではないかというのが私の感想。あまりに正直に書き過ぎて、若い読者の研究者予備軍が理系離れをするのを促進するようではいけないし、その辺りの事情も考えると、 正直さと照れと見栄と政治的理由とのバランスは非常に取り難いだろうが…。
 なお、忘れてはいけないのは、この本に寄稿している先生方は、 成功したがゆえに著名な研究者たちである。すなわち、能力(才能)と努力と機会(運とタイミング)とが揃った方々であるということである。この本に書かれているような態度と努力は、 研究者として大成するための必要条件ではあるかも知れないが、十分条件ではない。…こういった事を意識して読むと、得るものもあるのではないだろうか。
 まぁ、小難しいことなんか考えずに、色々な分野の研究者の物語として読んでも楽しめると思うが…。

2012年11月18日日曜日

シルヴァン・ダニエル「未来を変える80人 ―僕らが出会った社会起業家」

シルヴァン・ダルニル (著), マチュー・ルルー (著)
「未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家 (単行本(ソフトカバー))」
<http://www.amazon.co.jp/products/dp/4822245314/>
単行本(ソフトカバー): 304ページ ; 出版社: 日経BP社 (2006/9/21) ; ASIN: 4822245314 ; サイズ (cm): 19 x 13
[書評] ★★★★☆
 著者2人が、世界中を旅行して、 世界中にいる「未来を変える」(であろう)人々に会いに行ったときの、 旅行談+後日談で書かれたのが本書。
 世の中にはすごい人がたくさん居るんだなぁと思う反面、 各「未来を変える人」については掘下げ方が甘いなぁとも思う(当時の著者=人生経験の少ない学生に、それは求めすぎかも?)。
 ただ、学生の身分でありながら、かのムハマド・ユヌス氏に取材をしていたりする辺りは流石である。ムハマド・ユヌス氏とは、バングラデシュで貧困にあえぐ人に融資するための仕組み(日本の江戸時代の5人組制のような制度をつくり、連帯責任性で個人に融資する制度)を作った人で、この融資制度を実現する銀行として、グラミン銀行を創設した人。 創設後も総裁を務め、この本が執筆された数年後、2006年にノーベル平和賞を受賞。

2012年11月16日金曜日

リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」(増補新装版)

リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (翻訳), 岸 由二 (翻訳), 羽田 節子 (翻訳), 垂水 雄二 (翻訳)
「利己的な遺伝子 <増補新装版> [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4314010037/>
単行本: 592ページ; 出版社: 紀伊國屋書店; 増補新装版 (2006/5/1); ISBN-10: 4314010037; ISBN-13: 978-4314010030; 発売日: 2006/5/1
[書評] ★★★★★
 言わずと知れた有名な本なので、解説は不要かも知れない。 学生の時(当時は第2版)に読まなかった本を、今更ながら読んでみた(同じドーキンスの「神は妄想である」の方を先に読んでしまった…)。
 著者は、生物は「遺伝子の乗り物(ヴィークル)」、遺伝子を存続させるための「生存機械」であると言う。 生物の多くの活動――特に生殖に関わる活動――は、遺伝子が自分のコピー(自分に近いコピー)を遺そうという働きのなせる技だという。 自然淘汰の選択は種の間でなされているのではなく、遺伝子(DNAに含まれる、遺伝単位)の間でなされているというのが著者ドーキンスの主張。
 ドーキンスによると、人間を含む動物の自己犠牲的な利他行動を進化させたことも、遺伝子が自分のコピーを遺すためになせる技だという。そういう振る舞いをもたらした遺伝子がより多く残り易いという傾向はあるかも知れないが、 人間を含む多くの生物が全て合理的判断に基づいて行動しているのではない以上、これは言い過ぎである(暴論と言っても良いだろう)。 物事をうまく説明できるからと言って、その物事を全て説明したことにはならないし、その物事の唯一の根拠なんかではない筈である(ということはドーキンス自身が一番よく解っていることだと思うが)。
 分子生物学者・福岡伸一氏は、ドーキンスを「遺伝子原理主義者」と言ったが、本当にその通りである。 原理主義的理論武装(屁理屈?)はバッチリだが、頭から信じるのではなく、批判的な目も持って読みたい1冊だ。
 ちなみに、本文が400ページ余り、補注に(小さい字で)100ページ近くを割いている。 補注は文字が小さいことを考えると、情報量は本文の1/2近くなるのではないだろうか。この補注もナカナカ読みごたえがある。 特に、論敵・S.J.グールドの主張に対する応酬を度々行っている。グールド以外の著作に対する批判も多いのだが、こういうことを書くから論敵を増やしちゃうんだろうな(笑)、とも思える。

 本書(原著第3版)は13章からなっているが、第12・13章は第2版出版時に加筆されたもののようである。どうりで、11章までの議論との一貫性にやや欠ける感がある(初版の最終章=第11章=で文化的な遺伝「ミーム」に関する議論で書籍としての大団円を迎えているのだ)。なお、第12章では生物の集団におけるゲームの理論の適用を論じており、これだけで知的に面白い1冊の本になりそうな内容ではある。また第13章はドーキンスの別著「延長された表現型」のエッセンスを書いてあり、これだけでも十分読み応えがある。1つの遺伝子の表現型効果はその生物の個体の体内にある必要はなく、たとえばビーバーの作るダム等に代表される、個体の外の生物/無生物に対する作用や、寄生という形で他の生物に対する作用も、この「表現型」に含まれるという。これら広義の「表現型」で他より優れたモノが、有利に自己複製を重ねるという。また第13章では高等生物が胚(有性生殖の場合は受精卵)というボトルネックを介して世代を重ねる意味についても述べており、非常に興味深い。

2012年11月15日木曜日

水木楊「北京炎上」

水木 楊 (著)
「北京炎上 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4163258701/>
単行本: 281ページ、出版社: 文藝春秋 (2007/04)、ISBN-10: 4163258701、ISBN-13: 978-4163258706
[書評] ★★★☆☆
 最初に断っておくが、これは小説、すなわちフィクションである。 他の中国論とごっちゃにしないように考えて頂きたい。

 中国の躍進的な発展に伴い現れてきた国民の不満、特に桁違いの格差社会、 相変わらず続く思想的な弾圧、…等々といった社会の歪みにより、 中国に第2の天安門事件が発生するというストーリーで書かれた小説。 杉本信行著「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」等の後に読むと、 前提条件となっている中国社会の現状が把握でき、本書の内容にも親しみを持ちやすい。
 読み物としては非常によく出来ていると思う。ストーリーもきちんとしているし、流れのテンポも悪くなく、舞台設定も悪くない。しかも、「有り得るストーリー」がタイムリーに書かれたことが、非常に興味深い。
 中国社会に興味を持つ向きは、こういう小説を読んでみるのも面白いだろう。

加藤徹「貝と羊の中国人」

加藤 徹
「貝と羊の中国人 (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4106101696/>
新書: 256ページ ; 出版社: 新潮社 (2006/6/16) ; ASIN: 4106101696
[書評] ★★★☆☆
 社会体制としては共産主義でありつつ、実質的に資本主義性の存在を認める、 中国という国の不思議を解く。 中国人には、古来、商業・お金を尊ぶ「貝」の民族性と、 礼儀を重んじる、儒教的な「羊」の民族性が混ざっているからであると解く。 今、工業国・マーケットとして伸びつつある中国という国を理解するのには面白いかも知れない。

2012年11月13日火曜日

湯浅誠「中国社会のとことん深い闇」

湯浅 誠 (著)
「中国社会のとことん深い闇 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4900594938/>
単行本: 268ページ、出版社: ウェッジ (2006/07)、ISBN-10: 4900594938、ISBN-13: 978-4900594937
[書評] ★☆☆☆☆
 住信総合研究所主任研究員・伊藤洋一氏が日経のPoscastの番組で「今週の気になる作品」として推薦していた本だが、 期待の割に…な本。
 そもそもが、隣の国をコキ下ろすことがこの本の主眼なんじゃないだろうか。こういうのは、読んでいてあまり気分の良いものではない。それに、データの取り方にも疑問あり。
 十分に検証されたとは思えないデータで、 一方的・偏りのある(疑いの残る)データに基づく論理展開が多く、 読んでいて「ホントカヨ(そのままには受け取れません)」が多すぎる。(推薦者の伊藤洋一氏の書にもそういう傾向があるが…。)
 という訳で、読むべきか否かを迷っている人に、オススメかと聞かれたら、「やめておけ」と言うべきかも。

2012年11月12日月曜日

谷崎光「中国てなもんや商社」

谷崎 光 (著)
「中国てなもんや商社 文春文庫」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167635011/>
文庫: 315 p ; 出版社: 文芸春秋 ; ISBN: 4167635011 ; (1999/12)
[書評] ★★★★★
 本書は、中国の工場に生産を委託し、 主に日本で製品を売る服飾メーカの海外対応役を任された著者の奮闘記である。 映画も公開され、それなりに好評を博したようだ。
 日本での常識が全く通用しない中国人を相手に亘り合う筆者の姿は、 面白可笑しく、時々凹むけど、いつまでもそうしていられない、と常に前を見て頑張っている。 読む者に元気を分けてくれる。
 現在の中国は、教育の程度も向上し、世界に名だたる大国にならんとしている。 教育の程度が高い先進各国では、一定の割合でエリートが生まれてきて、 政治・産業・技術をリードするようになる。 中国は、その母体が大きいだけに、この若いリーダーたちの数も半端ではない。 今後、日本は米国と中国の超大国2か国の挟間で生き抜く術を身に付けなければならない のではないだろうか。それにしても、日本の常識の全く通用しない超大国と如何に付き合って行くか。 非常に難しい問いである。

2012年11月11日日曜日

杉本信行「大地の咆哮―元上海総領事が見た中国」

杉本 信行 (著)
「大地の咆哮 ―元上海総領事が見た中国 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569652344/>
単行本: 356ページ、出版社: PHP研究所 (2006/6/22)、ISBN-10: 4569652344、ISBN-13: 978-4569652344
[書評] ★★★★★
 中国で総領事を勤めた杉本氏が、 癌を宣告されて急遽帰国、残りの日々の中で書き上げた中国論。 日本人の立場から見て、中国の国民性や中央の政治は謎が多いが、 歴史的な背景や中国政府の立場から、この謎を解き、中国内部の矛盾を明らかにする。と同時に、日本の対中政策の現状と、今後の対中政策のあるべき姿を説く。
 世の中に中国論は多いが、外務省の職員として中国での経験が長く、 総領事まで行った人が、中国をその内側から説き、 今後の進むべき道標を示した本は例が無いであろう。
 現代日本のおかれた位置として、中国という巨大な国を無視した政策はあり得ない。しかし、その中国が謎の国ときている。 政治でもビジネスでも、グローバルな動きを意識しなければならない今日、 本書は必読の書であると言える。

2012年11月10日土曜日

國分功一郎「暇と退屈の倫理学」


國分 功一郎 (著)
「暇と退屈の倫理学」
<http://www.amazon.co.jp/dp/425500613X/>
単行本(ソフトカバー): 402ページ; 出版社: 朝日出版社 (2011/10/18); 言語 日本語; ISBN-10: 425500613X; ISBN-13: 978-4255006130; 発売日: 2011/10/18
[書評] ★★★★☆
 なかなかソソるタイトルだ。題名から推察できる通り、かなり哲学的な本だ。
 文明の発展により、現代社会は物があふれ、現代人は余暇を持てあましている、筈だが…。 本書によると、現代社会は「物がなさすぎる」、 余暇は「自分の好きなことをしている振りを全力でアピールしなければいけない時間」と言う。 色々逆説的で面白い。
 人類の定住の始まり・文明の発展にまで遡り、「暇」「退屈」を論じた本。 気合を入れて読む必要があるが、良書だと思う。

2012年11月9日金曜日

リチャード・ドーキンス「神は妄想である」

リチャード・ドーキンス (著), 垂水 雄二 (翻訳)
「神は妄想である―宗教との決別 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4152088265/>
単行本: 578ページ; 出版社: 早川書房 (2007/5/25); 言語 日本語; ISBN-10: 4152088265; ISBN-13: 978-4152088260; 発売日: 2007/5/25
[書評] ★★★★☆
 「利己的な遺伝子」(紀伊國屋書店、1991/2/28) (増補改訂版(紀伊國屋書店、2006/5/1)) がベストセラーとなった リチャード・ドーキンスの、チョット(かなり?)過激な本。 本書によって、無神論者・ドーキンスは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の全てを敵に回したことになろう。
 本書では、ユダヤ教とその分派とも言えるキリスト教とイスラム教を主たるターゲットとし、 科学的観点(主にダーウィンの進化論的観点)から、また論理的観点から、さらには南太平洋で「カーゴカルト」として見られるた“伝説”の広まり方を実例と引用し(翻訳や伝承を重ねるうちに、 元とは全然違う“伝説”となって伝わってしまう)、宗教はカルトに過ぎない、とメッタ斬りにする。(なお、本書において、仏教や儒教は「倫理体系」であって「宗教」ではないとの理由で、議論の対象とはしていない。)
 また、宗教は科学の敵であり、人類の進歩を阻害するとも言う。 特に、戦争の多くは(政治的な戦争であっても)宗教でラベル付けされていると主張する。ものごとに関する判断能力がまだついていない子供の時点で、親が信仰する宗教に教化されることが、 宗教戦争が何世代にもわたって続く原因だと言う。その通りかも知れないが、現実問題として、これを解消する方法は無いのではないだろうか。
 分子生物学者の福岡伸一氏が「ドーキンスは遺伝子原理主義者だ」と言っているが、その通りで、 科学万能論者であり、ダーウィン進化論原理主義的な主張が多い。その辺りを少し割り引いて読んだ方が良いとは思うが、 宗教とは何か、さらに、生命とは何か、等々考えるキッカケを与えてくれる本ではある。 最近の本としては小さい文字で500ページを超える「読みごたえのある本」だが、 知的刺激に富む。

2012年11月8日木曜日

池田信夫・與那覇潤「『日本史』の終わり」

池田 信夫 (著), 與那覇 潤 (著)
「「日本史」の終わり 変わる世界、変われない日本人 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569806902/>
単行本: 316ページ; 出版社: PHP研究所 (2012/9/19); 言語 日本語; ISBN-10: 4569806902; ISBN-13: 978-4569806907; 発売日: 2012/9/19
[書評] ★★★☆☆
 日本の国内問題、国際問題に対し鋭い視点を持つ論者・池田信夫氏と、 前著「中国化する日本」で歴史認識と日本の今後のあり方について新しい視点を与えてくれた新進気鋭・與那覇氏の対談。 先史時代-古代-中世-近世-近代と時代を下りつつ(話は時代を行きつ戻りつする)、現代の日本を論じる。
 小泉純一郎元首相の「小泉革命」、小沢一郎の「挫折」、橋下徹大阪市長(前大阪府知事)の「平成維新」など、ホットな話題とその構造にも触れる。
 手放しで受け入れられる話ばかりではないが(政治思想色が強く、受け止め方によっては「毒」もある)、 日本の今と未来を考える上で色々な視点を与えてくれる本。

2012年11月7日水曜日

與那覇潤「中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史」

與那覇 潤 (著)
「中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4163746900/>
単行本: 320ページ; 出版社: 文藝春秋 (2011/11/19); ISBN-10: 4163746900; ISBN-13: 978-4163746906; 発売日: 2011/11/19
[書評] ★★★☆☆
 なかなか刺激的な題名だが、このタイトルだけで「引いた」人にこそ、本書を手に取って欲しい。
 日本人の多くが明治維新を「西洋化」だと思っているのだろうが(私も本書を読むまでそう思っていた)、 筆者はこれを「中国化」だと喝破する。 天皇を中心とした統治形態は、秦以来の中国の皇帝を中心とした統治形態と同じであり、 官僚による中央集権/地方統治システム(公務員制度)は宋朝以降の科挙と同じだとする。
 民主政が布かれていない中国は発展途上国だとする議論もあるが、 本書では民主政は西洋の特殊な地理的・歴史的経緯によって発生した近代システムの一形態に過ぎず、 世界中に普遍的に通用するシステムではないという。そうでなくても、中国はここ100年位世界史から置いてけぼりを食っていただけで、その4千年の歴史の殆どを世界の中心(「中華」)としてやってきたのだ。 文字は「漢字」という共通のフォーマット(表意文字)を採用しているが、発音は統一していない。 科挙という秀才を集めるシステムを採用しているが、教育は民間に任せている。 中国が採用してきたシステムこそ、広大な国土を統治するに適したシステムだったのだ。
 グローバリゼーションの進む今後、日本の取れる道は、 再度ムラ社会に戻る「再江戸化」か(行き着く先はグローバル競争から逃避した鎖国か?/笑)、 国民も企業も世界各国との競争に曝されるが、自由に競争するに任せる「中国化」しかないと言う。いずれにしても、国民がラクをできる社会でなくなることは確実だが、 現代日本は、明治維新前夜のような、(見ようによっては)面白い時代だという。
 世界史、日本史と今後の日本を考える上で、新しい視点を与えてくれる面白い本だ。

2012年11月6日火曜日

與那覇潤「帝国の残影―兵士・小津安二郎の昭和史」

與那覇 潤 (著)
「帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4757142617/>
単行本: 238ページ; 出版社: エヌティティ出版 (2011/1/14); 言語 日本語; ISBN-10: 4757142617; ISBN-13: 978-4757142619; 発売日: 2011/1/14
[書評] ★★★☆☆
 戦中~戦後の映画監督、小津安二郎に関する研究書。
 小津の映画には戦争を連想させるシーンは多かったものの、戦争そのものを描いたものは無かったという。 兵役経験もある小津の映画になぜ戦争が出てこないのか、等を解説しつつ、小津の兵役経験(赴任先、足取り)、 当時の時代背景に迫る。
 秀逸なのは、太平洋戦争(大東亜戦争)敗戦後の思想史とでも言うべき箇所。 中国の共産革命、日本共産党の暴力による革命論、朝鮮戦争、日本の中国化(共産革命)の季節の終焉に至るまでの思想史。 敗戦後の日本はまさに革命の後の如く、帝国主義を否定され、GHQつまり米国の支配下に置かれていた訳で、 当然米国に都合の悪い思想は弾圧をされて来たのだが、サンフランシスコ条約、60年安保、日中国交正常化を経る辺りまでの事情が非常によくまとまっていると思う。
 映画とは当然ながら時代の思想の表れであるが(場合によっては当局による情報活動に用いられることもある)、 本書は映画監督の研究書という形式を採った戦中・戦後の日本の思想史と言うことも出来よう。

2012年11月5日月曜日

宇多田ヒカル「点―ten―」


宇多田ヒカル (著)
 「点―ten― (単行本)」
 <http://www.amazon.co.jp/dp/4930774225/>
 単行本: 512ページ; 出版社: EMI Music Japan Inc./U3music Inc. (2009/3/19); ISBN-10: 4930774225; ISBN-13: 978-4930774224; 発売日: 2009/3/19
 [書評] ★★★☆☆
  言わずと知れた、宇多田ヒカルの本。 冒頭部は直筆の文、その後はインタビューを基とした文章と、写真から構成される。
 彼女の音楽を聴くようになってから久しいが、彼女の本が出ていると知り購入。 彼女の楽曲に特別な思い入れを持っている訳ではないが(でも本を買う位の興味は持っている)、 ミュージシャン/アーティストが普段考えていることや心情を垣間見ることが出来たら、と思って買った。 インタビューの箇所(すなわち本書の多くを占める部分)は話し言葉で書かれており、 読みにくいところもあるが、正直、面白い。 ミュージシャン/アーティストを仕事としている人の心情、 また、若くして結婚し、間もなく離婚した1人の女性としての気持ちを吐露している所が所々にあり、興味深い。
  CDとかコンサートDVDとかから、繊細/脆い、といった勝手なイメージを持っていたが、 本書でこの思いは強くなった。 中でもドキッとしたのは、以下のくだり。(一部引用)

     ミュージシャンは、
     普通の人が麻痺(まひ)していいことや
     麻痺したほうが健康なことを、
     麻痺せずに感じ続けなくちゃいけないこと
     が仕事なんじゃないのかな。
      (p. 272より)

 本書は女性が読んだ方が面白いだろうとは思うが、 音楽活動をしている人や(アマチュアレベルでも)、 音楽が生活の中で大きな比重を占める人が読むと、面白いのではないかと思う。 勿論、宇多田ヒカルの音楽が好きならば文句無しだ。

2012年11月4日日曜日

シーナ・アイエンガー「選択の科学」

シーナ・アイエンガー (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
「選択の科学 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4163733507/>
単行本: 384ページ; 出版社: 文藝春秋 (2010/11/12); ISBN-10: 4163733507; ISBN-13: 978-4163733500l; 発売日: 2010/11/12
[書評] ★★★☆☆
Sheena Iyengar著“The Art of Choosing”の訳本。 題名の“Art”に「科学」という訳語を当てたのは如何なものだろうか。どちらかというと「哲学」という訳語の方がしっくり来るのは私だけではないだろう。
さて。
本書は例えば以下のくだりで有名かも知れない。スーパーで5種類のジャムを売ったときと、20種類のジャムを売ったときで、前者の方が売り上げが良かった。これは、人間が、選択肢が多すぎると選択できなくなるからだ、云々。 選択の幅が広くなることは必ずしも良いことではない。
上記のくだりは解りやすいエピソードだが、本書はもっと深い、「選択と人生の哲学」と言うべき本だ。
人生の様々な出来事、特に辛い出来事をを不可抗力のせいにするのは簡単だ。しかし、本書では自分の力で何とかするという気持ちを持ち、自分の人生を「選択」することによって、より明るい展望を持てるという。
非常に面白い。サンタクロースの服がなぜ赤いかなど(他で聞いたり読んだりしたことのある内容もあるが)、 商業分野で行われているマーケティングの深い話なども興味深い。
また、この「選択力」(とでも言うべきもの)を磨く方法なども書かれている。
良書。

2012年11月3日土曜日

福岡伸一「生命と記憶のパラドクス」

福岡 伸一 (著)
「生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4163756701/>
単行本: 237ページ; 出版社: 文藝春秋 (2012/9/12); 言語 日本語; ISBN-10: 4163756701; ISBN-13: 978-4163756707; 発売日: 2012/9/12
[書評] ★★★★☆
 「生物と無生物のあいだ」(講談社:2007/5/18)、「世界は分けてもわからない」(講談社:2009/7/17)、「動的平衡」(木楽舎:2009/2/17)、「動的平衡2」(木楽舎:2011/12/10)といった数々の知的に面白い本を出している分子生物学者、福岡伸一氏の最新刊。
 副題の通り、66本のエッセイ集。各1本は概ね3ページ(長いもので8ページ)となっており、どこからでも読み始められる。
 昆虫少年だった筆者が、山登りやSFやクラシック音楽やフェルメールの絵など、また勿論本職である生命科学についても、多岐にわたる内容について語る。
 生命のフシギさ、生命を紡ぎ出すせかいに対する優しさに満ちあふれた本。 「生物と無生物のあいだ」等の著作はテンポ良く読ませる本だったが、 本書はゆったりと読める作りになっている。2011年春に理系を「卒業」し、今まで以上に統合的な観点から生命を考える生物学者(ナチュラリストと筆者は言う)に なったとのことで、そういった背景もあって穏やかな文体になっているのだと思うが、 「理系」なものを優しい目で見つめる、良書だと思う。 読者層は理系・文系を選ばない。 多くの人に薦められる本だ。

2012年11月2日金曜日

福岡伸一「動的平衡2―生命は自由になれるのか」

福岡伸一(著)
「動的平衡2 生命は自由になれるのか [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863240449/>
単行本: 254ページ; 出版社: 木楽舎 (2011/12/10); ISBN-10: 4863240449; ISBN-13: 978-4863240445; 発売日: 2011/12/10
[書評] ★★★★★
 前著「動的平衡」(木楽舎、2009/2/17)の続編。ヒトの進化、がん、等について解り易く述べている。
 がんは、遺伝子のコピーミスによって起こる病気であるが、コピーミス→突然変異による進化の可能性を残す為のトレードオフとして残ってしまった現象という。
 前著の論旨と合わせると、老化というのは、 生命の回転速度(自らを壊しながら再構成してエントロピーの蓄積を防ぐスピード)が低下することであることがわかる。また、老化により、分子レベルでの損傷が少しずつ蓄積していき、やがてエントロピー増大のスピードに追い抜かれてしまう現象を「死」と言う。 非常に解り易い説明だ。
 本書も前著に続きハードカバーで250ページあるが、ぐいぐい引き込まれ、一気に読めてしまう。 科学の興奮を味あわせてくれる良書。

2012年11月1日木曜日

福岡伸一「動的平衡―生命はなぜそこに宿るのか」

福岡伸一(著)
「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863240120/>
単行本: 256ページ; 出版社: 木楽舎 (2009/2/17); ISBN-10: 4863240120; ISBN-13: 978-4863240124; 発売日: 2009/2/17
[書評] ★★★★★
 「生物と無生物のあいだ」(講談社、2007/5/18)で ベストセラー作家となった分子生物学者・福岡伸一氏の著作。ハードカバーで250ページあるが、読み易く、1日で一気に読めてしまう。
 本書で述べられていることは、「生物と無生物のあいだ」、「世界は分けてもわからない」(講談社、2009/7/17)と一部重複する。 生命とは、その構成要素(タンパク質等)が寄り集まっただけの単なる分子の集合体などではなく、多くの分子を取り込み自らを作り出しながら同時に自らを壊し続けるという「流れそのもの」であるという。その主張は「世界は分けてもわからない」との重複が多いかも知れないが、 生命というものの考え方が変わる1冊である。
 良書。