2012年6月30日土曜日

P.F.ドラッカー「企業とは何か」

P.F.ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
「企業とは何か」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300704/>
単行本: 304 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300704 ; (2005/01/29)
[書評] ★★★★☆
ドラッカーがGMを内外から分析し、 優れた企業とはどういうものかについて研究した書。1950年頃の研究であるが、現代にも通じる内容が多い。
 本書は、出版後当のGM経営陣からソッポを向かれてしまった本であるが、その理由はGM礼賛をせず、また当時のGMの経営方法の弱点を衝く内容が多かった からだと思う。スローンJr.が著書「GMとともに」を書くキッカケになった本書ではあるが「GMとともに」を読んだ人間にとっては、既知の内容も多く、スラスラと読める。
 何はともあれ、一読の価値はある。

ルイス・V・ガースナー「巨象も踊る」

ルイス・V・ガースナー (著), 山岡 洋一 (翻訳), 高遠 裕子 (翻訳)
「巨象も踊る」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4532310237/>
単行本: 456 p ; 出版社: 日本経済新聞社 ; ISBN: 4532310237 ; (2002/12/02)
[書評] ★★★★★
 面白い!カルロス・ゴーンもそうだが、瀕死の企業を復活させた熱い男の物語である(本書の内容は一見クールにまとめられているが)。 歴史ある企業にありがちな、守旧的な体質とその悪影響、そしてこれを打破した経営内容について述べている。うちみたいな古い会社でもよく見られる、社内政治、無意味な慣習、等々、耳が痛い内容が多い。 某社(私の勤務先)でも会社の体質を変えて行こうという動きはある。しかし、腰が重いのではないか。ポーズに過ぎない部分が多いのではないか。 本質的な体質改善に至っていない部分が多いのではないか。などと一介の若造(企業トップから見たら、私なんてただのヒヨッ子でしょう)が言っても、…う~ん、誰かが動かないと会社は沈む一方なのだが、…。IBM程ではないとしても、体躯が充分に重い「巨象」たる某社(がしかし決して「大企業」とは言えず、 規模によるメリットはあまり享受できない)の先行きを明るくするためには、…私でさえ、直すべき箇所はいくつも指摘できる。…が、これを実行に移すことへの障害の、何と多いことか。 何と壁の高いことか。

※実はこの本、会社の上司が読んでいる本に興味を持って、真似して買ってみました。ズバリ「読むべし!」です。

 ただ、IBMは従来顧客を第一に重視する企業である(顧客開拓型のイノベーションの数は決して多くない)。 自社のベクトルと違う場合には、その点に留意しつつ読んだ方が良いだろう。

トーマス・J・ワトソンJr.「IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉」

Jr.,トーマス・J. ワトソン (著), Jr.,Thomas J. Watson (原著), 朝尾 直太 (翻訳)
「IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉 Eijipress business classics」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4901234528/>
単行本: 141 p ; 出版社: 英治出版 ; ISBN: 4901234528 ; (2004/07)
[書評] ★★★★★
 IBM中興の祖(と言って良いかどうか知らないが)、T.J.ワトソン父子の経営理念を示す(著者はJr.、すなわちご令息のほう)。最近流行の本のような派手さはないが、IBMの経営者が社員を大切にして、社員の声をよく聞くワトソン(父)の経営理念と、そのベースとなる考え方がよくわかる。
本書の趣旨は、企業・組織を動かすには、構成員すなわち社員を大切にし、モチベーションを維持し、能力を伸ばし、その能力を活かすということに尽きる。 組織としての「一体感」、個人尊重と組織としてのパフォーマンス重視傾向など、 戦後の高度成長時代の日本企業(の一部)を支えて来た特質を(少なくとも当時のIBMは)持っていた。が、1990年代のバブル崩壊に始まる「失われた10年間」に日本の企業体質は変貌し、 日本らしい良さというものが失われつつある。こうした時代の日本において、ワトソンJr.の言葉は非常に多くのことを語っている。これがIBMの業績の大躍進・高成長の基となっているのは言うまでもないだろう。
 従業員を大切にする・従業員の声をよく聞く・充分に議論できる社風を作る、といったことの本質が、本書には凝縮されているが、薄い本ですぐに読める。 薄い本に、豊富な内容が凝縮されている。良書。 他人の上に立つ人、他人を指導する立場にある(これからなる)人には、 是非とも読んでほしい良書である。

アルフレッド・P・スローンJr.「GMとともに」

アルフレッド・P・スローンJr. (著), 有賀 裕子
「GMとともに (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478340226/>
単行本: 525ページ ; 出版社: ダイヤモンド社 (2003/6/6) ; ASIN: 4478340226 ; サイズ (cm): 21 x 15
[書評] ★★★★★
 1923年~1937年と15年間GM(ゼネラルモーターズ)社長を務め、その後同社会長に就いた、アルフレッド・P.スローン Jr.氏の自著。 本人は経営書ではなくGMの歴史について述べただけだよと前書きで述べているが、 実際、優れた経営書であると思う。アルフレッド・スローンJr.は、従業員の訓練に関してはGMよりも ベル電話会社が最も優れており、また財務上の管理方法はデュポンが手本であると言ってるが(デュポンに財務上の支援をしてもらった際、デュポンの財務管理手法を導入)、GMは(少なくとも)最もバランスの取れた大企業だったと言える。
 米国の自動車産業が低迷状態に入ってから長い。2006年度、トヨタ自動車が利益だけでなく、販売台数でもGMを追い抜いた(最近また逆転されてしまったが)。だからといって、米国のフォードやGMといった自動車産業の各企業が優れていないということにはならない(トヨタが非常に優れた企業であることは言うまでもないが)。ヘンリー・フォードが生み出した大量生産方式は、 当時としては画期的な生産方式で、時代にマッチしていたのは誰も否定出来ないだろう。 「今は昔と」なってしまったが、これこそ産業のイノベーションである。この大量生産方式は、人々のライフスタイルや消費行動が多様化してきた現在においては時代にそぐわないものになりつつあるが、少なくとも1910~1920年代には、ひとつの革命だったと言える。また、GMの事業部制は、当時GMのほかに存在しなかった「大企業」の運営上、 大きな成果を残した。これらの仕組みを学ぶのは非常に有意義であると考えられるし、 本書は大企業の経営の薫りを味わうことのできる、数少ない良書であると思う。
 企業において、マネージャ層の人は勿論、一般社員も読んで絶対に損はしない本だと思う。

2012年6月29日金曜日

凌志軍「聯想(レノボ) 中国最強企業集団の内幕」(上・下)

 
凌志軍 (著)人民日報高級編集者, 漆嶋 稔 (翻訳)
「聯想 中国最強企業集団の内幕 上」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822244962/>
単行本: 456 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822244962 ; 上 巻 (2006/02/09)
凌志軍 (著)人民日報高級編集者, 漆嶋 稔 (翻訳)
「聯想 中国最強企業集団の内幕 下」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822245020/>
単行本: 472 p ; 出版社: 日経BP社 ; ISBN: 4822245020 ; 下 巻 (2006/02/09)
[書評] ★★★★☆
 中国一の巨大コンピュータメーカ、聯想(レノボ)の創業から今に至るまでの歴史と その中での人間模様を描いた、ノンフィクション・ストーリー。 非常に面白い。最初はもう少し技術的な内容かと思ったが、人間ドラマがメインだ。
 聯想(レノボ)の創業は、中国の国立研究所における中国語入力インタフェースの開発に遡る(この中文入力インタフェースの名称「聯想」が、後にこの会社の名前となる)。しかし、聯想の創業当時、個人用コンピュータは成長市場だったとは言え、 中国国内の市場は、米国や台湾の海外製品が覇権を争っていたこと等から、 聯想は当初、海外ブランドのPCの中国国内向けの輸入・組立てメーカとしてスタートする。その後、中文入力インタフェースの事業も本格化するが、コンピュータの処理能力が向上するに従い、PC外付けのインタフェースもその役割を終える。 当初、IBM PC互換機の組立てと中文入力インタフェースを事業の柱としてきた聯想も、PC本体の設計・製造・販売に本業をシフトする。インターネット時代の幕開けの波に乗り、聯想は企業の規模をどんどん拡大して行く。
 創業者・柳伝志の思い、聯想の発足当時の技術的礎を築いた倪光南との確執、 等々人間ドラマが繰り広げられる。 本書を読んで再確認したのは、企業を創業し、成功した者が必ずしなければならないことは後継者作りであり、実はこれが企業の運営で最も難しいことであるのは、 国や洋の東西を超えた永遠のテーマなのだということだ。 聯想がどのように凄いのかを知りたくて読み始めた本だったが、 企業として地道に本業を育て、伸ばし、機会があれば新規の事業も育て、伸ばす。 時々、やらねばならぬ「賭け」に出て、勝利する。 当たり前といえば当たり前のことをやって、連想は伸びて来た。
 しかし、今後の聯想は違う。 日本で言えば今のトヨタもそうだが、国内有数の大企業となると、 入社してくる人は、収入や生活の安定を求めて来る人が多くなる。そういった社員に、どうやって「革新(イノベーション)」 「(守りではなく)攻めの商品開発」をさせるか。これは某F社にとっても同じ問題が言える。この問いに対して、本書は何の答えも与えてはくれない。ただ、考えるきっかけを与えてくれる。
 旧IBMのパーソナル・コンピュータ部門を買収した聯想がどういう成り立ちであるのか、またどういう考え方の企業なのか。それを知る上でも、また新興企業の問題・経営者の悩み・大企業になった後の企業運営の難しさを知る上でも、本書は色々とヒントを与えてくれる。

日本に根付くグローバル企業研究会「サムスンの研究」

日本に根付くグローバル企業研究会
「サムスンの研究―卓越した競争力の根源を探る (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/482222242X/>
単行本: 325ページ ; 出版社: 日経BP社 (2005/12) ; ASIN: 482222242X
[書評] ★★★★☆
 躍進目覚ましいサムスンの底力を探る本。面白い。 日経ビズテックに掲載された記事を中心に、サムスンの躍進について述べたものをまとめた「だけ」の本なので、ビズテックを丁寧に読んでいる人にとっては、わざわざ買うまでも無い本かも知れない。しかし、特定の企業、しかもエクセレントなカンパニーとして著名な企業に的を絞った ものであり、効率良く読むには良いと思う。
 事業部体制や各事業部の組織とその特色について述べているのは、 他の企業紹介本のレベルと大差無いかも知れない。 研究開発を活性化させる仕組みについて述べているのが色々と参考になる。 秀逸なのは、評価制度について詳細な情報を載せている点だ。 取材者の日経BP側もよくここまで調べたと思うが、 取材を受けたサムスン側もよくここまでオープンにしたものだ。
 企業の躍進に必要なものは何か、 非常に参考になる1冊だと思う。

横田好太郎「キヤノンとカネボウ」

横田 好太郎 (著)
「キヤノンとカネボウ (新潮新書) (新書)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/410610153X/>
新書: 189ページ; 出版社: 新潮社 (2006/02); ISBN-10: 410610153X; ISBN-13: 978-4106101533; 発売日: 2006/02
[書評] ★★★★☆
 戦前、日本最大の複合企業(コンツェルン)として君臨したカネボウ(鐘淵紡績)。そのカネボウも、戦後の経済と市場の変化に追随できず、企業は弱体化、とうとう粉飾決済といった社会問題を起こした。2005年5月12日、東京証券取引所はカネボウ株の上場廃止を決定。 著者は、そんな死に体のカネボウから、 新興企業(と言って良いだろう)キヤノンに転職。キヤノンは町工場から出発した企業だが、経団連会長まで出した会社だ。 全く対照的な両社に勤めたサラリーマンが、内側から見た両社の企業文化を比較。
 ただ、カネボウはただ悪いだけの会社ではない。 戦後のGHQ指導による財閥解体により企業は小さくなったとは言え、 大コンツェルンの文化を受け継ぐ会社には、その会社なりの優れた点や文化もあった。ただ、一部の経営者(とそれを排除しなかった経営体)が カネボウを食い物にして会社を凋落への道へと導いたと言える。
凋落する企業と躍進する企業の違いについて、 企業人として是非読んでおきたい1冊。

2012年6月28日木曜日

R.P.ファインマン「物理法則はいかにして発見されたか」


ファインマン (著), 江沢 洋 (翻訳)
「物理法則はいかにして発見されたか 新装版 サイエンスブックス」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478830037/>
単行本: 276 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478830037 ; (1983/01)
[書評] ★★★★★
 ファインマン本にしては珍しく(などと言っては失礼か?)、内容は少々硬め(翻訳の問題か?)。 表題通りの内容で、こってりと書かれている。じっくり腰を据えて読む人向きだが、ファインマン先生が物理学の発展と歴史をわかりやすく説明していることがよくわかる。

R.P.ファインマン「光と物質のふしぎな理論」

R.P. ファインマン (著), 釜江 常好 (翻訳), 大貫 昌子 (翻訳)
「光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000058665/>
単行本: 215 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000058665 ; (1987/06)
[書評] ★★★★☆
 ファインマン先生の、QED(Quantum Electronic Dynamics; 量子電磁気学)に関する本。そこそこ専門的に書かれているが、かといってそれほど難しくもなく、 非物理系の学生・エンジニアには、ちょうどとっつきやすいレベルなのではないだろうか。 本書の内容を理解するのに必要な知識としては、量子力学をかじった程度で十分だろう(勿論、量子論をきっちりと学んだ人ならば、なお良い)。
 なお、ファインマン先生が光(電磁波)の伝搬と位相を分かりやすく説明するのにかなり苦労していることが判る。この辺りも味わいながら読むと良いのではないだろうか。

D.L.グッドスティーン「ファインマンさん、力学を語る」

D.L.グッドスティーン (著), J.R.グッドスティーン (著), 砂川 重信
「ファインマンさん,力学を語る」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000059394/>
単行本(ソフトカバー): 217 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000059394 ; (1996/08)
[書評] ★★☆☆☆
 ファインマン先生の講義録「Feynman's Lost Lecture on Atomic Motion」の訳本。 説明が今イチ解り難いなぁと思ったら、訳者は砂川重信先生(翻訳が良くないとされる「ファインマン物理学」シリーズの一部を翻訳)。 恐らく、本書の内容が物理学の講義そのものだったため、 砂川先生が訳者として選ばれたのだと思うが、翻訳はどうもしっくり来ない。 恐らく砂川先生は原書(ファインマン先生の講義テープから起こされている)を忠実に翻訳しているのだと思うが、話し言葉の英語を無理やり和文(それも書き言葉)にしたために、 結果として読み難いものになってしまったのだと思う。
 実はこの本、原書がCD付きで売られていたので衝動買いしてしまったのだが、このCDを聴いて衝撃を受けた。 挿絵(図)を見ながらCDを聴くと、内容がすらすらと頭に入ってくるのである!(ファインマン先生は東部訛りでしかも早口、さらに言い間違い・言い直しが多いのだが、 生声の勢いというか熱意が十分伝わり、内容がちゃんと理解できてしまうのである。)  元の講義テープがこんなに分かるのに、訳本が読み難いというのは、これは翻訳が拙いことの表れだろう。というワケで★は2つ止まりだが、これはあくまでも翻訳が良くないという意味であり、 原書が悪いと言っているのではありませんので悪しからず。

パリティ編集委員会「さようならファインマンさん」

パリティ編集委員会 (編集)
「さようならファインマンさん パリティブックス」
<http://www.amazon.co.jp/dp/462103488X/>
単行本: 178 p ; 出版社: 丸善 ; ISBN: 462103488X ; (1990/06)
[書評] ★★☆☆☆
 ファインマン先生に縁のある人たちが、その思い出を綴った本。 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」等の軽妙な文章を期待して読むと、見事に裏切られる。ま、ファインマン・フリークな人向けと言えるだろう。

J.グリック「ファインマンさんの愉快な人生」(1・2)

J・グリック (著), 大貫 昌子
「ファインマンさんの愉快な人生 (1)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000059351/>
単行本(ソフトカバー): 458 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000059351 ; 1 巻 (1995/10)
[書評] ★★★★★
J・グリック (著), 大貫 昌子
「ファインマンさんの愉快な人生 (2)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/400005936X/>
単行本: 422 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 400005936X ; 2 巻 (1995/10)
[書評] ★★★★★
 名著「ご冗談でしょう、ファインマンさん」は、いたずら好きのファインマン先生が自らを語る本であったが、 本書は第三者の目を通して、いたずら好きにして頭脳明晰なファインマン先生を綴る。 「ご冗談~」とは違った語り口になるが、同じ訳者(大貫昌子氏)の名訳で読み易い。

R.P.ファインマン「困ります、ファインマンさん」

リチャード・P. ファインマン (著), 大貫 昌子 (翻訳)
「困ります、ファインマンさん」
<http://www.amazon.co.jp/dp/400005368X/>
単行本: 319 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 400005368X ; (1988/07)
[書評] ★★★★★
 先述の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の続編のような本。 「ご冗談~」同様、専門的な内容はほとんど無く、初心者にも非常に読み易い。 「ご冗談~」を読んだらその勢いで本書をどうぞ!

【追記】
上記の本は現在は絶版になってしまっているようだが、文庫本で再販されているようだ。
・R.P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 大貫 昌子 (翻訳)
 「困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫) [文庫]」
 <http://www.amazon.co.jp/dp/4006030290/>

R.P.ファインマン「ご冗談でしょう、ファインマンさん」(Ⅰ、Ⅱ)


リチャード P. ファインマン (著), 大貫 昌子 (翻訳)
「ご冗談でしょう、ファインマンさん―ノーベル賞物理学者の自伝〈1〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000053639/>
単行本: 306 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000053639 ; 1 巻 (1986/06)
[書評] ★★★★★
リチャード P. ファインマン (著), 大貫 昌子 (翻訳)
「ご冗談でしょう、ファインマンさん―ノーベル賞物理学者の自伝〈2〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4000053647/>
単行本: 273 p ; 出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000053647 ; 2 巻 (1986/07)
[書評] ★★★★★
 ファインマン先生一流の軽妙な口調と剽軽なキャラクタで、気軽に読める科学入門書(?)。 原著も軽妙に書かれているようだが、本書の大貫昌子氏の翻訳も一流だ。ファインマン先生の本を読むには、ここから入ると敷居が低くて良いと思う。 本書の想定している読者は高校生・大学生(教養課程の学生)かも知れないが、 物理系に進まなかった理系人間にもお薦めである。ファインマン先生が子供の頃から学生の頃、そして教職についてから、 身近な物理・化学・生物の問題をどのように見て、どのように考えて来たかを知る手がかりとなる本である。
 物理系の大学生(専門課程の学部生・大学院生)や物理系の技術屋には初歩的に過ぎるかも知れないが、それ以外の理系人間(エンジニア)に、物の考え方・とらえ方・考え方についてのヒントをくれる書として、お奨めできる。

【追記】
上記2冊は絶版になってしまっているようだが、文庫版で同じ内容のものが出ているので念のため。
・リチャード P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 大貫 昌子 (翻訳)
 「ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) [文庫]」
 <http://www.amazon.co.jp/dp/4006030053/>
・リチャード P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 大貫 昌子 (翻訳)
 「ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫) [文庫]」
 <http://www.amazon.co.jp/dp/4006030061/>

2012年6月27日水曜日

香取貴信「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった 熱い気持ち編」

香取 貴信 (著)
「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった〈2〉熱い気持ち編 KOU BUSINESS」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4769608195/>
単行本: 223 p ; 出版社: こう書房 ; ISBN: 4769608195 ; 2 巻 (2003/12)
[書評] ★★★☆☆
 前書で感銘を受けた分だけ、本書は期待外れだったかも知れない。根底にある流れは、前書とほとんど同じ。人に接する業務というのはどういうことか、接客で大切なことは何か、である。前書の執筆時と比べ、著者は接客業のコンサルとしての経験を積み、内容にそれなりに成長が見られるのはそれなりに面白いが、前書を読んだ立場からすれば、前書を読まないと理解できない点が多いのと同時に、少しばかり新鮮さに欠けるような気もする。
 私なりに言わせて貰えれば、「人と接するために大切なこと」のエッセンスを知りたければ、前書だけで充分である。その周辺の四方山話や、前書の登場人物のその後を知りたい人は、本書を読むと面白いかも知れない。(余談かつ本質から外れるコトになるが、前書に仮名で書かれていた人が数人、本書では本名で載っていたりする。前書の仮名から本名を推定していた人は、クイズの答えを見る、という楽しみもあるかも知れない。)
 まぁ、本書はそんな感じの本です。

香取貴信「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」


香取 貴信 (著)
「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった―そうか、「働くこと」「教えること」「本当のサービス」ってこういうことなんだ! KOU BUSINESS」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4769607695/>
単行本: 231 p ; 出版社: こう書房 ; ISBN: 4769607695 ; (2002/05)
[書評] ★★★★★
 人に接する業務というのはどういうことか。 接客で大切なことは何か。ディズニーランドは、お客様(ゲスト)の楽しいと思う気持ちや、 良い思い出になるような接客を心がけているテーマパークとして有名だが、 不純な動機でディズニーランドで働き始めた著者がどのような体験をしたか、どうやって一人前のスタッフになったかを分かりやすく書いている(本人は、自分を一人前だと思ってしまった時期もあると正直に書いているが、 現在(執筆時)は自分を一人前だとは思っていない旨書いている)。
 この本の素晴らしいのは、人に接する上で大切なことは何であるかを、 誰にでも分かりやすく平易に、しかもユーモラスに書いていることである。 非常に読み易く、広い層の人たち(特に若い人たち)にお奨めできる。
※この本も「ビジネス書」として分類されていることが多いようだ。だが、ビジネス書と言うにはあまりにも入門的すぎると思う。この本は、社会人としてあるべき姿とは何かについて語っているので、ビジネス書というよりも「社会人入門書」と言った方が良いかも知れない(広い意味でのビジネス書ではあるが、経営戦略論とかリーダーシップとか、そういうものとはちょっと違う気がする)。

2012年6月26日火曜日

堺屋太一「凄い時代 勝負は二〇一一年」

堺屋 太一 (著)
「凄い時代 勝負は二〇一一年 (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062120801/>
単行本: 333ページ; 出版社: 講談社 (2009/9/2); ISBN-10: 4062120801; ISBN-13: 978-4062120807; 発売日: 2009/9/2
[書評] ★★★★☆
 面白い本だ。 現代という時代は、モノがあれば幸せである、という時代(規格大量生産の工業時代)から、 人間の幸せは満足の大きいこと、という時代(知価時代)への激動期であると著者は言う。2011年、というのは、現在の景気停滞の2番底を抜けた時代、という意味。この2番底を抜けた時には、世の中の価値観はこれまでとは大きく変わっている筈だと言う。
 この先、日本が世界の主要なプレイヤーであり続けるためには、 教育を変革させなければいけないと言うが、 今こんな言っていても間に合わないのでは?と思う向きもあろう。が、今始めても遅いが、遅すぎるということはない。 規格大量生産の時代に向いた人材ではなく、知価社会に向いた人材を輩出する教育へ。この本は、1998年から2000年まで(第55代~57代の内閣3代にわたって)経済企画庁長官を務めた著者が、 在籍当時から考えていた構造改革のうち、自分に出来なかった内容について警鐘を鳴らしているとも考えられる。
 工業社会から知の社会への変革については、 故・P.F.ドラッカー教授もその著書で同様のことを述べているが、 本書ではその具体的な内容、時期まで言及している。 激動の時代を乗り越える、流れを読む上で、本書は一読の価値アリと思う。

岩崎夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」


岩崎 夏海 (著)
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478012032/>
単行本: 272ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2009/12/4); ISBN-10: 4478012032; ISBN-13: 978-4478012031; 発売日: 2009/12/4
[書評] ★★★★☆
 ふとしたきっかけで、都立高校野球部マネージャーになった主人公、みなみ。マネージャーの役割とは何か、辞書を引くなど調べ、本屋でマネジメントの本を探す。 本屋の店員は何を勘違いしたか、マネジメントには無縁そうな女子高生に、ドラッカーの本(「マネジメント エッセンシャル版」)を勧める。みなみは、何の疑問も無く買ってしまう。
 ドラッカーの本は女子高生には難しい。が、それまで都の予選で良くて3回線負けの弱小野球部を、何とか甲子園に出場させたい一心で、ドラッカーの本から多くのヒントを得る。それは、イノベーションであり、モチベーションのマネジメントであった。みなみは、攻守ともにそれまでの高校野球の常識を外れた方法を取り(イノベーションを行い)、 各選手の希望に沿った役割分担(モチベーションのマネジメント)を行う。
物語としては話が出来すぎている感もあるが、ドラッカーのマネジメントの本質の部分を、 解り易い例をとって明解に示す。ちょっと取っ付きにくい感のあるドラッカーの本のエッセンスを、 平易に解く良書。
 ちなみに、本書を基にしたアニメや実写版映画があるが、こちらは“ちょっと違うぞぉ…”な感じ。P.ドラッカー→岩崎夏海→アニメ/映画製作者と咀嚼が進むにつれ、 元の本質がどんどん失われているような気がする。

2012年6月25日月曜日

P.F.ドラッカー「仕事の哲学 ドラッカー名言集」


P・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
「仕事の哲学 ドラッカー名言集」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478331030/>
単行本: 221 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478331030 ; (2003/08/01)
[書評] ★★★★☆
 ドラッカー氏の著作から、名言といえるフレーズのうち、 個人が仕事を行う上で重要なものを集めた本。
 元の文章を読まないと深い含蓄は知りえないので、ドラッカー氏の真意を汲むには、どうしてもオリジナルを読む必要があると思う。だが、本書は、氏のメッセージを効率良く受け止めることの出来る本だと思う。オリジナルを読んだ人にとっても、また読んでいない人にとっても、 珠玉のメッセージ集である。 今まで読んだドラッカー氏の著作を読んだ人には、氏のメッセージを再確認するのに役に立つ。オリジナルを読んでいない人にとっては、ドラッカー氏のメッセージを手っ取り早く知るのに役に立つ。いずれの読者にもオススメだ。

2012年6月24日日曜日

P.F.ドラッカー「テクノロジストの条件」

P.F.ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)
はじめて読むドラッカー (技術編)
「テクノロジストの条件―ものづくりが文明をつくる」

<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300720/>
単行本: 295 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300720 ; (2005/07/29)
[書評] ★★★★☆
 上田惇生氏が編集・翻訳をした、「はじめて読むドラッカー」シリーズ3部作(「プロフェッショナルの条件」、「チェンジ・リーダーの条件」、「イノベーターの条件」)に次いで出版された、同シリーズ4冊目。
 本書は、今後来るべき知識社会についての議論と、 知識社会においてイノベーションがますます重要になって行くことを述べる。また、企業(全ての組織体)におけるイノベーションの重要性と、イノベーションを起こすためにどのように組織作りをしたら良いかを論じる。
 同シリーズの前3作との重複が多いが、 変化の時代を乗り切る「強い組織」とはどういうものか、 組織を強くするためにはどうしたら良いか、を分かりやすく論じている。
 組織に使われるだけでなく、 組織に何らかの影響を及ぼす存在になりたいと考えている企業人は、 本書を読んで得るものは多いと思う。 企業(特にメーカー)や、企業の中の単位組織を引っ張って行く立場にある人、そういう立場に就きたいと考えている人、これら全てに読んで欲しい本。

P.F.ドラッカー「イノベーターの条件」

P.F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)
はじめて読むドラッカー (社会編)
「イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか」

<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300623/>
単行本: 280 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300623 ; (2000/12)
[書評] ★★★★☆
 本書も、他の「はじめて読むドラッカー」シリーズと同様、ドラッカー氏の著作のうち、特に重要そうな物を抜粋・再編集・再訳した本である(その割に主張が首尾一貫していて、短編集的には見えないのは、 編訳者・上田惇生氏の腕によるところが大きいのだろう)。
 本書は、ドラッカー氏の著作のうち、社会論をまとめたものである。 特にナチス・ドイツの興隆と社会主義の始まりに触れ、全体主義が興った理由を追究し、 資本主義が栄えた理由、そして、資本主義社会がその限界に来ている今日、 資本主義社会の次に来るべき社会(「ポスト資本主義社会」)について論じる。
 社会論の本だけに、『はじめて読むドラッカー』シリーズの他の2冊(「プロフェッショナルの条件」、「チェンジ・リーダーの条件」)と比較すると、1技術屋から見て、とっつきにくい本であることは否めないが、 本書の価値は、世の中の体制の歴史を俯瞰することよりも、 今後来るべき社会を読む、という部分にある。
 ドラッカー氏は、資本主義社会の次に来るべきものは、知識社会であると言う。すなわち、今後の社会を動かすものは、お金(資本)ではなく、個々人の知識であると言う。 知識は使っても減ることは無い「資源」であるが、それ単体では新しいものを生み出さない(その「知識」を有効に使ってくれる誰かに伝えないと、 世の中の訳に立つ形では使われない)ものである。 企業などの組織が行う「マネジメント」は、今後、 人・物・金をマネジメントする以外に、この「知識」もマネジメントし、 活用して行かなければ生き残って行けないとドラッカー氏は言う。すなわち、企業のミッションは、構成員(従業員)を惹き付け続け、 彼らの知識を有機的に組み合わせて、成果・業績に結び付けることである。
 これがどのような社会、どのような組織(企業など)になるか、 具体的なことは分からない。が、平たく言うと、構成員(従業員)とその「知識」を「活かす」ことの出来ない組織は存続し得ない、とは言えそうである。

P.F.ドラッカー「チェンジ・リーダーの条件」

P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)
はじめて読むドラッカー (マネジメント編)
「チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ!」

<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300615/>
単行本: 294 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300615 ; (2000/09)
[書評] ★★★★★
 まず、内容が非常に濃い。 「マネジメント編」とはなっているが、 様々な企業の興隆~衰退を挙げ、イノベーションの重要性、そのためのマネジメントの基本をみっちりと(かつクドくない程度に)よくまとめられている。また、事業の基本、マーケティングというものについても、その哲学を丁寧に書いている。この本自体は(訳者あとがきを読むまで全然気付かなかったが)、ドラッカー氏の1990年代半ば以降の著作のうち、 特に重要そうな物を切り貼りして集めた短編集的なものである。とは言え、首尾一貫した構成と、良い翻訳に恵まれ、この上なく判りやすい、かつ為になる本になっていると思う。
 ドラッカー氏は1909年ウィーン生まれ、第1次世界大戦も体験した、古い古い世代である。しかし、彼の言うことは、限りなく基本に忠実で、また限りなく新しい。 経営を云々する人は(本書、出典元の著作、いずれでも良いので)「黙って読むべし!」

P.F.ドラッカー「プロフェッショナルの条件」

P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)
はじめて読むドラッカー (自己実現編)
「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか」

<http://www.amazon.co.jp/dp/4478300593/>
単行本: 266 p ; 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN: 4478300593 ; (2000/07)
[書評] ★★★★★
 ズバリ、良書。★を7~8個つけたい位の良い本。
 誰かの部下・誰かの上司・組織の一員としての仕事の仕方、 自分を高めつつ組織の業績にも貢献する方法、自分自身のポテンシャルの上げ方、…等々、 会社という組織の中で「よりよく生きる」上で役に立つ心構え・具体的な実践内容が豊富に書かれている。
 仕事のできる人間になりたかったら、迷わず「読むべし」。 比較的若い会社員にドラッカーの本を1冊薦めるとしたら、間違いなく本書である。