2013年12月25日水曜日

守屋 洋 (著)「孫子の兵法」


守屋 洋 (著)「孫子の兵法」(知的生きかた文庫)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4837900186/>
文庫: 254ページ
出版社: 三笠書房 (1984/10)
ISBN-10: 4837900186
ISBN-13: 978-4837900184
発売日: 1984/10

[書評] ★★★★☆

「孫子」は言わずと知れた兵法書だ。単なる兵法書にとどまらず、人間組織に働く力学、経営戦略の書としても読める為、多くの政治家や企業トップにも愛読されているのは周知のことと思う。

本書は「孫子」13篇の全訳+解説となっている。現代風の解釈や、企業戦略に置き換えた場合の説明など、多少無理は見られるが、520円の文庫本で「『孫子』ってぶっちゃけ何?」かを知る目的、あるいは“取っ掛かり”としては良い本だと思う。

なお、経営戦略や組織の力学といった面で応用できる知識を得るためには、他にも何冊か読んだ方が良いだろうが、イントロダクションとして良いのではないだろうか。

2013年12月21日土曜日

宮崎 駿 (著)「続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか」


宮崎 駿 (著)「続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか」
<http://www.amazon.co.jp/dp/486052117X/>
単行本: 324ページ
出版社: ロッキングオン (2013/11)
ISBN-10: 486052117X
ISBN-13: 978-4860521172
発売日: 2013/11

[書評] ★★★★★

前作「風の帰る場所」(単行本(2002)・文庫版(2013)、拙書評)の続編とも言える本。渋谷陽一氏による、2008年~2013年に行なわれた4回のインタビューと(雑誌「CUT」掲載)、富沢洋子氏によるインタビュー(1983年)、『アニメージュ』編集部によるインタビュー(1984年)からなる。

宮崎駿氏が、映画の構想・企画を非常に早いうちから持っていることは、前作をはじめとする他の本にも書いてある。が、どのような作品を作るかという情報はなかなか出てこなかった。しかし、本書の元となったインタビュー記事では、氏が引退作とした『風立ちぬ』へのヒントが至る所に書かれている。『崖の上のポニョ』インタビュー(2008)で、「海の中の次は空、地面を離れたい」と言っていたり(既に『紅の豚』(1992)で空を舞台とした作品を作っていたのに、改めて言っている)、『借りぐらしのアリエッティ』インタビュー(2010)で、次の映画の主人公は男、悲劇的な結末と言っていたり。

本書は、『風立ちぬ』に至るまで、宮崎氏がどのように映画作りをしてきたかが読み取れる本としても非常に興味深い。年齢も含めた肉体的・精神的限界(かなりヤバい状態)まで自分を追い詰めないと、そういった作品を作ることが出来ないことも語っている。『アリエッティ』の時には引退作の構想が出来ており、並々ならぬ覚悟で『風立ちぬ』の製作に取り組んだことが読みとれる。

『風立ちぬ』のインタビューでは、いわゆる“零戦神話”を払拭して、本当の物語(に近い虚構なのだが)を作ろうとしたことや、そのための苦労などを伺い知ることが出来る。インタビューの時期は、映画完成後で、引退宣言の直前だと思われるが、宮崎氏の“何かをやり遂げた”感が詰まっている。

本書では、宮崎氏の世の中の捉え方、時代の読み方、「今、多くの人に受け容れて貰える映画」とはどんな物か。宮崎氏自身の言葉として、これらを知ることの出来る貴重な本だと言える。

・ ・ ・ ・ ・

本書はこれら2008~2013年のインタビューに続き、「『未来少年コナン』インタビュー」(“演出家・宮崎駿の誕生”、1983)、「長編監督デビュー以前総括インタビュー」(“宮崎駿はいかにしてできあがったのか”、1984)へと続く。『コナン』インタビューでは、どういった作品を作りたいかを語っており、多くの作品を経て『風立ちぬ』まで続く、氏の一貫した態度が分かり、興味深い。書籍「出発点」(Amazon拙書評)に書かれた内容の再掲だが、最近5年の宮崎駿氏に触れた後、氏の(文字通り)出発点となった話に遡って行く構成は、ちょっと巧いかも知れないと思った。

2013年12月18日水曜日

宮崎 駿 (著)「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」


宮崎 駿 (著)「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」(文春ジブリ文庫)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4168122026/>
文庫: 318ページ; 出版社: 文藝春秋 (2013/11/8); 言語: 日本語; ISBN-10: 4168122026; ISBN-13: 978-4168122026; 発売日: 2013/11/8

[書評] ★★★★★

雑誌「Cut」「SIGHT」に掲載された宮崎駿氏へのインタビューを書籍化した本。インタビューは、1990年11月~2001年11月の間に5回行われた。元は単行本として2002年7月に発行されたものであるが、今年11月に文庫化された。

宮崎駿氏のインタビュー記事をまとめた本はいくつかあるが(代表例は「出発点1979~1996」、スタジオジブリ・1996/08刊:Amazon拙書評)、本書もそういった本。本書記載のインタビューの間にコミック版「風の谷のナウシカ」が完結した(最終巻=7巻=は1995年1月発行)。そういった事情もあるのだろう、本書ではこのコミック版「ナウシカ」を中心として、宮崎駿氏の関わった作品群の互いの関連性が明らかにされている(これらの映画の製作期間の度にコミック版「ナウシカ」の連載が中断されたのは衆知の通り)。

「出発点」を始めとして、幾つかのインタビュー記事を読んだが、本書はその中でも、作品群の有機的なつながりを示しているのは興味深い。文庫版のオビに書かれた「決定的インタビュー集」は、決して大げさな誇張ではないと思う。

本書では、宮崎駿氏の思想や作品制作への心構えが解り易く示されている。世の中に終末観を抱きつつも、世界を肯定する作品を作りたいという、ある意味分裂した気持ちがハッキリと示されている。また、自身のセンチメンタリズムを肯定したいという気持ちも示されており、表現者としての氏の考え方に迫ることが出来る。

氏の引退宣言直後に文庫化する等、ジブリの商売上の戦略も見え隠れするが(笑)、それはともかく。クール・ジャパンと言われる日本のアニメ文化を語る上で絶対にはずせない人。無形文化財とも呼べる、宮崎駿氏がどうやってできたか。どのように世界をとらえてきたか。どのように作品に関わってきたか。そして、今後の方向性。日本の現代文化史を作りつつある1人のクリエイターを知ることの出来る、非常に貴重な本だと思う。


※単行本はコチラ:


宮崎 駿 (著)「風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡」[単行本]
<http://www.amazon.co.jp/dp/4860520076/>
単行本: 352ページ; 出版社: ロッキング・オン (2002/7/19); ISBN-10: 4860520076; ISBN-13: 978-4860520076; 発売日: 2002/7/19

2013年12月15日日曜日

大石 英司 (著)「尖閣喪失」


大石 英司 (著)「尖閣喪失」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4122058007/>
出版社: 中央公論新社 (2013/6/22)
ISBN-10: 4122058007
ISBN-13: 978-4122058002
発売日: 2013/6/22

[書評] ★★★☆☆

題名の通り、尖閣諸島を舞台とした日中の領土問題を題材とした小説。日本の政権交代のタイミングを狙って、中国が魚釣島に上陸する。日本側も当然、事前からその動きを知り、中国側の予想を上回る迅速さで対抗する。が、日本の自衛隊は、その武力だけで魚釣島の中国軍を撃退できるポテンシャルを持っているものの、さまざまな問題(障害)を抱えており、実力行使は難しい。たのみの米国に日米安保の発動を呼び掛けても、米国はその経済を中国に握られてしまっており、身動きがつかない。この状況は最早日中問題にとどまらず、日米問題・米中問題でもある。

いかにもありそうなストーリーに、いかにもありそうな登場人物(特に政治家)の発言。ディテールが詳しすぎる。もしかしたら本当に起こっていたかも知れない(!)話が、この本には書かれている。

世界における米国の地位が弱体化している今、国際社会の中で、米国に頼りっぱなしの日本という国のあり方を、再考させられる本。

2013年12月11日水曜日

近藤 史恵 (著)「キアズマ」


近藤 史恵 (著)「キアズマ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4103052546/>
単行本: 301ページ; 出版社: 新潮社 (2013/4/22); 言語 日本語; ISBN-10: 4103052546; ISBN-13: 978-4103052548; 発売日: 2013/4/22

[書評] ★★★☆☆

「サクリファイス」から続くシリーズ4冊目の最新刊。前3作がプロの自転車ロードレース選手を中心とした話だったのに対し、本作は大学の自転車部が舞台となっている。これまでの作品が、主人公らが自ら死と向かいあっているのに対し、本作では、関係者(主人公ではない)が死と向かいあっている。心理描写の細やかさは従来通り。

同じ自転車スポーツを舞台とした川西蘭(著)「セカンドウィンド」シリーズより話は重いものの、これと似た爽やかな読後感がある。今回はシリーズでこれまで続いて来たサスペンス的要素が無いので、それのような展開を期待しながら読むと、肩透かしを食うかも知れない(ちょっと物足りなさも感じる)。

自転車競技の入門者が経験する様々なことが書かれていて、シリーズの過去3作がプロレーサーの話で、読者は「レースを見る人」に近い立場で読み進めるのに対し、本作では「自転車に乗る人」」としての感情移入をすることになる。

適度な展開スピードで読み易い。自転車スポーツに興味のある人ならば(という条件が付いてしまうので評点は満点には出来ない)、楽しく読めるだろう。

2013年12月8日日曜日

古川 琢也 (著)「ブラック企業完全対策マニュアル」


古川 琢也 (著)「ブラック企業完全対策マニュアル」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863917945/>
新書: 208ページ; 出版社: 晋遊舎 (2013/5/27); 言語 日本語; ISBN-10: 4863917945; ISBN-13: 978-4863917941; 発売日: 2013/5/27

[書評] ★★☆☆☆

ブラック企業と呼ばれる会社組織の実態や、その被害に遭っている労働者がどうしたら良いかが書かれた本。本の紹介には「対策術を指南します」と書かれているが、労働者に対して「こうすれば良い」という答えは書かれていない。その代わり、ユニオン(社外の組合)、社労士、弁護士への相談を勧めている。個々人で状況など違うので、ある意味において正しい回答かも知れないが、じゃぁどうすれば良いのさ?と欠乏感は感じる。ユニオン、社労士、弁護士へのアクセス方法が書かれているので、「とっかかり」的には意味のある本だとは思うが。「完全対策マニュアル」はかなり大袈裟な題名だ。

さて。

本書は労働者側(労使の「労」側)に向けて書かれた本だが、「使」の立場、すなわち経営者や上司の側に立って考えてみると、実にやりにくい世界になったものだと思わざるを得ない。右肩上がりの時代には、残業も多かったが、残業手当も青天井。それがバブル崩壊以後は企業側にも余力がなくなり、仕方なく残業規制。人もずいぶん減らしたが、ノルマはあるし、1人あたりの業務量はむしろ増加している。サービス残業や名ばかり管理職の酷使は御法度。しかも、今会社のトップとなっている人たちが担当者~下級管理職をやっていた時代は、残業もバリバリできた時代。経費もバンバンつかえた時代。その頃の感覚を持ちあわせたまま、今の若手~中堅に当時と同じようなアウトプットを期待すること自体、無理があるのだろう。

この辺りの匙加減は非常に難しい。下手なことをすれば、すぐブラック企業として大手ネット掲示板に書き込まれてしまう。就職活動や転職活動をしている多くの人の目にとまれば、その企業は大きなダメージを受ける。実際には企業まるごとブラックという例は少なく、ブラックな職場とそうでない職場とが存在するのだろうが、2、3の悪い例を見てしまうと、会社全部がそうなのかと思ってしまう。労働者も生きにくい時代になったが、企業側もやりにくい時代だと思う。

キャッチーなタイトルに騙され、つい本書を手にしてしまったが、冷静に考えればわかることが多い(事例もニュースになった物ばかりだ)。そういう意味で、本書の評価はあまり高くすることが出来なかったが、コンビニで売られている新書だと考えると、まあこんな物なのかも知れない。

2013年12月4日水曜日

玉井 雪雄 (著)「じこまん~自己漫~ 1」 (コミック)


玉井 雪雄 (著)「じこまん~自己漫~ 1」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4537129557/>
コミック: 154ページ; 出版社: 日本文芸社 (2012/11/17); ISBN-10: 4537129557; ISBN-13: 978-4537129557; 発売日: 2012/11/17

[書評] ★★★☆☆

自転車漫画「かもめチャンス」の作者が、自身が自転車を始めたきっかけとハマり具合を面白おかしく描いた漫画。内容は濃い。読むのが疲れる位、濃い。限られたスペースに、絵がぎっちり。字数も多い。

自転車乗りが読むと「そうだよね~」と同感できる内容が多い。笑える所もあちこちにある。
他の自転車漫画・書籍に滅多に書かれない、事故や怪我の話がしっかり書かれている辺り、作者の良心?を感じる。しかし、内容は色々な意味でギリギリのものが多い。自転車乗りでない人が読んだら引いてしまう点は少なくないだろう。そういう意味で、自転車布教活動には「使えない」漫画。

内容は悪くなし、それなりに面白い。が、万人向けではない。まぁ、自転車乗りの人が、自分のサイクルライフと比較して読むの向けだろう。

2013年12月1日日曜日

鬼頭 莫宏 (著)「のりりん(8)」 (コミック)

 

鬼頭 莫宏 (著)「のりりん(8)」(講談社、2013/11/22)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063524876/>
コミック: 200ページ; 出版社: 講談社 (2013/11/22); 言語 日本語, 日本語; ISBN-10: 4063524876; ISBN-13: 978-4063524871; 発売日: 2013/11/22

[書評] ★★★★☆

今日はコミックです。最近人気が出てきたらしい自転車漫画「のりりん」の最新巻です。

今回も楽しく読みました。前巻までに、ツーリング、ヒルクライム~ダウンヒルと、自転車乗りが経験する(ことが多いであろう)イベントがありました。本書では、集団走行の話が出てきます。やったことがある人にとっては「あるある」だし、経験が無い人が読むと「へぇ、そうなんだ」になると思います。

自転車ネタ以外のストーリー展開は、正直少し物足りないかもですが(ラブコメ的な展開はアッサリとスルーしてしまう/笑)、「サイクリングを楽しもう!」と思わせる所は満点を献上したいです。

サイクリスト(特に初心者)が守るべきコトや、知っておいた方が良いことなど、結構詳しく書かれています。それでいて、あまり説教臭くないのが良いです。そして、それらの内容は、巻を追うごとに段々レベルアップしてきています。昔は新人勧誘用の文献は「シャカリキ!」とかの体育会系の物でしたが、「のりりん」はユルめで、今の時代にマッチしているでしょう。

自転車にチョット興味あるんだけど、どうしよっかな?…な人にもおススメですよ♪

2013年11月27日水曜日

カール・アルブレヒト(著)「なぜ、賢い人が集まると愚かな組織ができるのか」


カール・アルブレヒト(著), 秋葉 洋子・有賀 裕子(翻訳)「なぜ、賢い人が集まると愚かな組織ができるのか―組織の知性を高める7つの条件 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478374465/>
単行本: 304ページ; 出版社: ダイヤモンド社 (2003/9/12); ISBN-10: 4478374465; ISBN-13: 978-4478374467; 発売日: 2003/9/12
[書評] ★★★★☆

組織はうまく機能している時、1+1が3にも4にもなる。逆に機能不全に陥っている時には、1+1が2未満にもなり得る。本書は、組織は往々にしてこの「2未満」の状態になりがちとなる理由と(これが「あるある」と思えてしまう…のは私の所属する組織が機能不全に陥りかけている証拠だ)、どのようにしたらうまく機能するようになるかを説く。この説明に本書では「構成員の知性」「組織の知性」という考え方を使い、この「組織の知性」を高めるための7つの条件を示している。

組織の知性を高めるための条件。物凄く簡単に言ってしまえば、企業のトップも従業員も「足並みを揃える」こと。これに尽きるのだが、実際の組織では色々な力学が働いて、足並みを揃えることが実に難しい。これに対応するためにトップが出来ること。そのヒントも書かれている。

タイトルこそ毒々しいが、内容はそれほど強烈でもない。いたってマトモなことが書かれている。サブマネジャークラスからトップまでの誰もが、読んで得るものがあると思う。

2013年11月24日日曜日

近藤 史恵 (著)「サヴァイヴ [単行本]」


近藤 史恵 (著)「サヴァイヴ [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4103052538/>
単行本: 234ページ; 出版社: 新潮社 (2011/06); ISBN-10: 4103052538; ISBN-13: 978-4103052531; 発売日: 2011/06
[書評] ★★★☆☆

サイクルロードレースの世界選手権大会に日本代表として出場する選手を中心とした数人について、それぞれ関わりのある複数のエピソードからなるサスペンス小説。テンポよく読ませるし、読者をグイグイ引き込む力を持った作品だ。必要以上の言葉を使っていないのだが、状況や各登場人物の気持ちの描き出し方が光っており、途中までつい、単なるドラマだと思って読んでしまった。が、突然、本シリーズはサスペンス作品だということを思い出される。
 本作品でのテーマは、八百長ドーピング。非常にタイムリーな話題だ(特に後者)。本作品では、どのように自転車スポーツ業界が腐敗して行くのかを描き出す。特に、腐敗しつつある業界の中で、当事者たる選手たちの心理描写は非常に魅力的。

  • 才能や人気のある若手を祭り上げることなら、どのスポーツだってやっている。どこまでなら許されるのか、どこが越えてはいけないラインなのか。俺たちは怪我と隣り合わせで走っている。ひとつ間違えば、死ぬことだってあり得る。それでも取り替え可能な部品に過ぎないのだろうか。 (本書p.195より)

などは、選手側としての悲痛な心の叫びだろう。モラルが無くなりつつある現代ビジネス社会において、組織の歯車の1つに過ぎない我々はこういった辺りに強い共感を感じるのだ。元プロロード選手ポール・キメイジ氏がドーピングについて訴えた本、「ラフ・ライド」(Amazon拙書評)を読んで日が浅かったこともあるが、ガツンとやられた感じがした。

ただ、本書が結末らしい結末が無く、問題提起のみで終わっており、読後感があまりスッキリしない(というのは私の勝手な意見だが)。「もう嫌、こんなスポーツ!」と思わせてしまう感すらあり。なので、勝手ながら少し減点、★3つとさせて頂く。

・・・・・・

書き方のスタイルは、本作に至るまでのシリーズ作「サクリファイス」(Amazon拙書評)、「エデン」(Amazon拙書評)と同様だ。各エピソードの主人公(選手)の視点から描いている。本作品では、日本国内と海外の両方が舞台となっていて、この描き出し方が全然違うのが非常に面白い。たとえば、日本国内の描き出し方は、基本的に1文が短い。文と文の間の論理的繋がりはあまり明示されていない。「ポツン、ポツン、…」と短い状況説明や台詞を並べる手法を効果的に用いている
(読者はその間を自動的に補って読んでいる)。人物同士の会話など、多少ブッキラボウに過ぎるのではないかという程だ。海外の描き方と比較すると、昭和の映画のようなイメージだ。恐らく、彼等の会話は(今の我々の普通の会話よりも)訥々としており、会話スピードも速い。

これに対し、海外の場所や人物の描き方は、流れるように描かれている。現地に行ったことがない人にも非常にイメージしやすい描き方をしている。

  • ポルトガル人らしく、2Bの鉛筆でぐりぐりと描いたような濃い顔立ちをしている。眉も髪も黒々としているが、日本人の黒とはその線の太さが違う。(本書p.216より)

等、所々にコミカルな描き方もあり、読んでいて楽しい気持ちにさせる。ツールやジロといった海外の有名なレースに時々出てくるような地名が多く、私のような自転車ファンには場所やイメージがつかみやすい。単なるサスペンス小説ではなく、本シリーズがテーマに用自転車スポーツのファンも満足させる作りになっている。

本シリーズの次の作品、「キアズマ」も既刊となっている(Amazon)。早く読みたい。

2013年11月20日水曜日

中森 鎮雄 (著)「世界最高の戦略家クラウゼヴィッツ―強い企業の戦法」


中森 鎮雄 (著)「世界最高の戦略家クラウゼヴィッツ―強い企業の戦法」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4766780280/>
単行本: 206ページ; 出版社: 経済界 (1987/04); ISBN-10: 4766780280; ISBN-13: 978-4766780284; 発売日: 1987/04
[書評] ★★☆☆☆

本書発行当時、日本企業に流行し始めた(著者ら経済研究所が主体となって流行させた?)、欧米流の「企業戦略」としてクラウゼヴィッツの『戦争論』を引用し、その内容を説明する為に、当時の実例を示した本。①新聞ネタを整理しただけでクラウゼヴィッツの本質には全く触れていないようにも見えるし、②何より(2013年という)現在においては内容(引用例)が古すぎる。という訳で、申し訳ないが★2個という低いレーティングとした。

昭和末期に発行された本であり、発行当時の時代背景として、高度成長期・2度のオイルショックを経、日本の経済低成率が鈍化した頃であるというのは無視できない。日本企業が貿易摩擦と円高に苦しめられ始めた時期で、それまでとは異なる経営手法を模索していた時期の本なのだ。そのような時代背景もあるのだろう。三菱総合研究所に所属していた著者が、欧米流の「企業戦略」という考え方を広める際に引用したのが、クラウゼヴィッツの『戦争論』だということになろう。

今では国内企業でも「企業戦略」は必須であり、製造業など、企業活動の中で技術開発が重要な位置を占める場合、中長期的な「技術戦略」というものが必須だ。本書に書かれている戦略策定手順は、随分とシンプルだ。この辺りは、技術戦略策定の初心者(サブマネジャークラス)の人にとって入門書として多少は価値があるかも知れないので、★は1個とせず2個とした。現在では、わざわざ入手して読むほどの本でも無いと思う。

2013年11月17日日曜日

水島 温夫 (著)「『技術者力』の高め方―戦略思考で研究開発・製品開発が変わる!」


水島 温夫 (著)「『技術者力』の高め方―戦略思考で研究開発・製品開発が変わる!」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569632386/>
単行本: 262ページ; 出版社: PHP研究所 (2004/02); ISBN-10: 4569632386; ISBN-13: 978-4569632384; 発売日: 2004/02
[書評] ★★★★★

著者は著名な経営コンサルタントの方。バブル崩壊以降低迷するわが国の製造業界を憂いて書かれた(であろう)本。各個人における仕事のあり方とか、「本書は技術者に『喝!』を入れるために書いた」(冒頭)等、微妙に今の時代とのズレも感じなくもないが(約10年前の本だからその辺は仕方が無い)、内容は概ね今でも充分通用すると思う。

本書はその題名通り、技術者として会社業績に貢献できる“力”について書いている。“力”というより、業績に貢献できる“仕事の進め方”といったほうが正確か。

バブル崩壊と前後し、日本にはMBA(経営学修士)やMOT(技術経営)に代表される、数多くの欧米流の経営手法が多く取り入れられてきた。モノ作りも組織作りも、その手法は組合せ的に行なう。組織についても、業務遂行はトップダウン、管理は個人単位。

でもそれだけじゃ日本の強さは活かせませんよね、わが国の高度成長期~バブル期の製造技術を強力に支えてきた手法もうまく組み合わせて、必勝パターンを作りましょうという話です。製品や市場のタイプに応じて、旧来日本で用いられてきた手法の代表例、摺り合わせによるモノの作り込みや、QCなどに代表される現場主導型の解決手法を用いると、それらを持たない欧米型の物作りに勝てるぞ!という内容です。

中には、技術者「個人」がやるべきことというより、マネジャー以上が考えるべき組織運営に関わることも多少あるのだが、数年以上の技術者経験(研究開発、営業技術、製造技術)を積んだ人には納得できる内容が多いのではないだろうか。

著者の主張は非常に明快で解り易く、すんなり頭に入ってくる。また、東レが国内で作って世界中に輸出しているABS樹脂の素を「秘伝のタレ」と言ってみたり、平易でイメージしやすい表現が多い。本書では、各製品のユーザ側から見た価値によって、欧米方式の良い所と、日本方式の良い所を使いわけ、必勝パターンを作りましょうという内容。本書の構成自体、和洋折衷となっており、そこも面白かったりする(全体のおおまかな構成は最初に結論を述べてから説明をする欧米風、各節は解り易い例から入って最後に結論に持っていく日本風)。

今ではもう入手困難というのが勿体無い。是非再版して多くの技術者に読んで欲しい本である。

・・・

余談:ここ数ヶ月、ビジネス書を殆ど読まずに過ごして来てしまいました(夏前から暫く、ラノベなぞにはまったのも大きな理由の1つ)。ので、これから暫く「巻き」でビジネス書中心に行きます。年末に向けて書庫一掃セール、みたいな。(ほんまかいな?どこまで出来ることやら。)

2013年11月13日水曜日

山中 千尋 「ジャズのある風景」


山中 千尋 (著)「ジャズのある風景」(晶文社、2013/8/2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4794969090/>
単行本: 288ページ; 出版社: 晶文社 (2013/8/2); 言語 日本語; ISBN-10: 4794969090; ISBN-13: 978-4794969095; 発売日: 2013/8/2
[書評] ★★★★☆

2001年に彗星のように現われて今に至るまで、ずっと業界トップで活躍されているジャズ・ピアニスト、山中千尋さんの書かれた本です。本書の内容は、ジャズ系雑誌数種と山中さんの出身地・桐生の地方新聞新聞への寄稿文が主ですが、書き下ろしの所もあります。

※山中さんの経歴等は、UNIVERSAL MUSIC JAPANのWeb PageWikipedia(日本語)等に詳細に書かれていますので省略しますが、パ無いです。学歴だけでなく、デビュー後の実績もカナリなモノですよね。音楽系雑誌に度々登場していらっしゃるので、音楽好きな方は既に御存知かと思います。

私は当初、美人だから売れてるだけでしょ?だなんて、失礼にも程があるだろ!と皆様から叱られてしまいそうなコトを思っていたのですが、何枚目かのアルバムを聴く機会があった時に、完全ノックアウトされてしまいました。グイングインとスウィングの効いたリズムに乗せて、かなりキワドイ弾き方(勿論危ういのではなく解釈や表現が非常に斬新だという意味です)を聴かせてくれます。特に、スタンダード曲などを演奏した時、ある意味アクが強い音楽になっています。でもこれがどういうことか、ちゃんと本書に書かれていました。
  • 何百年も弾かれ愛され続けるクラシックは古典ではなく、現在進行形のナマの音楽だ。土壌に染み付いた音楽は、強靭でしなやかでやたら丈夫な実用品。多少の我田引水的な解釈に悪用されたくらいでは、へこたれない (本書p.15より)
…うーん、成程。

ちなみにワタシ、ノックアウトの直後に既出アルバム全購入。リリース毎に即買い→即聴き…というパンチドランカー状態(笑)。

ワタシのようなフツーの音楽好きも楽しめる音楽ですし、結構コアな聴き方をする方々の理解の半歩位先を行っているのではないでしょうか。ワタシのレベルでも「そう来たかぁ!」と膝を叩きたくなるような演奏、しかもそういう箇所が濃密です。ジャズのビバップに近い様式をとった、完全な現代音楽。

まぁ彼女の音楽内容がどれだけハイクオリティかは、CD/DVDのレーベルが証明しています。最初のアルバム3枚は「澤野工房」という、日本のジャズ・ピアノ名門レーベル(かなり渋い所/笑)から、4枚目以降のレーベルはVerve/Universal(これまた超ビッグアーティストしか扱わない有名ドコロ)です。

・・・・・・

やっと本書について書けるようになりました(マクラ?が長くて申し訳ないです)

バークリーを主席で卒業して以来メインに活動しているニューヨークでの話題や、ツアーでの話も多々あり、音楽に関係の有ること・無いこと(彼女の生活の一部や、彼女が見ている様々なアートについて)、等々色々書かれています。彼女が音楽をどう捉えているのかとかも、色々書いていますし、業界の内情についても多少触れています(ファンにはたまらんです!/笑)。本書の3章「行儀のわるいジャズ評論」辺り、他人について書いている時は、それなりに気を遣っているでしょうけど、ビシッビシッとジャブを決め、ご自身の物の観方とかスタンスについて書いている時はズシッズシッとボディーブロー、時々パコーンとアッパーカットが来ます。読みながら、「そうだよね~♪」とか、「マジっすか?!」とか、音楽とは違う方法で読者を楽しませてくれます。いやぁ、彼女はやっぱり、音楽以外の手段でも我々を楽しませてくれる「天才的エンターテイナー」ですね!

雑誌・新聞で書いた文章と書き下ろしの組み合わせなので、内容は結構バラバラですが、その分、どこからでも読めますし、適度に休みながらも読めます(ランダムアクセス可能な本です)。でもこの本、彼女の演奏ほど緊張せず、軽~く読めます。でもイキナリ「ドキッ!」っとさせてきたりしてね。山中さんの音楽が好きな人は勿論、彼女がどういう風に物を観て考えているか、結構判る面白い本だと思います。ま、ワタシなんかが書く前に、彼女のファンはとっくに買って何度も読んでいるでしょうけどね。

・・・・・・

ちなみに彼女曰く、
  • 「聴いて面白かったらそれでいいんじゃないの」音楽はそれにつきるはずですし。 (本書p.49より)
だそうです。「聴いて」の「聴」とは、「聴衆」の「聴」であって、耳だけじゃなくて目も入っています。やっぱり、エンターテイナーとして、間違いなく頂点の1人ですね。これからも彼女の様々な活動期待しちゃいま~す♪

2013年11月8日金曜日

しげの 秀一 (著)「頭文字D(48)<完>」 (コミック)


しげの 秀一 (著)「頭文字D(48)<完> (ヤングマガジンコミックス) [コミック]」(講談社、2013/11/6)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063823776/>
コミック: 208ページ; 出版社: 講談社 (2013/11/6); 言語 日本語, 日本語; ISBN-10: 4063823776; ISBN-13: 978-4063823776; 発売日: 2013/11/6
[書評]★★★★☆

 とうとう完結してしまいました。面白かったです。
 とうふ屋ハチロクはゴール直前にエンジンブローするも、ゴールラインは先に通過(まず有り得ないカタチでですが)。相手方のドライバーはドッグファイト慣れしていないので対応できずじまい。ストーリー的には妥当な結末でしょうか。あんなイカレた旧車で公道ドッグファイトを続けてもねぇ、という気もしますし。Project Dは神奈川遠征で完了、で良かったのだと思います。
 1~48巻、ぶっ通しで再読しちゃいました。メカの絵が少しずつ洗練されて来ているのがよく解ります(人物描写は…姿勢が少ないとか雨の時の傘の向きが全員一緒とか、…まぁ色々ありますが/笑)。
 にしても。とうふ屋ハチロクにはもう1回生き残って欲しいところかも知れませんけどね。連載開始当時、既に旧車だったハチロク。漫画の長期化につれ、どんどん「過去の遺物」化が進み、同じ車でのストーリーがこれ以上描けなくなっちゃったというのが実情かも知れませんね。とか言いつつ、内心、完結→終了って、ちょっと残念な気も。。

2013年11月3日日曜日

伊藤 綾子 (著) 「うちのタマ知りませんか?」

伊藤 綾子 (著) 「うちのタマ知りませんか? [単行本]」(角川書店(角川グループパブリッシング)、2012/11/30)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041103371/>

単行本: 246ページ; 出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012/11/30); 言語 日本語; ISBN-10: 4041103371; ISBN-13: 978-4041103371; 発売日: 2012/11/30
[書評] ★★★★☆

 TVキャスター、伊藤綾子さんの小説家デビュー作。ラジオ番組(Podcastにもなっている)の『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』で昨年末に紹介されていたのだが、“積読”になっていたものを漸く読んだという訳だ。
 さて、本書について。一言で言って「良い作品だ」と思う。4本のショートストーリーからなる小説だが、家を出た子猫タマが、それぞれの作品を繋いでいる。一種の多視点的作品にもなっている。全体としての構成もよく出来ていると思う。
 バブル期へと向かう1980年代の日本を振り返りながら、平成不況長引く現代日本における家族といったもの焦点を当てている辺りに、これらの時代を体験した者として共感を感じる(著者の伊藤さんの実体験も多く含まれるのだと思います)。また、心理描写が非常に繊細で、ドキリとさせられたりしつつも、優しい気持ちになれる(気がする)。

 伊藤さんの次回作、急かすのもナンなので、のんびりと、待ちたいですね。

2013年10月31日木曜日

中沢 啓治 (著)「はだしのゲン 1 非国民じゃないぞ編」「はだしのゲン 2 ピカドン地獄編」 (コミック)

 

中沢 啓治 (著)「はだしのゲン 1 非国民じゃないぞ編 (SHUEISHA JUMP REMIX)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4081090084/>
ムック: 532ページ; 出版社: 集英社 (2005/7/16); ISBN-10: 4081090084; ISBN-13: 978-4081090082; 発売日: 2005/07/21(第1刷)、2013/09/18 (第8刷)

中沢 啓治 (著)「はだしのゲン 2 ピカドン地獄編 (SHUEISHA JUMP REMIX)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4081090181/>
ムック: 548ページ; 出版社: 集英社 (2005/8/1); ISBN-10: 4081090181; ISBN-13: 978-4081090181; 発売日: 2005/08/06(第1刷)、2013/09/18 (第7刷)

世界唯一の原爆被爆国である日本の忘れてはいけない作品。帝国軍人が戦地で行った残虐行為の記述など、問題とされた箇所は削除されているが、概ね原作のままとなっている(アインシュタインが原爆開発に参加している等、事実と異なる記述も残っているが)。

今年の夏に閲覧制限のニュースが出て話題になった後に再度発売されるなどあざとい売り方ではあるが…。

2013年10月12日土曜日

ポール・キメイジ「ラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランス」


ポール・キメイジ (著), 大坪 真子 (翻訳)
「ラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランス」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4915841863/>
単行本: 348ページ; 出版社: 未知谷 (1999/05); ISBN-10: 4915841863; ISBN-13: 978-4915841866; 発売日: 1999/05
[書評] ★★★★☆

昨年、自転車界は大いに揺れた。ツール・ド・フランスを1999~2005年7連覇したランス・アームストロングが、ドーピング問題により、後に98年8月以降の記録を取り消され、自転車競技会からの永久追放処分となったのだ。これについては、タイラー・ハミルトンによる“あの本”に詳しい。ハミルトンの本も早速購入したのだが、ドーピング問題の根深さ、今と昔を見るために、ハミルトンの本より先に本書を読んだ、というわけだ。

さて、本書の著者についての簡単な説明。本書の奥付より引用:
  • 本書の著者、ポール・キメイジ(Paul Kimmage)は1962年ダブリン生まれ、父もアイルランド代表となった自転車競技選手。10歳でレース用自転車を与えられるとメキメキ頭角を現わし、'81年アイルランドチャンプとなりアマチュア生活に入る。'84年渡仏、'85年プロデビュー、翌'86年ツールを走り完走。選手として走る傍ら、レース日記を各紙に発表。'89ツールを第12ステージでリタイアし、そのまま選手生活にも別れを告げ、スポーツライター、ジャーナリストとして再出発し、現在に到る。引退の翌'90年本書を発表。薬物に関する告白等あまりのインパクトに当時は本書自体がタブー視され絶版となる。昨今のドーピング問題の表面化に伴い、早過ぎた本書が'98年に再刊され、話題を呼んでいる。
◆国内トップ選手→プロになってもただのアシスト選手、という悲哀

ツール・ド・フランス。世界中のトップ選手が集まり、世界最高峰のレースを見せる。20ほどのチーム、全部で200人前後の選手がスタートをする(出場チームの数や1チームの人数は時々変わる)。世界中の数億人のファンが見ているとも言われ、オリンピックやワールドカップに並ぶ、世界のスポーツの祭典である。

しかし、その中で脚光を浴びるのは、ごく一部の選手だけだ。アマチュア時代に国内トップだった選手が、世界をステージにした途端、末端の選手になってしまう。

プロになった瞬間、チームに貢献することを求められ、多くの場合、チームの最有力選手(エース)を勝たせる為に働くことを要求される。彼らは、エース選手のペースメーカーになり、風除けになり、水や食糧を運搬する係となる。エース選手がパンクした場合にはタイヤを譲ることさえある。しかし、こうした姿は放送されることは殆ど無いし、そういった知られざる選手が出場選手の大部分なのだ。

トップ選手も同様だが、アシストの選手にも、体調が良い日もあるし、悪い日もある。来年もプロとして飯を食う為に、大きなレースでチームに貢献する必要があるし、大きなレースへの出場枠を取る為に、小さなレースでも良い成績を残す必要がある。

※プロになった意識、渡欧した際の心情、グランツールに出た感激、1アシスト選手としての悲哀については、近代ツール・ド・フランスに日本人として初出場した今中大介さんによる、「ツールへの道」(未知谷、2000/06)にも詳しい。

◆薬物について

著者キメイジは、子供の頃からの躾によるものか、宗教観によるものか、それとも善悪に対する独自の判断基準からか、とにかく薬物というものに対して強い拒絶を示していた。プロになった当初から色々な薬品を使っている選手は目にしたが、自分だけは絶対に手を出さない、と決めていた。「プロとしてどうか?」という観点からは色々な意見があろうが、「善人であろうとする1人の人間」として見ると共感出来る。最初はビタミン剤など、ごく普通のサプリメントにまで拒絶感を示した位である。

そのうち、経口摂取するビタミン剤などは摂るようになるのだが、注射に対しては、薬物については勿論、ビタミン・ミネラルの類であっても強い嫌悪感を抱いていたことを書いている。これは著者が無知であったことを示すものでもあるが、本人なりに「越えてはいけない一線」を持っていたことは確かだろう。

なお、著者キメイジは、'87ツールをリタイアした後、この「一線」を越えてしまった経験についても書いている。クリテリウムに出場する際にアンフェタミンを4回使用した(そして、その後は全く使っていない)とのこと。アンフェタミンを使用した際の昂揚感、走る上での「効果」、その後の罪悪感。

◆そもそも、自転車競技で何故、ドーピング問題がこうも度々噴出するのか。

理由を挙げればそれこそキリが無いのだろうが:
  • そもそも、自転車レース自体が過酷すぎて、多くの選手にとって、薬物無しでは「やってられない」。
  • 上手に使えば薬物の使用は発覚しにくい:
     薬物を使うタイミングや量もそうだが、日々のレースの勝者と総合成績上位者以外に対するランダム検査が無い日が事前に明らかになってしまっている。エースを勝たせる為のレースをしているので、アシスト選手がよりよい働きを見せる為に薬物を使用しても(チームの外へは)発覚しにくい。また、ホルモン剤など、用法・容量を間違えると悲劇的な結末を招くものであっても、白黒の判定をつけにくい(判定しにくい)薬物があったり、カフェインのように“適量”ゾーンが非常にグレーな物もある。
  • 自転車競技(ロードレース)がチームレースであり、単純な1対1の勝負でなく、色々な駆け引きがあり、勝負の流れが非常に複雑である:
     レースでの最大目的はチームのエースを勝たせることであるが、アシスト選手の力が不十分な時などには、賞金の分け前を餌に、他チームの選手と取引することもある。このことが、ロードレースを、単純なスポーツから複雑なものにしている。そして、選手は「カネ」の為に、身を粉にして働き、場合によって薬物にも手を出すのである。
  • チーム内に薬物使用に対して寛容な雰囲気がある場合、エースを助ける為にアシストが薬物を使うことを半ば強要するような空気が起きることがある。
  • レース主催者、当事者(選手・監督・レース関係者)、スポンサー等のカネの流れがある:
     レースが純粋なスポーツの最高峰であるという側面よりも、ビジネスの側面が強いということ。つまり、そこにカネが動く限り、内側の人たち(チームスタッフ、スポンサー、レース主催者)はドーピングを隠蔽する構造になっているということ。
さて。

薬物使用について、表向きは、
  • ドーピングは短期から長期に及ぶ副作用が選手の心身に悪影響を与えることが知られていて、単に競技の公平性を担保する目的のみならず、競技者等の安全も目的として禁止されている。
ということになっている。しかし、実態は、
  • 選手は競馬馬、あるいはサーカスで曲芸をやらされる動物のような存在(つまり見世物)であり、スポーツというより寧ろショービジネスとなっている

と言えるのではないだろうか。この辺りの構造を根本的に変えない限り、ドーピング問題は決して無くならないだろう。

なお、特記しておくべき点がある。ツール・ド・フランス(を始めとするUCI公認レース)では、今でこそ、禁止薬物の仕様が発覚した場合には半年~1年のレース参加禁止、最悪の場合は自転車競技界から追放となっているが、80年代半ばまでのツール・ド・フランス(を始めとする自転車競技)でのペナルティは総合タイムへの加算程度であった。こういった過去の経緯も、当事者(特に選手を卒業してレース関係者となった人たち)の意識の低さの原因ともなっていよう。

◆本書が発表当時叩かれた理由

本書は、誰がクロで誰はシロと、ハッキリとは書いていない。自分が「一線を超えた」経験は書いているが、他人については特定しない書き方をしている。ただ、筆者が所属していたプロチーム・RMOは薬物使用に対して拒絶的ではないことが分かるし、他チームも含め、多くの選手が薬物使用の現実を知っていたことを書いている。

自転車選手全てが薬物を使用したとは書いていない。しかし、薬物を使用していた側から見れば、そう読めるのかも知れない。

また、自転車界(主催者・選手・レース関係者・スポンサー、他)は業界がダメージを被ると判断し、叩いたのかも知れない。

いずれも、外側のさらに外側の素人が見た主観に過ぎないが。

◆その他、雑感など

今でこそ有名選手がTwitterやブログで日々のトレーニングの状況、参戦状況などを「実況」してくれているが、本書は(特にツール・ド・フランスに関するくだりは)日記調で書かれており、生々しい話が読める。文章も読み易く、ファンとしては嬉しい限り。

ところで、著者キメイジは、当時から一部のチームでは当然のように行なわれていた組織によるケアや科学的なトレーニングをあまりしていないように読める。そのような選手が(エースにはなれなかったとしても)、22歳で渡仏した翌年から5シーズンにわたりプロ生活を送ることが送ることが出来た、というのは驚異に値すると思う。

あと、これだけ薬物が蔓延している(ように読める)のを知ってしまうと、自転車レースの観戦が面白くなくなってしまうのも事実だろう。1日、絶不調で走っていた選手が、翌日絶好調でステージ優勝してしまう様子など、放送当時は「奇跡的なパフォーマンス!」と感激してTV観戦していた(私も随分子供だったと思う)、本書を読んだ後にそういう映像作品を見ると、「コイツ、ヤッてるんじゃねぇか?」と疑いの目で見るようになってしまう。

そういう見方しか出来なくなったら、素直に「楽しくない」よね。そういう疑惑を向けられた選手と同じブランドの自転車に「乗りたくない」よね(10年位前はサイクリングをしているとそこら中で見られた「TREK」社製ロードバイク、最近は全然目にしなくなりました)。翌シーズンの自転車レースもTV観戦しなくなるかも知れない。自転車雑誌も読まなくなるかも知れない。

憧れていた選手が、もしサーカスの象や火の輪くぐりをするトラたちと同じ存在だとしたら? 100年の恋(?)憧れ(?)も醒めるよね。同じように走りたいと思わなくなるよね(まぁ実力的には「同じ走り」はまず無理なんですけど、格好だけでも同じように走りたいというのがファンの心情でしょう)

まぁ自分の場合、(年齢的なものもあって)「競技」としての自転車ではなく、「楽しみ」としてのサイクリングは当分続けますよ。でも、新しハードウェアとかを買う意欲は、正直、ダダ堕ちですね。

こうやってファンが離れて行くんだなあ。。

2013年10月7日月曜日

海堂 尊(著)「死因不明社会―Aiが拓く新しい医療」



海堂 尊(著)
「死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (講談社ブルーバックス)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062575787/>
新書: 280ページ, 出版社: 講談社 (2007/11/21), ISBN-10: 4062575787, ISBN-13: 978-4062575782, 発売日: 2007/11/21
[書評] ★★★☆☆

現役の医師であり小説家でもある海堂尊氏が、

  • 日本では死者の解剖が少ない…日本における死者の解剖率は2パーセント台、残り98パーセントは体表から見た検案だけで死亡診断書が書かれている。また、変死体についても解剖率がわずか9パーセントにすぎない

ということを問題視して著した作品。解剖が少ないということは、

  • 死者の本当の死因がわからないままのことが多い
  • 事故・事件による死亡が隠蔽される可能性がある
  • 医学の発展にとっても良いことが無い

という観点から書いている。

本書は、ノン・フィクションとしては珍しく、筆者のヒット作「チーム・バチスタの栄光」(単行本文庫・上文庫・下)やその後のシリーズ作に登場する架空の人物、厚労省官僚の白鳥圭輔室長(架空の人物)に対して、ジャーナリストがインタビューを行っている、というカタチで解説を行なっている。

少々乱暴ではあるが、本書の要旨を1文でまとめると、

  • 全ての死者について、(解剖実施の有無にかかわらず)画像診断を行いなさい!

ということに尽きると思う。画像診断とは、X線やMRIによるCTスキャンを指すが、これを行なうことによって、

  • 解剖の要否が判断できる
  • 体表から見た検案だけでは見逃してしまうような死因が解る
  • 事故・事件等の死亡を明らかにすることが出来る
  • 情報の蓄積により、医学の発展にも寄与する

というメリットがあるという。

本書では、オートプシー・イメージング(Ai)という概念/手法を提案している。すなわち、全ての死者に対して、まず画像診断を行い、その結果から必要に応じて解剖による診断を行なうという手順だ。解剖が必要と判断された場合には、解剖の必要性について、遺族への説明もし易いとのこと。

しかし、医学の発展等に寄与するとは言っても、遺族にとっては出来れば遺体は切り刻まれたくない、というのが実際の心情であろう。

本書は、解り易い解説で、Aiの必要性について説く。医学の発展云々は、医療現場の当事者にとっては願いであり、本書での主張も理解できる。しかし、Aiにより解剖が必要と判断された場合について、本当に遺族が解剖の実施を受け容れるか? 説得力が不十分ではないか? その辺り、ちょっと疑問も残る感は否めない。

2013年9月27日金曜日

西尾維新 「物語」シリーズ (再読)

西尾維新 「物語」シリーズ (再読)


[シリーズ書評] ★★★★☆

フィクションを再読することは少ないのですが、本シリーズは「モヤモヤ」が多すぎたので再読(前回のレビューはこちら)こんなコトしているから、暫くの間、新しい書評が書けなかったんですけどね(笑)

前回のレビューと結構違うこと書いてしまっているかも知れませんが:

再読して改めて思いました。このシリーズ、面白すぎです(本もTVシリーズも)。ただし、中毒性の高い毒物だとも思います。本シリーズの中で、何度も、怪異と関わると怪異に曳かれるといった旨のことが書かれているが、これは読者にも言えそうです。あまり何度も読むべきものでは無いような気がしています。

  • シリーズを通しての伏線(明示されたものも、そうでないものも)が凄く多いです。再読してみて、やっと見えた繋がりも多々あります。シリーズ14冊までに回収されていない伏線もありますが、まぁ回収し切れなくても面白いのでアリかと。
  • 各巻が時系列順に書かれている訳ではないので、再読すると、色々と繋がって来ます。私の読み方(と記憶力)が甘いだけなのかも知れませんが:「暦物語」までの登場人物で存在(設定)が“謎”の人物が複数人出て来ていますが、2回読むと、これらの人物がどのような存在なのかある程度予想が出来ますし、予想しながら読むと味わいもまた違うような気がします。
  • 内容が内容だけに、クッション材としての言葉遊び・エロ要素が多くなってしまうのは、ある意味仕方無いかも知れません(主人公の設定年齢=高校生位って、実際にオフザケと妄想に満ちていますしね)。そもそも、怪異というものが人の心の闇を映したものなので、軽いネタで適度に希釈してくれないと、重過ぎて読めたものではないかも知れません。本シリーズでも、阿良々木暦以外の登場人物が語り部になっている巻では話が重いものが多いですよね(語り部が貝木泥舟の時は、重いというよりも深い台詞が多いですけど)
なお、未刊の「終物語」は“分厚すぎにつき分冊決定”とのこと(上巻=2013/10/下旬、下巻=2013年内)。これまでの流れから、扇ちゃん?扇くん?がドーンと出てくることが予想されますが、どんなストーリーと結末が待っていることでしょうか。発売までの1ヵ月が長いです。

そして、「終物語」の続編として予告されている「続終物語」はどうなることやら…ですね。


①西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(上) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/11/1)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836025/>

②西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(下) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/12/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836076/>

③西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傷物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2008/5/8)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/>

④西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(上) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2008/9/2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836793/>

⑤西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(下) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2009/6/11)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837021/>

⑥西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (黒) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/7/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/406283748X/>

◆セカンド・シーズン

⑦西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (白) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/10/27)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837587/>

⑧西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傾物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/12/25)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837676/>

⑨西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「花物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/3/30)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837714/>

⑩西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「囮物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/6/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837765/>

⑪西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「鬼物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/9/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837811/>

⑫西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「恋物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/12/21)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837927/>

◆ファイナル・シーズン

⑬西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「憑物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2012/9/27) 
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838125/>

⑭西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「暦物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2013/05)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838370/>

⑮「終物語(上)」→未刊 (2013/10/下旬発売予定)
⑯「終物語(下)」→未刊 (2013年内発売予定)
⑰「続終物語」→未刊

2013年8月26日月曜日

川西蘭「あねチャリ」

川西 蘭 (著)
「あねチャリ (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/409386263X/>
単行本: 258ページ; 出版社: 小学館 (2009/11/30); ISBN-10: 409386263X; ISBN-13: 978-4093862639; 発売日: 2009/11/30
[書評] ★★★★☆
 話の展開がチョット強引というか、荒唐無稽というか、 そういうものは感じるんだけど。 でもテンポ良く読ませる。 いいね。

2013年8月25日日曜日

川西蘭「セカンドウィンド(3)」

川西 蘭 (著)
「セカンドウィンド 3 [単行本]」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4093862753/>
単行本: 445ページ; 出版社: 小学館 (2010/6/30); 言語 日本語; ISBN-10: 4093862753; ISBN-13: 978-4093862752; 発売日: 2010/6/30
[書評] ★★★★☆
 「セカンドウィンド」「セカンドウィンド2」の続編。 文庫版はまだ出ていないので、待ちきれずに単行本を購入してしまった。

 主人公・溝口洋が南雲学院高校で新3年生に進学し、 自転車部のキャプテンになった。 前々作・前作に続き、爽やかに読める1冊。

2013年8月24日土曜日

川西蘭「セカンドウィンド(2)」

川西 蘭 (著)
「セカンドウィンド (2) (ピュアフル文庫) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4861765145/>
文庫: 420ページ; 出版社: ジャイブ (2009/1/10); ISBN-10: 4861765145; ISBN-13: 978-4861765148; 発売日: 2009/1/10
[書評] ★★★☆☆
 前作の続編で、前作同様、爽やかな読後感。 テンポも良い。
 サイクルスポーツに興味のある人は読んでみて良いだろう。 ただ、自転車競技(に限らず全てのスポーツ)に存在するダークな面が 殆ど書かれていない点が浅薄に感じられる。 主人公は高校生なので、あまりダークなことを書くのもどうかとは思うが、 もう少し深みのある書き方でも良いかも知れない。 …って、ただの青春スポーツ小説に多くを求めすぎか?
 なにはともあれ、気楽に読める1冊として良い。

2013年8月23日金曜日

川西蘭「セカンドウィンド(1)」

川西 蘭 (著)
「セカンドウィンド 1 (1) (ピュアフル文庫 か 2-2) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/486176453X>
文庫: 418ページ; 出版社: ジャイブ (2007/11); ISBN-10: 486176453X; ISBN-13: 978-4861764530; 発売日: 2007/11
[書評] ★★★☆☆
爽やかな青春小説。 自転車に夢中な少年が、その道にどんどん入って行く過程を描いている。 少々厚めの本だが(文庫本で400ページくらい)、 テンポ良くあっという間に読める。 同じ自転車小説でも、近藤史恵・著「サクリファイス」や 斎藤純・著「銀輪の覇者」とは異なり、 スポーツの暗い面があまり出てこないのが爽やかでもあり、 (ツール・ド・フランス等でののドーピングスキャンダルを知っている 読者にとっては)若干物足りなくも感じる面も否めないが、 まぁ青春小説ということで、コレはコレで良いのだろう。

2013年8月21日水曜日

高千穂遥「ヒルクライマー」

高千穂 遙 (著)
「ヒルクライマー (単行本)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4093862478/>
単行本: 288ページ; 出版社: 小学館 (2009/7/23); ISBN-10: 4093862478; ISBN-13: 978-4093862479; 発売日: 2009/7/23
[書評] ★★☆☆☆
 ソレナリに面白いんだけど、んー、何かね。 登場人物のドロドロした人間模様の描き方がチョットいただけない。 売れっ子作家が売れる本にしようとして、こんなストーリーにしたのかも知らんがねえ。チョット安易すぎねーか?

2013年8月20日火曜日

斎藤純「銀輪の覇者」(上・下)

 
斎藤 純 (著)
「銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1) (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150308993>
文庫: 346ページ; 出版社: 早川書房 (2007/8/25); ISBN-10: 4150308993; ISBN-13: 978-4150308995; 発売日: 2007/8/25
斎藤 純 (著)
「銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2) (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2) (文庫)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150309000>
文庫: 395ページ; 出版社: 早川書房 (2007/8/25); ISBN-10: 4150309000; ISBN-13: 978-4150309008; 発売日: 2007/8/25
[書評] ★★☆☆☆
 昭和初期に自転車プロレースが行われたという設定での物語。 胡散臭い人たちが一攫千金を狙ってレースに出場するが、 自転車レースの心得のある人はごく一握り、あとはロクでもない連中ばかり。 主催者側も、帝国軍に自転車を採用してもらうための活動としてレースを利用。そんなレースで、自転車はいわゆる「実用車」。さて、レースの展開は…?
 後半のテンポの良さは良いが、 前半は登場人物の正体やレースに出た背景もよくわからないまま、メインストーリーの間で所々に背景説明のストーリーが挿入される。
 筆者の斎藤氏は自転車レースの経験が無いばかりか、 自転車で長距離を走ったことも無さそうだ。 舞台設定にチョット無理があるのと、登場人物の胡散臭さ・非現実性に加え、 自転車に乗っている人たちの描写にもリアリティに欠けるものを感じてしまう。 人間物語として読めば、まぁそれなりに面白くはあるのだが。。。

2013年8月17日土曜日

米澤信穂 「古典部」シリーズ

米澤信穂「古典部」シリーズ

[シリーズ書評] ★★★★★

人気小説が2012年にアニメ化・TV放送され、人気がさらに上昇した作品。(そう言えばアニメ「氷菓」の制作は「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」と同じ京都アニメーションだったな。) こちらは、涼宮ハルヒシリーズのような「ありえない話」ではなく、高校生の部活(古典部)を中心とした生活を緻密に描きつつ、ミステリー的要素も交え、淡いラブストーリー的要素も入った作品。

ありそうな話中心で(作者も事実を元に創作していると明言している)、ライトノベルと言われる中では地味めの作品。とはいえ、
 ・主人公(メインの語り部)は省エネ主義の平凡(だと思っている)な男子高校生
 ・振り回され系
 ・主要な登場人物の多くは個性的な女性(ハーレム系という訳ではないが)
といったラブコメ的要素はそれなりに押さえている。健全な高校生活と微妙な男女関係を中心に描いており、派手ではないが、充分読ませる良作だと思う。

多くのライトノベルのような「ブッ飛んだ設定」でなく、安心して読める良作。

①米澤 穂信 (著), 上杉 久代 (イラスト), 清水 厚 (写真) 「氷菓 (角川文庫) [文庫]」(角川書店/角川グループパブリッシング、2001/10/31)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4044271011/>

主人公・折木奉太郎が高校入学後、省エネをモットーとしているにも拘わらず、古典部に入るに至ってしまった経緯と、その古典部での活動(春~夏)を描く。古典部の部長・千反田えるの好奇心に奉太郎が振り回されて謎解きをしてしまう描写が微笑ましい。

②米澤 穂信 (著), 高野 音彦 (イラスト), 清水 厚 (写真) 「愚者のエンドロール (角川文庫) [文庫]」(角川書店/角川グループパブリッシング、2002/7/31)
<http://www.amazon.co.jp/dp/404427102X/>

高校の1学年上のクラス、2-Fの自主映画の製作が頓挫してしまった。謎解き(犯人当て)の形をとって、何故か古典部の面々が探偵役?を押しつけられてしまう。撮影の終った分と合わせて矛盾の無い展開として、奉太郎の案が採用されるが…?

明記はされていないが、奉太郎が振り回されている影に、今回も奉太郎の姉・供恵の暗躍があるようだ。。。

③米澤 穂信 (著) 「クドリャフカの順番 (角川文庫) [文庫]」(角川書店/角川グループパブリッシング、2008/5/24)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4044271038/>

本作は学園祭という舞台で登場人物が色々な場所・立場から語り部となる多視点形式となっている。他人から見た自分と自分自身の認識とのズレ、気持ちの違い等が上手く書かれている。前2作を読んだ後じゃないと、この認識のズレはわかりにくいかも知れないが、語り部が代わることによって色々な視点から物語を追うことが出来るのは面白い。

◇米澤 穂信 (著) 「連峰は晴れているか」(単行本未収録、氷菓のBD第9巻付録)(角川書店、非売品/DVD発売日: 2013/02/22)
(BD:<http://www.amazon.co.jp/dp/B007RC1LQ6/>)

単行本になっていない話。奉太郎にしては珍しく、他人の為でなく、自分の疑問を解決するために動く。

④米澤 穂信 (著) 「遠まわりする雛 (角川文庫) [文庫]」(角川書店/角川グループパブリッシング、2010/7/24)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4044271046/>

高校1年生の時の古典部の活動?の零れ話、バレンタインデーでの顛末、高1~2の春休みに行なわれた「生き雛祭」を題材とした話。

奉太郎の親友・福部里志と、彼を追って古典部に入部した伊原麻耶花の、なかなか実らないラブストーリーが(里志が麻耶花を受け容れてしまって良いのか迷っている)、高校生らしくて好感が持てる。

本作のラスト「遠まわりする雛」では、奉太郎がえるに対して好感を持っていることを自覚するが、里志と同じように、自分の思いに迷いが残っていることも自覚する。(アニメ版では「11.5話 持つべきものは」(高1の夏休み後半?の話)で、えるが奉太郎への告白とも取れる発言(!)をしているが、これは原作には無いストーリーのようだ/詳細未確認。)

自分は高校の頃はここまで自分の将来を決めるということは無かったけど(大学に行ってから考えればいいや…みたいな)、自分の高校のクラスメイトの中に、高校在学中から将来像を明確に決めている人もいたので、こういう展開にも納得は出来る。

⑤米澤 穂信 (著) 「ふたりの距離の概算 (角川文庫) [文庫]」(角川書店/角川グループパブリッシング、2012/6/22)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041003253/>
主人公・折木奉太郎をはじめとする古典部のメンバー4人が2年生に進級し、
古典部の新入生勧誘活動から舞台は始まる。
最初、「“ふたり”とは誰か?」とドキッとしたが。。。そんなに安易なものではなかった。

今後の展開を期待させる良作。

2013年8月16日金曜日

西尾維新 「物語」シリーズ

西尾維新「物語」シリーズ

[シリーズ書評] ★★★☆☆

人気作家が「100%趣味で書いた」本。作家御自身が本気で楽しみながら書いたことがよく伝わる本。設定やストーリー展開がよく練られていることも勿論あるだろうが、この「本気で楽しみながら作ったこと」が読者に伝わって来るのが、本シリーズの爆発的人気の根本にあると思う。TVアニメ化されるのも頷ける作品(現在「セカンド・シーズン」放映中)。

色々と「やり過ぎ」な感じもあり、ハードルがちょっとだけ高い作品かも知れないが、ソコがクリア出来る人にとっては面白い作品だと思う。

まず、古くから使われているラブコメものの基本をキッチリ押さえている。
  • 主人公は地味目の少年:厨二病気質で友達が殆どおらず、心が弱い(自分自身が怪異モドキになった後は、スイッチが入ると強くなることもあるが)。
  • 巻き込まれ系:物語のスタートは、主人公が自分の責任でない事件に巻き込まれることで始まる(その後の方向性を選択したのは主人公自身なのだが)。
  • ハーレム構成:主人公(少年)以外の登場人物の多くは美少女で、彼女らは皆、主人公に対して好意的な感情を持つに至る。
  • エロ要素:基本的に本筋と直接関係の無い所で必要以上にエロを強調されている気もするが、客引き効果は充分か。中高生が読んで良いギリギリのレベル…をちょっと超えているような気もするが。
  • 多くのタイプの萌え少女:ツンデレやらロリやら委員長タイプやら色々出てきます。全員に共通しているのは性格が極端であること(現実世界にいたら「痛い」人たちではある)。
先に書いた「ハードルの高さ」だが、具体的には以下についてである:
  • グロいシーンが時々出てくる:妖怪変化とのバトルシーン(アニメでは映像化に問題ありそうな箇所は単色画面+文字+音声だけ、となっているが)。
  • 精神的なエグさも多い:本シリーズに出てくる「怪異」の起源の多くは、人の心に宿る闇だ。登場人物の多くは、心に闇を持っている人、心に狂気を宿している人だ。耐え難いストレスや狂おしいほどの嫉妬心がバンバン出てくる。
あと、気になる点がいくつかある
  • 言葉遊びや他の作品からのネタが多すぎて、ちょっと(否、カナリ)しつこい(作者が古い文学作品から漫画、アニメ、近年のサブカルチャーまで幅広く押さえていることはよく解るのだが)。特に登場人物間のボケ・ツッコミが…。
  • 主人公エロ過ぎ。ちょっとしつこい感じアリ。というか、中高生のエロに対するハードルってこんな低くて良いのか?と心配になるレベル。

①西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(上) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/11/1)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836025/>
②西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「化物語(下) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2006/12/4)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836076/>

怪異と出会い、自身が怪異化してしまった主人公・阿良々木暦が、高3のGW明けに出会った別の怪異の話。

③西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傷物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2008/5/8)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836637/>

主人公・阿良々木暦の高校2年-3年の間の春休みに起こった怪異現象を書いた本。阿良々木暦が初めて怪異と出会った経緯を描き、時系列的には本シリーズのとっかかりとなる部分。シリーズ中の重要人物・羽川翼のが果たした役目も書かれており、本シリーズの後の方を読む上でもキーとなる本だと思う。

④西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(上) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2008/9/2)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062836793/>
⑤西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「偽物語(下) (講談社BOX) [単行本]」(講談社、2009/6/11)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837021/>

阿良々木暦の2人の妹、火憐と月火に関する物語。なんだ、暦くん、家族で1人だけ怪異に出会っていた訳じゃなかったのね、みたいな。

⑥西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (黒) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/7/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/406283748X/>

本作ではクラスの委員長・羽川翼に関する物語。高3のGWに起こった怪異現象の話。時系列的には「化物語(上・下)」の直前の話。

◆セカンド・シーズン

⑦西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「猫物語 (白) (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/10/27)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837587/>

本作の主人公は再度羽川翼。だが、猫物語(黒)と対になっているように見えて、違っていたりする。

時期は高3の2学期の始め頃で、語り部も羽川翼になっている(本シリーズのこれまでの語り部は阿良々木暦)。阿良々木暦が語り部をやっている時に特徴的な無意味に冗長な言葉遊びが無い分、テンポ感が良い。阿良々木暦と異なる世界観、認識で書かれてるのが面白い。

それにしても。猫言葉(?)、すげー読みにくいです。ストーリーが面白くなければ途中で放り出していたかも。

⑧西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「傾物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2010/12/25)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837676/>

本書のイントロとラストのヒロインは、(“こちら”の世界では蝸牛の怪異であるところの)八九寺真宵。タイムトラベル、パラレル・ワールド(異世界)が出てくる。ノリとしては「涼宮ハルヒの分裂」「驚愕(前・後)」に近いか。

⑨西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「花物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/3/30)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837714/>

本作の語り部は、シリーズの主人公・阿良々木暦の1年後輩のスポーツ少女、神原駿河。最初は「猫物語(白)」に続いて語り部を変えてきただけかと思っていたが、そうではなかった。よく考えると、神原駿河の母親は怪異に因縁浅からぬ人であったし、駿河自身が母親の形見として怪異を受け継いだ人だったよな。

ちなみにこの本は、精神的に疲れている時には読むべきではないかも知れない。シリーズ中、心の闇を最も深く書いた本だからだ。読者の元気を「エナジードレイン」してしまう本と言えるかも知れない。最後まで読めばちゃんとオチはつくのだが。

⑩西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「囮物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/6/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837765/>

本作の語り部は、シリーズ主人公・阿良々木暦の下の妹・月火の元同級生、千石撫子(中学2年生)。自分を変える為の努力をしない(ある意味ダメダメな)少女が、日常押し隠している気持ち、抑え込んだ感情が溜まりにたまり、これに嫉妬が加わって狂気となり、怪異と関わってしまうという話。

思春期に入ったけれど自己認識が子供のままの少女の魂の叫びが切ないというか、痛々しい。

本シリーズ、色々なことが起きていながらバッドエンドは少ないのだが、本書はその少ないバッドエンドの1つか?

⑪西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「鬼物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/9/29)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837811/>

蝸牛の怪異(迷い牛)・八九寺真宵が成仏を選ぶまでのドタバタを描いた話。それまでの経緯を説明する上で、吸血鬼(の成れの果て)・忍野忍の過去の話が出てくる。結局、忍は自分たちに迫っていた現象(怪異、ではないらしい)についてよく解っていなかったのだが。
忍にもよく解っていなかった事情を、神原駿河の叔母・臥煙伊豆湖(怪異がらみのエキスパート)が出てきて全部説明しちゃうあたり、ちょっと御都合主義的な感じがしないでもないが、それなりに楽しめる。

八九寺真宵が成仏を選ぶくだりは泣かせる。

最後に、忍野扇(阿良々木暦と同じ高校の1年生)が時系列的におかしなことを言いまくっている。何かの伏線か?

⑫西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「恋物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2011/12/21)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062837927/>

「囮物語」のオチのような話。

詐欺師・貝木泥舟が今回の語り部であり、メインアクトでもある。嘘をつき、人を騙すことを生業?としている貝木の語りが面白い。語り部が高校生ではなく、30代(という設定)のキャラが語ることは、含蓄のある台詞が多くて面白い。

貝木がキッカケとなった戦場ヶ原家の崩壊だが(娘・ひたぎは、本シリーズの主人公・阿良々木暦の恋人)、考えようによっては、貝木が戦場ヶ原家(の特に娘)の為に行なったのではないかと思える記述あり。貝木は“嘘吐き”だから自分の“本心”は語っていないので何とも言えないが、貝木がひたぎに好意を持ち、彼女を家庭崩壊から(理想的でないにせよ)かなり妥当な形で救った、と見ることも出来る(ひたぎに対する貝木のラブ・ストーリーと捉えることも出来る)。

語り部・貝木泥舟の意図した形でのエンドは迎えていないが、結果としてはハッピーエンドだと言えるかもしれない。読んでいて、ちょっとホッとしたりして。

◆ファイナル・シーズン

⑬西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「憑物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2012/9/27) 
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838125/>

本書の副題は「よつぎドール」。怪異のスペシャリストで陰陽師・影縫余弦(かげぬい よづる)の憑喪神・斧乃木余接(おののき よつぎ)が活躍する。余接の、阿良々木暦との待ち合わせでの登場の仕方がシュール(ラストでの再登場の仕方もシュール)。ストーリー的には予定調和という感じなのだが、高校3年生の2月という受験生にとって非常に大切な時期に、シリーズの主人公・阿良々木暦の怪異化がさらに進んでしまう!

1年近く前に暦を吸血鬼から人間に戻すのを全力でサポートした忍野メメ(現在行方不明)の姪、忍野扇の現われ方とか、気になる伏線?が一杯。本シリーズもあと「暦物語」「終物語」「続終物語」で完結となる筈だが、この先どうなる? 気になって仕方が無い。

⑭西尾 維新 (著), VOFAN (イラスト) 「暦物語 (講談社BOX) [単行本(ソフトカバー)]」(講談社、2013/05)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838370/>

シリーズの主人公・阿良々木暦の高校3年生の春から大学受験(2次試験)当日までのショートストーリー集。基本的には、これまで大きな出来事を中心に構成されていたストーリーの間を縫う、小さな出来事や、そもそも出来事とも言えないような事、を中心に12話構成となっている。

にしても。このラストは「???」だ。暦は死んだのか? 再度目覚めた時に、成仏した筈の八九寺真宵がいたということは、暦も成仏したということなのか? バッドエンドどころじゃない、デッドエンドじゃないか! 「花物語」(阿良々木暦らが高校を無事卒業して大学に進学した後の話)と矛盾無く繋がる(であろう)ことを考えると、話はそう単純じゃないのだろうけど。

この辺り、続巻(未刊)の「終物語」「続終物語」で語られるのだろうか。非常に気になる。。。

※当初、ファイナルシーズンは「憑物語」「終物語」「続終物語」の3冊の予定だったが、「終物語」の前に「暦物語」が出てきた。作者曰く、「改めて阿良々木暦達が過ごした一年を振り返り、繋がりを確認してみたかったという作者的事情によるものです」とのこと。

⑮「終物語」→未刊
⑯「続終物語」→未刊

2013年8月15日木曜日

伏見つかさ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」(1~12巻)

①伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈1〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2008/8/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048671804/>

[シリーズ書評] ★★★☆☆ (12巻のみ ☆☆☆☆☆)

人気作品が最近完結したとのことで、試しに読んでみた。
 ・主人公は平凡な男子高校生(責任感はあるが、色々と鈍感)
 ・振り回され系
 ・ツンデレに始まる様々なキャラの美少女群(ハーレム系)
と、ラブコメ要素満載のドタバタ劇。また、最近でこそ市民権を得つつあるが、“オタク”と呼ばれる人たちの生態?についても比較的ポジティブに面白可笑しく書かれていて興味深い(オタクの自己肯定とも言えるかも知れないが)

設定に色々問題アルナーとか思ったが、まずは「めちゃ面白い!」だった。…でも、この結末はNGじゃね?

兄は、オタクな妹にオタク仲間を作ってあげたくて尽力する。暫くは良い話ダナ~です。この兄、最初は妹を見守る立場でオタク仲間と一緒に活動していたんだけど、価値判断の基準が狂った人たちと一緒に過ごしているうちに、自分自身の価値基準も狂ったようだ。結果的に、兄は妹に毒された(妹は妹で以前より悪化した)。しっかりしろ、18歳! 最終巻での展開(クリスマス~卒業式)は、完全にアウトだと思う。「売れる作品、面白い展開」を狙って、こういうストーリーにしたのだとは思うが、「こういう恋愛もアリ」なんて間違ったイメージを拡散しないで欲しい。

この2人に対する、幼馴染の『普通じゃないと思う。異常だと思う。たくさんの人が、気持ち悪いって感じると思う』が正常だと思うし、『その気持ちは、絶対に誰にも言っちゃだめだよ』は本当に正しいアドバイスだと思う。彼女が妹との対決の後に流した涙は、三角関係で自分が負けたことに対する涙じゃないんだよ。幼馴染2人を人として正しい道に戻せなかったことに対する悔悟の涙なんだよ。
でも、読者(&アニメ視聴者)のうちどれ位の人にそれが伝わるだろう?

あと、例えば、中学生がR18指定のゲームをしているなど、本来あってはならない状態がさも“日常”のように描かれていることも、そういったことに対して本来持つべき「イケナイ」「後ろめたい」といった感覚を麻痺させてしまうのではないか?

その他、危ないキーワードはガンガン出てくるし。今の御時世、小学生でもネットという年齢制限の緩い所で色々調べるよね。一部の子(子供以上大人未満)が道を誤るよ。人気作品(=世の中への影響が大きい)だからこその配慮が欲しいと思う。アニメ化・TV放送されちゃっているし。映像で色々な表現を無難な物に代えたとしても、TVから原作に入る人も少なくない筈なので、その辺の影響も考えて欲しいなぁ。と思う。

②伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2008/12/5)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048674269/>

③伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈3〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2009/4/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048677586/>

④伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈4〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2009/8/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048679341/>

⑤伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈5〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2010/1/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048682717/>

⑥伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈6〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2010/5/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048685384/>

⑦伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈7〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキー・メディアワークス、2010/11/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048700529/>

⑧伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈8〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2011/5/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048704869/>

⑨伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈9〉 (電撃文庫 ふ 8-14) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2011/9/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048708139/>

⑩伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈10〉 (電撃文庫) [文庫]」(アスキーメディアワークス、2012/4/10)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048865196/>

⑪伏見 つかさ (著), かんざき ひろ (イラスト)「俺の妹がこんなに可愛いわけがない (11) (電撃文庫) [文庫]」(アスキー・メディアワークス、2012/9/7)
<http://www.amazon.co.jp/dp/404886887X/>

⑫伏見 つかさ (著), かんざきひろ (イラスト) 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫) [文庫]」(アスキー・メディアワークス、2013/6/7)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4048916076/>