2013年12月21日土曜日

宮崎 駿 (著)「続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか」


宮崎 駿 (著)「続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか」
<http://www.amazon.co.jp/dp/486052117X/>
単行本: 324ページ
出版社: ロッキングオン (2013/11)
ISBN-10: 486052117X
ISBN-13: 978-4860521172
発売日: 2013/11

[書評] ★★★★★

前作「風の帰る場所」(単行本(2002)・文庫版(2013)、拙書評)の続編とも言える本。渋谷陽一氏による、2008年~2013年に行なわれた4回のインタビューと(雑誌「CUT」掲載)、富沢洋子氏によるインタビュー(1983年)、『アニメージュ』編集部によるインタビュー(1984年)からなる。

宮崎駿氏が、映画の構想・企画を非常に早いうちから持っていることは、前作をはじめとする他の本にも書いてある。が、どのような作品を作るかという情報はなかなか出てこなかった。しかし、本書の元となったインタビュー記事では、氏が引退作とした『風立ちぬ』へのヒントが至る所に書かれている。『崖の上のポニョ』インタビュー(2008)で、「海の中の次は空、地面を離れたい」と言っていたり(既に『紅の豚』(1992)で空を舞台とした作品を作っていたのに、改めて言っている)、『借りぐらしのアリエッティ』インタビュー(2010)で、次の映画の主人公は男、悲劇的な結末と言っていたり。

本書は、『風立ちぬ』に至るまで、宮崎氏がどのように映画作りをしてきたかが読み取れる本としても非常に興味深い。年齢も含めた肉体的・精神的限界(かなりヤバい状態)まで自分を追い詰めないと、そういった作品を作ることが出来ないことも語っている。『アリエッティ』の時には引退作の構想が出来ており、並々ならぬ覚悟で『風立ちぬ』の製作に取り組んだことが読みとれる。

『風立ちぬ』のインタビューでは、いわゆる“零戦神話”を払拭して、本当の物語(に近い虚構なのだが)を作ろうとしたことや、そのための苦労などを伺い知ることが出来る。インタビューの時期は、映画完成後で、引退宣言の直前だと思われるが、宮崎氏の“何かをやり遂げた”感が詰まっている。

本書では、宮崎氏の世の中の捉え方、時代の読み方、「今、多くの人に受け容れて貰える映画」とはどんな物か。宮崎氏自身の言葉として、これらを知ることの出来る貴重な本だと言える。

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本書はこれら2008~2013年のインタビューに続き、「『未来少年コナン』インタビュー」(“演出家・宮崎駿の誕生”、1983)、「長編監督デビュー以前総括インタビュー」(“宮崎駿はいかにしてできあがったのか”、1984)へと続く。『コナン』インタビューでは、どういった作品を作りたいかを語っており、多くの作品を経て『風立ちぬ』まで続く、氏の一貫した態度が分かり、興味深い。書籍「出発点」(Amazon拙書評)に書かれた内容の再掲だが、最近5年の宮崎駿氏に触れた後、氏の(文字通り)出発点となった話に遡って行く構成は、ちょっと巧いかも知れないと思った。

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