2014年12月27日土曜日

オリヴァー・サックス 「音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々」


オリヴァー・サックス  (著), 大田直子 (翻訳)「音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4150504148/>
文庫: 544ページ
出版社: 早川書房 (2014/8/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150504148
ISBN-13: 978-4150504144
発売日: 2014/8/22

[書評] ★★★★★

音楽が精神や肉体にもたらす様々な現象を書いた本。音楽幻聴、絶対音感、障害を持つ人に特異に見られる音楽の能力、音楽療法、…等々、興味深い話が多い。認知心理学的アプローチ、また脳神経学的アプローチから、人間と音楽の関わりについて述べている。とても面白い。

著者はニューヨーク大学医学部教授で、現役の脳神経科医。作家としても人気があるとのことだが、本書を読んで納得。

2014年を締め括るにあたって、良い本を読むことが出来た♪

2014年12月24日水曜日

海堂 尊 「極北ラプソディ」

海堂 尊(著)「極北ラプソディ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022647191/>
文庫: 416ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2013/10/8)
言語: 日本語
ISBN-10: 4022647191
ISBN-13: 978-4022647191
発売日: 2013/10/8

[書評] ★★★☆☆

「極北クレイマー」(Amazon:拙書評)の続編。市民病院という環境にやっと慣れた主人公(医師)が、また新しい環境に放り込まれる。主人公を取り巻くメンバーは、毎度の如く、魅力的なキャラクター揃い(身近にいて欲しくないタイプも含まれるが/笑)。『バチスタ』や『凱旋』に出てきた懐かしいメンバーにも再会でき、面白く読めた。

2014年12月20日土曜日

海堂尊 「極北クレイマー(上・下)」

 

海堂 尊(著)「極北クレイマー(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022645970/>
文庫: 248ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2011/3/4)
ISBN-10: 4022645970
ISBN-13: 978-4022645975
発売日: 2011/3/4

海堂 尊(著)「極北クレイマー(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4022645989/>
文庫: 240ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2011/3/4)
ISBN-10: 4022645989
ISBN-13: 978-4022645982
発売日: 2011/3/4

[書評] ★★★☆☆

財政破綻した地方自治体を舞台にした医療ミステリー(モデルは明らかに北海道・夕張市)。行き詰まった病院の辿る姿、体質の変わらない行政、…色々生々しすぎる。また、冬は雪に閉ざされる地方での医療のあるべき姿についても述べている。著者の「医療やそれを支える行政はかくあるべし」という主張が鮮明に書かれている。

主人公は、大学医局から市営病院に派遣された非常勤外科医。財政再建団体となった市で、医師としてジタバタする様子が書かれている。面白い。

2014年12月17日水曜日

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(上・下)」

 

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/479669854X/>
文庫: 284ページ
出版社: 宝島社 (2012/6/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 479669854X
ISBN-13: 978-4796698542
発売日: 2012/6/7

海堂 尊 「アリアドネの弾丸(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796698566/>
文庫: 287ページ
出版社: 宝島社 (2012/6/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4796698566
ISBN-13: 978-4796698566
発売日: 2012/6/7

[書評] ★★★☆☆

『チーム・バチスタの栄光』(Amazon拙書評)のシリーズ本。病院で殺人事件が起きた。医療事故とかではなく、被害者は新たに導入した設備の導入業者の担当者。『バチスタ』で活躍した田口医師と厚労省の白鳥氏が活躍する。

本書のストーリーでは医療と司法のアプローチの違いを語っているのだが、著者の司法に対する恨み?をも感じさせる。

それはともかく。『バチスタ』同様、スピーディーな展開で軽く読める(重い内容もあるが)。医療ミステリーとしては上位の部類に入ると思う。

2014年12月13日土曜日

中野 剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」


中野 剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4087207552/>
新書: 256ページ
出版社: 集英社 (2014/9/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087207552
ISBN-13: 978-4087207552
発売日: 2014/9/17

[書評] ★★★★☆

戦後、アメリカによる一極主義的な覇権体制が崩れ始めている。多極化する世界、特に東アジアにおいて、日本がどうすべきかについて書かれた本。東アジア・西欧・東欧・中東を中心とした世界のダイナミクスや、アメリカの世界制覇戦略の変遷、日本の取るべき方針について解り易く述べる。

本書のベースとなっているのは、米国国家情報会議が公表した報告書「グローバル・トレンド2030」(2012年12月)等の公式文書。これらの文書に書かれた予測の確実性はともかく、アメリカが世界をどのように見ているかについての信頼性は非常に高いと言えるだろう。

日本の自衛力はどうあるべきか、アメリカや東アジアの各国との関係において留意する点は何か、等々について、平和ボケした我々の目を覚ましてくれる本。多少タカ派とも言える意見が多く、また本書の結論として明確な出口戦略も見えない感は否めない。が、日本国民として知っておかなければならない内容が多いと思う。

良書。

2014年12月11日木曜日

日野 瑛太郎 「あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。」


日野 瑛太郎 「あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4492223347/>
単行本: 168ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2014/1/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492223347
ISBN-13: 978-4492223345
発売日: 2014/1/10

[書評] ★★★★★

ナカナカ刺激的な題名だ。会社員として「タブー」と言っても良い台詞が、そのままタイトルになっている。

従業員に仕事に「やりがい」を感じるように求めるのは、終身雇用制度が成立していた時代の遺物だ。だが、会社側にとって、「やりがい」は従業員に与えるには都合の良い飴だ。「やりがい」を餌に、給与(や残業代)に見合わない仕事を押しつけるのに利用されている。しかし、会社が、従業員の一生を保証できなくなった今、このような仕事のさせ方には問題があると本書では説く。

残業の定常化や残業代の不払いは、マネジメントによる不法行為だ。有給休暇が自由に取れないのは、仕事の計画の立て方が正しくないからだ。従業員に「経営者目線」を求めるのは、会社にとって都合の良い考え方を押し付けるのに等しい。

本書では、日本企業がどのように従業員を「社畜」化しているのかを解き明かすとともに、労働が本来あるべき姿を示す。すなわち、終身雇用制が崩れた現代日本における、新しい働き方の提案だ。会社と従業員は対等な関係にあるべきで、従業員も会社と対等に取引するために労働市場における自分の価値を高める努力を続ける必要があると述べる。

本書から引用したい箇所はたくさんあるが、一番衝撃的だったのは以下の項。
  • たとえば、サービス残業のような違法行為は明確な契約違反として対処すべきことです。「残業代を払ったら会社が潰れてしまう」と会社が言うのであれば、きっちりと残業代を払ってもらった上で、潰れてもらえばいいだけです。 (p. 148より)
自分がいかに「社畜」化してしまっていたか、目を覚まされた…という感じもする。

社会人(従業員)は今後、労働基準法等をきっちり勉強して自分自身の身を守るとともに、より良い組織で価値提供出来るように自己研鑚をしましょう、と言えば概ね本書の結論となろうか。

会社員全員(上司にも部下にも)オススメの本。就職前の学生にもオススメできる良書だ。

2014年12月6日土曜日

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史(上・下)」

 

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 上」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891903/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/9/5)
ISBN-10: 4863891903
ISBN-13: 978-4863891906
発売日: 2012/9/5

菅野 祐孝「菅野祐孝の日本一おもしろい日本史 下」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4863891911/>
文庫: 256ページ
出版社: 静山社; 初版 (2012/10/3)
言語: 日本語
ISBN-10: 4863891911
ISBN-13: 978-4863891913
発売日: 2012/10/3

[書評] ★☆☆☆☆

旧石器時代から現代(2000年代初頭)までの日本史を概観する本。文庫化に当たって手を加えているとは言え、元々は予備校講師による受験生のための講義録。一通り学習した人が復習するには良いかも知れないが、日本史のイントロ本にはならない。そもそも、歴史というもの自体、非常に多くの人間の思惑が複雑に関係し合った結果であり、様々な事柄(国の中央と地方の状況と、文化・宗教・芸術)を有機的に結びつけないと理解できるものではない(と思う)。これを文庫本2冊、合計500ページ程度に纏めようという試み自体、無理・無謀・無茶な相談なのだろう。

筆者は予備校で人気講師だったようだが、それは「大学に入るため」というモチベーションを持った受験生を対象とした講義だったからではないか。本書の元となった講義録は人気だったと言うが、それは生きた講義があった上での話ではないか。素の文章(+若干の図表)だけにしてしまった為か、本書は受験対策本としてはカナリ御粗末。また、歴史の大まかな流れを掴むには些末な情報が多く(文系受験生向け情報?)、また歴史のダイナミズムに関しては説明不足な点も多い。つまり、日本の歴史を概観したい一般読者向けとしても御粗末。つまり、本書はどっちつかずの失敗作。題名の「日本一おもしろい」は誇大広告以上、詐欺なのではないのか?(怒) まぁ、このテの本としてはカナリ安価な方なので、あまり強く文句も言えないのだが、せめて題名だけは内容を反映したものにして欲しかった。

・  ・  ・  ・  ・

ところで、本書には通常とは違う読み方があると思うので提案しておきたい。それは、ネット上の情報も参照しながら読むとうスタイルだ(読書環境が限定されてしまうが)。私自身、Wikipedia等をナナメ読みしながら本書を読み進めたところ、予想以上に広く深く日本という国の成り立ちを(再)確認することが出来た。通常の文庫本2冊と比べて何倍も時間がかかったが、それなりに得たものはあった。(Wikipediaすげえよ!/笑)

・  ・  ・  ・  ・

以下余談:

上巻まえがきに、「日本史がブームです。/高校生や受験生のみならず、多くの人が日本史を学びなおしたいと思っています。」とある。実際にそのような傾向が見られる気がする。戦争を知る世代の殆どの方々が引退し、「戦後」すら知らない現役世代が過激なナショナリズムや右傾化に走っている表れではないと思いたい。…そう感じている私自身、本書を手にしているのだから世話がないのだが(苦笑)。

2014年12月3日水曜日

高野 和明 「ジェノサイド(上・下)」

 

高野 和明 「ジェノサイド(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041011264/>
文庫: 391ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2013/12/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041011264
ISBN-13: 978-4041011263
発売日: 2013/12/25

高野 和明 「ジェノサイド(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4041011272/>
文庫: 422ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2013/12/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041011272
ISBN-13: 978-4041011270
発売日: 2013/12/25

[書評] ★★★★★

アフリカ・コンゴ、アメリカ・ワシントンD.C.、日本・東京。地理的に大きく離れた3箇所を主な舞台にした、スケールのでっかいサスペンスドラマ。内容も、軍事活動、情報技術、薬品開発、人類進化の可能性、…これらが複雑に絡み合っていて、読み手を飽きさせない。

上巻の1/4~1/3位まで読んだ所で物語のテンポを掴んだら最後、アナタは(ワタシも)もう中毒患者。もう読むのを止めることは出来ない。徹夜での読書のラストに大団円。フィクションとしては久しぶりに、上下2巻を一気読みした。ぶっちゃけ、鼻血が出るほど(笑)面白かった

2014年11月29日土曜日

藤井哲夫(原作)・かわぐちかいじ(漫画)「僕はビートルズ」(コミック、全6巻)

今回は少し前に売れたコミックの再発物です。オリジナルの講談社モーニングKC全10巻(2013年4月完結)を、文庫サイズ化・全6巻としたものです。


藤井哲夫(原作)・かわぐちかいじ(漫画)「僕はビートルズ」(講談社文庫版コミック、全6巻)

[書評] ★★★☆☆

ビートルズのコピーバンド「ファブ・フォー」が、今から50年前、ビートルズのデビュー前の時代にタイムスリップ! ビートルズの曲を自分たちのオリジナル曲と偽って発表してしまう。本物のビートルズはどうなるのか? そして、ファブ・フォーの今後は? ある意味、問題作だ。

ファブ・フォーの登場は、世の中(日本と英国の音楽シーン)を騒がせ、本物のビートルズにも影響は与えてしまった。しかし、歴史はそれほど大きく変わりはしなかった。破滅的ではないラストに救いはあるのだが、何だか予定調和的で、今ひとつ好きになれない終わり方(私個人の意見だが)。

原作については、メンバー4人のキャラが立っていることと、周囲を取り巻く人間模様、特に日本の音楽業界の裏側、時代考証といった点についてはよく考えられていると思う。漫画については、日本やリヴァプールの風景、それに楽器の描き方が非常に丁寧で、好感を持てた。


以下雑記:

  • 21世紀の演奏技術と音楽理論で武装したミュージシャンが数十年前に行くと“無敵”なのではないか、と思える。が、しかし。現代の音楽を50年前の人々の前で演奏したらどう聴こえるだろう。2010年頃の音楽を1960年頃に行って演奏しても、世の中には受け入れられないだろう。それは、聴衆がそれに対応できる耳を持っていないから。売れる音楽・生き残る音楽というのは、時代性を持った軸足から半歩~一歩だけ先行した音楽の中から、大衆に選別されたものだからだと思う。
  • そういう意味で、1960年頃の「時代の最先端」だった音楽(ビートルズ)を現代風に解釈し、完璧な演奏技術を持っているコピーバンドが時代を遡ったら…という設定は、非常に面白い。たとえば、ジョージ・ハリスン以上にジョージなギタープレイヤーって沢山いますが、そういうメンバーが「本物」と対決したらどうなるのか見てみたい気もする。
  • 私自身はいわゆる「ビートルズ世代」ではないのだが、ビートルズは勿論聴いているし、ビートルズの影響を大いに受けたアーティストの音楽を沢山聞いている(ビートルズの影響を受けていないポップスなんて殆ど無いのではないか)。そういう意味で、私だけでなく、多くの読者(特に音楽好きの人)が楽しめるコミックになっていると思う。


・  ・  ・  ・  ・

かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ1」(講談社、2014/09/12)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779269/>
文庫: 336ページ
出版社: 講談社 (2014/9/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779269
ISBN-13: 978-4062779265
発売日: 2014/9/12


かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ2」(講談社、2014/09/12)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779277/>
文庫: 336ページ
出版社: 講談社 (2014/9/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779277
ISBN-13: 978-4062779272
発売日: 2014/9/12


かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ3」(講談社、2014/10/16)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779528/>
文庫: 352ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779528
ISBN-13: 978-4062779524
発売日: 2014/10/15


かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ4」(講談社、2014/10/16)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779536/>
文庫: 336ページ
出版社: 講談社 (2014/10/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779536
ISBN-13: 978-4062779531
発売日: 2014/10/15


かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ5」(講談社、2014/11/15)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779544/>
文庫: 352ページ
出版社: 講談社 (2014/11/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779544
ISBN-13: 978-4062779548
発売日: 2014/11/14


かわぐち かいじ(著), 藤井 哲夫(原著)「僕はビートルズ6」(講談社、2014/11/15)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062779552/>
文庫: 336ページ
出版社: 講談社 (2014/11/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062779552
ISBN-13: 978-4062779555
発売日: 2014/11/14

2014年11月24日月曜日

エリック・カンデル & ラリー・スクワイア「記憶のしくみ(上・下)」

先日レビューした「臨死体験」は、人間の脳の働きに関する本としては、ちょっとオカルトっぽい所もあった。今回は堅い目の本で、2000年にノーベル生理学・医学賞を受賞者したエリック・カンデル博士と、認知心理学/認知神経科学の大家であるラリー・スクワイア博士の共著だ。

 

エリック R・カンデル & ラリー R・スクワイア(著), 小西 史朗 & 桐野 豊(翻訳)「記憶のしくみ(上)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062578425/>
新書: 304ページ
出版社: 講談社 (2013/11/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062578425
ISBN-13: 978-4062578424
発売日: 2013/11/21

エリック R・カンデル & ラリー R・スクワイア(著), 小西 史朗 & 桐野 豊(翻訳)「記憶のしくみ(下)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062578433/>
新書: 304ページ
出版社: 講談社 (2013/12/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062578433
ISBN-13: 978-4062578431
発売日: 2013/12/20

[書評] ★★★★☆

「記憶」や「忘却」について、脳の中でどのようなメカニズムが働いているのかを書い本。解剖学・生理学・行動学といった広いアプローチを結合させ、脳の働き(特に記憶)について現在わかっている内容を、素人に比較的わかりやすくまとめた本。

「人はどのように自分を認識するのか、個性はどのように出来るのか」「経験により、記憶はどのように作られていくのか」「アルツハイマー病はなぜ起こるのか、治療はできるのか」等々、興味深いテーマが沢山出てくる。面白い。現在わかっていること、まだわかっていないことがキチンと区別して書かれているのも良い。

とはいえ、本書には以下の短所もある。
  1. 内容が広過ぎて、ついていくのが大変である。←読み手である私に素養がないだけなのかも知れないが…(池谷裕二先生の本で読んでいたテーマはスラスラと読めたが、脳内の化学反応や分子遺伝学について書かれている箇所は、読むのが少しシンドかった/苦笑)
  2. 翻訳が直訳に近く読み難い箇所が多い(英語特有の表現まで直訳っぽい)。翻訳の専門家ではない脳神経学の研究者による和訳なので避け難い問題なのかも知れない。サイエンティストとして原文に忠実に翻訳したのだとも考えられる。
  3. 訳注(長いものが多い)が都度文中に入るので、通読しにくい。脚注や後注の形式にしてくれた方が良かったのではないだろうか。
最初の1点以外原著者の責任ではなく、翻訳の問題である。

少し難しい箇所もあるかも知れないが、「学習」とか「忘却」とかについてキチンとしたことを知りたい人には是非お勧めしたい。

2014年11月22日土曜日

鬼頭 莫宏「のりりん(10)」(コミック)


鬼頭 莫宏「のりりん(10)」(コミック)
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063545466/>
コミック: 200ページ
出版社: 講談社 (2014/11/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063545466
ISBN-13: 978-4063545463
発売日: 2014/11/21

[書評] ★★★★★

大人のサイクリスト&サイクルスポーツファンのための良質なコミック、10巻です。

本巻の内容は、前巻(Amazon, 拙書評)に引き続き、草レースの後半パートです。エースとアシストの役割分担とか、逃げ集団と大集団とか、補給とか、駆け引きとか。自転車レース(ロードレース)の本質を突いた内容です。レースに出る人にも、見る人にも、「レースがもっと楽しくなる」話が盛り沢山。細かい所までスマートに説明してくれます。全然説教臭くないのも良いです。

自転車(見る・乗る)に興味を持ち始めた人から、中堅どころのサイクリストまで、幅広い層にオススメできると思います。

・  ・  ・  ・  ・

前から思っていたのですが、筆者の鬼頭さん、古い自転車(UCI規定による縛りができる前のバイク)が大好きですよね。最新のTREKのバイク&BONTRAGERのパーツ(OCLVカーボン製)も大好きなようですけど。

2014年11月15日土曜日

立花 隆 「臨死体験〈上・下〉」

 

立花 隆 「臨死体験〈上〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167330091/>
文庫: 490ページ
出版社: 文藝春秋 (2000/03)
ISBN-10: 4167330091
ISBN-13: 978-4167330095
発売日: 2000/03

立花 隆(著)「臨死体験〈下〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167330105/>
文庫: 526ページ
出版社: 文藝春秋 (2000/03)
ISBN-10: 4167330105
ISBN-13: 978-4167330101
発売日: 2000/03

[書評] ★★★★☆

「私」という存在は死んだららどうなるのか? 死ぬとき「私」は何を見るのか? という、誰もが持つ疑問に対して、NHKスペシャル「臨死体験」(1991.3)と、NHK教育テレビ「臨死体験を探る」(1992.3)との2つの番組のために行った取材結果をベースとして、番組内に収まりきらなかった内容も含め、多くを綴った本。

生死の淵を彷徨った“臨死体験者”や、体験者に接した研究者へのインタビューを中心に、この不思議体験を数多く挙げる。こういう体験は本当にあるらしい。しかし、この体験が起こるメカニズムについては、よく分かっていない。現在挙げられている説は、大きく分けて以下の2つ:
  1. 脳内の化学反応で見えているだけ、夢のような現象である。死んだら「私」は無になる。
  2. 身体から魂(あるいはそれに類する何か)が抜け出して、本当に見ている。死んだ後、「私」は生の次のステップに進む。
本当のところどちらなのか、研究者の間でも議論は割れている。1. でないと説明できない現象、2. でないと説明できない現象、いずれにしてもデッチ上げ/作り話ではないという保証がどこにあるの? …等々、なかなか話がまとまらない。立花氏は「私は出来るだけ科学的な見方をしているのだが」と言いつつ、宗教寄り・オカルト的な、「ホントに科学的かヨ?」な話まで、内容は色々。そんな中、自身“臨死体験”は出来なくても、臨死体験と共通点の多い“感覚遮断”、さらには“体外離脱”を自身で経験してしまおう!と取り組んでいる辺りは、いかにも立花氏らしいと思った。

ただ…(汗)、文庫版とはいえ、上下巻合わせて1000ページ弱と結構なボリュームである。これだけ引っ張っておいて、結論は以下の通り。
  • 臨死体験で得られる不思議な体験が何故起こるかの理由は、上記1. 2.のいずれとも結論付けられない。決定的証拠がない。
  • 科学的な立場で論じたいが、現段階の科学(脳科学)はまだまだ未発展で分からないコトだらけだから仕方ない。
  • 立花氏自身の考え(意見)としては、1. 2.のどっちでもいいじゃん!…みたいな。
さんざん引っ張っておいてコレかよ!と思ってしまった(笑)。ただ、散々読者を引っ張っておいた上で(この間に読者は色々考えさせられる)、ラストに、臨死体験者の話の最大公約数的な意見、「死への恐怖が無くなった」「生きている間に出来ることを一生懸命やろうと思うようになった」と、調査を通じて立花氏が強く思ったことを結論ぽく持って来たのはチョット上手いかも知れない。

・  ・  ・  ・  ・

立花氏の著作に共通して見られる傾向なのだが:
  • 対立する意見に対して、アッチの味方をしたり、コッチの味方をしたり、行ったり来たりで結論がなかなか出ない(しかも今回は、「どっちだか、よくわかりません」というナンダカナァな結論)。
  • 内容が多過ぎる。取材結果を出来るだけ捨てずに数多く使いたかったのかも知れないが、出来ればもっと見通しの良いストーリー立てとし、内容はエッセンスに絞って欲しかった(手際良く書けば、300~400ページ程度に収まるだろう)。

とにかく話が冗長である(笑)。

・  ・  ・  ・  ・

以上、多少(かなり?)ボロクソに書いてしまったが:興味深いテーマについてじっくり調べたものであり、実は非常に面白かった

2014年11月12日水曜日

谷光 太郎 「青色発光ダイオードは誰のものか―世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する」


谷光 太郎 「青色発光ダイオードは誰のものか―世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4526055735/>
単行本: 183ページ
出版社: 日刊工業新聞社 (2006/01)
ISBN-10: 4526055735
ISBN-13: 978-4526055737
発売日: 2006/01

[書評] ★★★★☆

今年のノーベル物理学賞受賞者、中村修二教授著「ごめん!」(Amazon拙書評)のレビューを先日(19th/Oct./2014)書いた。青色発光LEDの基材・GaN(窒化ガリウム)製造方法の発明者の、一方的な意見だけを読むのも不平等なので、より中立的な視点を持っていると思われる人が書いた本を読んでみた(「ごめん!」と一緒に買っておいたまま積読本だったものを続けて読んだ…が実態/笑)

内容は、GaNの製法特許に関わる裁判の統括と、同様の発明の対価に関する訴訟についてのレポート。多くの資料からの引用が中心で筆者によるコメントは少ないが、よくまとまっている。

発明の価値や知財戦略について、どう考えれば良いか/どう取り組めば良いか、についての明確な答えは無し。しかしながら、これらの裁判をキッカケに始まった、日本の司法の取り組み(特許法の改正、知財高裁の設立など)についても解り易く書かれている。内容は本書発行時のものであり最新ではないが、非常によくまとまっており、参考になる。

メーカ従業員として、あるいは1人の技術者として、「知的財産の価値」や「知財戦略」をどう考えれば良いかのヒントにはなる。

・  ・  ・  ・  ・

以下雑記:

中村氏の発明の対価について。
  1. 青色LEDの製造技術全般の中で、中村氏の寄与が全てではないこと(窒化ガリウム以外の半導体素子製造技術も非常に多いこと、窒化ガリウムの製造技術自体が中村氏1人だけで実現したのではない)
  2. 「世界初」「世界一」のトップ技術(中村氏の担当)だけでなく、「安定」かつ「高良品率」に製品製造する量産技術(他の人が担当)も非常に重要であり、特に後者が無いことにはメーカは利益を生み出せない
  3. 製品開発にあたって、経営者側もリスクを取って投資を続けたこと
等を鑑みるに、高裁審の判決結果(6億円、利息込で8.4億円で和解)は、まぁ妥当な所ではないか(少なくとも桁違いには多くも少なくもない)、と思う。本書はそんな私の考えを裏付ける(補強する)ものとなった。

「業界内で無理と言われていた技術を、世界に先駆けて実現した」発明に対して、もう少し報いてくれても良いのではないかな~とか思うのがイチ技術者としての正直な感想(笑)。でも、ノーベル賞のニュース、それに中村教授-日亜化学工業の関係改善のニュースもあり、まぁ良い落とし所だったのでは、とも思う。

2014年11月9日日曜日

竹内 一正 「スティーブ・ジョブズvsビル・ゲイツ」


竹内 一正 「スティーブ・ジョブズvsビル・ゲイツ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4569776973/>
新書: 222ページ
出版社: PHP研究所 (2010/2/19)
ISBN-10: 4569776973
ISBN-13: 978-4569776972
発売日: 2010/2/19

[書評] ★★☆☆☆

アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏と、マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツを色々な観点で比較した本。

IT・電子部品関連の雑誌・書籍に、両氏の仕事の仕方については散々書かれてきた。PCやネットの黎明期(1980~90年代)、ゲイツ氏は堅実な経営も営んで大富豪になった人だ。これに対して、ジョブズ氏は時々ホームランを打ち続け(そして時々大コケして)アップルを世界トップクラスの企業にまで導いた人だ。

本書では、ジョブズ氏とゲイツ氏、全く異なるタイプの経営者2人を同じ俎板に乗せて比較しているのは面白いかも知れない。2人の経営者の色々なエピソードが読めるのは興味深いが、殆どどこかで読んだ話ばかり…という気もする。一時だけの流行本ではないだろうか。

2014年11月8日土曜日

今野 晴貴 「ヤバい会社の餌食にならないための労働法」


今野 晴貴 「ヤバい会社の餌食にならないための労働法」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4344420268/>
文庫: 137ページ
出版社: 幻冬舎 (2013/6/11)
ISBN-10: 4344420268
ISBN-13: 978-4344420267
発売日: 2013/6/11

[書評] ★★★★☆

2006年に若者の労働相談を受け付けるNPO法人「POSSE」を設立した筆者による、ブラック企業?に悩まされている個人が、どのような行動をとれるのかを示した指南書。良書。

同じ著者による「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(文藝春秋、2012/11/19) (Amazon, 拙書評)は、ブラック企業がどのように従業員を食い物にし、社会悪となっているかを具体的に書いた本。よく整理されている。

んで、本書。労働基準法が定める基本的なことがらが網羅されている。退職や解雇に関する条件がしっかり書かれており、会社が簡単には従業員を解雇できないことが書かれている。自分や周りの人が会社を去る場合、ちゃんと手順を踏んでいるか確認することが出来る。より詳しくは労働基準監督署や社労士、労働担当の弁護士などに相談するのがベストなのだろうが、最初に参照すべきものとして有効だろう。

うちの会社ヤバくないか?と思っている会社員は勿論、就職前の学生も読んでおいて損はない本。

2014年11月6日木曜日

スティーブン・レヴィ 「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」

スティーブン・レヴィ 「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4484111160/>
単行本: 632ページ
出版社: 阪急コミュニケーションズ (2011/12/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4484111160
ISBN-13: 978-4484111162
発売日: 2011/12/16

[書評] ★★★★★

ネットの検索大手であり、スマートフォンのOS(Android)やスマホアプリ・ネットアプリの開発元であり、ロボットや自動運転車の研究開発をしている(…まだ足りないかも)、そんなGoogleの過去と今そして未来を描く本。非常に面白い。「アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか」(2013)(Amazon拙書評)ではアウトサイダー的な書き方がされていたが、本書では一貫してインサイダー側の視点だ。

検索連動型広告が何故ビジネスたりうるのか。Googleがどうやって検索業界トップとなったのか。それまで良い関係を築いていたAppleを敵に回して、どうして携帯電話(スマートフォン)市場に出たのか。国際問題・政治問題に触れるような問題に対する態度はどうか。

6章の、中国への進出~中国政府当局による検閲との戦い~中国でのサイバー攻撃~中国からの撤退、にまつわる話は生々しすぎる。が、中国を人口10億人超の巨大市場と捉える全ての企業の人間が知っているべき話だ。この話題については国際的にデリケートな内容であるためか、多少気を遣った書き方がされているようだが、黒幕が誰なのかは、まあ、明白だ(笑)。

成長を続ける大学生的ノリの企業も、大きくなり過ぎた。今後どう変化し続けるのか、それとももう変化しないのか。今という時代を読む上でも、急成長を遂げた企業がその次にどのように進むべきかを考える上でも、非常に興味深い著作だと思う。IT系に限らず、製造業・サービス業など広い分野の人に参考になる良書だと思う。

2014年11月3日月曜日

西尾 維新(著),VOFAN(著)「続・終物語」

西尾 維新(著),VOFAN(著)「続・終物語」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062838788/>
単行本(ソフトカバー): 292ページ
出版社: 講談社 (2014/9/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062838788
ISBN-13: 978-4062838788
発売日: 2014/9/18

[書評] ★★☆☆☆

『化物語』(2006) (Amazon, 拙書評/初出)に始まる、西尾氏の〈物語〉シリーズの最終巻(著者によれば本書は「再終巻」)。今回は陰鬱・陰惨な描写は非常に少な目。設定がブッ飛んでいるのは毎度の通り。面白さについては、まあ、ソレナリ。

本書はもうこれ以上展開のしようもないようなストーリーとなっていて、読者を惹きつける力はシリーズ中で弱い方だと思った。が、こういう書き方にこそ「今度こそ終わり」という著者の強い意志を感じる。〈物語〉シリーズは、何度も完結(?)しているが、おそらく出版社側の都合等により、繰り返し復活(?)してきたのだと思う。著者の西尾氏に対して、「長い間のシリーズ継続、本当にお疲れ様でした」と言いたい。

・  ・  ・  ・  ・

余談:
 初回限定版として、西尾氏の新作「掟上今日子の備忘録」の第1話がオマケで付いて来た。これは推理物らしいが、設定はやっぱり(笑)ブッ飛んでいる。でも内容は結構面白いかも?!

2014年11月1日土曜日

小山 宙哉(著)「宇宙兄弟(24)」 (コミック)

小山 宙哉(著)「宇宙兄弟(24)」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4063883515/>
コミック: 208ページ
出版社: 講談社 (2014/9/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4063883515
ISBN-13: 978-4063883510
発売日: 2014/9/22

[書評] ★★☆☆☆

久しぶりのコミックです。

シリーズ中、次のクライマックスへ向けての中継ぎ的な1冊(ずっとハイテンションを保つのは無理だろう)。そんな中でも、何か良いコトを言おうとして無理している感じがある。もうちょっとサラッと書いてくれても良かったんだけどなー。

2014年10月29日水曜日

森 博嗣 「すべてがFになる」

森 博嗣 「すべてがFになる」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062639246/>
文庫: 524ページ
出版社: 講談社 (1998/12/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062639246
ISBN-13: 978-4062639248
発売日: 1998/12/11

[書評] ★★★☆☆

いわゆる密室殺人ミステリー。孤島に建つ私立研究所の密室で事件は始まる。この小説における鍵の1つは、コンピュータ・ネットワーク・システム。謎かけをコンピュータ・システムに依存しすぎている感はあるが、物語が進むにつれてスピーディーな展開で読ませる。面白い。

本書を読んで新しいなと思ったことは、
  1. ネット時代になって、個人の存在が危うくなっていることを示していること。… 個々人は互いに色々な繋がり方ができるようになった反面、直接コンタクトせずとも様々な情報はやりとりできる。人間各個人を、脳を中心とした単なる情報処理装置と捉えれば、正常な進化?なのかも知れないが。でも、物理的な干渉を持たないコミュニケーションは本当に正常な状態なのか? みたいな。
  2. 本書に書かれた会話の多くは、論理的ではない。… 多くの作品における会話と違い、本書では論理的でない会話が多く見られる。話をはぐらかしたり、質問に対して質問で答えたり。日常生活における会話とは、本来そのようなものだと思う(会議でも同様では困るが/笑)。著者(森博嗣氏)は、ネタ的に「理系作家」と言われるようだが、人間観察も細かい。ただの「理系」ではないようだ。
私事になるが、学生時代にUNIXオペレーティングシステムのソースコードとか見て、自分が生きているうちに時計が1周りしちゃうなぁとか思ったことがあり、本書のネタは懐かしい感じもした。

2014年10月26日日曜日

養老孟司, 久石譲「耳で考える ―脳は名曲を欲する」

養老孟司, 久石譲「耳で考える ―脳は名曲を欲する」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4047102059/>
新書: 207ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/9/10)
ISBN-10: 4047102059
ISBN-13: 978-4047102057
発売日: 2009/9/10

[書評] ★★★★☆

「バカの壁」(Amazon)等のベストセラー著作が多い解剖学者・養老孟司氏と、宮崎駿監督や北野武監督の映画音楽家として有名な久石譲氏の、対談本。

内容は多岐に渡る。たとえば、
  • 芸術論(大衆性と芸術の関係、現代社会において芸術が弱くなった原因、他)
  • 脳を活性化する音楽とはどういうものか
  • 絶対音感とは脳科学的にどういうものか
  • 歳を取るとはどういうことか
  • いじめは昔から存在していたのに、近年なぜ深刻な社会問題になってきているのか(子どもの他人・環境との関係性が少なくなり、友だちの比重が増えた結果、いじめによるダメージが大きくなってしまっている)
  • 子どもがみんな(色々な意味で)道の外を歩かないように教育されてしまっている
などなどなど。

互いに相手の専門領域にリスペクトを持った大家2人が対談することによって、物語に新たな視点が与えられていく。非常に興味深く読めた。

2014年10月21日火曜日

久石譲「感動をつくれますか?」

久石譲「感動をつくれますか?」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4047100617/>
新書: 190ページ
出版社: 角川書店 (2006/08)
ISBN-10: 4047100617
ISBN-13: 978-4047100619
発売日: 2006/08

[書評] ★★★★☆

宮崎駿監督や北野武監督の映画音楽の作曲家として著名な久石氏の著作。音楽についても触れられているが、内容は「何かのプロとしてどう生きていくか」に重点が置かれている。そういう意味では、本書は音楽の本ではなくビジネス書だ(ヤマハ銀座の書籍コーナーで買ったのだが/笑)。

作曲家には論理と感性の両方が必要だと思うが、本書は非常に論理立てて書かれており、読み易い。自己管理の方法や、アンテナ感度の高め方等、仕事人としてナルホド!と参考になる点が多いと思う(ちなみに、組織人としてどうあるべきかについて言及が無いが、それは久石氏の仕事の仕方を考えれば当然か)。

第5章、第6章に書かれている、久石氏の労働観・職業観や社会観(特に日本人の国民性のネガティブな点)などについては、私は意見を異にするが、久石氏の意見は率直で読み易い。好感が持てた。

音楽好き向けの本というよりも、社会人向けの本(特に中堅以上)。色々と考えさせてくれる良書だと思う。

2014年10月19日日曜日

中村 修二(著)「ごめん!」

中村 修二(著)「ごめん!」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4478703272/>
単行本: 333ページ
出版社: ダイヤモンド社 (2005/7/15)
ISBN-10: 4478703272
ISBN-13: 978-4478703274
発売日: 2005/7/15

[書評] ★★☆☆☆

いつか読まねばと思ったまま長いこと積読になっていた本。中村修二氏(UCSB教授)、赤崎勇氏(名城大教授)、天野浩氏(名古屋大教授)の3名が、青色LEDを実用化したとして、2014年のノーベル物理学賞を受けたというニュースを受け、読書緊急度がいきなりレッドレベルになった(笑)。
  • 「ノーベル物理学賞、日本人3名が受賞」なんてニュースがあったが、中村氏は少し前から米国籍となっている(日本を捨てた人なんですよね)。中村氏はもう日本人ではないので「日本人3名」は正しくありません。…って、細かいか(笑)。
何年か積読本だったが、読み出してみたら面白かった。…最初の1/4は(4章のうちの第1章のみ)。残りは正直、かなりクドい。法律用語とか技術内容とかに暗い人にとって、2~3章を読むのは拷問に等しいだろう(裁判官らも技術については一般人。これらのような準備書類を大量に読まされてキツかっただろうな~)。でも、職務発明とか技術者の仕事の評価とかを再考させられた。そういう意味では刺激のある本だった。

・  ・  ・  ・  ・

青色LEDの実現に必要なGaN(窒化ガリウム)の単結晶製造法に関する特許で、中村氏-日亜化学工業の間で激しい特許紛争があったのは10年ほど前のことになってしまったが(技術誌で読んでいた内容だったので結構懐かしい感じもあった)、本書はその二審(高裁)で判決が出された後に、ガックリ来ている状態で中村氏が書き綴った本。…と思いきや、
  • 日本の司法は真実に基づく正・悪(正・偽)ではなく、利益衡量に基づいており、個人の利益(正当な利益)よりも大企業の利益が優先されてしまう、ダメダメなものである。
  • 日本社会は官民とも文系人間に牛耳られていて、理系人間は奴隷としていいように使われている
と怒りをブチ撒けていらっしゃる。書き綴った、ではなく、書き殴った、という表現の方が適切かも知れない。

それと同時に、理系人間に、もっと好きなことをやって市場に正当に評価して貰い、正当な収入を得られるよう頑張りや!という強いエールを感じる。エールというよりも、背中を乱暴にド突いている、といった感じか。こういう元気なオッサン(失礼;)、日本にもっと沢山出て来ないかなぁ。。。研究や開発といった理系人間のなかでも、特にマネジャーでなくスペシャリストになりたいとう人たちは、是非読んでおくべき本、かも知れない。また、会社の中で冷や飯を食わされていたり燻っていたりしている技術屋のそこのアナタ! アナタこそ読んで下さい! みたいな本だ…最初の1/4だけは(笑)。残り3/4は裁判とかに興味が無かったら読まなくてよろしい

文系人間の、文系人間のために、文系人間によって運営している社会(つまり日本だ)とそこで甘い汁を吸っている文系な人々…にはチョット不都合な本かも知れないが、こういう本もたまには面白いかも知れない。

・  ・  ・  ・  ・

以下、雑記:

中村氏と日亜化学の一連の裁判は、特許権の所有者や発明の対価について、業界(特に製造業)経営部を震え上がらせたものだった。これ以降、各社では特許権の権利譲渡契約や(発明提案書がこれを兼ねている場合が多い)、発明の対価について明文化されたルールを設けるようになった。

中村氏の発明の対価は、一審判決で利息込で808億円と評価されたところ(日亜への支払い命令は請求額200億円満額)、二審判決で8.4億円(利息込)とほぼ1/100にされてしまった。中村氏は、この結果について、日本の司法が腐っていると憤慨しているが、
  • 一審までは中村氏がメディアを巻き込んで(主に電子部品業界の)世論誘導をしたのに対し、当初日亜化学工業側はメディアにはノーコメントだった。それもあって、一審は中村氏の一方的な勝訴になった。
  • 一審後、二審(控訴審)に向けて、日亜側が遅まきながらも人海戦術・物量作戦で政財界やメディアを動かしたので(中村氏よりも広い業界のメディアを動かし、さらには展示会で日亜サイドの書籍をバラ撒くなどのエゲツナイ行為も見られた←著者が出版社編集部となっており、誰が書いたのかわからない怪しい本でした)、それによって判決が大きく変わってしまった(日亜側に有利な結果に変わってしまった)。
…という可能性は見逃せないだろう。

また、米国のようなデポジット(証人尋問)制度やディスカバリー制度が無い日本の法廷での戦い方が上手でなかったのも確かだろう(日本の司法制度では、原告側に立証責任があるということを忘れていたのではないか?)。日本の司法が個人より団体に有利なように働いているのはたぶん事実だろうが、二審で日亜側に有利な判決に変わってしまったのは、なるべくしてなった、と言うべきかも知れない。日亜化学は当初メディア戦略で後れを取ったものの、その後の猛追と日米での裁判の進め方は非常に上手かったとも言える。特に、メインではない裁判では敗訴でさっと幕を引いて、主戦場での戦いを有利に持って行ったりするワザは巧妙としか言いようがない(中村氏の主張を見ると、日米の違法?法律ギリギリ?のズルい方法なのかも知れないが)。

なお、中村氏は米国の裁判制度を「真実」に基づき、「正義」と「悪」をハッキリさせる理想的なものだと言う。が、様々な弊害が出ていることも鑑みると(裁判が多すぎるとか、代理人の演技力で判決が大きく変わってしまうとか)、米国の裁判制度も本当に公正なものとは言い難い。全てについてアメリカナイゼーションを押し付るのではなく、本当の意味で公正な裁判とは何かをもっと議論してくれたら良かったのに、とも思う。

特許と無縁ではいられない技術者として、色々と考えさせられる本だった。

2014年10月18日土曜日

海堂 尊(著)「マドンナ・ヴェルデ」

海堂 尊(著)「マドンナ・ヴェルデ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101333122/>
文庫: 341ページ
出版社: 新潮社 (2013/2/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101333122
ISBN-13: 978-4101333120
発売日: 2013/2/28

[書評] ★★★★☆

『ジーン・ワルツ』(Amazon, 拙書評)と同じ代理母問題に関する医療サスペンス小説。『ワルツ』と同じ題材で、代理母側からの視点による小説。2つの作品で多視点作品となっている。こういう書き方もアリか!と思わせる一作。面白い。

2014年10月17日金曜日

海堂 尊(著)「ジーン・ワルツ」

海堂 尊(著)「ジーン・ワルツ」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4101333114/>
文庫: 330ページ
出版社: 新潮社 (2010/6/29)
ISBN-10: 4101333114
ISBN-13: 978-4101333113
発売日: 2010/6/29

[書評] ★★★☆☆

本書のテーマは、代理母問題。日本の法律や制度が、医学・医療の実態に追いついていないことと、この辺りの改善を求めるメッセージが強いのは、海堂氏の過去の作品と同様(本作では、日本の医療、特に産婦人科医療の崩壊を歯止めしたいという訴えが非常に強く伝わってくる)。本作は、過去の作品と比較して、多少説明的すぎる文章になっている気もするが、面白い。そして、色々考えさせられる。

2014年10月15日水曜日

海堂 尊(著)「ジェネラル・ルージュの伝説」

海堂 尊(著)「ジェネラル・ルージュの伝説」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796677399/>
文庫: 347ページ
出版社: 宝島社 (2010/6/4)
ISBN-10: 4796677399
ISBN-13: 978-4796677394
発売日: 2010/6/4

[書評] ★★★☆☆

『チーム・バチスタの栄光』(2007) (Amazon拙書評)で華々しく作家デビューした、現役医師・海堂尊氏による作品。内容は、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(2009) (Amazon拙書評)の前日譚・サイドストーリー・後日譚、それに自己紹介+過去の作品紹介。

ちょっと欲張りな作品とも言えるが:
  • 前半(小説パート) …例によってテンポ良く読ませる。医療現場にいる人でないとこうは書けないだろう。
  • 自己紹介 …コミカルでもありながら、病理学会に対する恨みつらみのオンパレード。他の作品でも似たことが書かれているので、ちょっと食傷気味。
  • 作品紹介 …自分が読んだ作品のバックグラウンドとかが書かれているのは多少興味深いが、まぁそれだけ、かな(バッサリだ~!/笑)。自分で作品を書き、持ち込みや新人賞への応募を考えている人には色々と参考になるかも知れない。
小説パートは、『凱旋』を読んだ人にとっても、そうでない人にとっても面白いだろう。特に、登場人物の台詞を通しての、医師としての死生観(生への執着の全肯定)と、医療のあるべき姿が非常に強く伝わって来、好感が持てる。この小説パートの主人公・速水医師は、おそらく海堂氏が理想とする医師像だろう。台詞の1つ1つにエッジが効いていて、読んでいて楽しい。

後半の自己紹介パートは一般人への訴えと愚痴が多く、読み手によってはつまらないと感じるかも知れない。でも、海堂尊ファンには超オススメの1冊と言えるだろう。

・  ・  ・  ・  ・

以下余談:

海堂氏は、自身が現役で医師(病理医)をやりながら、以下の活動も同時に行っている。
  • 医学会・医師会・司法や厚労省に対して、死因判定と医学発展の為、CTと解剖を組み合わせたAi(オートプシーイメージング)を提唱する。
  • 小説というスタイルを中心に、Aiを一般市民に認知して貰い、そこから医学会・医師会・司法/厚労省を動かす。
たぶんこの2つは氏にとって、車の両輪のようなものなのだろう。が、残念ながら、医師や役人に強力な助っ人・シンパが現れない限り、日本の制度や常識はそうそう変わらないだろうなぁとも思う。小説というスタイルで世論を動かそうとしても限界があるし、そもそも日本の法制度等は1作家の世論誘導だけで簡単には動くようなものではないとも思う(海堂氏には申し訳ないが…)。

2014年10月13日月曜日

貴志 祐介(著)「悪の教典」(上・下)

貴志 祐介(著)「悪の教典〈上〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167839016/>
文庫: 467ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/8/3)
言語: 日本語, 日本語
ISBN-10: 4167839016
ISBN-13: 978-4167839017
発売日: 2012/8/3

貴志 祐介(著)「悪の教典〈下〉」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4167839024/>
文庫: 459ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/8/3)
言語: 日本語, 日本語
ISBN-10: 4167839024
ISBN-13: 978-4167839024
発売日: 2012/8/3

[書評] ★★★☆☆

東京都下の高校を舞台とした、学園モノのサスペンス/サイコホラー劇。猟奇的大量殺人物語でもある。

勢いよく読ませる。特に後半になって話のペースが早くなってきてから、目が離せず、一気読みしてしまう。後ろめたい行動をしている主人公が、自分の身を守るために始めた行動をどんどんエスカレートさせていく様子が克明に描かれている。最終的に狩猟的とも言える行動に走ってしまう主人公の視点・心情をメインに書かれたストーリーは圧巻。ただ、後味はあまりよろしくない(サイコホラーだから当然かも知れないが)。

なお、内容・設定に、突っ込みどころは沢山ある。なぜ一介の高校教師が、高度な軍事訓練あるいは特殊工作員訓練を経験したような技能と知識を持っているのか? ちょっと変わった経歴を持っていることで説明をつけようとしているが、無理がありすぎる。また、高校の中も(進学校の割に)乱れまくり。教師同士も、教師と生徒の間も、爛(ただ)れた関係だらけ。こんな状態が現在の高校に実際にある姿だとは思いたくないし、現実の高校生にもそうは思って欲しくは無い。本書はR指定付きにすべきではないか? 読んで良いのは、虚構と現実の区別が出来るお年頃になってから、と願いたい。

オビによると、文春文庫「高校生が選んだ、BEST10」の第5位とのこと(書店で平積みされていたので買ってみた)。映画化もされたらしいが(残念ながら観ていない)、こういうストーリーの本や映画が売れてしまう現代日本は、かなりヤバい段階まで病んだ社会なのではないだろうか。

2014年10月8日水曜日

ジム・コリンズ&モートン・ハンセン「ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる」

ジム・コリンズ, モートン・ハンセン(著), 牧野洋(翻訳) 「ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822249239/>
単行本: 490ページ
出版社: 日経BP社 (2012/9/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4822249239
ISBN-13: 978-4822249236
発売日: 2012/9/20

[書評] ★★★★★

不確実・不安定な世界で飛躍する企業のが何をどうやっているのかを調査した本。調査対象は、業界の平均値を最低でも10倍上回る成長を達成している企業。(本書ではこのような企業や経営者を、10X型企業/10X型リーダーと呼ぶ;10EX-er、「テンエクサー」と発音する)。

本書の肝は、およそ以下の通り(殆ど目次のままだが/笑)
  • 「20マイル行進」…景気などに左右されず、確実に仕事を進める。状況が悪い時も結果を出し続けなければいけないが、好況の時に「やりすぎない」ことも非常に重要。
  • 「銃撃に続いて大砲発射」…いきなり大きな賭けに出ず、うまくいくことが実証された事業に手を出すようにする。
  • 「死線を避けるリーダーシップ」…人、資金など、十分な安全マージンを取る。
  • 「SMaCレシピ」…具体的で、整然としており、そして一貫しているレシピを作り、このレシピに従って事業を進める。
  • 「運の利益率(ROL)」…幸運・不運から高いリターンを得るようにする。その為には、事前の準備が大切(嵐が来る前に備えをしておく)。偉大な組織を作るのは運ではなく人間だ。
非常に分かりやすい。また、シリーズ既刊に対する理解も深まる。企業トップは勿論、会社と自分自身に求められているのは何であるか・自分自身が何をしなくてはいけないかをきちんと考える、意識の高い人全員にオススメ。


参考図書:
  • 「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」(Amazon拙書評)
  • 「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」(Amazon拙書評)
  • 「ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階」(Amazon拙書評)

2014年10月1日水曜日

ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階」

ジム・コリンズ (著), 山岡 洋一 (翻訳)「ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822248178/>
単行本: 316ページ
出版社: 日経BP社 (2010/7/22)
ISBN-10: 4822248178
ISBN-13: 978-4822248178
発売日: 2010/7/22

[書評] ★★★★★

偉大な企業が転落する際に共通して通る道筋を分析し、衰退からどのように回復すれば良いかを示す本。テーマとしてはシドニー・フィンケルシュタイン著『名経営者が、なぜ失敗するのか?』(日経BP社、2004)(Amazon拙書評)と近い。本書では、企業が衰退に至るステップを細かく分析している点が『名経営者が~』とは異なるが、分析結果の多くは重複している。

本書から得られる教訓としては、たとえば以下のような状況は、企業が衰退に至る兆候を表しているという点が挙げられる。
  • 実力(適切な人材を集められる速度)よりも速いスピードで事業を拡大しようとすると、必ずコケる。
    ※本書の内容ではないが、既存の組織内での新規事業などにもこれは言える。人材等の経営資源を充てすぎるとコスト増になってしまうが、人材が少なすぎる場合はその実力以上の成果は出しようがない。特に、予定外・予想外の障害に遭った場合が要注意である(当初からフル残業を見込んだ日程を組むなど本来論外であるが、一部の日本企業で時々見られる光景だ)。予想外の事態は新規事業にはつきものだが、そんな時に無理矢理当初予定通りに事業を進めようとすると、その事業自体がデスマーチ化してしまう。これは経営者の無能力を示す事態だ。必要な時に必要な資源(主に人とカネ)を割当てて事業をきちんと育てることが出来るかどうか、及び、予想外の事態が発生した場合に資源(人と予算)や日程・目標値を適切に再設定することが出来るかどうか、この2点も経営者の重要な能力だ。
  • 企業の基本的な目的、企業の存在意義に直接関係の無い組織改編をしている状況は、既に衰退段階に入っている兆しである。
  • “逆転一発勝負”を繰り返し、失敗する度に多額の現金を失い続けるような状況は、既に末期症状である証拠である。
    ※著者らは、既刊『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』(日経BP社、1995) (Amazon拙書評)で、偉大な企業の多くは社運をかけた大胆な目標(BHAG)を設定して従業員の心をひとつにし、難題を突破したと書いている。だが、本書を読むと、この“BHAG”は、「逆転一発勝負の目標」ではなく、「充分時間をかけて実績を得た上で充分信用できる分析データに基づいた大胆な目標」である必要があることが分かる。
衰退段階にある企業の特徴を挙げた項目を読んだ時、デジャヴュを感じ、正直少し気持ちが悪くなった(良薬は口に苦し、ということか)。だが、衰退段階から企業・国家を復興させた話も書かれているので(第8章)、多いに参考になると思う。たとえば、IBMを復興させたルイス・ガースナー。たとえば、ヨーロッパを席巻していたファシストに絶対に屈服しなかったウィンストン・チャーチル。彼らは、派手な復興劇を見せた訳ではない。厳しい状況を直視し、なすべきことを地道に行ったのだ。

本書も、『ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則』(日経BP社、2001)(Amazon拙書評)と同様、企業経営者を従業員や世間から厳しい目に晒させることになったと言えよう。

多少景気が良くなったとは言え、先の見えぬ激動の時代。企業トップだけでなく、従業員全員が、会社と自分自身に求められているのは何であるか、自分自身が何をしなくてはいけないかを、改めて考えさせてくれる本。

2014年9月24日水曜日

シドニー・フィンケルシュタイン 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」

シドニー・フィンケルシュタイン (著), 橋口 寛(監訳) (著), 酒井 泰介 (翻訳) 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822244121/>
単行本: 469ページ
出版社: 日経BP社 (2004/6/24)
言語: 日本語
ISBN-10: 4822244121
ISBN-13: 978-4822244125
発売日: 2004/6/24

[書評] ★★★★★

偉大な企業が失敗する例を多数調べ上げ、その共通点を洗い出した研究書。失敗した事例やその会社の体質を見ると、似た例を身近でも良く見ていることに気づく。他社の成功例から学べることは勿論多いのだが(そういう文献は実に多い)、失敗例からも学ぶべきことは沢山あることを教えてくれる本。組織のトップは勿論、部門・部署を率いる人にとって、必読の書だと思う。

失敗した企業の多くに共通して見られる傾向として、たとえば以下のような症状を挙げる。
  1. 企業トップが自分と違う考えを聞き入れなくなる。
    • トップ、上司に対して反対意見を言えない土壌が形成される。
    • 上と考えの違う従業員が排斥されるようになる。
    • 健全な意見交換が出来ない雰囲気になる。
  2. 企業トップが自社を偉大な会社だと自惚れる。社員にも同じ幻想を抱かせる。
    • 独りよがりに陥り、社外からの重要なシグナルを受け取らなくなって行く。
    • 社内でも上にとって都合の悪い情報が伝わりにくくなる(情報の隠蔽・改竄が行われるようになる)。
    • 過剰な団結主義が発生する(カルト主義、集団ヒステリー)。
    • 顧客・市場に基づかない、独自の評価基準を持ってしまう。
  3. 無意味な完璧主義に陥る。
    • 失敗を許容できない組織文化になる。新たな試みが出来ない組織体質になる。
    • 環境変化に対応できない組織になる。
    • 怠慢による失敗と前向きな失敗の違いがわからなくなる。競争力や収益性を保つために必要なイノベーションが起こせなくなる。
このような状況に陥ると、当然、正しい経営判断は出来なくなる。

一定以上の歴史のある会社には、多かれ少なかれ、上記のような病に罹っていることが多い。企業トップは勿論、管理職クラスは留意すべきだろう。

本書のケーススタディに出て来る、失敗した会社から学べることがあるとすれば、概ね以下のようになるだろう。
  1. 風通しの良い組織にする
    • 悪い情報が適切に伝わるようにする(無意味な悲観論者には振り回されないように)。
    • 悪い情報を報告した者を罰したり排斥したりしない。
  2. 失敗を許容し、失敗から学習する組織にする
    • 失敗を許容し、新たな試みが実施できるようにする。
    • 上手く行った事例だけでなく、失敗した事例もケーススタディとして活かす。
  3. 社内外の情報を適切に伝達出来る組織にする
    • 良い情報は勿論だが、悪い情報も正しく伝わり、正しい経営判断が出来るようにする。
・  ・  ・  ・  ・
以下余談:

戸部良一らが、『失敗の本質 ― 日本軍の組織論的研究』(中央公論社,1991/08)(Amazon, 拙書評)において、失敗する組織、環境の変化に対応できない組織として、旧日本帝国軍の組織的問題点を洗い出した点について述べているが、本書はこの「失敗の本質」と通じるものがある。

本書では、“トップが聞く耳を持たなくなる”病と、“従業員が自惚れる・驕る”病とを助長するので、カルト的文化は企業文化として好ましくないと言う。色々な面で、ジェームズ・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社,1995/9/26)(Amazon, 拙書評)とは逆の主張である。

2014年9月23日火曜日

ジム・コリンズ「ビジョナリーカンパニー【特別編】」

ジェームズ・C・コリンズ(著), 山岡洋一(翻訳)「ビジョナリーカンパニー【特別編】」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822245241/>
単行本: 96ページ
出版社: 日経BP社 (2006/6/22)
ISBN-10: 4822245241
ISBN-13: 978-4822245245
発売日: 2006/6/22

[書評] ★★★☆☆

※「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」(Amazon拙書評)の付属論文。「ビジョナリー・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー②」は、偉大な企業とそうでない企業の差異、及び偉大な企業になる為にどうしたら良いかについて書かれた本だった。本書は、偉大な組織になるために何をすれば良いか、という命題について、企業セクターではなく、社会セクターの組織(病院、警察、赤十字、etc.)の場合について書かれた本。

80ページそこそこの本なので、あっと言う間に読めてしまうが、内容は濃い。企業セクターの人間にとっても、“偉大な組織”の本質について考えるのに役に立つ本だと思う。

2014年9月20日土曜日

ジム・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」

ジム・コリンズ(著), 山岡 洋一(翻訳)「ビジョナリー・カンパニー② - 飛躍の法則」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822242633/>
単行本: 360ページ
出版社: 日経BP社 (2001/12/18)
ISBN-10: 4822242633
ISBN-13: 978-4822242633
発売日: 2001/12/18

[書評] ★★★★★

「ビジョナリー・カンパニー - 時代を超える生存の原則」(Amazon拙書評)の続編。前著では、「偉大な企業とそうでない企業」を比較し、偉大な企業の共通点(すなわち静止画)を挙げていたが、本書では、「良好な企業」が「偉大な企業」になる為にやったことをの共通点(すなわち動画)を調査し、まとめた本。

本書で述べられている重要なポイントは2点である。すなわち、偉大な業績をあげる企業の経営者の特徴と、そのような企業の経営方針についてだろう。

偉大な企業を率いている経営者は必ず以下の「第5水準の経営者」であり、その他多くの企業の経営者は「第4水準」の経営者であると言う。
  • 第5水準:第5水準の経営者
    個人として謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる
  • 第4水準:有能な経営者
    明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
  • 第3水準:有能な管理者
    人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する
  • 第2水準:組織に寄与する個人
    組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織のなかで他の人たちとうまく協力する
  • 第1水準:有能な個人
    才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする
偉大な企業の経営方針は、以下の3つのポイントが重複することだけに集中していることだと言う。
  • 情熱をもって 取り組めるもの
  • 自分が世界一になれる部分
  • 経済的原動力になるもの
本書の出版により、経営者の多くは戸惑ったのではないだろうか(特に、本人の実力というよりも環境に恵まれて実績を出して昇進した人や、社内政治力によって昇進した人)。企業経営者は、部下から採点されるようになってしまったのだ(経営者の多くは第5水準ではなく、第4水準の経営者という評価になるだろう)。また、会社役員全員のベクトルが揃っていないと、本書の言う「偉大な企業」にはなり得ないが、取締役会は往々にして政治闘争の場になってしまっており、偉大になるには程遠い状態であることが多いからだ。

経営者でない人にとって、本書はどう役立つか。それは、自分の所属する組織(部でも課でもチームでも良い)を「偉大な組織」にする際の参考に出来ることだ。会社トップに直接働きかけることは出来ないかも知れないが、自分の周囲なら「偉大な組織」に変えることは不可能ではない。自分自身が「第5水準」に近づくために、努力と経験を積むことも可能だ。優れた成果を挙げる組織を作りたいと考える“志ある社員”にとって、必読の書

2014年9月17日水曜日

ジム・コリンズ、ジェリー・I・ポラス「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」

ジム・コリンズ、ジェリー・I・ポラス(著)、山岡 洋一(翻訳) 「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4822740315/>
出版社: 日経BP社 (1995/9/26)
ISBN-10: 4822740315
ISBN-13: 978-4822740313
発売日: 1995/9/26

[書評] ★★★★☆

経営書として一世を風靡した本。細かな紹介は不要だろう。

時代を超えて存続し続ける会社組織について、その共通点を調査してまとめている。数十年経って市場環境が大きく変動しても、企業が偉大な企業として存続するための重要なポイントとして、
  • 企業の存在理由を明確にすること
  • 組織として進歩を促すための仕組みづくりをすること
  • 報酬体系をはじめとし、会社組織・制度の全てを合目的的にし、矛盾をなくすこと
を挙げる。また、会社(あるいは部署)を1つにまとめ、燃え立つ組織とするために、
  • 社運を賭けた大胆な目標(Big Hairy Audacious Goals: BHAG/ビーハグ)
を設定するメリットを挙げる(BHAGは時代・市場に合わせ、その時々に適したものを設定するべきである)。勿論、あるBHAGを達成した後に新たなBHAGを設定しないと、会社は自己満足に陥って成長を止めてしまうので、BHAGは時流に応じて度々再設定する必要がある。

※本書の中で「ビジョナリー・カンパニー」とされている企業のうち数社は、その後、主要事業を売却する等大きな変化も起きている。が、20年近く前の本なので致し方ないだろう。事例が古いのは否めないが、現在でも充分通用する内容が多いと思う(我々により身近なトヨタvs.日産等を念頭に置いて読んでも良いだろう)。

なお、以下の点については留意が必要である。本質を見落として表層だけ・一部だけを真似ようとすると、十中八九、以下の罠に陥る。つまり、企業は従業員にとって地獄と化してしまう。企業経営者・コンサルタントの人たちは、これを見過ごしてはならないと思う。
  • 本書が、企業の経営者たちに、企業理念の文書化と、カルト主義(過剰な団結精神・集団ヒステリー)とを蔓延らせた罪は重い。
  • 本書に示されたような経営方針を採る企業は、ともすると今で言う「ブラック企業」になり易い。従業員の処遇とのバランスも重要。
    ※本書で言う「ビジョナリー・カンパニー」は、社員にとって「やさしい」「居心地のいい」会社ではない。社員に対する要求が厳しい傾向にある。

2014年9月13日土曜日

池谷 裕二「脳には妙なクセがある」

池谷 裕二「脳には妙なクセがある」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4594069517/>
新書: 366ページ
出版社: 扶桑社 (2013/11/30)
言語: 日本語
ISBN-10: 4594069517
ISBN-13: 978-4594069513
発売日: 2013/11/30

[書評] ★★★☆☆

何年か前に「脳トレ」とかが流行った時期もあったが(私もDSと「脳トレ」を持っていました/笑)、今はどうなのだろう?

本書は、脳研究の最近の研究成果を示しつつ、
  • 生物にとってそもそも脳とは何なのか
  • より効果的な学習方法(一夜漬けよりもコツコツ勉強)
  • 学習と睡眠の関係
といったテーマについて教えてくれる本。

話題は多岐にわたる。脳に関する雑学集、ネタ本(笑)。

おそらく著者が我々一般人に最も伝えたいことは、「良く生きるために、良い経験を積みなさい」ということ。われわれは自分で思っているほどには「自由」ではなく、脳の自動判定機能(無意識)に縛られているという。この無意識は、われわれがどのような経験をしているかによって決まるとのこと。
  • 生きる意味はなんでしょう――大学で教鞭をとっていると、若い学生からそんな問いを受けることがあります。私は決まってこう答えます。「その意味を探すプロセスこそがヒトとして生きる意味ではないでしょうか」と。生きる目的はヒトによってちがうはずです。いや、本当のところ、意味や目的なんて、はじめからないのかもしれません。ただ、それを一生かけて探す過程は万人に共通しているように思えます。(p. 4「はじめに」より)
なお、本書は既出の『単純な脳、複雑な「私」』(講談社、2013) (Amazon拙書評)と重複が多い。出版された時期が近かったので仕方ないのかも知れないが…。

2014年9月10日水曜日

池谷 裕二「単純な脳、複雑な「私」」

池谷 裕二「単純な脳、複雑な「私」」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4062578301/>
新書: 480ページ
出版社: 講談社 (2013/9/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4062578301
ISBN-13: 978-4062578301
発売日: 2013/9/5

[書評] ★★★★☆

東大薬学部准教授の筆者が、母校・静岡県立藤枝東高校で、講演した内容をもとに書かれた本。数年前に出版された「進化しすぎた脳」(講談社、2007/1/19) (Amazon, 拙書評)の続編ということになるのだが、現在進行形の脳科学について、わかりやすく読めるのが良い。

新書の割に、内容は豊富。特に面白かったのは、以下のテーマ。
  • 人間の認識・認知の“癖”
    • 人間は他人の右顔=こちらから見ると左側=しか見てない? 鏡に映った自分の顔の左側(左顔)をじっくり手入れ(化粧、ケア等)しても、他人が見てくれるのは実は自分の右顔側だったりする
  • 上下と左右は等価ではない
    • 目が左右についているから?
  • 人間にとって時間は可変
    • 感覚神経からのフィードバックは少し過去の情報だが、脳は少し未来を予想して情報を処理している
    • 感覚神経から入ってくる情報の「同時性」は怪しい
  • 記憶は後からつじつま合わせをして結構書き換えられちゃっている
    • 自分の行動に対して理由付けを行う。場合によっては作話(理由の捏造?)もする
  • 脳神経の簡単なシミュレーションの話
    • 神経の結合構造自体が我々を生命たらしめていることがわかる
  • 人間の自律神経を意識的に使う話
    • たとえばフィードバック付きの訓練次第で、α波を出したり抑えたり、血圧を上下させたりできる?(→“薬に頼らない”医学に寄与しそう!)
本書の後半は、最新の研究結果がドカドカ出て来る。また、科学や医学といった観点だけでなく、心理学や社会学にもつながるような話も多く、興味深く読ませて貰った。ズバリ、良書。

2014年9月6日土曜日

町田とし子(まんが)・藤屋伸二(監修)「まんが 元自衛官みのり ドラッカー理論で会社を立て直す」

町田とし子(まんが)・藤屋伸二(監修)「まんが 元自衛官みのり ドラッカー理論で会社を立て直す」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4796686525/>
単行本: 253ページ
出版社: 宝島社 (2011/12/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4796686525
ISBN-13: 978-4796686525
発売日: 2011/12/14

[書評] ★★★☆☆

怪我により自衛官を退官した主人公・みのりは、地域に密着した食品メーカーの営業職に転職する。その際、自衛官の先輩から渡された本が、ピーター・ドラッカーの『経営者の条件』。

自衛隊とメーカー営業職という、あまりにも違う文化に、みのりは戸惑いを隠せない。みのりの上司も、会社文化に染まっていない異分子・みのりの予想外の動きに苛立ちを覚えたりする。だが、みのりは会社の目的を正しく認識するに至る。お客様(小売店と最終顧客)にも喜んでもらえる活動をすることが出来るようになる。

…といったストーリーから、ドラッカーのマネジメント論をわかりやすく解説した本。数多くあるドラッカー解説書と比べると非常に“とっつきやすい”が、少々底が浅いかも(良くも悪くも宝島社クオリティ/笑)。本書の著者も認める通り(「おわりに」で書いている)、この本はあくまでも入門書だ。お堅いイメージのあるビジネス書の裾野を広げるという意味では意義のある本だが、本書に出てくるテーマに興味を持った人、問題意識を持った人は、どんどん次のステップ(他の実用書やドラッカーの著作など)を読むようにすべきだろう。イントロとしては悪くないだろう。

※ここ暫く、ゆる系ビジネス書が続いていましたが、とりあえず今回で打ち止めです(笑)。

2014年9月3日水曜日

小関尚紀(著)・HIMA(イラスト) 「小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで」

小関尚紀(著)・HIMA(イラスト)「小説 ダメ営業マンのボクが企業参謀に変わるまで」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4492043810/>
単行本(ソフトカバー): 222ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2010/7/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492043810
ISBN-13: 978-4492043813
発売日: 2010/7/23

[書評] ★★★★★

主人公は大手お菓子メーカーの営業部所属、ダメダメ営業マン。大学時代の恩師から恋愛成就のための戦略立案(状況分析、課題設定、アクションプラン作成)とその実行方法を教えてもらうという経験を通して、バリバリ成果を出せる仕事人に大きく成長する。…というストーリーを通して、経営戦略のキホンを分かりやすく教えてくれる本。

誰にでも分かりやすいテーマ、恋愛を成就させるための「戦略」を通じて、有名ドコロの経営戦略フレームワークを概ね網羅する。ストーリーも面白いし、分かりやすい。フレームワークの使い方など、かなり本質を衝いた説明になっていると思う。中堅社員は勿論、若手社員にも推薦出来る良書だ。

なお、サラッと書かれているが、重要な内容も多く含まれている(所々でカナリ濃厚に書かれている;これを一気読みすると消化不良になるかも)。一読だけでなく、何度か読み返すか、キーワードをメモしながら読む等の工夫を強くオススメしたい。

2014年8月31日日曜日

吹奏楽部あるある研究会(編集), 菊池直恵(イラスト)「吹奏楽部あるある」

吹奏楽部あるある研究会(編集), 菊池直恵(イラスト)「吹奏楽部あるある」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4861918839/>

新書: 191ページ
出版社: 白夜書房 (2012/4/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4861918839
ISBN-13: 978-4861918834
発売日: 2012/4/23

[書評] ★★★★☆

吹奏楽部は体育会系文化部である。防音室のある家に憧れる。2ケタ続く休み小節は睡魔との戦い。唇のはれ方で楽器がわかる。パーカッション担当者は話を聞いていない率が高すぎ。…等々、身に覚えのある話が多すぎ。つい、声を出して笑ってしまう。ワタシ以外の吹奏楽経験者にとってもたぶん、面白すぎる本です。interestingじゃなくて、funnyあるいはenjoyableという意味でね。

今日ヤマハ銀座の書籍フロアで目にして、つい買ってしまった本(の1冊)です。帰りの電車の中で読まなくて良かった(笑)。もし読んでいたら、笑い声を上げてしまい、周囲から変な人or危ない人扱いされたことでしょう。帰宅後すぐ読み、大笑いさせてもらいました。

殆ど何の役にも立たない本ですが、息抜きに如何でせうか?

2014年8月30日土曜日

岡本吏郎・安達元一「伝説のキャバ嬢コンサルタント舞ちゃんの 世界一たのしい社長の教科書」

岡本吏郎・安達元一「伝説のキャバ嬢コンサルタント舞ちゃんの 世界一たのしい社長の教科書」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4776205920/>
単行本(ソフトカバー): 223ページ
出版社: アスコム (2010/5/17)
ISBN-10: 4776205920
ISBN-13: 978-4776205920
発売日: 2010/5/17

[書評] ★★☆☆☆

会社の製品やサービスのブランディング、ターゲティングといった企業活動について述べた本。読み易いが、特に優れた本とも思えない(バッサリだ~!/笑)可もなく不可も無し。
  • 世界一たのしい社長の教科書 (書名より)
  • 本書は、効果絶大の「経営戦略」が、ノンストップストーリーで、スラスラとわかってしまう恐ろしい本です。(p. 1より)
  • そして読了した頃には、あなたは極上のビジネス脳の持ち主に生まれ変わっているはずです。(p. 5より)
はどう考えても誇大広告

会社経営の基本的な考え方を知る為の“軽い読み物”としては悪くないのだが、ケーススタディは少ないし、実用性・応用性という意味ではちょっと内容不足かも知れない。あくまでも入門書として捉えるべきだろう。